デイビット 16(CV大塚明夫)
イーライ 24(CV銀河万丈)
16....? 16.....
「全員揃ってますねー。ではSHRをはじめますよー」
天使のような微笑みを浮かべる女性、副担任山田真耶。彼女は新入生たちとの素敵な学園生活を胸躍らせながら挨拶をする。
「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」
教室は学校に対する緊張や期待で胸があふれているのか、寂然としていた。
「え、えーっと... では自己紹介をお願いします。.....あっ 出席番号順で」
生徒の反応がなかったため狼狽えて、声が小さくなっている。
そんな副担任を見て気の毒に思う男子生徒が一人。
彼の名は織斑一夏。入試当日に志望校の試験会場を間違え、IS学園に向かってしまい、さらにそこで女性にしか反応しないはずのISを起動させてしまう。
これにより、世界初の男性ISを扱える者として世界中に認知され、IS学園に入学 今に至る。
一夏はクラスの女子全員の視線を感じ、心苦しくなっていた。しかも席は最前列のド真ん中。嫌でも目立つので教室内が息苦しく感じていた。
しかし、唯一の希望が一つある。もう一人の男性IS使用者。名前も素性もまだわからないが同じ境遇なので仲良くできたらいいなぁ、でも外国の人っぽいし日本語通じるのかなと思案にふけっていると。
「......むらくん、織斑君!」
「はっ はい!」
思わず声が裏返る、後ろからくすくすと笑い声が聞こえるので赤面する。ちらりと幼馴染の篠ノ之箒に救いを求めて目をやるが、
薄情なことにぷいっとそっぽを向かれてしまった。嫌われてるのか...?と絶望しかけていると
「あ、あの、ごめんね! 大声で呼んじゃって! びっくりしたよね! でも、自己しょうかっ、自己紹介だから、「あ」 から始まって今 「お」 だから
織斑君、自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」
「いや、あのそんなに謝らなくても、大丈夫です。自己紹介しますんで、先生落ち着いて」
「ほんとう!?本当ですね!?約束ですよ!絶対ですよ!」
真耶は一夏の両手を握りしめ、詰め寄る。さらに注目が集まったように感じた。これ以上浴びるとここから逃げ出したくなる。
しかし、一夏、武士に二言はなし、すると言った以上やらないわけにはいかない。
背筋を伸ばし、後ろを向く。女子たちが好奇の目で、または嫌悪の目でみつめているのを再認識する。
ふと、もう一人の男性IS使用者を見ると、見定めるような目でこちらを見ていた。しかし、その横に何故かダンボール箱がおいてあり、隣の女生徒は煩わしい顔でダンボール箱を横目で睨みつけていた。
なんだか彼を見ていると妙に精神が安定していった。
(よし.....今なら噛まずに言えそうだ)
一夏ははっきりした声で自己紹介を始めた。
「織斑一夏です。よろしくおねがいします」
決まった....と内心ほくそ笑む一夏だったが。
「えっと....今のでおしまいですか?」
真耶がおずおずと一夏に聞く。
「はい、....以上です」
クラスの面々は不満げな顔を浮かべていた。もっといろいろ聞きたいだとか、これで終わりなの?等々。
そんな視線に一夏が困惑していると。
「おまえは挨拶すら満足にできんのか?」
落雷に撃たれたかのような轟音が教室内に響き、一夏の頭に衝撃が走る。
誰かに叩かれたようだ。しかし一夏は叩いた人物を衝撃だけで特定してしまった。ゆっくり振り向くと
「げえっ!関羽!?」
「誰が三国志の英雄だ、馬鹿者」
再度、一夏の頭に出席簿が振り下ろされる。
織斑一夏の姉、織斑千冬
かつて、第一回モンド・グロッソで優勝し、
『ブリュンヒルデ』と呼ばれる世界最強のIS操縦者。
現在はIS学園の教師を務めている。
「織斑先生、会議はもう終わられたんですか?お疲れ様です」
「ああ、山田君、クラスの挨拶をおしつけてすまなかったな。今度なにか礼をしよう」
真耶はねぎらいの言葉をかけ、千冬は一夏の聞いたことがない優しい声で礼を言う。
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが私の仕事だ。
いや、正確には私たちだな。
私たちの言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。」
(私たち? 千冬姉だけじゃなくって隣の山田先生もIS訓練に関わんのかな?)
「そうだな、私たちは弱冠十五歳を十六歳まで鍛えぬくことが一つの到達点としている。それまでの間に逆らっても構わんが、私の言うことだけは聞け。いいな。」
「あの......織斑先生、それだと私や教官の言うことには逆らってもいいというように聞こえるのですが......」
(なんという暴力宣言。どこに行っても千冬姉は千冬姉だな)
相変わらずの姉の姿を見て、小さく笑う一夏。
(ん? 教官? 今ここにいるのは千冬姉と山田先生......でも教官らしき人は見えてないなぁ。俺の聞き間違いかな)
その教官とやらも女の人だったりして...と推定していると。
突如として、教室内に黄色い声援が響いた。
「キャーーーーーーーーーーー! 千冬様っ! 本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした! 今もそうです!! プロマイド家に飾ってあります!!! 私の家宝です!!!!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」
「お姉様のためなら、私、死ねます! それほどまでにお姉様を敬愛しています!」
きゃーきゃーと騒ぎ立てる女子たちを、千冬は煩わしそうな顔で睨む。
「....毎年毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。まったく感心するよ。それとも何だ? 私のとこだけにこんな痴れ者を集中させているのか?」
「きゃあああああっ! もっと! お姉様! もっと! 罵ってぇ!!」
「でも時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾をしてぇぇえええ!!」
(クラスメイトが元気でなによりですね)
とその時。
「ちょっとあなた! 今の発言は無礼よ! 取り消して謝罪なさい!」
後方から怒号か聞こえる。激昂しているのは一人のクラスメイト、勿論女。他の女子も何事かと注目している。
視線の先には、もう一人の男性IS操縦者がいた。
「いや、俺はなんであそこまで織斑千冬という人物に心酔しているのか疑問に思っていただけだ。決して侮辱等はしていない」
「あなた! お姉様....織斑千冬様のこと知らないの!?」
「ああ、さっき名前を聞いたばかりだ。後はよく知らない。兄から聞かされてはいたがな」
「知らない時点でもう侮辱よ! 世界最強と謳われ、ブリュンヒルデの称号を持つあの織斑千冬様よ! 本当に知らないの?」
「ああ、世界最強なのか? そりゃすごい。しかしブリュンヒルデってのは北欧神話のワルキューレだろう? 俺には誇り高き月の女神、アルテミスを彷彿とさせる。いつまでも眺めていたい躰だ」
「っ! お姉様! こいつ危険です! すぐに追い出しましょう!」
女子生徒は顔を真っ赤に火照らせ、仕舞には退学を望んだ。
一連の流れに唖然とするクラスメイト(と山田先生)。千冬は女子生徒に目を向ける。
「確かにこの学園でそのような性分の持ち主は即刻私が叩きだしている」
「では...!」
「だがそれはできない。いくら私でもな」
「なっ.....何故でしょうか」
「こいつも織斑一夏同様、男性IS操縦者だからだ」
教室にどよめきが起こる。
それもそうだ、男性がISを動くことすら起動さえできるわけがない。それを覆す歴史的人物が今ここに存在しているのだ、二人も。
「せっかく注目が集まったんだ。お前も自己紹介しておけ。私の弟と同じ轍は踏むなよ」
千冬が声をかける。一夏は小さく縮こまっていた。
「了解した」
そう言って立ち上がり彼は青い目を周りに散らす。
「俺の名前はデイビット。ISについては全く知らないが何故か起動できてしまい、ここに至る。だが銃や近接格闘術には少々自信がある。戦闘面ではそれらで足りない面を補っていくつもりだ。これからよろしく頼む」
一夏と比べてより深く自己紹介を行うデイビット。クラスメイトが頷き、感心していると。
「ダンボールは気にしないでくれ。俺の相棒みたいなものだ。それと、基本的に土曜日、日曜日は空いている。是非お茶にでも誘ってくれ」
大体性格は察した。こいつは危険だ、と。
千冬がデイビットを睨みつける。
「いきなり初対面の生徒を口説くんじゃない馬鹿者」
「だがいきなりこんな女だらけの学園に放り込まれてみろ。男なら誰だって
更なる爆弾発言。多くのクラスメイトは本能的に顔をしかめた。
「もし生徒に手を出そうとするならば、おまえを無傷で家に帰すことはない。覚えておけ」
「俺もそこまで馬鹿じゃない。肝に銘じておこう」
実際手を出しそうなんだよな.....と皆が不安がっていると。
「このことはイーライ教官に報告せねばならんな」
「ちょっと待ってくれ。さすがに兄さんに報告することはないだろう。
まだ俺は何もやっちゃいない」
デイビットが焦り、挙動不審気味になる。千冬は少々笑っているようにも見える。
(千冬姉って本当Sだよなぁ....M気味の女生徒がいても
何ら不思議ではないか...)
ここで一夏はあることに気付く。
(ん? イーライ教官....? 兄さん? さっき言ってた教官ってまさか!」
思わず声に出していた。千冬は振り向き頷いた。
「ほう、勘が鋭いようだな一夏。その通りだ」
「今は見えないががもう一人、お前たちを鍛え上げる人物がいる。あの鬼教官
イーライだ。お前たちもよく知っているだろう」
何人かが息をのんだ。一夏もその一人。彼についてはよく知っている。
子供のころよく面倒をみてもらっていた、強烈に。
千冬と同世代で、何かと意気投合した二人はお互いの弟についてよく愚痴を零しあっていた。
男なのでISは動かせない。しかしその屈辱をバネにし、日々努力を重ね、VR技術によって男でも女でもISを体験出来る技術を生み出した。
また、実践同様の経験も得られる利点をIS学園が目をつけ、VR訓練の技術を採用し、イーライを特別に戦闘面での育成担当教官に就任した。
千冬もその努力をそばで見ていたため、見事成し遂げたイーライを誇りにそして尊敬の念を持っている。
「そんなイーライ教官の弟がこいつ......この女好きだ」
千冬は大きくため息をついた。
自分が認めた男の弟がこんな助平だとは。自分の愚弟ともどっちもどっち.....
「さてSHRは終わりだ。諸君らにはISの基礎知識を半月で覚えてもらう。またVRでの訓練で予習をしておくといい。そのあと実習だが基本動作も半月で覚えてもらおう。
いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」
「.....あの先生、私たちには返事しなくてもいいと解釈できちゃうのですが......」
「細かいとこは気にするな」
「ワカチコ.....じゃなくてわかりました!」
(おお、なんという鬼教官っぷり。しかもあのイーライ教官も加わって二人の鬼か。生きて帰れるかな俺)
一夏は大きくため息をついた。
イーライの顔つきはMGS1のマスターミラーみたいな顔です
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