俺たちの伝説の夏   作:草野球児

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◇春季岐阜県大会一回戦
   一二三 四五六 七八九 計
藤柴 000 001     1
神山 000 00      0



9話 期待に応える?

キィン

 バットの先で引っかけた打球はライト線へ上がり、丁度ファウルラインの真上に落ち白粉が舞う。

「フェア!」

 審判がフェアグラウンドを指してコールすると神高ベンチは盛り上がった。

 打った久々野は俊足を飛ばし二塁へ到達、ノーアウト二塁のチャンスを作った。点を取られた直後の攻撃は重要である、そういう意味でもこの回のチャンスは生かしたい。

 

 一番の千島は送りバントを三塁線に決めて久々野は三塁に進塁。ワンナウト三塁。

 先ほどの守備でミスをした二番の末広に、この場面で打席が回った。汚名返上を意気込む末広に対して、片野監督がいつもより前に身を乗り出してサインを出す。出たサインは「待て」。

 初球をちゃんと見送ってワンストライク。2球目、今度は低めに外れるボール。1ストライク1ボールとなったところで監督はスクイズのサインを出した。ベンチ内にも緊張が走る。そういえば以前、スクイズのサインが出た際に緊張でベンチが静かになりすぎてしまった事があったので、監督に「スクイズの時もいつもどうりにしろ」と言われた事があった。

「末広ー!行けー!」

スクイズを悟られないよう緊張を押し込み、いつもどうり檄を飛ばす。

 投手がセットポジションからモーションに入ると、三塁ランナー久々野は完璧なスタートを切った。前進守備の内野がさらに前進してくる。

 投手が投げたボールはストライクゾーンへ、末広が体勢を低くしバットを横に寝かす。

 決まった!そう確信した。しかし、ここで信じられないプレーが起こった。

 

 末広がまさかのスクイズ空振り。

 既にホームの手前まで来ていた久々野は左脚でブレーキを掛けて慌てて切り返すが、そのまま捕手にタッチされアウト。同点のチャンスが一瞬で潰えてしまった。

 ベンチが「あぁー・・・」というため息で溢れる。

 打席の末広はぎこちない動きでベンチのサインを窺う、さすがの末広も青ざめているようだ。

 片野監督は右手を横に振り「打て」という仕草をした後「切り替えろ!思い切れ!」と手をメガホンの形にして声援を送った。

 ツーアウトランナーなし。スクイズを空振りしていたため、カウントはツーストライク。

 雰囲気がまずい。

 この空気のままだと次の回の守備にも影響が出てしまうかもしれない。頼む末広、せめて塁に出てくれ。

「行け!まだチャンスあるぞ!」

「末広さん!ここから追いつきましょう!頼みます!」

 

 スクイズの緊張感の反動からか、藁にもすがるような思いからか、ベンチの全員が必死に声援を送る。しかし想いも虚しく、末広は外のボール球を空振りして三振。

 スクイズ失敗の時よりも大きなため息が流れる中、6回裏が終了した。

 

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