俺たちの伝説の夏   作:草野球児

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22話 リベンジ

 復活した神高ナインは、垣田商の強力打線が放つ打球に食らいつきホームを守り抜いた。

 しかし、マウンドで人一倍プレッシャーを感じながら立ち向かってきた久々野は、疲労の色が隠せないでいた。変化球のキレがなくなり、ボールが上ずる場面も徐々に増えていった。そうして何度も走者を出しながらも、なんとか『気力』で抑えた。

 

 全身全霊を掛けた必死の守り。その勢いは攻撃にも現れた。

 7回裏、デッドボールで出たランナーを粘り強く進めて、ツーアウトながらランナー三塁。同点に追いつくチャンス。

 そして、この重要な場面で打席に立つのは・・・俺。

 

 緊張とも集中とも区別のつかない、不思議な感覚でボックスに入った。

 マウンド上の垣田商業の4人目のピッチャーは、春のセンバツ甲子園でも登板した2年生投手。投げるボールの殆どが重い質のストレートで、まさに典型的なパワーピッチャーだ。

 

「前の俺の打席で教えてくれへんかったやろ、こっから球種のヒントはナシやで」

 

 三国が意地悪気にそれを伝えてきた。なんというか、こういう力でゴリ押しするタイプの投手が相手では配球も球種もクソもないだろう。

 球威に負けないようバットを短く持ち、コンパクトなスイングを心掛ける。

 

 こちらのストレート狙いを感じ取ったのか、バッテリーは珍しくスライダーから入って来た。外に逃げるスライダーを見逃してボール。

 もう一球スライダー。これも外に外れてツーボール。

 

 カウント2-0。次はストライクを投げれれてもおかしくない。バットを強く握りしめる。もう試合は終盤の7回、ここで凡退すればもう俺に打席は回ってこないかもしれない。

 

 狙いどおりの重いストレートが飛んでくる。速い、だけど「久々野よりは遅い」。

 

 鋭いライナーが三塁線を襲った。垣田商のサードが飛びつき、グラブに当ててファールゾーンへと弾いたのが見えた。

 

 そこからは視線を一塁ベースに向け、必死になって走る。弾いたボールの行方は分からない。

「滑り込め!!」

 一塁コーチャーの神田が声を張り上げた。自分の背後の雰囲気からも「一塁に送球されている」ということはすぐに感じ取れた。

 一塁まであと数メートルというところで、重心を下げて倒れ込むようにベースへ両手を伸ばす。視界の隅でファーストが伸び、送球を受けようとしているのが見える。

 ボールがファーストミットに収まる乾いた音と、指先がベースに触れた感覚がした。ほぼ同時だった。

 

「アウト!スリーアウト!!」

 

 顔をうずめる。無念、わずかに届かなかった。

 

「長坂、ナイスラン。惜しかったぞ」

 土の混じった唾を吐き、励ます神田と共にベンチへ戻る。

「アウトになったら意味ねえよ」

「ああいう姿勢はチームに伝わるから。またお前に絶対回してやるから、信じろ」

 

 それが真はどうかわからないが、神高の守備には良い流れが来つつあった。直後の8回表には、ワンナウト満塁からピッチャー返しを久々野が好フィールディングでダブルプレー。

 9回表には、ツーアウト三塁のピンチでレフト岸川が豪快なダイビングキャッチを決めてまたまた0点に抑えた。

 

 岸川のファインプレーを讃え、皆興奮気味にベンチへと戻る。

 9回裏、最後の攻撃に向けて自然と円陣が組まれた。

「いいか、俺達はよく守った!1点差のまま守り切った!」

「だけどこれだけじゃ満足できないよな!?」

 いつになくオーバーにアクションをしてみせる。周りからは思わず笑いが起こる。

「勝とう!逆転して絶対に勝とう!行くぞ!!」

「「オウ!!」」

 

 垣田商ベンチから監督が出てきた。球審に歩み寄り、このゲームを締めくくるための投手の交代を告げた。

「ピッチャー交代!古宮に代わって、友江!!」

 

 

 ついに来たか。勝利を目指す神高にとって、最後にして最大の難関。

 甲子園4強・垣田商業のエースピッチャー『友江(ともえ) 祥文(よしふみ)

 




◇練習試合
    一二三 四五六 七八九 計
垣田商 000 004 000 4
神 山 200 010 00  3
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