兄貴が先に生まれてくる理由   作:和良品奈津希

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初めまして・・・

頑張ります。


1話

親父が尸魂界を裏切った。

 

そんな知らせが来たのは、母が死んで何度目の春だったか。隊規違反の出撃中に失踪。敵にやられた可能性もあったが、その可能性は限りなく低い。俺の親父は護廷十三隊の隊長だった。そんな父を下せる実力者はあまりいない。運の悪いことに隊規違反中の失踪。それも最近立て続いての隊規違反だ。裏切りととるのが自然。

 

親父の裏切りは息子かつ、同隊の三席であった俺にもすぐに伝えられた。隊の部下たちは腫れ物を扱うように遠巻きに見るだけで、心配してくれた隊の同僚は副隊長と1つ下の四席の男の子だけだった。

 

しかし、俺の心に動揺はなかった。周りからは毅然とした態度だとか、心のない白状なやつだとか好き勝手に言われたが、それも想定済み。

なぜなら俺は知っていたのだ、父の失踪という事件が起きるということを。それこそ生まれた時から。いや、生まれる前から。

 

 

 

我が名は一愛、姓は志波。父は志波一心。

俺はこの物語の主人公の腹違いの兄で、世界の異物なのだから。

 

 

***

 

 

志波一心の失踪から数日、護廷十三隊 十番隊隊舎の上級席官用執務室で三人の男女が顔を神妙な面持ちで頭を悩ませていた。隊長の裏切りという急を要する状況なのだが、あまり直面したことがなく、繊細な問題のために三人ともに口が重い。

 

「親族がこんな問題を起こしたこと、済まなく思う」

 

わかっていたこととはいえ、親族の起こした問題のため一言詫びを入れるのがけじめだろうと俺が最初に口を開いた。

 

「一愛あんたが謝ることじゃないわ」

 

上司の松本副隊長が俺の謝罪を受け止め、普段の言動とは違いこちらを気遣ってくれた。

 

「そうです、一愛さんのせいではないです」

 

四席の日番谷冬獅郎が続けるように気遣ってくれた。

 

「しかし・・・」

 

「やめやめ、辛気臭いのはなし! これからのことを話しましょ」

 

それでも俺が謝罪を続けようとすると、乱菊が明るく言葉を切ってくれた。この数日、一番苦労したのは彼女なのだがそれをこちらに感じさせないようにしている。改めて芯の強い女性だと思う。さすがに付き合いの長い俺と冬獅郎は彼女の疲労をわかってしまうが、それを口にするのも野暮な話だ。

親父の失踪から数日、彼と近しい存在であった俺たちは中央四六室の査問委員会や総隊長などによる取り調べがあった。親族で部下の俺は執拗に責められた。冬獅郎はその若さゆえに能力にまで言及されたらしい。そんな俺たちよりも副官であった乱菊の取り調べは過激さを増し、中央四六室から親父と愛人関係だったのではなどと下世話な追求まであったらしい。そんなことでいちいち傷つくほどやわじゃない、と本人は笑っていたが、親族として本当に申し訳なく思ってしまう。

 

「これからか・・・。 とりあえず溜まっている仕事を片付けるのと、隊の不安を取り払うことか・・・」

 

冬獅郎が顎に手を当て考え込む。余談だが、冬獅郎はなぜか俺には敬語で話すがさらに上官の乱菊には敬語を使わない。乱菊とは隊に入る前からの知り合いであるかららしいし、俺は戦闘面と仕事面両方の師匠であるかららしい。どうしてこうなった。

ちなみに、俺も乱菊とは学生の頃からの同期のため普段は敬語を使わない。

 

「書類仕事は明日から全員で取り掛かれば問題ないでしょ。隊長も私も普段からあんまりやってなかったし」

 

「それは俺と冬獅郎が普段から頑張っていたからです。・・・確かにそういう点で考えるとそっちの問題は認めたくないけどどうにでもなるか。あとは・・・」

 

「隊員の不安をどう取り除くかね」

 

隊長が抜けるということで発生する問題は事務仕事が回らなくなるということだけではない。護廷十三隊の隊長とは隊の精神的支柱なのだ。圧倒的な力により副隊長以下の人間が束になっても敵わない存在だ。人というものは上に立つ人間に強さを求める。それは信用に繋がり信頼となる。これが弱いものであるならば下は、上の命令に信じれなくなり、指揮系統が乱れる。ある種の恐怖政治のようだが、戦闘部隊である護廷にとっては仕方ないことである。

そんな存在が居なくなった部隊において起こるのは、精神的支柱という頼りどころのなくなったことによる不安である。

親父は普段ヘラヘラとしていたし、仕事からはよく逃げていたし、隊規はすぐ破るしとあまり隊長らしくなかっかもしれない。しかし、戦闘力は隊長の名に恥じないものであり、気さくで柔軟な態度は部下からの信頼もあつかった。

 

「簡単なのは早く次の隊長を決めることでしょうけど・・・」

 

「隊長でもない俺たちにはそれを決める権限はありません。順当にいけば松本副隊長でしょうが・・・」

 

「私は実力的に無理よ、卍解だって使えないし。それに疑いだって完全に晴れたわけではないわ」

 

乱菊の疑いは晴れていない。総隊長はわかってくれたようだが、四六室の愚物供は愛人説をまだ疑っているようだ。それに実力面も心もとないのも事実だ。原作を知っている俺からしても彼女は副隊長としては優秀だとしても、隊長格として必須の卍解を使っている場面は知らない。原作のコミックを読んでいた当時から思っていたことは、藍染の実験で盗られたのは魂魄の一部、卍解に必要な箇所なのではということだ。もしそうなら俺というイレギュラーがいても変わりはしないだろう。ということはここは原作通り冬獅郎が隊長ということで間違いないだろうが、言い出せない理由がある。実際最近卍解の修行をしていたようだし、習得も間近らしい。さすがは天才といったところだ。しかし、現状卍解は習得していない。この状況では隊長就任は難しい。これが俺が言い出せない理由の1つだ。

 

「なら一愛さんがなれば問題はないと思います、卍解できますし」

 

考え込んでいた冬獅郎が爆弾発言をしてきた。

そうこれが、俺が冬獅郎を隊長にと言い出せない理由の本命である。俺は使えてしまうのだ、卍解を。卍解のことは親父にすら秘密にしていたが、一応の弟子である冬獅郎には教えてあった。ということは乱菊には言ってないわけで・・・

 

「一愛、あんた卍解使えんの⁈ じゃああんたで隊長問題ないじゃない! 」

 

こうなるわけで・・・

 

「俺もそれがいいと思います。実力的にも人間的にも一愛さんが適任だと思います」

 

乱菊は一応秘密なことなので少し声を落として欲しい。冬獅郎は何故に俺をそこまで信頼してくれているかわからない。

 

「いや、しかし・・・」

 

俺は歯切れの悪い答えしか出来ない。はっきり言ってしまえば、隊長になりたくないのだ。別に隊長職の仕事が嫌というわけではない。自慢ではないが実力的にはそこらの隊長には負けない自信がある。書類仕事も問題ない。親父や乱菊が投げた仕事をこなしてきている。では何故に隊長になりたくないか、それは単純に自由に動きにくくなるからだ。

今更だが、転生者である俺はこのbleachの世界を知っている。それも原作終了までの流れをだ。その流れを自分の都合がいいように変えたいのだ。手の届く範囲でいい。知っていたのに救えないというのは嫌なのだ。自分の良心に対する自己満足かもしれない。それでも知っていて見過ごせるほど薄情でもない。

隊長になることで確実に自由に動け時間は減るだろう。ましてや暗躍まがいなことをするのだ、隊長職の傍らでは難しい。藍染らが原作の中であれだけ暗躍できたのは彼の斬魄刀の力が大きい。完全催眠によりそこに居なくても居ると錯覚させ違和感を覚えさせない。公式チートは伊達ではない。残念ながら俺の斬魄刀は戦闘力はあってもそういった力はない。

 

「俺は犯罪者の親類だしな、ほとぼりが冷めるまで実力があっても隊長にはなれないだろう。でもほとぼりが冷めるのを待っていたら遅い。その前に誰かが隊長の座に座らなければならない。その時邪魔になってくるから俺の卍解のことは他言無用だ。幸いここの3人しか知らないし」

 

「しかし・・・」

 

「気持ちはありがたいがわかってくれ冬獅郎。乱菊もそれでいいな? 」

 

「まあ、あんたがそういうなら。でもそうなると話しは振り出しかぁ」

 

そう言って乱菊は髪をかきあげた。冬獅郎はまだ納得しきれてないようで難しい顔をしている。

どうしたものかと悩んでいると、執務室の外から足音が聞こえた。だいぶ慌てているようだ。入ってきたのは他の隊のもののようで、俺たちは怪訝な顔を向けてしまった。

 

「失礼します、御三方に総隊長より呼び出しに御座います」




乱菊の卍解の下りは独自設定です。もしかしたら原作にもあるのかな・・・

とりあえず駄文失礼しました。次話出来るだけ早く書きます。
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