ハスラーワンが鎮守府に着任したようです   作:スティレット

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 深海凄艦は海洋生物とし、艦娘のみ可食とする。

 大本営からの発表


出頭

「よう、おはようだぜあんちゃん。大人気だな」

 

 班長に挨拶された。後半は肩部に乗っている妖精達に向けての事だろう。

 

「おはよう。書き順を教えてくれるから便利だ」

 

 メモリの30%を割き、並行して昨日の回答を求めつつ隼鷹に回す為の分類と下書きを行っていた。

 

「あんちゃんも難儀だな。でかいから書きにくいだろう」

 

「もう慣れた」

 

 私の横には書類用の下書きした廃材が重ねてある。それでも私のマニピュレータは戦闘用であり、これに類するMTですら土木作業などに特化している。決して執筆するものではない。が、トライ&エラーにより実用圏内にまで経験値を蓄積した。戦闘に転用すれば恐らくは狙撃における修正速度が大幅に向上しているだろう。

 

「んで、今日はどうするね?」

 

「そうだな」

 

 昨日の戦闘行為により、本格的な戦闘を行わなければしばらくは保つ物資を確保出来た。ならば次は戦力の増強なのだが……。

 

「提督ぅ~!」

 

「隼鷹か。どうした」

 

 二日酔いで顔を青くした隼鷹が蛇行しながらもこちらへ駆けて来た。

 

「大本営から! なんか内線が死んでるから走ってォロロロロォ」

 

「そうか」

 

「すまねぇ嬢ちゃん、そっちは後回しだったわ。っておい、あんま無理すんなって! おい、水でも持って来てやんな!」

 

 嘔吐している隼鷹に声をかける班長は妖精達を捕まえて水を催促していた。

 

「落ち着くまで話さなくても良いぞ」

 

「おぇ……そんなわけにゃ行かないんだって。なんか昨日のが他の鎮守府に見られてたらしくてどうにか大本営まで来て貰って話がしたいって通信があったんだよ!」

 

 まくし立てた隼鷹はへたり込んでしまった。

 

「やっぱいくら艦娘でも味ごまかした工業用アルコールじゃあ無理があらぁ。……ああ、そう言う事か」

 

 途中まで心配していた班長だったが、得心が行ったと言う様子でうなずいた。

 

「早くまともなお酒が呑みたいんだよぅ……」

 

「そうか」

 

 一理ある。ゲリラ兵や特殊部隊のような自給生活は想定していないのだろう。

 

「隼鷹」

 

「ガラガラガラ……ぺっ! あにさ?」

 

 隼鷹は妖精の持ってきた水でうがいを行い返事をした。

 

「今日の午後には戦闘速度で大本営へ向かう。調整可能か?」

 

 私の発言に隼鷹の雰囲気が変わった。

 

「い~いねぇ~。大丈夫、イケるよ!」

 

「この呑兵衛が……」

 

 隼鷹の発言に班長が頭を抱えていた。

 

 

 

 現在海で拾った睦月も加えても艦娘は3隻。事務に隼鷹、文字を間違える為雑用として夕立と睦月が付いているが、深海棲艦の鹵獲や物資の補給等を考慮すると圧倒的に人員が欠乏していた。

 

「班長」

 

 現在の時刻は午前10時程度。書類作業を隼鷹に引き継がせ、妖精達と共に資材の分別を終えたところだった。

 

「なんだ? あんちゃん」

 

「今から指示するものを作ってもらいたい」

 

 書き取りの練習を一旦中止し、班長にカメラアイを向けて要求した。

 

「ほう?」

 

 班長が興味深げに身を乗り出す。他の妖精達も好奇心で同じような動作を行っている。

 

「プリンターと言うものだが、現在一番近いものはタイプライター、もしくは版画と呼ばれるものだ」

 

 経験値を蓄積しているが、人が使用する書類に直接執筆不可能な為に別の手段を講ずる事にした。

 

「……それで?」

 

「これを配線で接続する事で文字を出力する」

 

「……なるほどな」

 

「出来るか?」

 

「良いぜ。詳しいとこ教えてもらえるか?」

 

 これで書類作業が大幅に短縮出来る可能性が出てきた。

 

「ああ。これはインクジェットとレーザープリンタがある。」

 

「レーザープリンタってなんだ?」

 

 腕を組み、首をかしげて疑問を浮かべる班長。やはり同じ動作をする妖精達。この地域は歪な発展をしている。生物兵器が闊歩し、大破壊以前ですら再現不可能な科学技術を有しているのにコンピュータの類は真空管が最新らしい。妖精達も不可解な生物だが、概要を伝えるだけで何とかする場合もある有用な生物だ。

 

「レーザーとは電磁波、光の一種だ。現在私が装備しているものにも使われている」

 

「ほう」

 

 班長の視線が私のマニピュレータに向けられる。作業の手伝いで鉄柱の切断、切り出し等に使用しているので気になってはいたのだろう。

 

「どちらの方が出来そうだ?」

 

「そうさな……インクは在庫分が切れちまったら終わりよ。レーザープリンタとか言うのは動力によるが、発電機はどうすんだ?」

 

「私のジェネレータで補う」

 

 ハッキング用の端子に接続するが、電力の出力も可能だ。

 

「分かった。しかし熱線なぁ。急造だと紙を焦がすくらいしか出来ねえけどそれでもいいか?」

 

「ああ、私のサイズのタイプライターを紙に印刷する方が面倒だろう」

 

「やってやれない事は無いけどよ。まあそっちもインク切れに弱いしレーザープリンタのが興味があるからそっちにさせてもらうわ。イオナの嬢ちゃんも似たようなのやってたし」

 

「そうか。分かった」

 

 イオナ……一体何者なんだ。

 

「ンでよ……」

 

 班長はつなぎの袖を捲りながらこぼした。班長の行動に妖精達は静観している。

 

「なんだ?」

 

「そのレーザーとやらの仕組みを吐いてもらおうか」

 

 露出した二の腕をもう一度組み直しながら班長は凄んだ。

 

 新しい理論に基づいた開発、つまり更なる脅威ともなる情報を要求するにあたって精神力を要したのだろう。一般的には勇気が要る行為と呼称されるものと推測する。

 

「分かった。これは光の増幅、つまりLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationの略称だ。つまり、分子にエネルギーを与え、励起状態にすると光を放つ。その光が他の励起状態にある分子に接触し、これを繰り返す。これを誘導放射と言うが、そうなった光は同じ方向に照射可能なのでそれを使う」

 

「要は広がらない電灯みたいなもんだな?」

 

「暴論で誤解を招きそうな要約だが概ねその理解で良い」

 

 現在この仮設鎮守府に存在する電灯は一部の蛍光灯以外は白熱電球だ。全体的な割合はそれすらもごく一部で、大部分はろうそくや、野外ではドラム缶での篝火などを利用している。

 

「そこら辺は実際試してみてから解れば良いぜ。で、どうやって作るんだ? 原理とかめんどいのは学者先生に任すからよ」

 

「そうだな」

 

 現在の物資を考慮すれば二酸化炭素が妥当か。質は悪そうだが感熱用なら出力も必要無いだろう。

 

「両端に鏡を着けた筒、片方が全反射で片方が出力用だ。これに二酸化炭素を詰め、電流を流す。そして励起状態の光を出力用の出口から放出すれば良い」

 

「なんだ意外と簡単なんだな」

 

「まああれだ。あんちゃんの奴みたいに鉄を切るのは鏡が保ちそうに無えけど紙くらいだったらまあ、なんとかやってみるわ。おい、聞いてたな! 手の空いた奴は使えそうなの廃材から掘って来い! 楽しい実験だ!」

 

 班長の言葉に傍で聞いていた妖精達が楽しそうに散っていった。彼女達は新しいものに好奇心を惹かれるらしい。

 

 

 

 午前中の作業を終え、食事が不可能な私はシステムチェックとデフラグを行い隼鷹達と合流した。

 

「提督さん、お疲れさまっぽい!」

 

「お疲れにゃしぃ!」

 

 司令室の窓を覗き込むと駆逐艦2隻が作業を中断して顔を上げた。軽空母は混入物でごまかしたアルコールの酒瓶を抱いてソファーで眠っている。

 

「ご苦労、進捗はどうだ?」

 

「午前中隼鷹さんがすごかったわ! 「まともな酒が呑める~!」って言ってぱぱぱーってやってたっぽい! 後は夕立と睦月ちゃんが後片づけして終わるっぽい!」

 

「そうか」

 

 素晴らしい士気の高さだ。通常は効率が低下するのだが。

 

「今朝隼鷹から伝わっているはずだが、今日の午後から大本営に向かう。留守番を頼む」

 

「了解っぽい!」

 

「分かったにゃ!」

 

 この戦力では辛うじて防衛戦が可能だと言う程度。それも大半が妖精達が扱う拠点防衛の為の武装だ。ある意味自給は可能だが別ルートで補給線が構築出来るのなら増強すべきだと判断した。

 

「今日中には戻る」

 

 そう伝え、ブースターを噴出する為に発着場へと向かう事にした。

 

「いってらっしゃいっぽ~い」

 

「お土産期待してるにゃしぃ!」

 

 夕立と睦月が手を振っている姿を一瞥して出発した。




 艦娘にも個人差があります。ブラウザ版とアニメ版のように。

 段々調子が戻ってきました。いい感じだな。
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