幻の郷の人造人間   作:古木

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 眩しさに目を開ける。

 

 

 太陽の光が目に飛び込んでくるのを手で防ぐ。

 

 

 そこに広がるのは空を写す、透き通った水面。

 

 

 風もないのか荒波ひとつたてない。

 

 

 どこを見渡しても水面が広がっている。

 

 

 これじゃ地平線の向こうにも繋がっていそうだ。

 

 

 

『助けて』

 

 

 

 その一声が耳に届いたとき、俺は無意識に後ろへ振り返る。

 

 

 黒い人型の体に目と歯が無数についた化け物。

 

 

 そいつが濁流のように流れるバグを率いて、1人逃げる空色の髪の少女を追っている。

 

 

 伸びる黒い手が少女の腕を掴む。そこから血が溢れだし、

 

 

 やめろ…

 

 

 バグに引きちぎられた。

 

 

 やめろ……

 

 

 少女の右足が切り落とされる。

 

 

 やめろ………

 

 

 少女の左足が少女の右腕が少女の横腹が少女の胸が少女の右太股が少女の右肩が少女の鼻が少女の耳が少女の右肩が少女の左太股が少女の顔が

 

 

 やめてくれっ…………!

 

 

 喰われているなかで少女の目が俺を見る。

 

 

 恨むがこもった視線が、俺をその場に使って縫いつける。

 

 

 

 ごめんなさいっ……ごめんなさいっ……!

 

 

 

 渦潮にのまれていくかのように少女が消えていくなかで、俺を睨みつけたままその口がゆっくりと動く。

 

 

 『許さない』

 

 

 

 

 …………ぁ…………あぁぁぁ………

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁあ!!!!」

「落ち着け松谷!」

 

 

 死んだ死んだ死んだ死んだ死ん

 

 

「落ち着けって!……あぁもう!鎮静剤持ってこい!!」

 

 

 俺のせいで俺のせいで俺のせいで俺の俺の俺の俺の俺の俺の俺の

 

 …………俺のせいで…………死んだ。

 

 

「はよ刺せ!暴走するぞ!!」

「鎮静剤注入完了しました!」

 

 

 ………………俺のせいで…………。

 

 

 

 

 …………。

 

 俺は一体……。

 

 

「やっと正気を取り戻したか。このバカ息子が」

「……お袋?…………あぁ……」

 

 

 検査に来てたんだ。俺。

 で、たぶんやらかしたな。

 

 

「やっちゃったのか……」

「やっちゃってくれたね。次暴走しかけたら殺すからね」

「暴走は止めらんないっての……」

 

 

 毎度毎度嫌になる、あんな夢ばかり見るのは。

 

 ホムンクルスは人間を改造して造られた、限りなく人間に近い生物。

 改造された人間の自我は全て消えるのだが……稀に記憶の断片が残っていることがある。俺のように。

 

 それが本当にあった記憶なのか、ただの想像なのかは分からない。それを知る人間が既にいないからだ。

 

 その記憶の殆どが『トラウマになりそうなもの』ばかり。しかもちゃんとした映像で流れるのだからたまったもんじゃない。

 

 悲しみ100%の絶望する映像を見せつけられたホムンクルスは、自身を守るために自我を封じ込め暴走する。俺が暴走した理由はこれだ。

 

 幸いこの現象が起きるのは検査の時のみ。俺が思うに、記憶をレポートとして提出することが問題なんじゃないかと思う。

 

 頭の中の棚をひっくり返せば、そりゃ遥か昔の記憶だって出てくる。

 

 こんな夢を見るから検査は嫌いなんだ。

 

 

「まぁ、昔に何かあった人間をベースにしたことは私の責任か」

「責任なんて感じてねぇくせに良く言うわ」

「学校で良い子ちゃんぶってる奴に言われたくないね」

「人間関係は大事だってお袋が言うから仕方なしにやってんだろが」

「だから?良い子ぶる必要なんて一ミリもないじゃない。あんた地味に好かれようとしてんじゃないのぉ?」

「あぁ?」

「殺るかい?あんたが勝つ見込みなんてゼロだけど」

 

 

 いつか殺したい相手。それがお袋だ。

 他の研究者は怯えまくってるが、これ俺とお袋との挨拶がわりみたいなもんだ。

 

 あまり気にして欲しくない。そんなこと言われても無理があるか。

 

 

「…………あ、検査終わったから勝手に帰って良いわ。暴走以外に異常なし。これからも任務を全うしていくように」

「わかったよ……『開門』『自在の去腕』」

 

 

 右腕が白く、透明に変わっていく。手首に白い輪。手のひらの中心には赤い目。

 

 この腕の特徴としては、ある程度ならなんでも出来る汎用性。

 

 大きくしたり、剣や槍のように形を変えたり、光線も撃てる。その光線のエネルギーを使って空も飛べる。

 

 多彩ではあるけども最強じゃない。

 

 他のホムンクルスはその再生力を生かして剣を極めたやつや、エネルギーを加工して様々な遠距離攻撃を産み出したやつなど『1つを極めること』が最強なんだと思う。

 

 俺は器用貧乏なだけだ。そこにセンスや経験なんて欠片もない。

 

 

 

 腕を使い宙に浮く。研究者に礼を言って窓を開ける。ここから家まではそこまで遠くない。

 多少疲れるけど……飛んで帰ることにしよう。

 

 今日はゆっくり寝たい……。

 

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