幻の郷の人造人間 作:古木
3000文字突破しております。
なんであいつらが……
研究員になにやら説明を受けているようだけど……。
「お袋説明しろ!あいつらはただの一般人だろうが!なんで研究所に連れてきてんの?!ホムンクルスと人間の区別すらつかなくなったんか?!」
この研究所は医薬品研究所として書類上存在している。
一介の医薬品研究所が生体実験してるとバレようもんなら……最悪死刑か?懲役10年20年程度ではすまないだろう。
残ったホムンクルスは解剖やら科学実験に使われる『物』に成り下がる。絶対やだ。
「落ち着けワトソン君」
「誰がワトソンだ!」
「あぁ、もう分かった。めんごめんご。これでいい?」
「言いわけねぇだろ。説明しろ。今すぐにだ」
お袋は渋々といった表情で話始めた。
「……穴の向こう側にある世界って知ってる?」
「……『穴の向こう側にある世界』?」
バグが出てくる穴のことだよな?その穴の向こうに世界があるだと?
……初めて聞いた。
……携帯からデータベースにアクセスして…………でも載ってない。
「載ってないのは私が書くのを忘れてたからだ。許せ」
「……いいから話せよ」
「分かったからそう睨むな。
穴の向こう側にはこちらとは違う世界が存在していることが判明した。確率としては8割。その証拠に穴から吐き出された何かの紋章……これだ」
パネル画面に画像が表示される。
……文字?ルーンに近いか?……魔術的なものだと?
「あんたも魔術的なものと考えてるかい?」
「……違うのか?」
「半分正解で半分不正解。……この答えも間違ってるかもしれないが」
「?」
「……魔術科学とでもいえばいいのか……その類いの技術が、石ころに記憶を紋様として付与したもの。私はこれを『ログ』と呼んでいる」
「『ログ』……」
何者かの記憶が、紋様として石ころに内蔵されている……。
「このログに内蔵している記憶を、人間……または他の生物にコピーさせれば、それだけで戦う力が手にはいる。そんな代物よ」
……まさかお袋っ!
「あいつらを戦わせるために研究所に呼んだのか?!」
「当たり前じゃない。ログの波長にあう人間を探したらあの子達だったんだもの。それに記憶の内容を見たけど、どれも戦闘用なんだもの。彼らは有能な兵士になってくれるわよ」
このクズがっ!!
「……ここまで腐ってるとは思ってなかった。……月音」
「あら。本名知ってたのね。というより、私だって驚いてるのよ?『自分の造った子供達』よりも『強い人間』が生まれるとは思ってなかったから」
……今なんつった?
「……ホムンクルスよりも強い?」
「そう、強いの。圧倒的に。私の子供達が霞んで見えるくらいに」
ハンマーで頭を横殴りされたようだった。
ついに来てしまったのだ。人間だけでバグを対処できる時が。
俺達の存在価値が、0になった……。
「……」
「お、落ち込まないでよ。最終的には処分されるけど、それはまだ少し伸ばせるし……」
『処分』
犬や猫を殺すのと同じ。
使われたあげくに死ぬ。守ってきたはずの人間に。
それはあまりにも非情で。残酷で。
泣くことすら出来ずに、俺だけ時間が止まったような感覚だった。
「そうね~……喰われたときのリスクはあるけど、使えるものを使わないのはおかしいじゃない?ほら、ゲームと一緒よ!弱い味方よりも強い味方の方がいいでしょ?これで納得してくれる?」
…………こいつには造った側としての気持ちというものはないのか?
そして、あいつらはお前と同じ人間なのに、あいつらを『物』扱いするのか。
…………この外道が。
「…………」
「……怒っちゃうよねー……こりゃどうしたもんかなぁ……。あの子たちにお別れの挨拶でもやっとく?」
「黙ってろ」
「はいはい……あ。言っとくけど、行くってあの子たちがいったんだからね?誘ったのは私だけど強制して連れてきた訳じゃ」
「黙ってろつったろゴミ」
「おおう。怖ぇ……」
…………ここには居られない。あいつらのところへ行かないと。
「……あっ!逃げた!」
月音に構ってる暇はない。構う義理がない。
俺は手を使い、研究所へ急いだ。
「俺達にしか出来ないことだと?」
「そう。君達にしかできない。どうか、世界を救ってくれないか?」
目の前で頭を下げる研究所の偉い人。
俺達5人が世界を救う?そんなの冗談に決まってる……そう思っていたのは数分前まで。石ころを手にかざしたら、俺の手から光の剣が出るようになったんだ。信じない訳がない。
そして、バグとバグが生み出した『ホムンクルス』によって世界が危機に瀕している。
一人の人間として、やらない選択肢はない。
俺達は完全に信じた。俺達が『五英傑』の末裔だということに。
「やります。な?みんな」
「ですね。これも神の思し召しであり試練でしょうし」
「そうだなー。女の子にモテるならやってやるよ」
「……私も松谷君のことを守れるなら、それに越したことはない」
「あ!守るのはお金持ちである私ですよ!」
「金は関係ない。大切なのは気持ち」
「うぐっ……確かに」
「…………けど、なにか嫌な感じ」
この力は気持ちの強さで強くなったり弱くなったりするらしい。
俺で言うと、光の力が大きくなって剣が強くなるような。
やっぱり気持ちってすごいんだな。
「ありがとう。本当にありがとう。君達の活躍を期待している」
「「「「はい!」」」」
「…………」
俺達の戦いが始まると思うと……なんだかワクワクしてくる。
地球を救う。ヒーローみたいでカッコいい。
これからの日常がより楽しいものになるだろう。本当に楽しみだ。
バゴォォン!!
「このクズどもがぁぁあ!!」
着いた直後に壁をぶっ壊した。どこだ!あいつらは……っ!
「15号?!」
「……てめぇこいつらになに吹き込みやがった!!」
「松谷……君?」
目の一番に入ったのはチビ……安藝だった。
「安藝!無事か?何かされなかったか?」
「……不思議な何かをもらった」
「ちっ……遅かったか……!とりあえずここから逃げ」
「こいつだ……!こいつが人間を殺す怪物『ホムンクルス』だ!」
「…………は?」
……目の前の研究員、なんつった?俺が人間を殺す……怪物?
………………ホムンクルスも敵だって教えたのか?!
「お前っ!今まで人間を守ってきたのは誰だと」
「松谷…………お前、ホムンクルスなのか?」
「っ?!」
問いかけたのは壁島だった。信じてるのか?こいつらの言葉を……っ!
なんの知識もないことを良いことにこいつらに騙されてるってのかよ!!
「壁島、確かに俺はホムンクルスだ。今まで黙っていたのは謝る。けど騙されるな。ホムンクルスは決して人を」
「『襲う』……だよな?」
「違う!!俺達は人を襲わない!!逆に人を守って」
「松谷さん…………」
「っ…………」
…………なに慈悲深い目で見てるんだよ、清子。その目は俺に向けるものじゃないことぐらい分かってるだろうが……。
「神は……時に残酷ですね。しかし、それが核心へと迫る導きなのかもしれません」
「お前も……」
ハンサムは俺を睨み付け、ボンボン女は口元を両手で押さえている。信じきれてないようだ。
「なぁ……信じてく」
「殺せる」
「……は?」
「松谷君が敵なのだとしたら……殺したら遺体をずっと私のものにできるじゃない!何て素晴らしいんでしょう!」
…………もうダメだ。ここにいたら死ぬ。殺される。強化されたバグよりも強いヤツが5人が相手なんて、戦ったら死だ。
逃げよう……どこか遠くへ……っ!
「私も連れてって……」
「……へ?」
逃げようとした俺の手を掴み、そう言った少女がいた。
「安藝……?」