とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

62 / 83
   お ひ さ し ぶ り で す !!

私が小説のデータが消えたり、某ネズミーアプリで遊んだり、マイクラで遊んだり、仕事が大忙しの間に原作のコナンではなんだかとんでもないことになっているようで…RAMさんの正体も判明したようですが、果たしてそこまで行くのに何年かかるのだろうか…。

ちなみに、今年の映画も、見に行きます。

それでは、久しぶりの小説ですが、どうぞ!


第28話~容疑者・毛利小五郎・前編~

新一からコナンへと戻った翌日。

 

小学校の授業も全て終え、またいつもの日常へと戻ったその帰り道。探偵団達と共に下校する道すがら、コナンは一度立ち止まり、隣を歩いていた哀へと笑顔で手を出す。その近くを歩いていた咲もなんだと気になり歩みを止めた。

 

「…なに?」

 

「アポトキシン4869の解毒剤だよ。まだあんだろ?ちょーだい?」

 

その言葉を聞き、哀は眉を顰め、咲は苦笑いを浮かべた。

 

「いーやーよ。事件に遭遇すると見境なしに大立ち回りをやらかす推理フェチさんには、とてもじゃないけどあげられないわ」

 

そう言って歩き始める哀と咲に苦笑いを浮かべるコナン。

 

「わーっるかったよ。次からはなるべく自重すっからよっ!」

 

「それ、次も自重出来ないの人間が言う事だって知ってるか?」

 

「うっせ」

 

咲の呆れを乗せた言葉に拗ねた様にコナンが返す。そうして2人が哀を見つめれば、哀は口を開く。

 

「…言ったはずよ、アレはあくまで試作品。あんな不完全な薬を投与する訳にはいかないわ」

 

「確かに。次は、本当に死ぬ可能性もあるしな」

 

「やっぱ白乾児の成分だけじゃ完成品は無理って訳か…」

 

「ええ。せめて薬のデータがないとね…まっ、正体がバレなかっただけでも良かったと思って、我慢するのね」

 

「ああ、クソッ!こんな事ならさっさと蘭に言うこといっときゃよかったぜっ!!」

 

そうして悔しがって歩いていくコナンを静かに見つめる哀。そんな哀の姿に咲が首を傾げて見つめればクラクションが鳴らされる。

 

1度だけなら兎も角、2度3度、それがだんだんと近づいてきた為に哀と咲、それからコナンが振り向けば、とても見覚えのあるビートルが徐行し路肩へと止まる。

 

それを見て子供達は笑顔を浮かべる。

 

「「「あっ!博士!!」」」

 

そうーーこの日は、コナンを除いた全員で杯戸町の室内プールで泳ぐ日なのである。

 

「コナンくん、本当に行かないんですか?」

 

「波があってイケてるぞ!!」

 

「悪いな、まだ風邪気味なんだ…というか、俺よりも本当に大丈夫なのかって心配なのは咲だけどな」

 

コナンが心配そうに咲を見る。

 

ーー実は、咲はその耳の良さの関係上、耳がとても敏感で、水に入ることが出来ないのだ。

 

「水にさえ入らなければ、問題ないさ」

 

そうして最後にコナンへと「また今度!」と挨拶をして、車は去っていった。

 

ーーその車の中。

 

「…フッ」

 

哀が笑みを浮かべて外を眺め始めるその姿を見た子供達3人と咲は、珍しいものを見た様に目を見張る。

 

「ご機嫌ですね、灰原さん」

 

光彦の言葉に、まるで自分のことの様に笑顔を浮かべる歩美。

 

「きっと、何か良いことがあったのよ!」

 

「今日の給食、カレーだったからな!」

 

「元太くんとは違いますよ」

 

「ェッ」

 

光彦の言葉に、密かにカレーで喜んでいた咲はショックを受け、光彦も喜んでいたという言葉を聞き逃した。

 

 

 

慣れた帰り道を1人歩き、事務所へと帰りついたコナンは不景気な顔で事務所を見上げ、溜め息を吐く。

 

(…またここから出直しって訳ね。あぁ~、もう夏だっていうのに、俺には当分、春は来そうにねーな…)

 

事務所の階段を上がるコナンの背中には哀愁が漂っていた。

 

 

 

***

 

 

 

数日後。

 

軽井沢へとやってきた小五郎一家は。小五郎はというと…。

 

「ピーチに!メロンに!!さくらんぼ!!!やっぱ夏はフルーツ、食べごろっすなぁ…」

 

スケベな目をプールに夢中な女性たちに向けつつ、MDカセットで音楽を聴いていた瞬間ーーその耳に、爆音が襲い掛かる!!!

 

勿論そんなことになれば、耳のいい咲だろうとそうじゃなかろうと関係ない。小五郎はその耳に突如として攻撃をしてきた愛娘である蘭に気づくが、そんなこと関係ないとばかりに更に音量を上げ、遂にはその爆音が周囲に聞こえるほどになり、小五郎はイヤホンを外すのも忘れてその場で暴れ転げる。

 

蘭の近くにいたコナンもまた爆音の被害にあい、両耳を塞いで蘭の小五郎への仕返しが終わるのを待つ。

 

それが終わり、小五郎が改めて娘の名前を呼べば、冷たい態度をみせたまま。イヤホンを外し1度、気持ちを切り替えるために首を振り、怒りのままに蘭に対して怒鳴る。

 

「なんってことを!!?」

 

そんな父親に対して不機嫌な顔のまま、先ほどまで父親が付けていたイヤホンをかざして詰め寄る。

 

「なーにが『軽井沢のホテルに、避暑がてら泊りにいかねーか?』よ!自分だけ海パンなんか持ってきちゃって」

 

長年連れ添えば小五郎の思考など分かりやすく、2人とも、小五郎の目的がホテルのプールであることを理解した。

 

そのまま離れ始める2人。蘭は音楽プレイヤーごと離れようとすれば、小五郎が声をかける。

 

「おい…それ、まだ途中…」

 

しかし、それに拒否の反応を返す蘭。元々の持ち主である蘭が小五郎に貸すことを拒否すれば、誰も強くは言えない。

 

そもそも、今この場に小五郎の味方は1人もいないが。

 

「このMD買ってくれたの、お母さんだし?」

 

その一言に顔色を悪くし固まる小五郎。しかし、小五郎を放って歩き始める2人に置いていかれるわけにもいかず、慌てて追いかけ、服を着てプールから離れる。その際、娘に言い訳は欠かさない。

 

「仕方ないだろ?毎日毎日、事件だらけでストレス溜まってんだから!」

 

その言葉だけなら同情が集まるが、2人は騙されない。なんだったらコナン自身は、その分寝かせてるのだからと苦笑い。

 

蘭からの説教を受けながらホテルの中を歩く。

 

「お母さんに悪いと思わないの?」

 

売り言葉に買い言葉。蘭の言葉に意地なのか、引き攣った顔のまま小五郎は返す。

 

「フンっ!アイツだって分かりゃしねーぞ?今頃、わっかーい男に熱を上げてっかもよ?」

 

そこで蘭が唐突に足を止め、その娘にぶつかる形で足を止めた小五郎。訝し気に蘭を見れば、顔を青くして服屋を見ている。その視線の先を見れば、今度は小五郎も驚愕した。

 

ーー母親であり、別居中ながら妻である英理が、知らない男とショッピングをしている姿が、そこにはあった。

 

それはもう楽しそうに男と話し、男も優し気な目を英理に向けている。

 

英理が男の首にネクタイを合わせて確認した辺りで現実へと意識が戻った蘭が驚愕から叫ぶ。

 

「お母さん!!?」

 

その声に気づき、英理と男性が外へと視線を向ければ、そこにいるのは大事な娘と別居中の夫。

 

「!!うっそ…どーしたの?貴方達」

 

 

 

***

 

 

 

場所を替え、5人が移動したのはホテル内にあるカフェテリア。そのテーブル席に座り、注文品であるオレンジジュースを飲みながら、ジト目で小五郎と蘭が英理を見つめ、英理は事の成り行きを説明するが、2人とも、懐疑心から納得しない。

 

「だから言ってるでしょ?弁護士仲間と軽井沢に遊びにきただけだって!」

 

「フンっ、じゃあさっき買ってたネクタイは?」

 

小五郎が嫉妬を隠しもせずに煙草を吸いながら問いかければ、英理は動揺する。

 

「あれは知り合いに頼まれて、選ぶのを彼に手伝ってもらっていたのよ!…そうよね?」

 

そこで何とか理解してもらおうと、同席していた男性『佐久(さく) 法史(のりふみ)』に声を掛ければ、佐久は笑みを浮かべた。

 

「あれ、そうだったんですか?…てっきり、僕へのプレゼントだと思いましたけど?」

 

その返しに頬を赤らめる英理に、いたずらが成功した子供の様な笑顔を浮かべる佐久。それが嬉しくない小五郎は嫌味で返す。

 

「フンっ!ガキじゃあるめぇし、1人で選べねぇのかよ」

 

勿論、それにカチンときた英理も、その喧嘩を買う。

 

「あら、悪かったわね」

 

それに頭を抱える蘭と、苦笑いのコナン。

 

そんな重い空気の席に声が掛かる。

 

「なるほど」

 

その声に気づき全員がその声の主に顔を向ければ、向けられた女性『碓氷(うすい) 律子(りつこ)』は笑顔を浮かべる。

 

「№1の女王様も、旦那が絡むと唯の庶民に戻っちゃうんですね」

 

笑顔で含みのある言葉を英理に投げかける。その意味を理解できない蘭とコナンは首を傾げる。

 

「女王様だって」

 

コナンが蘭に確認をとるが、彼女自身も知る話ではない。そんな2人を見て、碓氷が説明してくれる。

 

ーー如何なる者も寄せ付けない、法廷での凛とした態度

 

ーー裁判長をも圧倒する弁論術

 

「付いたあだ名が『法曹界の女王(クイーン)』」

 

「ちょっと、やめてくれない?そう言ってるのは貴方達だけでしょ?」

 

「ーーいやいや、検察の方も漏らしていたよ。『妃さんを相手に回すと、まるで自分たちが女王に歯向かう逆賊のような錯覚に陥る』とね!」

 

そこで割り込んだ少しふくよかな男性『塩沢(しおざわ) 憲造(けんぞう)』がノリ良く返しながら、英理の凄さを語る。

 

勿論、その話を理解できない年齢ではない蘭は関心の声を上げ、英理は照れた様子を見せる。そしてコナンは英理との過去を思い出し、その恐ろしさも理解しているがために納得した。

 

「でも今話題の女弁護士№1は、話題のあの事件を2審で逆転し、最高裁まで持ち込んだ君のほうじゃないのかい?」

 

「あんなの、勝って当たり前ですよ!」

 

そんなやり取りをする碓氷と塩沢の後ろを通って会話に参加する男性『三笠(みかさ) 裕司(ゆうじ)』は、引き攣った笑顔を浮かべている。

 

「すみませんね、勝って当たり前の事件の1審を、私が担当したばかりに敗訴にしてしまって…」

 

それに気まずい様子で同じく引き攣った笑みを浮かべる碓氷。

 

「あ、いえ、そんな意味じゃ…」

 

その空気を払拭するために、英理の肩をつかむ。

 

「あんな事件に勝ったぐらいじゃ、まだまだ女王様の足元にも及ばないって意味ですよ」

 

「もう、やめてったら」

 

碓氷の言葉に拗ねたような反応を返す英理。

 

「しかし、別居中とはいえ羨ましいですな。無敗の女弁護士に、迷宮なしの名探偵のカップルとは!」

 

その言葉に天狗になる小五郎。

 

「いやぁ、傲慢稚気で高飛車な女王陛下を妻に持つ、唯のしがない男っすよ!」

 

その余計な一言が気に障らない訳もなく、目元を吊り上げる英理。

 

「…そうね。だったら私は、人の粗を探すことに長けている、姑息で不潔で女に見境のない名探偵さんを、人生の伴侶に選んでしまった馬鹿な女ってところかしら?」

 

先ほどまでの和やかな空気は一変し、嫌味を言いあう2人を中心に、氷河が生まれていく。

 

そんな空気を変える男、佐久。

 

「たくっ、無理しちゃって。毛利さんが解決した事件の記事、ひとつ残らずスクラップしてるじゃないですか」

 

その言葉が予想外だったらしく、目を見張った小五郎と、焦りを見せる英理。

 

「ちょ、ちょっと!!」

 

そこに便乗する娘、蘭。

 

「じゃあお父さんと一緒だ!お父さんも、お母さんが担当した裁判の記事、夜中にこっそり見てるのよ!」

 

娘の言葉に英理は頬を赤らめて驚き、娘の言葉にあからさまな動揺を示す小五郎。

 

その態度が嘘ではないことを明確に示しており、2人は視線を互いから逸らした。

 

「まぁ折角、軽井沢に来たことだし、今夜は一時休戦して、皆で仲良く飲みましょう!」

 

塩沢からの誘いに、既に顔が真っ赤な2人。

 

「…英理が嫌じゃなきゃ、俺は構わんが」

 

「わ、私は、別に…嫌だなんて…」

 

そんな2人の様子に頬を赤らめて期待を示す蘭。そこですぐにバーへと移動するために全員がカフェテリアを出る。

 

そのバーは同じ階にあり、少し歩けば見える場所。そこに移動する途中、エレベーターが止まり、降りてきた人物を見て毛利一家とコナンが驚き、3人グループの1人ーー修斗は視界に入った瞬間に天を仰いだ。

 

「し、修斗さん!?なんでここに!!?」

 

「それはこちらも聞きたいことなんだよなぁ」

 

修斗のそんな反応が珍しいらしく、一緒に来たらしい見覚えのない、クリーム色の髪色を持つ約160㎝の女性と、雪男と同じくらいかほんの少し背が高いだろう男の子が修斗と毛利一家を見比べている。

 

「毛利さん、お知合いですか?」

 

塩沢が代表して尋ねれば、苦虫を嚙みつぶしたような表情をする小五郎。

 

「けっ、知り合いですけど、生意気な小僧でね!…んで?オメェは何でここにいんだよ」

 

「兄妹で旅行ですよ。東京は暑いからと涼しさを求めてここに…ああ、紹介が遅れました。俺は北星修斗といいます」

 

その名字で気づいたらしい全員だが、修斗はそれににこりと作り笑いを浮かべて隣の女性の紹介を始める。

 

「彼女が義妹の『柚木(ゆずき) (かすみ)』」

 

紹介された霞はふんわりと笑って頭を下げる。

 

「そして彼が義弟の『川下(かわした) 勇気(ゆうき)』」

 

勇気は眠たげな目のまま気だるげに頭を下げた。

 

性格がバラバラな兄妹、顔も名字もバラバラ。この時点で不穏な気配を察知した全員、名字に対して突っ込むのをやめた。何せこの後、楽しく飲み会をするのだから。

 

「ーーなるほど、皆さん、今からそこのバーにいくんですね」

 

そう考えた途端、修斗が笑みを浮かべて全員の行く先を当ててきた。それに驚いた弁護士組をじっと見つめる修斗にコナンが声を掛ける。

 

「ねぇ、修斗兄ちゃん?」

 

「ん、なんだ?」

 

「なんで行く場所が分かったの?」

 

その子供らしい姿をからかいたい衝動に蓋をし、笑顔を浮かべる。

 

「いや、この先ってもうバーしかないだろう?エレベーターに乗る可能性もあるけれど、それにしては皆さん、エレベーター側にはいない。ならこの道をまっすぐ進んだ先にあるバーに用がある…ですよね?」

 

修斗は首を傾げて問いかけてくる。その笑みを見た弁護士組は肝が冷える思いがした。その、なにもかもを見通しているかの様なその目から、目を逸らして逃げるしかなかった。悪いことはしていないはずなのに、なぜ…そう戸惑う全員。

 

「…皆さん?どうしました?」

 

修斗が苦笑いで問いかければ、塩沢が一番に再起動し、小五郎達をバーに連れて行こうとする。それを見て修斗が2人を連れて離れようとした瞬間、碓氷が声を掛けてきた。

 

「あ、あの!」

 

「…はい、なんでしょう?」

 

重い溜め息をグッと堪え、笑みを浮かべて対応すれば、碓氷がその腕に腕を絡ませる。

 

「あの、修斗さんでしたっけ?一緒に飲みません?」

 

その誘いを聞き、霞と勇気に目だけで確認をすれば、2人は頷く。

 

「では、ご一緒してもいいですか?」

 

「いいですよ!楽しく飲みましょう!!」

 

そうして歩き出す一行の後ろをついて歩く3人。そこで修斗が霞と勇気に口を開く。

 

「2人とも、酒に弱いんだから呑みすぎるなよ?」

 

「心配しなくても呑まないよ。仕事と趣味に影響が出る」

 

「お前、趣味をここでもするのかよ…」

 

「なに、悪い?」

 

勇気が不機嫌顔で修斗を見れば、やりすぎるなよとだけ注意する。続いて霞を見れば、同じく呑みすぎないように気を付けると約束してくれた。

 

「でも、修斗君。どうしてそんなことを言うの?」

 

「いやー…酒に弱いのに酒が大好きな奴がいてな…」

 

 

 

***

 

 

 

ーー東都・警視庁。

 

「ーーくしゅんっ」

 

事件の資料のまとめを作っていた瑠璃が唐突にくしゃみをし、その近くにいた松田が近づいた。

 

「おい、風邪か?」

 

「ちーがーいーまーすー。至って健康体です。…どうせ、修斗あたりが話題にでも出してるんだとおもいます」

 

「たまに思うんだが、アイツ、シスコンなのか?」

 

「シスコンというか、ファミコンですファミコン。両親を除いたファミリーコンプレックス」

 

「それ、除いちゃいけねーとこ除いてねーか?」

 

近くで聞いていたらしい伊達もやってきて苦笑いで会話に入れば、それがうちなのだと言うしか、瑠璃には選択肢がなかった。

 

 

 

***

 

 

 

飲み会が始まって数時間後、霞は苦笑しながらウーロン茶を飲み、勇気はゴミでも見るような目を向け、修斗は頭を抱え、機嫌が最底辺にまで落ちてしまっている英理を見る。その英理と勇気の視線の先、そこにはーー。

 

「うははははーーー!!!ぼ~くちんも、りつこしぇんしぇいのかぁいいこえでべんごしてほしいなぁ~!」

 

「うふふふ、ちょっと毛利さん!」

 

「んははぁ~ん!」

 

そんな父の醜態に耐え切れなくなった蘭が小五郎の名前を呼ぶが、小五郎は碓氷にデロデロでメロメロ状態。

 

「…なるほど。あれが悪酔いしてベロベロに酔った人間の醜態なんだね。よーっく分かった。これは嫌だ。もともと僕、お酒なんて呑まないけど、今後も呑まないといけないような場じゃないと呑まないことにするよ」

 

「…そうしてくれ。一応、擁護させてもらうなら、アレでお持ち帰りとかそういう関係とか、本当に大切な人でないとしない人だから、そこは安心してくれ」

 

「修斗兄さんの見解に間違いはないだろうし…ま、そこは信じるよ」

 

そこで英理が席を立ち、バーを出ていく。更にその後を追って出ていく蘭。そんな2人を見送り、頬を引きつらせてジト目でコナンは小五郎を見る。

 

(この酔っ払い…)

 

「…呑む時が来たら、飲酒の量を注意しろよ。相当強い奴じゃないとこうなるからな」

 

修斗が遠い目をしながら話す忠告に、コナンは察した。

 

「ああ、気を付けるぜ…」

 

そんな修斗の近くに寄ってきた霞。修斗が顔を向ければ、声を潜めて言う。

 

「…おひらきになったら、勇気を部屋に戻した後、一緒に外に来て。聞きたいことがあるの」

 

「…分かった」

 

その話はもちろんーーコナンにも聞こえていた。

 

 

 

バーを出た英理の名前を呼んで引き留める蘭。その娘の声に漸く足を止めた英理。しかし、振り向く様子はない。

 

「ちょっと待ってよ!!お父さんが酔っぱらったら、あーなっちゃうことぐらいお母さんも知ってるでしょ?それに…今日はお母さんだって、男の人と…仲良くネクタイなんか…」

 

そこで思い出すのはお昼の衝撃的な出来事。父親である小五郎が女性にだらしないことはいつものこと。しかし、いつも小五郎一筋のはずの英理が楽しそうに佐久と買い物をーーネクタイを買っている姿。

 

大好きな母親のそんな姿を見れば、その心は推察できる。

 

「…そうね」

 

英理は蘭の言葉に同意を示しながら、先ほど買った、ラッピング済みのネクタイを悲しそうに見つめる。

 

「…こんなもの、買うんじゃなかったわ。自分の甘さ加減に腹が立って、頭がどうにかなっちゃいそう」

 

その英理の言葉を聞き、蘭は驚く。

 

「えぇ!?じゃあまさか、そのネクタイ…」

 

「えぇ、そうよ。明日は私たちの結婚記念日。…蘭もかわいそうだし、そろそろ許してあげようかと思って、あの人に贈ろうかと思ったけど…やめにして正解だったわ!」

 

そんな母を見ていられなかった蘭は、母に駆け寄り、ネクタイを取り上げた。

 

「じゃあ、貸して!!」

 

「あっ、ちょっと!?」

 

ネクタイを奪ったその足でUターン。そして母親を振り返り、叱咤する。

 

「私がお父さんに届けてあげるからッ!!」

 

「ちょっ…ちょっっっと待ちなさい!!!」

 

英理のその必死な叫びに足を止めて、恐る恐る振り返る蘭。そこには、少し顔を赤らめた英理がいた。

 

「…やっぱり、私が直接、渡そうかな…」

 

「……も~う!」

 

 

 

***

 

 

 

バーへと戻ってみれば、そこにいたのはコナンただ一人。コナンの話によれば、全員が飲み会をおひらきとして部屋へと戻ったという。小五郎も、酔っぱらったから部屋で寝ると伝言を残して帰ったらしい。それを聞いた蘭が英理を誘い、応援する姿勢を見せる。そんな2人にコナンは首を傾げるも、一緒に部屋へと戻る。しかし、そこはもぬけの殻。もしかしてと思い、碓氷の部屋を訪れ、チャイムを鳴らす。

 

「はい!…あれ、妃さん」

 

「夜遅くにごめんなさいね。もしかして、うちの人、来てない?」

 

「え…いらしてませんけど…」

 

「そう…」

 

「どうかされたんですか?」

 

碓氷の問いに、蘭が代わりに答える。

 

「父がいないんです。私達の部屋にも、他の3人の部屋にも…」

 

「修斗兄ちゃんたちの部屋が分からなくて、まだわからないけど…」

 

コナンが補足を入れる。そこでずっと考え込んでいた英理が推測を話す。

 

「もしかしたら、外に出て、ぶらついてるのかもしれないわね。あの人、風に当たるの好きだから。…あぁ、ごめんなさい。外を探してみるわ」

 

そこでコナンは思い出す。あの時の2人の話を。

 

「修斗兄ちゃんと霞お姉さんも、もしかしたら外にいるかもしれないよ?」

 

「えぇ?」

 

蘭と英理がコナンを見る。そこでバーでしていた2人の会話をすれば納得し、碓氷に再度、お礼と謝罪を返して、その場を去った。

 

 

 

外を歩きながら小五郎を探す。しかし、その姿は見当たらず、ホテル内へと戻ろうとしたときーー。

 

「ーーなんで、教えてくれないの!!!?」

 

悲しみが、3人にも伝わってしまうほどの悲しみの叫びがあたりに木霊する。それに歩みを1度止めて、すぐに声がしたほうを見てみれば、夏の植物が咲く場所へと出た。そこには、探していた2人ーー修斗と霞がいた。

 

「2人とも、いたね…」

 

「うん…だけど…」

 

「…少し、様子を見ましょう」

 

英理の言葉を聞き、話が終わるのを待つ。話は聞かない方向で行きたかったが、残念ながら聞こえてきた。

 

「だから、『優』は確かに見つけたけど、居場所までは知らないんだって…」

 

(『優』…?あれ、まさかこの話って、咲のことか…?)

 

コナンがそう察したとしても、話は終わらない。

 

「嘘だよ!!!修斗くんが、ようやく見つけた妹を、そんな簡単に見逃すはずも、見失うはずもない!!!…どうして?なんで隠すの!?」

 

「…信じたくない気持ちはわかるが、」

 

「わかりっこない!!!…私、わたしは…」

 

その声が徐々に涙声になり、泣き始めている。しかしーー修斗の表情は、コナン達に背中を見せているがために、分からない。

 

(そうか、『優』は一度も、家族には元の姿をみせてないしーー)

 

「わたしは、ただ、生きてる姿を、なにがあっても、じぶんをだいじにするっていう約束を…っ」

 

 

 

「ーー守ってくれてるんだって、しりたいだけなのにっ!!」

 

(ーー見せれないんだ)

 

 

 

それを理解したコナンは、少し苦し気に顔を顰めるが、首を軽く振って、あえて飛び出して大声で呼ぶ。

 

「修斗にいちゃーーーん!!霞おねぇさーーーん!!」

 

そんなコナンの行動に英理と蘭はコナンを窘め、修斗と霞は驚きからコナン達へと顔を向ける。

 

「…とにかく、ほら」

 

修斗が1度、霞へと振り向き、ハンカチで目元を優しく拭う。

 

「…あり、がとう」

 

「ああ…優のことは、俺が責任もって探すし、手紙が置かれてたらまた届けるから…そう、『立花』さんに伝えてくれないか?」

 

「……」

 

「不平や不満、それから俺への懐疑はあるとは思うが…頼む」

 

「………うん」

 

それを聞き、優しく霞の頭を撫でてやり、修斗は再度振り返る。

 

「ーーさて、申し訳ありません、お見苦しい姿をお見せしてしまって…」

 

「いえ…こちらこそ、お話を中断させてしまいごめんなさい。少し、聞きたいことがあるのだけど、うちの主人を知らないかしら?」

 

「?毛利さん?…いえ、知らないですが」

 

「…少し、待っててください。勇気にも聞いてみます」

 

修斗が携帯で直接電話して勇気に聞いてみるが、答えはNO。

 

『ーー僕が、あの酒臭い酔っ払いを、趣味に集中したいのに、入れると思う???』

 

「すまんかった、集中しててくれ」

 

電話を切っていないことを報告する。それに少し途方に暮れた様子を見せるが、再度、弁護士仲間に確認をとることになり、それに修斗と霞はついていく。

 

「ーーえ、毛利さんが、まだ戻ってこないって…それは、本当ですか?」

 

三笠の問いに、英理は頷く。ホテルの外、屋上、階段、他にも色々な所も探してみたがどこにも見当たらないという。

 

「…もう、夜中の2時ですね」

 

「勇気くんなら今が朝だって主張しそう」

 

「アイツ後で絶対に寝かす…」

 

修斗の決意にハハッと笑うだけに留めるコナン。そんなやり取りを他所に、塩沢から有力な話が出てきたーー曰く、碓氷が同じ階に部屋があるからと、一緒に部屋に戻ったらしい。

 

「……」

 

その言葉に反応する英理を他所に、霞は修斗を見て首を傾げるーー自分が知っている修斗は、どうしてここまで付き合ってくれているのだろう、と。

 

 

 

全員で移動し、碓氷の部屋までやってきた。しかし、その扉には、1度訪れた時にはなかったはずの札がノブにかかっていた。

 

「あれ?さっきはこんな札、かかってなかったけど…」

 

「さっき?」

 

コナンの言葉に塩沢が反応する。そこで、碓氷から小五郎はいないと伝えられたことを話す。

 

それにまさか、と塩沢は、自分が一瞬考えた邪な考えを否定するーーあの2人が、まさか、と。

 

その考えは、英理がかけた電話によってーー肯定されてしまうが。

 

「…電話の音、この中からするな」

 

修斗が眉を顰めて言う。英理からも間違いなく小五郎の電話音だと肯定され、蘭は信じたくない思いから、嘘だという。しかし英理は冷静に指示を出す。まず三笠にフロントからマスターキーを借りるように頼む。暫くして、ボーイを伴って三笠が戻り、ボーイに開けてもらった。

 

スタッフにお礼を言い、扉を開けようとすればーーチェーンが掛かっていて開かない。

 

「あら?チェーンロックしてある…っっっ!!?」

 

その先の光景に、英理は息を呑む。

 

 

 

ーー碓氷が、目を見開いたまま、倒れているのだから。

 

 

 

英理が思わず扉から離れれば、もちろん疑問に思わない訳もなく、佐久が問いかける。

 

「…どうしたんです?」

 

そして改めて、彼が部屋を覗けば、見えるのは英理が見たのと同じ光景。

 

「お、おいっ!?あれ、碓氷さんじゃないか!!?」

 

それに慌ててコナンが覗き込んで状況を理解。すぐにボーイにチェーンカッターを頼む。奇跡的にも中が見えていなかったらしいボーイは驚きながらも走って取りに行ってくれた。しかし、そんなもの、待っていられるわけもなく、佐久が扉にタックルし、扉を押し開け、その反動でチェーンも壊れた。佐久が慌てて中に入り、他の全員が恐る恐る見る。霞も見ようとするも、それは修斗に止められた。

 

「し、修斗君!?」

 

「お前は見なくていい…こんなもん、見ちゃいけない」

 

2人のやり取りなど気にしていられないコナン達は中へ入り、佐久が動揺から肩をゆする。しかし、彼女は反応を返さない。英理が佐久を止め、その首に掌を当てた。

 

「…霞、警察と救急に連絡を」

 

「いえーー呼ぶなら、警察だけでいいわ」

 

その言葉の意味の理解を拒否したかったが、英理から、決定的な一言が返ってくる。

 

「もうーー脈はないみたい」

 

「そ、そんな…」

 

「一体、どうして…」

 

その瞬間、ベッドからうなり声が聞こえ、その中から、目的の人物ーー小五郎が現れた。

 

「ァァァァア、ウッセェなぁ、さっきから……なんだ…」

 

その登場に部屋の中の状況を理解できない霞、そしてーー修斗以外は、信じられないような目で小五郎を見つめていた。

 

 

 

 

ーーチェーンによってカギを掛けられた部屋、

 

ーー床には碓氷の遺体

 

ーー密室の中には、唯一人

 

 

 

小五郎が寝ぼけた様子で布団から出ようとすれば、コナンが待ったをかける。彼が足を下ろそうとしたその足場にはーー凶器の可能性が高い、電話コードが落ちていたからだ。

 

碓氷の首には細い跡、これが凶器を示す証拠だった。

 

そのコナンの言葉に驚きで下ろそうとしていて足を上げ、部屋の状況をコナンの説明によってゆっくりとだが理解していく。しかし、彼からしてみれば、1つの疑問が残る。

 

「お、おい…なんで律子先生が…え、おい?殺害って、誰が??」

 

周りの人間を見て観察する小五郎の姿に、激昂を露わにする塩沢と三笠。

 

「貴方しかいないじゃないですか!」

 

「ど、どうして彼女を…!!」

 

「はぁッ!?」

 

訳が分かっていない小五郎を見かね、蘭が助け舟を出してもらおうと英理を頼るがーーそれは無常にも切られる。

 

「…刑法第199条、人を殺害したものは無期懲役または3年以上の有期刑、もしくはーー死刑」

 

「ェッ!?」

 

「お母さん!!」

 

その英理の厳しい姿に、流石のコナンも引いていた。

 

 

 

***

 

 

 

霞が呼んだ警察が到着すれば、現れたのは山村刑事。その姿を見た修斗は天を仰いだ。

 

「ふむ、ではこういうことですね?貴方のご主人が行方不明で、この部屋が怪しいと踏んで、ドアの前で電話を掛けた。すると案の定、ご主人の携帯の音が部屋の中から聞こえ、マスターキーでカギを開けて中へ入ろうとしたら、チェーンロックが掛かっていて、ドアの隙間からこの女性ーー碓氷さんが横たわっていたのが見えた」

 

遺体となってしまった碓氷を英理と共に見送った山村刑事は、説明を続ける。

 

「そしてドアを破って中へと入ったら、女性は既に息絶えていて、その時、ご主人がこのベッドで眠っておられたと…」

 

その説明に間違いは一つもなく、英理が肯定すれば、山村刑事はその主人が犯人だと断定してしまう。言い方もかなり軽いものであり、蘭が悲壮な声を上げる。

 

「そんな!…ちょっと、お父さんも黙ってないでなんか言ってよ!!」

 

そこで山村刑事はようやく気付いたーーそこにいたのが、毛利小五郎だということを。

 

ラッキーだという、この不幸が起こったはずの現場に不釣り合いな言葉に、霞が眉を顰めるが、修斗以外気づかない。

 

「いやぁ、名探偵である貴方がいれば百人力!!聞かせてくださいよ、この事件に対する、貴方の見解を!!」

 

山村刑事からの期待の眼差しには、答えたくとも答えれない。

 

「ーーそうね。犯行当時のことをじ~っくり話してあげればぁ?…ここのベッドで高イビキをかいていた名探偵さん?」

 

その衝撃の言葉に山村刑事は信じられないとばかりに小五郎を見る。

 

「え?ご主人??毛利さんが???…え、それじゃあ、貴方が犯人!?」

 

その事実に驚愕を表す。眠りの小五郎の推理ショーを見たかったらしいが、これではどうしようもない。小五郎自身も記憶にないことで犯人にされそうになっているこの状況に苛立ち、山村刑事に「知るかッ!!!」と叫ぶ。

 

兎に角、小五郎の立ち位置上、重要参考人ということで署まで同行することを警官が提案し、山村刑事が小五郎に判断を委ねた。そんな山村刑事に内心で修斗は呆れる。

 

(おいおい、重要参考人に意見求めんなよ…)

 

そこで漸く、修斗が呼んだ勇気がやって来るが、現場は既に解決ムードである。

 

「…ねえ、このムード何?なんで僕、大事な趣味を止められてまで呼ばれたの?」

 

「どうどう…」

 

「あーあ、推理ショーみたかったなぁ」

 

その空気を感じ取った塩沢と三笠は部屋から出ようとする。

 

「じゃあ、起訴前弁護は英理さんだね」

 

その聞きなれない単語に蘭が母に尋ねる。それに答えようとした塩沢だが、それより前に修斗が口を開く。

 

「…『起訴前弁護』というのは、不法な取り調べを受けないように、弁護人が付く制度だ」

 

しかし、英理はそれをパスするという。それに驚く塩沢と蘭、霞。

 

「さぁいしょから黒だと分かってる人間の弁護なんてごめんだわぁ」

 

(~~~~~っ!!)

 

英理の皮肉のきいた言葉に修斗は吹き出しそうになるが、その精神力によって抑え込む。勿論、表情は無表情のままだ。

 

「私の無敗の経歴に傷をつけたくないし」

 

その皮肉に鼻を鳴らして返す小五郎。

 

「ふんっ!こっちもハナから願い下げだよ。…下手に警察に顔出しやがったら承知しねぇぞ」

 

2人は互いに高笑いをする。そんな2人に蘭が焦りと悲しみから名前を呼ぶが聞いてくれない。

 

「ーーじゃあ、弁護人は僕が引き受けよう」

 

その2人の様子を見かねたのか、佐久が弁護人を引き受けるという。

 

「毛利さんが彼女を殺すとは信じられないしね」

 

その頼りになる言葉に蘭は安堵の吐息をこぼす。

 

そして、小五郎と共に去っていく佐久に頭を下げる蘭。しかし直ぐに英理に文句を言おうとしたが顔を背けられ、塩沢と三笠、そして修斗たちに部屋を外してほしいと頼む。刑事と話があるからと言えばそれに同意を示し、毛利一家と警官を除いた全員が出ていくのを見送る。そんな母に戸惑いを浮かべるが、英理が山村刑事に手袋を貸して欲しいと頼む姿にその戸惑いは強まる。

 

「…ちょ、ちょっとお母さん、なにをっ」

 

「ーー腑に落ちないのは次の三点」

 

手袋をつけながら話し出すのは、英理、そしてコナンも抱く疑問点。

 

「1つ目は、凶器に使われた電話コード。…酔って衝動的に殺したのなら、コードを引きちぎって使うはず」

 

ーーしかし、電話がずれている様子はなく、コードの両端も無理やり抜いた痕は見つからない。

 

「2つ目は、あの人の携帯電話。…態々、音が外に漏れるようにドア口に置かれていたのは、作為的なものをかんじるわ」

 

ーー事実、蘭もその音は聞いている。

 

「3つ目は、あの人の両手。…最後に私達が彼女に会ってから遺体を発見するまで、およそ40分。コードで殺害したのなら、両手にコードの痕が残ってるんじゃなくって?」

 

ーーしかし、違うと小五郎が手を振っていたとき、そんな痕は見当たらなかった。

 

「皮の手袋でもしていたのなら別だけど、そんなもの、この部屋にはなかったし…」

 

英理の鋭い観察眼に山村刑事が確かにと肯定する。

 

そんな推理を披露する母に、ここに残った理由を漸く理解した蘭。彼女自身も最初は怒りを覚えたが、小五郎が人を殺せる人間ではないことをよく知っているのもーー蘭の何倍も共に付き添ってきた、英理のほうがよく分かっていた。

 

「だったら、お父さんがお母さんに警察に顔を出すなって言ったのも、お母さんにここに残って無実を証明してくれってことだったんじゃ…!」

 

蘭が嬉しそうに、ベッド近くに置かれた電話周りを調べる英理に聞けば、小五郎は本当に英理の顔を見たくないだけではないかと言う。

 

その時、英理は気づくーー机の上に置かれたメモ用紙がちぎられていることに。

 

ちぎられた用紙の行方は、ゴミ箱を漁っていたコナンが見つけた。

 

メモ用紙はクシャクシャにされていたが、そこには確かに『ハヤシ 2』と書かれている。その筆跡も、碓氷の字であると英理が証言し、確実性が出てくる。

 

本来、これだけでは意味を読み取れないが、英理はそこで思い出す。今度、碓氷と組むことになっていた、『林弁護士』の可能性があると。

 

「『例の裁判』のことで連絡を取りたがっていたから…」

 

「『例の裁判』?」

 

山村刑事が首を傾げて問えば、英理は答える。

 

「今、話題になっている工場の汚水問題の裁判ですよ」

 

英理の説明によると、最初は英理のもとに依頼が来たらしいが、英理も塩沢も乗り気ではなかったらしい。佐久は刑事専門、とりあえずと碓氷と三笠が付くことになったが、1審で敗訴、2審でなんとか盛り返したらしいが、確実に勝つために、三笠の代わりに紹介してほしいと英理は碓氷に頼まれていたのだ。それで林弁護士を紹介したらしい。

 

「まだ林さんのことは彼女に伝えていなかったけど…でも、変ね。このホテルに泊まることを、林さんには伝えていなかったはずだけど…」

 

英理の独り言のような疑問に、聞いていたらしいボーイが「塩沢様から聞いたとおっしゃっていた」と言う。それに驚いた英理だが、その電話を碓氷の部屋に繋いだのは、説明をしてくれたボーイだという。

 

「あ、貴方なんですか、勝手にッ!」

 

「ち、ちょっと気になることがあったので、刑事さんにお伝えしようかと…」

 

「気になること?」

 

その気になることというのは、林弁護士からの電話が2度あったということ。1度目はキチンと繋がったらしいが、問題の2度目はというと繋がらず、事件現場まで様子を見に来たらしい。

 

「…2回ばかり」

 

「に、2回も!?」

 

「えぇ。…最初は呼び鈴を鳴らしても返事はなくて、きっとお休みになっていると伝えたのですが、林様に『風呂に入っているだけかもしれないから、もう一度見てきてくれ』と、頼まれまして…。そしたら、『起こさないでください』という札と一緒に、紙が貼ってあったんです」

 

その紙の内容にボーイは首を傾げたという。内容は『すみません お金はちゃんと払いますとお伝えください』という、歪な文字だったという。

 

「それ、林さんに伝えたんですか?」

 

英理の問いにボーイは伝えたと言うが、明日の2時の待ち合わせを4時に変えてほしい、と言おうとしただけであったらしく、林弁護士もひどく困惑していたという。

 

「…どういうことかしら。ゴミ箱に捨てられたメモは、彼女が林さんと2時に待ち合わせしていたってことだろうけど」

 

しかし、ドアに貼られていたメモの内容は、電話とは全くかけ離れた内容。

 

(もし、電話が通じなくなった段階で碓氷さんが殺害されていたとすると、ボーイが2度目に来た時にドアにかけてあった札とメモは、犯人がやったことになる)

 

しかし、これではまさに小五郎の冤罪を証明する間抜けな行動。それを何故、犯人はしなければならなったのか…。

 

コナンは、事件解決のために、考え続ける。

 

 

 

***

 

 

 

事件部屋から出てしばらくして、霞と部屋を別れ、勇気と部屋へと戻る修斗。その部屋の惨状に、うげぇと思わずこぼした。

 

「お前さ…ここ、ホテルなんだが?」

 

「知ってるよ」

 

「なら、なっっっっっんで、パソコン持ってきてんだよ!!!」

 

『仕事』と『趣味』の2つが出た時点で察してはいたが、しかし叫ばずにはいられなかった修斗は叫ぶ。

 

「別にいいでしょ?…やったのだって、あくまでこのホテルの監視カメラの『ハッキング』だけに止めたし」

 

「それ『止めた』っていうんじゃねーよあからさまな犯罪だろうが」

 

「まさに最初にあの子供ーー『江戸川コナン』の戸籍調査のために、僕にハッキングを教わりながらやった人が何言ってんの?」

 

勇気がジト目で問えば、拗ねたような反応をする修斗。そんな彼の様子に溜め息を吐くと、視線を合わせてーー問いかける。

 

 

 

「…兄さんさーーこの事件で、なに企んでんの?」

 

 

 

「ーー犯人の人柄調査、かな」

 

 

 

ーー彼は、完璧な笑顔で、そう告げた。




実は最後の勇気君と修斗さんのやり取り、ほんの少しだけセリフを買えただけの没案があります。

いや、この没案書いたらもうアウトですから、一瞬書いて、蹴落としました。気になる方いらっしゃいましたらおっしゃってください。返信蘭にでも書きますので(明日続きが出来上がればそちらに)←最難関
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。