超人SPは異世界でも余裕で守り抜くようです!   作:ほにゃー

4 / 8
第四話 超人たちへの指令

「さて、皆腹具合も落ち着いた頃だろう」

 

宴が終わった後、八人はあてがわれた家に戻り、暖炉に気をくべ、暖を取りながら塩で歯を磨く。

 

修身の準備を終えると、司は全員を集め話し合いを始めた。

 

「これから我々の身に起きた異なる世界に迷い込むと言う奇々怪々なトラブルに対し、どう対処するのか協議したい」

 

そう提案する司に六人は頷く。

 

「全員の肉体的・精神的疲労は回復もした。動くならいまだ」

 

「俺も同じだ。この世界の雰囲気も把握した。頃合いじゃね?」

 

「異論有りませんわ」

 

全員が頼もしくそう言う中、一人だけ毛皮の布団に丸まり、話に参加していない者がいた。

 

それは暁だった。

 

「暁ちんもいい加減話に参加しなよぉ~」

 

見かねた忍が布団を引っぺがす。

 

すると暁は立ち上がり、半泣きになって反論する。

 

「いやいやいや!むしろなんで君らはそんなに冷静なのさ!宴なんかやっちゃってなに馴染みまくってるのさ!?猫耳に犬耳にエルフっぽいのまでいるんだよ!?こんなの、ありえないじゃないか!?」

 

「でも、ありえちゃったから今あたしたちここに居る訳だし」

 

「つーか別にありえなくはねぇだろ。別の世界の存在を否定できた人間なんて今まで一人もいない訳だし」

 

「動揺する気持ちは分かるが落ち着きたまえ。ありえないと否定した所で目の前の現実は変わりはしない。それにアカツキも墜落現場は見ただろ。あの状態で我々が生きていることそのものがありえないのだ」

 

司の言葉に暁は何も言えなかった。

 

飛行機の墜落現場はそれは酷い物だった。

 

修斗も自身の目で見るまでは信じられなかったが、見た瞬間、その有り得ないと言う事を否定した。

 

飛行機の機首は赤土が剥き出しになってる谷の壁にめり込み、胴体は骨組みしか残っておらず主翼と尾翼は千切れてバラバラになっていた。

 

あの状態で人が生きていることは物理的にありえなかった。

 

だからこそ、ありえないを否定で来たのだ。

 

「今、我々がすべきことは耳を塞ぎ、目を瞑ることではない。この見知らぬ世界を是が非でも息抜き、元の世界に帰る為の方法を探すことだ。違うかね?」

 

司に正論を矢継ぎ早に言われ、暁の気勢が衰える。

 

そんな暁の方を忍は叩き言う。

 

「大丈夫だよー。暁ちん一人で迷い込んだならともかくここにはあたしたちも居るんだから。皆で力を合わせればなんとかなるって!」

 

「……わかったよ」

 

その言葉に元気を付けられ、暁はようやくこの事態を受け止めることが出来た。

 

「では、本題に移るが、今忍が言ったように、この事態に対処するには我々八人全員の力が必要だ。この世界に対する知識が殆どない状態で個人個人バラバラに動いていては効率も悪い。そこで諸君には私の指示に従ってチームとして動いてもらいたい。構わないだろうが?」

 

「拙者は考えることが苦手故、かまわんでござる」

 

「わたくしも異論はございませんわ」

 

「僕も構わないよ」

 

「あたしも全然OK」

 

「まぁ、妥当な人選だろーな」

 

「お前以外に適任はいない。俺も賛成だ」

 

林檎も頷いた所で、司が話を始める。

 

「ありがとう。では、基本の方針だが暫くはこの村に留まろうと考えている」

 

「ええ!?」

 

司の提案に異論の声を上げたのは暁だった。

 

「な、なんでさ!?すぐにでも帰る方法を探し回るべきじゃないの!?」

 

「プリンス。そりゃ俺は反対だ」

 

暁の意見に対して、勝人がすぐさま反論する。

 

「他の所の住人がウィノナさんたちみたいに親切とは限らねーし、何より俺たち自身がこの世界の事を知ら無さ過ぎる。あてもなし、知識も無し。生活基盤も無し。無い無い尽くしのスッポンポンで見知らぬ土地をあてもなく徘徊するのはリスクがデカすぎる」

 

「そうですわね。今分かっているのは、文明水準が地球史の大航海時代……中世に似ている、ということぐらいですもの」

 

「だがそれも、あくまで似ているってだけだ。事実、この国には竜もいれば魔法もある。似ているだけの情報じゃあてにはならない」

 

「だねぇ。ま、正直トイレの文化があったのは助かったよー」

 

「それな」

 

「わかりますわぁ」

 

「確かに有難かった」

 

「欲を言えば風呂も欲しかったでござるな~」

 

「まぁ、つまりはそう言う事だ。逸る気持ちはわかるが、当面はエルム村の住人の生活圏の中で探索を行う。分かってくれたかね、アカツキ?」

 

「う、うん。分かったよ」

 

「結構。では、この方針の元我々のやるべきごとを整理する」

 

司はそう言い、指を三本立てる。

 

「やるべきことは大きく分けて三つ。一つはこの世界の情報収集。ショーニン(勝人)も言ったが、我々はこの世界についてあまりに知ら無さ過ぎる。この国、フレアガルドの文化や歴史、政治、法律や使用通貨から日常品の価格相場、宗教、そして魔法。まずはエルムに拠点を置き、この国の様々な情報を収集することに努める。二つ目は元の世界に帰る方法を探すことだ」

 

「今の所の手掛りはウィノナさんが言ってた“八人の勇者”の話か」

 

「それなら一つ目の情報収集と並行して進められるだろう」

 

「うむ。この世界の事を理解できる様になれば、情報収集の比重をこちらに移していく。そして……三つめだが、これが一番大事な事だ。この村の財政を立て直すことだ」

 

三つめのやることに対し、全員が納得顔をして深々と頷いた。

 

「流石に迷惑を掛けるだけ掛けてさようならというわけにはいきませんものねぇ」

 

「拙者らが受けた恩は一宿一飯どころではない故、しっかりと恩返しをせねばならんでござるよ!」

 

「そう言う事だ。どれ一つとっても我々には重要な事。故に各々の適正に合わせ作業を分担する体制を取ろうと、私は考えている。ここまでで異論はあるかね?」

 

一同は質問に対し無言で異論がないことを示す。

 

「では、諸君ら個々人への当面の指令(オーダー)を伝える。まず葵君。君は私達の中で随一の戦闘能力を持っている。君なら狩人たちの狩りに参加しても邪魔にならないだろう。村の男衆の仕事を手伝って、村の財政を支えてもらいたい」

 

「心得た。幸い拙者の愛刀・鬼灯丸はぶじでござったからな。虎だろうがライオンだろうが狩って見せるでござる」

 

「ライオンはこの辺りにいないだろうが、村長曰く“森の主”と呼ばれる身の丈五メートルを超える熊は出るらしい」

 

「魔物かよ」

 

「ドラゴンもいる世界だ。居ても不思議じゃない。葵君にこんなことを言うのは釈迦に説法と言うものだろうが、十分気を付けてくれたまえ。次、林檎君」

 

次に名前を呼ばれ、林檎は小さな体をびくっと震わせ、身構える。

 

「君に頼みたいのは通信手段の確保だ。私たちは各々携帯通信端末を持っているが、この世界では使う事が出来ない。このままでは離れた所に居るメンバーとの情報交換に支障が出る。そこで、君には我々の持つ端末をこの世界でも使える様に改造してもらいたい。可能かね?」

 

その質問に林檎はおろおろと困った様に司と仲間たちを交互に見て、最後に修斗の方を見た。

 

ここにいる者たちは、全員が中学生時代の同級生だが、極度の人見知りである林檎がまともに話せるのは、中学時代の“ある事件”以来信頼を置いている司と、自分を気に掛けいつもさり気なくフォローし守ってくれていた修斗の二人だけである。

 

修斗は、林檎が声を出すのが恥ずかしいのだと知ると、「俺から伝えても構わないぞ」と言う。

 

すると林檎は安堵の表情になり、修斗に近寄り、耳打ちする。

 

「……え、と……できる、よ。ノートパソコン、無事だったし、材料も飛行機の残骸からとってくれば……なんとか」

 

「分かった………結論を言うと可能らしい」

 

「そうか。工具は持っているのかね?」

 

司の言葉に林檎は頷き、両手を叩く。

 

すると、部屋の壁に立て掛けてあった林檎の大きなリュックサックの中から、無数のマニピュレーターが蜘蛛の足の様に飛び出す。

 

「うわ!?びびび、びっくりした!」

 

「すげー。マニピュレーターの先端がいろんな工具になってんのか。こりゃ便利そうだ」

 

このリュック一つでペンチやドリルの基本的な工具の役割を果たし、更に溶接や旋盤、レーザー加工まだ、殆どすべての工業的作業を行う事が出来る。

 

「でも、充電はどうするの?」

 

「それも大丈夫だそうだ。あの飛行機の動力は林檎が作った“小型原子炉”だ。林檎が言うには、墜落現場には放射能汚染は無かったらしい。つまり、動力部は無事だ。電力はそれで当面は賄えるらしい」

 

「それは頼もしい。早速明日から取り掛かってくれたまえ」

 

「………う、ん…」

 

肯定する林檎だったが、返事に僅かな間があった。

 

それに修斗と司はすぐに気付いた。

 

「林檎、言いたいことがあるなら言った方がいいぞ」

 

「……!」

 

指摘され、林檎はまた肩が撥ねる。

 

林檎には司からの指令(オーダー)以外にやりたいことがあったのだが、それを言うと顰蹙を買ってしまうのではと思い、言い出せなかったのだ。

 

そんな林檎に修斗は優しく頭を撫でる。

 

「大丈夫だ。別に言ったって誰も怒ったりしねぇよ。むしろ、言ってくれた方が今後の為に役立つ」

 

「ああ、その通りだ。林檎君、何か思う事があるのなら遠慮なく発言してくれたまえ。その方が、指示を出す私も助かる」

 

二人に後押しされ、林檎は少しほっとした表情になり、また修斗に耳打ちする。

 

「………えと、ね?……あの墜落現場に行った時……機首がめり込んでた赤い谷の壁を見て……もしかしてと思って、これで、調べた……んだけど」

 

そう言って、林檎は自分が被っている帽子についてる作業用ゴーグルを指差す。

 

ゴーグルも林檎の発明品であり、ズーム機能を始めとし、機械内部のスキャニングや、物体や大気の構成元素比を割り出すアナライズなど、非常に多種多様な機能を備えている。

 

それを指差し、出た結果を修斗に言う。

 

「なるほどな。どうやら、墜落現場のあそこは、ボーキサイト鉱床があるそうだ」

 

思いがけない情報に修斗を始め、司も勝人も忍も驚きの声を漏らす。

 

「あのさ、名前は聞いた事あるんだけどボーキサイトってなんだっけ?」

 

理解ができていなかった暁が尋ねて来る。

 

「アルミニウムの原料だ。基本温暖多湿な環境で作られるモンだが、星の環境は一定じゃないからな。地層によっては寒い地方でも出土される」

 

勝人が暁にそう説明してる中、林檎は続ける。

 

「……わたし、は……そのボーキサイトを使って、アルミニウムを製造したい、の……手軽に使える金属がある程度ない、と……わたしは、あまり……役に立てないから……」

 

「精製設備の方は作れるのか?」

 

「……えと……設計図は、頭の中にあるから………三日もあれば…作れる…」

 

「分かった。司、俺はとしては林檎の意見に賛成だ。手軽に使える金属を常備しておけば何かと便利だからな」

 

「確かにアルミがあれば便利だろう。だが、必要電力を“小型原子炉”で賄えるとしても、電解製錬炉や出来たアルミを加工する設備を製作するには、飛行機のスクラップだけでは資材が足りないな」

 

「なら、俺のやるべきことは決まったな」

 

勝人は白い歯を口から覗かせ笑う。

 

「話が早くて助かる。来週、金庫番のエルク君が村の女衆が作り溜めた工芸品を街まで売りに行くらしい。その収入で冬の蓄えを購入するわけだが、そこでショーニンには、エルク君と共に街に出向き、全力で荒稼ぎをしてもらいたい。そして、稼いだ金で村の蓄えを購入し、余剰金で林檎君のリクエストした品を集めれるだけ集めて来てくれたまえ」

 

「荒稼ぎってとぉ……分かりやすい指示だがもーちょっと品の良い言い方できねーの?エルクを手伝ってほしい、とか」

 

「他人の手伝いをするような人間ではないだろう、お前は」

 

「……流石は幼馴染。よーくわかってらっしゃる」

 

勝人は嬉しそうに笑い、肩を揺らす。

 

「この世界に存在する物なら必ず全部揃えてやるよ。例え、その街に売ってなかったとしてもな。……一番の問題はあの美しいウィノナさんの遺伝子を一欠片も受け継いでる気がしない品の無い野郎が、俺の同行を赦してくれるかだが」

 

「それに関しては問題無い。私が直接村長に交渉して、同行させてもらえるようにした貰おう。任せてくれ」

 

「なら結構。そっちは任せたぜ」

 

「そして、アカツキと桂音君」

 

次に、司は暁と桂音の方に視線を移す。

 

「二人には、私と村に残ってリルル君たち村の女衆の手伝いだ。作業が分からない時は村人に聞く様に、また手隙の時は、林檎君の手伝いもしてくれ」

 

「お任せください」

 

「いい采配だね!安全そうなのが最高!」

 

「素直で結構……次にシノブ」

 

「はいはーい。シノブちゃんは何をすればいいのかにゃ~?」

 

「ショーニンと共に、街に行ってこの世界の情報を出来る限り集めてほしい」

 

「具体的には?」

 

「全部だ。歴史、政治、文化、魔法………浚えるものは何もかもだ。そして、同時並行でウィノナさんが言ってた“八人の勇者”について探れるようなら探ってくれ。ただし、無理はしなくていい」

 

「ニンニン♪おまかせて!いい加減動かないと足がなまっちゃうしね」

 

ジャーナリストにして忍者の子孫である忍にこれ以上ない相応しい指令であり、忍は満足げに了承した。

 

「最後に修斗。修斗もショーニンと共に街に行って欲しい。君にはシノブの護衛をしてもらいたい」

 

「なるほど。情報収集となれば危険が付きまとうしな。分かった。引き受けた」

 

「よろしく頼む。あと、これはショーニンとシノブ、修斗以外への追加指示だが、これを暇な時にでも覚えて置いて欲しい」

 

そう言って、司はスーツの棟ポケットから紙を出し、見せる。

 

そこにはびっしりとミミズの様な文字が、日本語とセットで書かれていた。

 

「これってもしかして、この世界の文字?」

 

「“アルト語”と言うらしい。それはリルル君の協力を得ながら療養中に作った、日常的に使われることの多い“アルト語”の一覧と文法の教科書だ。ショーニンとシノブ、修斗にはもう覚えてもらったが、君達も覚えられるだけ覚えて置いてくれたまえ。読み書きが出来た方が行動の幅が広がるからね」

 

「僕……勉強は苦手なんだよなぁ。けど、不思議だよね。文字は違うのに、なんで日本語が通じるんだろう?」

 

暁の質問に司は首を振る。

 

「さあね。天文学的な偶然で発音も意味も一致していたのか、はたまた何か超常的な力が介在しているのか………どのみち現段階では答えの出せない問いだ。それに、今更不思議やありえないの一つや二つ、増えた所で気にしても仕方あるまい」

 

「うむ、便利なのは良い事でござるよ」

 

「仮に知っても地球に帰る為に役立つとも思えないから、ぶっちゃけどうでもいい」

 

「……基本的にみんなってリアクションが薄いよね」

 

「にはは。まー考えても答えが出ることじゃないからねー」

 

「そういうことだ。さて………私からの指令は以上となるが、何か質問は?」

 

その問いに一同は沈黙を返す。

 

「皆、突然このような非現実極まる事態に巻き込まれ、自分達が地球に変えることが可能なのか内心不安だと思う、だが、不安がることは無い。思い出してほしい。無理・無謀・不可能・非現実的………そんなもの、我々は此処に来るまで数えきれないほど、越えてきたはずだ。それ故に、我々は“超人高校生”などと呼ばれている。今この場にはそんな人間が八人も揃っている。ならば、不可能なことなどあろうはずがない。むしろ余分過ぎるぐらいだと思わないか?」

 

「ふふ、確かにその通りですわ」

 

「ああ、むしろ俺達がこのささやかな世界を引っ掻き回しちまわないかが心配だぜ」

 

「下手すりゃ、この国奪い取ることも出来るかもな」

 

「だろう?だからまぁ、精々気楽に行こう。我々があまり本気を出し過ぎると、この世界を壊してしまうからね」

 

司の余裕をにじませた言い様に、七人は皆不敵に笑う。

 

「「「おうっ!」」」

 

声を大にして、地球への帰還を誓い合ったのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。