超人SPは異世界でも余裕で守り抜くようです!   作:ほにゃー

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第六話 最低最悪の領主

エルム村から山道を下りると、麓には広々とした麦畑と高い城壁に囲まれた巨大な城がある。

 

そここそが、この一帯の領主であるフィンドルフ侯爵の城だ。

 

外壁にまで白亜の塗装、城の屋根には純金による塗装が施されており、城主の品性が否応なしに伺える。

 

今日は、後期税を納める日なので石造りの城石の門は開かれ、周囲の村々から荷馬車が続々とやって来て作物や工芸品を納めている。

 

そんな中、修斗と忍の二人は脇道の木陰に隠れる様に積み荷の番をしていた。

 

エルクの、「余分な荷物を持ったまま城内に入る徴税を受けると、確実に余計に税を持っていかれるから、税額分以上は持ち込まないようにする」と言う提案を受け、町で売りに幾分かの積荷は下ろしていた。

 

そして、その荷物の番として忍と修斗の二人が残った。

 

エルクは城で積荷の受け渡しをしなくてはならないし、勝人も今後の為にも積荷の受け渡しなどを知っておく必要があり、同行しなくてはならなかったので、必然と修斗と忍の二人が残された。

 

「しっかし、あの城の趣味は酷いな。領主のフィンドルフとかって言う奴はきっといやらしい人間だな」

 

「だねー。それにきっとセクハラとか賄賂とか、叩けば叩く程色々裏が出てきそうだね。あたしのジャーナリストとしての勘がそう訴えて来るよ」

 

「忍の第六感ってのは馬鹿に出来ないからな。お前がそう言うなら、そうなんだろうな」

 

「もっと褒めてもいいんだよ!なんだったら、キスしてくれたっていいよー」

 

「調子に乗るな」

 

額にでこピンをかまして、修斗はそっぽを向く。

 

「ちぇー……お茶目なジョークなのに……」

 

忍はぶつくさと文句を言い、髪の毛の毛先を弄り出す。

 

そこにガラの悪そうな男が三人現れる。

 

「ようよう、兄ちゃん。随分とぺっぴんなねえちゃん連れてるじぇねぇか」

 

「ちょっと俺達にもそのねえちゃん貸してくれよ」

 

「いつ返すかは分かんねぇけどな」

 

下卑た笑みを浮かべ、男たちは忍をいやらしい目つきで見て来る。

 

「ついでだから、兄ちゃんの身ぐるみ全部頂こうか」

 

「あまり変な真似しない方が身の為だぜ」

 

ナイフを取り出し、男たちは修斗ににじり寄って来る。

 

それに対し、修斗は溜息を吐く。

 

「今時、絵に描いた様なチンピラがいるとは驚きだな」

 

「いやいや、ここあたしたちがいた世界じゃないからね」

 

呑気にそんな会話をする二人に、チンピラたちはイラッと来て怒りを露にする。

 

「何、余裕こいてんだテメー!?ぶっ殺されてぇのか!?」

 

そう言った瞬間、男の意識がナイフから外される。

 

そして、修斗は腕を振り上げナイフを弾き飛ばす。

 

「へっ?」

 

男は一体何が起きたのか分からず、唖然とする。

 

唖然としてる間に、修斗は男の喉目掛け拳を放つ。

 

喉を殴られ、男は悶絶しながら地面に転がる。

 

すぐさま、もう一人の男の腕を掴み、捩じ切るように捻って地面に膝を付かせる。

 

「アタタタタタタ!!?」

 

その間に、忍は最後の男相手に関節技を極めつつ、スタンガンを押し当て意識を奪っていた。

 

「忍、こっちの二人も頼む」

 

「OK♪」

 

修斗が倒した二人にもスタンガンを押し付け、意識を奪う。

 

倒したチンピラはそのまま地面に重ねる様に放置して、二人は勝人たちの帰りを待つ。

 

暫く雑談をしながら帰りを待っていると、二人が足早に帰って来た。

 

「やっほー。お帰り二人とも」

 

「よぉ、お疲れさん」

 

手を上げ、出迎えると、エルクは二人の隣に重ねる様に倒れているチンピラを見て驚く。

 

「なんだそいつら?」

 

「ナンパ?シノブちゃん可愛いから☆」

 

「違うだろ。ただの追剥だ。俺から身ぐるみ奪おうとして、さらに忍も連れ去ろうとしてた」

 

「お前ら二人を狙うとは運の悪い奴もいたもんだな」

 

「これ、あんたらが倒したのか?」

 

「当たり前だ」

 

「まぁ、あたしが倒したのは一人だけだけどね」

 

エルクは細い体の修斗と女である忍に積荷の番をさせるのを危ないと思っていた。

 

修斗に関してはあの時、狩りに出ていたから実力を知らなくても無理はないが、忍に関しては完全に女だからと侮っていた。

 

「言ったろ。コイツラなら、問題無いって。そこら辺の男じゃ忍には勝てないし、修斗がいる以上守りは安全だって」

 

「お安いご用ですとも。ニンニン」

 

「荷物の警備なんて久々にやったぜ」

 

地面に転がり痙攣してる三人の盗賊を見て、エルクは若干冷や汗を掻く。

 

「にしても、ちょっと待ってるだけで襲われるなんて、治安の悪い所だねぇ」

 

「……前の領主が病死するまではここまでじゃなかったんだがな。今の領主はとんでもねぇ大馬鹿野郎なんだよ」

 

「ああ、それは城のセンスから見ても分かる」

 

「アイツに代替わりしてから治安は悪くなったし、税も三倍近く高くなった」

 

「そりゃやってられねぇな」

 

「街頭の安全や俺達の生活なんざ、どうなろうと知った事じゃねえのさ。騎士も領主も、貴族って連中はどいつもこいつも平民の事なんざ、野犬程度にしか思っちゃいねぇ」

 

吐き捨てる様にエルクは言い、城を見上げる。

 

黄金の屋根が日の光で輝く姿は、まるで欲望を具現化した様な姿だった。

 

それを忌々しげに見つめ、エルクは続ける。

 

「でも……金を取られるだけならまだマシだった。だけど、あの野郎は“初夜権”なんて、とんでもない制度まで作りやがった」

 

「え?なーにそれ?」

 

「この領の女は結婚したら、夫より先に領主に抱かれて処女を捧げなきゃならねえんだ」

 

その言葉に修斗と忍、勝人も驚いた。

 

「はぁ!?なにそれ~!パワハラここに極まってるじゃん!信じらんない!」

 

「それが曲り通るのがこの国ってか………胸糞悪い」

 

「なるほど。だから、あの時リルルを隠したのか」

 

「そう言う事だよ。アイツはちょっとこの辺では見ないレベルで見た目が良い。あんな変態に目を付けられたら碌な事になんねーのはわかりきってるからな」

 

「あ、そうなんだ!やっぱりエルム村の皆は優しいね!」

 

嬉しそうに言う忍に、エルクは眉を顰める。

 

「他人事みたいに言ってんなよ。あんただって、その、結構綺麗だから、危ないんだぞ」

 

「あれ?あれあれ~♪もしかして、あたしのこと心配してくれてるの?」

 

「別にそんなんじゃねえよ!誰がテメェらみたいな得体のしれない連中心配するか!」

 

顔を赤くしてそっぽを向くエルク。

 

突然村に転がり込んできた八人に好意的な態度を見せてはいないエルクだが、根は優しいのが分かった。

 

彼もまたエルム村の人間で、ウィノナの息子であった。

 

「んふふ。ありがと、でも大丈夫。シノブちゃんは早々簡単には捕まらないし、危なくなってもしゅーくんが護ってくれるしね」

 

そう言って忍は嬉しそうに修斗の腕に抱き付く。

 

「あまりくっ付くな。歩きづらいし、いざって時に護りにくいだろ」

 

「いいじゃん♪いいじゃん♪」

 

「良くない」

 

そう言って修斗は忍を引きはがす。

 

忍はぶーぶーと文句を言っていたが、その時、勝人が口を開く。

 

「つーか、そもそも忍、お前処女じゃなってまて人間の肘はそっち側には曲がらないいいぃいい!!」

 

「え?何?何言ってるの?シノブちゃんなんのことだがわかんないにゃー☆」

 

「忍、程々にしておけよ」

 

「……労働力にならなくなるから腕は折るなよ。ここからドルムントまで馬車で半日かかるんだ。さっさと積荷を詰み直すぞ」

 

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