超人SPは異世界でも余裕で守り抜くようです!   作:ほにゃー

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第七話 別行動のSPとジャーナリスト

エルクからこの世界の事や村の事、フレアガルドの事を聞かせてもらいながら馬車に揺られて数時間後。

 

「……!」

 

突然勝人が立ち上がり、夕日が沈む方向を見つめる。

 

「どったのまーくん?」

 

「間違いねぇ、金の匂いがする」

 

その直後、丘を登り切った四人の視界に、城壁で囲まれた巨大な都市が飛び込んできた。

 

その都市こそ、四人が目指している商業都市“ドルムント”だ。

 

「どういう嗅覚してんだよ、アンタ………」

 

「勝人なら5km先に落ちたコインの音も聞きけそうだな」

 

「引くわー」

 

凄いと言うより呆れたと言わんばかりに視線を向ける三人に構わず、勝人は夕日に染まる石造りの大都市を見つめる。

 

「立派な都市だな。これ外周全部砦で囲ってるのか?」

 

「ああ。ドルムンドはフィンドルフ侯爵領最大の商業都市だからな。この領の殆どの物流はここに集まる。フィンドルフ領唯一の港もここにあるから、他の地方や新大陸の植民地とかからの商船もここに来る。そんな場所だから産業も人口も多い。フィンドルフ領の心臓と言ってもいい場所だ」

 

「人口はどれぐらい居るのん?」

 

「正確にはわかんねーけど、親父から聞いた話だと、住人は十万人ぐらいだったかな。それに余所の村や小さな町から来る奴等や、領外から来る船なんかもあるから、人数だけならもっと多いと思うぜ」

 

「いいねぇ。よし、稼ぎまくってウィノナさんにプレゼントを買って帰るとすっか!」

 

「…お前、おふくろのこと好きなの?」

 

「当たり前だ。あんなチャーミングで、それでいて根はしっかりした大人な女性、好きにならないわけがねえさ」

 

「まーくん、年上好きだもんね」

 

「自立した強くて美しい女性が好きなんだよ」

 

「理解できねぇ。特に根がしっかりしてるってあたりが。年甲斐も無くいつもはしゃぎ回って全然落ち着きがねぇし。つーかどのぐらい歳が離れてると思ってんだ。おふくろも流石にその気になれねぇよ」

 

「別にいいんだよ。美しいお姉さまのために金を使う。それが俺のモチベーションなんだからな」

 

「訳分かんねぇ」

 

エルクはそう言い、溜息を吐く。

 

明日食べる物にも困る時代。

 

男女の恋愛は、貴族の娯楽であり、平民にとっての恋愛とは、結婚と子作りを前提とした、村を存続させるための義務でしかなかった。

 

「まぁ、アンタがどういうつもりでおふくろに近づこうがそりゃアンタの勝手だがよ、でも、土産はあきらめることだな。そんなモン買う余裕ねえだろうからな」

 

「そこは俺が上手いこと交渉して稼いでやるさ」

 

「………そう言う以前の問題なんだよ」

 

「あん?」

 

意味深なエルクの言葉に勝人は首を傾げる。

 

「街に行きゃ、嫌でも分かるさ」

 

エルクはそう言い、四人を乗せた馬車は街の中へと入った。

 

税関を抜け、市内に入れたのは地平に太陽が隠れ始めた頃。

 

舗装されてない道路をしばらく直進すると、大きく拓けた空間に出る。

 

そこは、例えるなら渋谷のスクランブル交差点の様に、人が無秩序に歩き回っていた。

 

「わ~!流石十万人規模の大都市だね!人がいっぱいだよ!なんかずっとエルムにいたから実感なかったけど、この世界もやっぱり人はいっぱい居るんだねー!」

 

「ああ、それにお嬢様たちも美しい。ウィノナさんのような飾らない牧歌的なのも良いが、着飾った綺麗なお嬢様も最高だ!おねーさま!」

 

「……アンタには見境ってもんがねーのかよ」

 

人混みの綺麗な女性たちに手を振ってる勝人を見ながら、エルクは呆れながら溜息を吐く。

 

「それにしても、もう日が沈み始めてるって言うのに中々に賑わってるな。ここはいつもこんな感じなのか?」

 

「まぁな。ここはドルムンドの中心部の中央公園だからな。ドルムンドは大きく分けて“北東”“北西”“南東”“南西”の四つの区画に別れてるんだが、その何処に行くにも大体この中央公園を経由することになるから、ここはいつも人通りが多いんだよ」

 

「にゃるほどー」

 

「納得だな」

 

「ふーん………でも、そんな場所なのに市はねぇのか?」

 

そこで、さっきまで女性たちに手を振っていた勝人が、質問を挟んでくる。

 

「お前、聞いてたのかよ………確かに、ここも昔は市が出来てたんだが、今は南西ブロックの港区でやってるよ。………ほら、もうすぐ見えて来る」

 

エルクの言う通り、公園を抜け、港区に入ると、道の両脇に市らしきものが立ち並び、街の住人と思われる人々が買い物をしていた。

 

夕食の買い出しの時間帯だからなのか、その数はとても多い。

 

そして、人はもちろん、商品の数も種類も豊富だった。

 

キャベツやトマトなどの野菜類に、林檎の蜂蜜漬けやオレンジ、ワイン樽などの嗜好品、干し肉や、鱈の干物等々、様々なものが売られていた。

 

食品以外にも農具や工具、調理器具に貴族の古着と思われるデザインの洋服なども並んでいる。

 

「わ~っ!あの服なんか可愛い~!あ、あの髪飾りも!なんだが見てるだけで楽しくなっちゃうね~!しゅーくんもそう思うよね!」

 

「ああ、そうだな。流石は最大の商業都市だな」

 

忍はウインドウショッピング気分でテンションを上げ、修斗は肩を叩きながらはしゃぐ忍に相槌を打つ。

 

「確かに人は多い………だが、いまいち活気を感じない町だな」

 

そんな中、勝人だけは街の光景に違和感を覚えていた。

 

人の往来は多く、商品も多種多様揃えられ、非常に見応えがあるのだが、一様に活気がない。

 

店主たちは誰も呼び込みをせず、値切りを求める声も聞こえない。

 

そして、小さな路地の隙間から妬む様に市場を睨む小汚い恰好のホームレスと思しき者たちの姿が、その暗い印象をより強くする。

 

「全部、今から行く商会の所為だ」

 

勝人が首をひねっていると、エルクが呟くように言う。

 

「どういうことだ?」

 

「……ドルムンドで商売するには市長のハイゼラード伯爵の許可証がいるんだ。それをこの町で持っていて、なおかつ市を開ける金を持っているのは、これから行く“ノイツェランド商会”だけなんだ」

 

「え?なにそれ?町丸ごと独占ってこと?」

 

「数年前までは、俺の親父が居た“オリオン商会”って言う商会があって、二つの商会が競い合って活気もあったんだけど、オリオン商会は新大陸の投資に失敗したとかで、ノイツェランドに吸収合併されたんだ。それ以降、ドルムンドの物流はノイツェランドが完全に抑えてる形になってるってわけ」

 

「なるほど。活気が無いのは、競う相手がいないからか………つまりこれがさっき言ってた、そう言う問題じゃないって奴か」

 

「そういうこった。だから、値上げ交渉なんて意味がねぇ。なにしろ売れる所が一つしかねえんだからな」

 

「そりゃまた、眠たい商売してんのな」

 

「で、あれがその商会ってわけか」

 

「ああ、そうだ。あれが件のノイツェランド商会だ」

 

全員の視線の先には、神殿の様な建物があり、その入り口前にはでかでかと孔雀石で彫られた太った男の像が鎮座していた。

 

「なぁに、あのブサイクな像?」

 

「ここの店長のヤッコイって男の石像だ」

 

「こりゃまた性根が腐ってそうなツラしてるな」

 

「きゃー、悪趣味―」

 

そんなことを言いながら、修斗と忍は馬車を降りる。

 

「お、おい!何処行くんだ!」

 

「ごめんね、エル君。あたしはあたしでやることがあるのだよ!じゃあ、まーくん。こんな悪趣味な所入りたくないし、あたしは早速リサーチに行ってくるよ」

 

「そう言う訳だ。俺も忍に付いて行かないといけないから、ここからは別行動だ。勝人、お前の事だからあまり心配はしてないが、任せたぞ」

 

「おう、任しとけ。そっちも頼んだぞ」

 

「わかってる」

 

「ニンニン♪任された!何か調べたいことがあったら携帯に連絡してちょ。じゃあ、しゅーくん行くよ!」

 

忍は修斗の手を取ると、煙の様に人混みの中に消えて行く。

 

この世界では異質な服装の二人だったが、忍者の末裔である忍はもう何処にいるのか確認できなくなり、修斗も見事人混みの中に溶け込んでいた。

 

「忍には、俺たちが帰る方法やこの世界の情報を色々探って来てもらうつもりで、修斗は、危険な仕事をする忍の護衛として連れて来たんだ。こっちには俺一人いれば十分だ」

 

そう言う勝人に、エルクは不快そうに顔を顰める。

 

「アンタなんか居なくても大丈夫だよ。さっさと帰っちまえ」

 

「あらら、つれないお返事だこと」

 




次回は少し、オリジナルストーリとなります。

修斗と忍のちょっとしたイチャコラをお楽しみに
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