もう直ぐ二つとも2期が始まるから、今から楽しみ!
ピピピピピピ
カチッ、バタン
「んっ、ん・・・・・」
僕は何時もの様に、目覚ましに起こされた。
「うっ・・・・・・、眩しい・・・・・」
カーテンの隙間から漏れている太陽の光は、凄く眩しくて、僕は苦手だ。
それでも僕は、カーテンを開け、ガラス戸も開けた。僕の部屋には、開けると庭に出られるガラス戸があり、其処から出入りすることが可能だ。
僕は
「・・・・・・・・・・」
今日の対局は、獅子王戦の6組トーナメント。相手は二海堂晴季。プロになってからは、今日が初対局だ。
僕は、少し昔の事を思い出すことにした。
夏休みになると、デパートの屋上等で、毎年子供将棋大会が催された。奨励会に入る前、全国の強い子供達は、こういった小さな大会で何度も顔を合わせる。
晴季も僕も、そういうイベントでは常連になっていて、既に何度も顔を合わせていた。
あれは何年生の頃だったろう。恐ろしく暑いイベントで、僕と晴季は準決勝で顔を合わせた。その日は本当に酷い暑さで、暑いのが苦手な彼女は、赤鬼の様に真っ赤っかで、酷く辛そうで、見ているこっちまで苦しくなった。
午後になると、風が止み、気温は益々上がって、多分貧血を起こしているのだろう、彼女の顔はどんどん青白くなっていった。
『ふっ・・・・・・、ふっ・・・・・・』
しかし、彼女は、負けが濃くなった終盤、有りっ丈の持ち駒を自陣に投入して、必死の抵抗を始めたのだ。
『ふっ・・・・・・!ふっ・・・・・・!』
汗まみれの真っ青な顔からは、声にならない叫びが漏れ出していた。
『(負けたくない・・・、負けたくない・・・、負けたくない・・・、負けたくない・・・、負けたくない・・・)』
その瞬間、僕は自分の思い上がりを恥じた。
『(負けたくない!)』
目の前の人間が、こんなに汗まみれでふらふらになってまで此処に座っているのは、勝ちたいからなのだ。
それはもう、どうしようもなく、僕と同じに。
長い戦いになった。もう僕の勝ちだった。それでも彼女は一手一手、もがく様に見えない道を、探して指し続ける。
しかし、遂に指す手が無くなる時が来た。
どんなに目を凝らしても、もう
『・・・・・負けました』
そう呟くと彼女は、漫画みたいな大粒の涙をポロポロと零し始めた。
僕はそれを、蝉の声と、デパートの屋上のBGMの中で、
多分、この先何十年も向き合うかもしれないその顔を。
プロになるという事は、止まらない列車に飛び乗るようなものだ。
もう二度と降りることは出来ない。負けて転がり落ちる迄は。
この小さな宇宙の中で、気が遠くなる程の、勝ったり負けたりを繰り返すのだ。
負けたくないと、喘ぎながら。
「おう、桐山。ちょっと覗いてみろ♪」
「お前のライバルが、素晴らしい気迫で待ってるぞ♪」
将棋会館に着き、対局室の前に来ると、
「(えっ?)」
襖から覗いてみると、其処には無駄に決め顔な二海堂が居た。僕は思わず、その場で両手両膝を付いてしまった。
「はぁ・・・・・・」
「なっ?何かもう気合入りすぎて、ほぼ別の漫画になってるだろ?」
「なんつーのこう、『事後、詰むや詰まざるや』、みたいな?羨ましいな、桐山~。見ろよあの気迫、全てお前の為なんだぜ、終生のライバルだって言ってたぜ、彼女~」
その後、何とか立ち上がると、一旦自分を落ち着かせた。
落ち着け、まずゆっくり息を吸い込む。浅い息は視界を狭くする。
そして落ち着くと、僕は対局室に入った。
「遅いぞ桐山、待ち
「僕は時間通りに来た。早く来たのは二海堂の方だろ、もう」
「そっか。うむ、気持ちが
「さあ、始めようじゃないか」
二五桂、来た。二四銀。
三五歩。同銀。
一五歩。
強くなっている。じわじわと、でも揺るがずに攻めてくる。
駄目だ、受けてばかりでは埒が明かない。
流れを変える・・・・・!
そうして、時間は過ぎて行った。
ポタッ・・・・・・
はっ、汗・・・・。あの時と同じだ。顔色が悪い。二海堂の様子が
「すいません。空調効いてますか?」
「すいません。
僕も何かしようと立ち上がった。
すると、二海堂から声が掛かった。
「いいよ桐山!あのデパートの屋上に比べたら天国だ」
二海堂は駒を持つと、こう言った。
「続けようぜ・・・・・!」
五七香。歩切れを突いて来たか。ならこうだ。七六歩。
すると二海堂は、ある場所に銀を指した。
はっ・・・・・!はっ・・!えっ・・・・!
六八銀・・・⁉金取りを放置して、銀打ち⁉
何だ・・・・・⁉何だこれ・・・・・⁉
僕は眼鏡を少し直す。
うん、負けたくない。負けたくないよね。
落ち着け、息を深く、視野を広く。冷静にさえ行ければ・・・・・。この局面、僕の方が良い筈なんだ。
落ち着いて、指し続けろ・・・・・!
対局は夜まで続き、僕は晴季の粘りを振り切り続けた。
そして・・・・・・
「ありません。負けました・・・・・・」
ああ、そうだ。この顔、同じまんまだ。子供の頃と。ちっとも変っていない。二海堂も、そしてきっと僕も。
きっとこのままずっと。ずっと。
ずっと。
「晴季様」
「花岡!」
対局後、晴季が下に降りると、其処にはメイドの花岡が居た。
「グリーン休暇、世界一周は如何したんだ?80日間帰って来ないんじゃなかったのか?」
「大奥様に代わって頂きました。私は10日間で十分です。船旅は満喫させて頂きました。正直晴季様と離れている方が、心配で、心配で。もう不整脈とか起こしかねない危なさでありましたよ」
その後、晴季は車に乗せられ、病院に向かった。
「病院の方へ行っていませんでしたね。
晴季は苦しそうにしながら、タオルを口に当てていた。
「晴季様、お辛いですか?また、腎機能が低下しているのでしょう」
「すまない・・・・・」
「申し訳ありません。私が居ない間、食事も無茶なさったのでありましょう」
「すまない、花岡・・・・・」
「いいんです、分かります。病院食ばかりでは、ストレスが溜まります。それも、子供の頃からです。どんなにお辛いか、花岡はずっと見て参りました。
大丈夫、花岡が付いております。焦らず少しでも、体調を戻しましょう。
桐山様は・・・、対局は、如何でしたか?」
「負けた・・・・・。強かった・・・・・。あんなに強くなってるなんて・・・・・。でも・・・・・・」
「次は絶対に負けない・・・・・・!」
「はい・・・・、勿論ですとも、晴季様」
「それに、もう直ぐ
最後の晴季の言葉が意味する事とは・・・・・?
次回はサンシャイン!!回と、少しオリジナルストーリーを混ぜるぞ。