プロ棋士はスクールアイドル   作:フユニャン

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今回は回想回です。


Chapter4 恩返し

僕と千尋が、これだけダイヤちゃん達を助けたいと思ったのには、ある理由があった。

それは、僕と千尋が此処に来て間もない頃の事だった。

 

 

 

 

9年前

僕が新しい小学校に転校した日、僕は自己紹介をした後、自分の席に座ってそのまま授業を受けた。

休み時間になると、転校生恒例の質問攻めが始まった。だけど、僕は極端に人付き合いが苦手で、次々と来る質問に上手く答えらなかった。そこに、一人の女の子がこっちに近づいて、皆にこう言った。

 

「皆、その子困ってんじゃん!順番に質問しないと駄目だよ!」

その一声で、皆は順番にしてくれた。

好きなことを聞かれた時に、将棋と言って皆が驚いたり、きょとんとしていた顔は、今も鮮明に、記憶の中に残っている。

皆が去って行った後、ダイヤちゃんと、二人の女の子が近づいてきた。

「大丈夫ですか?聖さん」

「うん、大丈夫。ちょっと疲れたけど・・・・」

「あはは。でも、皆良い子だから、直ぐに仲良くなれると思うよ!あっ、私は松浦果南!そしてこっちは・・・」

「私は小原鞠莉。私も、此処(ここ)に来て1年しか経ってないから、仲良くしましょう」

僕は、()()り自分の名前を言ってきた二人を見て、ちょっと吃驚(びっくり)してしまったが、此方も自分の名前を言うことにした。

「えっと・・・・、僕も改めて、桐山聖です。宜しく」

「「宜しくね!」」

「じゃあ、早速質問!聖は何処(どこ)に住んでるの?」

「ダイヤちゃんの家だよ」

「えっ⁉ダイヤの家⁉」

「うん。僕の父さんと母さんが、事故で死んじゃって、妹と一緒にダイヤちゃんのお母さんに引き取られたんだ」

「そうなんだ・・・・・」

「あっ、ごめんね!行き成りこんな話をして・・・・」

「ううん、聖の事が知れたから、全然大丈夫!」

「有難う」

「私からも質問。兄弟はいるの?」

「さっきも言ったけど、妹がいるよ。千尋って言うんだ」

「ルビィと同い年ですわ。私からも、質問していいですか?」

「どうぞ」

「趣味は何ですの?」

「将棋と読書だよ」

「将棋⁉聖は将棋出来るの⁉」

「うん。昔からやってるんだ。僕の母さんがプロ棋士でね、千尋と一緒に教わってたんだ」

「どっちが強かったの?」

「最初は勿論、母さんだったよ。でも、最近はずっと勝ってた。千尋も一緒」

「凄いね!聖もプロ棋士になるの?」

「うん。何時か、母さんみたいなプロ棋士になりたいんだ」

「じゃあ、応援してるね!」

「私も!」

「私もですわ!」

僕に親友が出来た瞬間だった。だけど、誰かから嫉妬の目が向けられていたとは、僕達は分からなかった。

 

 

 

1週間が過ぎ、僕も千尋も学校に慣れた。最近では、僕と千尋と、ダイヤちゃんとルビィちゃん、果南ちゃんと鞠莉ちゃんと一緒に登校するようになった。千尋に至っては、皆に渾名(あだな)を付けていた。千尋は昔から、仲良くなった人には渾名を付けていた。と言っても、梨子ちゃんしか居なかったんだけどね。それ以外は皆苗字呼びだった。理由は「認めた奴以外を気安く名前で呼びたくないから」らしい。

今日も楽しい一日になる筈、そう思っていた。

 

 

昇降口で千尋とルビィちゃんと別れ、4人で下駄箱に向かい、上靴に履き替えようとした。

「あれ、無い・・・・・」

「どうしたの?」

「上靴が無いんだ」

「そこら辺に落ちてないの?」

僕達は直ぐ様辺りを見たが、僕の上靴は落ちていなかった。

僕は保健室でスリッパを借りることにした。

 

休み時間

果南ちゃんが慌てた様子で教室に戻って来た。

「ひ、聖!トイレに来て!」

「えっ?」

僕は果南ちゃんと一緒にトイレに行くと、果南ちゃんが個室のドアを開けた。

「えっ⁉これって・・・・・」

便器の中に、僕の上靴があった。

 

 

それからも、僕に対する嫌がらせは続き、遂に事件が起こった。

ある日、何時ものように下駄箱から上靴を取り出そうとすると、手紙が入っていた。

「何だ、これ?」

見てみると、放課後に校舎裏に来い、という内容だった。

「どうかしましたか?」

「何でもないよ」

嫌な予感しかしなかったが、行くしかなかった。

 

 

放課後

校舎裏に来ると、クラスのリーダー格の女子と、ガキ大将がいた。

女子の方は、女子が最も恐れている存在で、ガキ大将の方は、男子が最も恐れている存在だった。更に二人は、小3にして相思相愛で、家も裕福な家庭だった。

「呼んだのは君達?」

「そうよ」「そうだ」

態々(わざわざ)こんな所に呼び出して、一体何をするつもりだい?」

「それは今から見せるわ。来なさい」

女子が何処からか呼び掛けると、小3にしては屈強な男子と、女子の取り巻きが出て来た。取り巻きが、抱えていた人を僕の前に投げ捨てた。

「っ・・・・⁉千尋⁉」

「貴女の妹も、クラスの人達から良い風には見られてなくてね、それで痛めつけてやったのよ」

目の前には、傷と痣だらけの千尋が居た。

「千尋!しっかりしろ!」

「ねぇ・・・、さん・・・・・」

「どうしてこんなことを・・・・・」

「決まってるじゃない、あんたが気に入らないからよ。小3の癖に、老人みたいな趣味で、ほんと、気に入らない」

何とも理不尽な理由だった。その時、僕の中で怒りが生まれた。

「君達、そんな理由で、人を傷つけても良いと思ってるのか!」

「ほら、その口調も、「僕」っていう一人称も、女の癖に、なんなのよ」

「っ・・・・・!」

「お前ら、やっちまえ!」

女子に色々言われている間に、ガキ大将が、子分であろう屈強な男子達にそう言った。

数は5人、僕は二人に両側から腕を掴まれ、一人に顔面パンチを食らわされた。

「姉さん!」

千尋も一人に取り押さえられた。

僕も、もう一人に腹や股等を殴られ続けた。

 

 

 

数十分が経過した頃、(ようや)く解放された。

が、一人に胸倉を掴まれ、また殴られようとしたその時、

「聖!」

「か、果南ちゃん・・・・」

「まっ、松浦さん⁉」「松浦⁉」

「貴方達、聖に何をしているの!」

「鞠莉ちゃん・・・・」

果南ちゃんと鞠莉ちゃんがやってきた。

「君達、何をしている!」

「聖さん!」

先生とダイヤちゃんもやって来た。

「聖、大丈夫?」

「うっ、うう・・・・」

「千尋さんも大丈夫ですか?」

「痛いよ・・・・」

「先生を呼んだから、もう大丈夫ですわ」

僕の意識は、其処(そこ)で途切れた。

 

 

 

それから数時間後、僕は目を覚ました。

果南ちゃんに話を聞くと、帰りが遅いので心配で見に行くというダイヤに、遊びに来た果南ちゃんと鞠莉ちゃんが一緒に行くことになり、学校に着くと色んな場所を探して、あそこに辿り着いたらしい。

あの女子とガキ大将達は、他の児童達にもいじめをしていたことが発覚し、学校に戻って来ることは無かった。

 

「・・・・・・・」

僕は、殴られている最中に言われたことを思い出していた。

『小学生が将棋なんて、ばばくせぇな!」

『いや、僕って言ってるから、じじくせぇな!』

『ハハハハハハハハハ!』

将棋を馬鹿にされた、その事実が、将棋を好きな気持ちを削いでいた。

「将棋なんて・・・・・、将棋なんて・・・・・」

千尋も同じことを言われたらしい。僕と同じことを呟いていた。

そこに、ダイヤちゃん達がやって来た。

「大丈夫?」

「気にすることなんてないわ」

「元気出して、ちーちゃん」

「そうですわ。あの人達も、もう学校に来ることは無いって、先生が言ってましたもの」

「だけど、将棋を馬鹿にされた。将棋なんて、もう・・・・・」

「やってていいよ!」

「果南ちゃん?」

「やってていいよ!小学生で将棋なんて、凄いよ!馬鹿にされるなんて可笑(おか)しいよ!」

「そうよ!聖はすごいのよ!」

「そうですわ!他の人はやってませんもの!」

「ちーちゃんも凄いよ!」

「「皆・・・・・」」」

僕と千尋は、ある決意を固めた。

「皆、もしも、皆がピンチになったら、助けるよ」

「えっ?」

「「僕(私)が助けられたから、今度は僕(私)が助けるよ」」

それを聞いた皆は、笑顔を浮かべて、

「うん。分かった」

「そうね。いざとなったら、助けて貰おうかしら」

「そうですわね」

「ちーちゃん、ひーちゃん、有難う!」

「こっちも、」

「「有難う」」

 

 

 

はっ、いけない。昔の思い出に浸ってしまっていた。

僕は再度、決意を固めたのだった。

 

「助ける、絶対に・・・・・」

 




早く9話辺りまで書きたい作者であります。
次回は、ファーストライブ回です。
明里達も出ます!
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