僕と千尋が、これだけダイヤちゃん達を助けたいと思ったのには、ある理由があった。
それは、僕と千尋が此処に来て間もない頃の事だった。
9年前
僕が新しい小学校に転校した日、僕は自己紹介をした後、自分の席に座ってそのまま授業を受けた。
休み時間になると、転校生恒例の質問攻めが始まった。だけど、僕は極端に人付き合いが苦手で、次々と来る質問に上手く答えらなかった。そこに、一人の女の子がこっちに近づいて、皆にこう言った。
「皆、その子困ってんじゃん!順番に質問しないと駄目だよ!」
その一声で、皆は順番にしてくれた。
好きなことを聞かれた時に、将棋と言って皆が驚いたり、きょとんとしていた顔は、今も鮮明に、記憶の中に残っている。
皆が去って行った後、ダイヤちゃんと、二人の女の子が近づいてきた。
「大丈夫ですか?聖さん」
「うん、大丈夫。ちょっと疲れたけど・・・・」
「あはは。でも、皆良い子だから、直ぐに仲良くなれると思うよ!あっ、私は松浦果南!そしてこっちは・・・」
「私は小原鞠莉。私も、
僕は、
「えっと・・・・、僕も改めて、桐山聖です。宜しく」
「「宜しくね!」」
「じゃあ、早速質問!聖は
「ダイヤちゃんの家だよ」
「えっ⁉ダイヤの家⁉」
「うん。僕の父さんと母さんが、事故で死んじゃって、妹と一緒にダイヤちゃんのお母さんに引き取られたんだ」
「そうなんだ・・・・・」
「あっ、ごめんね!行き成りこんな話をして・・・・」
「ううん、聖の事が知れたから、全然大丈夫!」
「有難う」
「私からも質問。兄弟はいるの?」
「さっきも言ったけど、妹がいるよ。千尋って言うんだ」
「ルビィと同い年ですわ。私からも、質問していいですか?」
「どうぞ」
「趣味は何ですの?」
「将棋と読書だよ」
「将棋⁉聖は将棋出来るの⁉」
「うん。昔からやってるんだ。僕の母さんがプロ棋士でね、千尋と一緒に教わってたんだ」
「どっちが強かったの?」
「最初は勿論、母さんだったよ。でも、最近はずっと勝ってた。千尋も一緒」
「凄いね!聖もプロ棋士になるの?」
「うん。何時か、母さんみたいなプロ棋士になりたいんだ」
「じゃあ、応援してるね!」
「私も!」
「私もですわ!」
僕に親友が出来た瞬間だった。だけど、誰かから嫉妬の目が向けられていたとは、僕達は分からなかった。
1週間が過ぎ、僕も千尋も学校に慣れた。最近では、僕と千尋と、ダイヤちゃんとルビィちゃん、果南ちゃんと鞠莉ちゃんと一緒に登校するようになった。千尋に至っては、皆に
今日も楽しい一日になる筈、そう思っていた。
昇降口で千尋とルビィちゃんと別れ、4人で下駄箱に向かい、上靴に履き替えようとした。
「あれ、無い・・・・・」
「どうしたの?」
「上靴が無いんだ」
「そこら辺に落ちてないの?」
僕達は直ぐ様辺りを見たが、僕の上靴は落ちていなかった。
僕は保健室でスリッパを借りることにした。
休み時間
果南ちゃんが慌てた様子で教室に戻って来た。
「ひ、聖!トイレに来て!」
「えっ?」
僕は果南ちゃんと一緒にトイレに行くと、果南ちゃんが個室のドアを開けた。
「えっ⁉これって・・・・・」
便器の中に、僕の上靴があった。
それからも、僕に対する嫌がらせは続き、遂に事件が起こった。
ある日、何時ものように下駄箱から上靴を取り出そうとすると、手紙が入っていた。
「何だ、これ?」
見てみると、放課後に校舎裏に来い、という内容だった。
「どうかしましたか?」
「何でもないよ」
嫌な予感しかしなかったが、行くしかなかった。
放課後
校舎裏に来ると、クラスのリーダー格の女子と、ガキ大将がいた。
女子の方は、女子が最も恐れている存在で、ガキ大将の方は、男子が最も恐れている存在だった。更に二人は、小3にして相思相愛で、家も裕福な家庭だった。
「呼んだのは君達?」
「そうよ」「そうだ」
「
「それは今から見せるわ。来なさい」
女子が何処からか呼び掛けると、小3にしては屈強な男子と、女子の取り巻きが出て来た。取り巻きが、抱えていた人を僕の前に投げ捨てた。
「っ・・・・⁉千尋⁉」
「貴女の妹も、クラスの人達から良い風には見られてなくてね、それで痛めつけてやったのよ」
目の前には、傷と痣だらけの千尋が居た。
「千尋!しっかりしろ!」
「ねぇ・・・、さん・・・・・」
「どうしてこんなことを・・・・・」
「決まってるじゃない、あんたが気に入らないからよ。小3の癖に、老人みたいな趣味で、ほんと、気に入らない」
何とも理不尽な理由だった。その時、僕の中で怒りが生まれた。
「君達、そんな理由で、人を傷つけても良いと思ってるのか!」
「ほら、その口調も、「僕」っていう一人称も、女の癖に、なんなのよ」
「っ・・・・・!」
「お前ら、やっちまえ!」
女子に色々言われている間に、ガキ大将が、子分であろう屈強な男子達にそう言った。
数は5人、僕は二人に両側から腕を掴まれ、一人に顔面パンチを食らわされた。
「姉さん!」
千尋も一人に取り押さえられた。
僕も、もう一人に腹や股等を殴られ続けた。
数十分が経過した頃、
が、一人に胸倉を掴まれ、また殴られようとしたその時、
「聖!」
「か、果南ちゃん・・・・」
「まっ、松浦さん⁉」「松浦⁉」
「貴方達、聖に何をしているの!」
「鞠莉ちゃん・・・・」
果南ちゃんと鞠莉ちゃんがやってきた。
「君達、何をしている!」
「聖さん!」
先生とダイヤちゃんもやって来た。
「聖、大丈夫?」
「うっ、うう・・・・」
「千尋さんも大丈夫ですか?」
「痛いよ・・・・」
「先生を呼んだから、もう大丈夫ですわ」
僕の意識は、
それから数時間後、僕は目を覚ました。
果南ちゃんに話を聞くと、帰りが遅いので心配で見に行くというダイヤに、遊びに来た果南ちゃんと鞠莉ちゃんが一緒に行くことになり、学校に着くと色んな場所を探して、あそこに辿り着いたらしい。
あの女子とガキ大将達は、他の児童達にもいじめをしていたことが発覚し、学校に戻って来ることは無かった。
「・・・・・・・」
僕は、殴られている最中に言われたことを思い出していた。
『小学生が将棋なんて、ばばくせぇな!」
『いや、僕って言ってるから、じじくせぇな!』
『ハハハハハハハハハ!』
将棋を馬鹿にされた、その事実が、将棋を好きな気持ちを削いでいた。
「将棋なんて・・・・・、将棋なんて・・・・・」
千尋も同じことを言われたらしい。僕と同じことを呟いていた。
そこに、ダイヤちゃん達がやって来た。
「大丈夫?」
「気にすることなんてないわ」
「元気出して、ちーちゃん」
「そうですわ。あの人達も、もう学校に来ることは無いって、先生が言ってましたもの」
「だけど、将棋を馬鹿にされた。将棋なんて、もう・・・・・」
「やってていいよ!」
「果南ちゃん?」
「やってていいよ!小学生で将棋なんて、凄いよ!馬鹿にされるなんて
「そうよ!聖はすごいのよ!」
「そうですわ!他の人はやってませんもの!」
「ちーちゃんも凄いよ!」
「「皆・・・・・」」」
僕と千尋は、ある決意を固めた。
「皆、もしも、皆がピンチになったら、助けるよ」
「えっ?」
「「僕(私)が助けられたから、今度は僕(私)が助けるよ」」
それを聞いた皆は、笑顔を浮かべて、
「うん。分かった」
「そうね。いざとなったら、助けて貰おうかしら」
「そうですわね」
「ちーちゃん、ひーちゃん、有難う!」
「こっちも、」
「「有難う」」
はっ、いけない。昔の思い出に浸ってしまっていた。
僕は再度、決意を固めたのだった。
「助ける、絶対に・・・・・」
早く9話辺りまで書きたい作者であります。
次回は、ファーストライブ回です。
明里達も出ます!