ある日の夕方、
「姉さん、ちょっといい?」
「何だい?」
「今日さ、ルーちゃんとひなと一緒にスクールアイドル部の様子を見てきたんだ」
「どうだったの?」
「承認されて、体育館の空き部屋に部室作ってたよ。それでさ、そのあと図書室に行って、はーちゃんにその事を話していたら、せんちゃん達が来て、また勧誘されたんだ」
「それで、何て?」
「ルーちゃんとはーちゃんは自分なんか無理だとか言って、断ってた。私とひなは入るって言った。
「そうなんだ。ルビィちゃんが入らないって言うのも、無理ないよな。ダイヤちゃんを誰よりも思っているあの子の事だ、きっと自分も嫌いにならないといけないと思っているんだろ」
「だろうね。全く、二人揃って手の掛かる姉妹だね」
「だね。ところで、何で千尋は入るって言ったんだ?柄じゃ無さそうなのに。ひなちゃんは好きだからやるだろうけど」
「姉さん、私だって将棋と同じ位スクールアイドルは好きなんだよ。好きなことをやるのに、
「へえ・・・・・・(し、知らなかった・・・・・、こんなに好きだったなんて)」
「μ’sの曲教えてあげるから、聞いてみなよ」
「有難う。ルビィちゃんと花丸ちゃんの入部、頑張ってね」
「有難う」
千尋は部屋を出ようとした所で、振り返ってこんなことを聞いてきた。
「姉さんも、スクールアイドルやってみない?」
その質問に対して、僕はこう返す。
「いや、遠慮しとくよ。対局で忙しいし、それに、僕こそ柄じゃないから」
「ふーん・・・・・」
千尋は真顔でそう言って、部屋を出て行った。
「本当は、一緒にやりたいんだけどね・・・・・、三人と一緒に」
そう呟いて、また将棋を指し始めたのだった。
客間に行くと、ルーちゃんが奥の方で雑誌を読んでいた。
「ルーちゃん、何読んでるの?」
「あっ、ちーちゃん。スクールアイドルの雑誌だよ」
「μ’sの特集だ。一緒に見てもいい?」
「うん!」
そうして読んでいると、突然ルーちゃんが思いを馳せる様に横を見た。そして、何かを掴むように手を伸ばした。
「ルーちゃん?」
「あっごめん。ちょっと、昔の事思い出してた」
「昔?ああ、ダイちゃんも居たね。この部屋に」
ルーちゃんが思い出していたことは察しが付く。多分、ダイちゃんとの思い出だろう。
「ごめんね、続き読も!」
「うん」
その時、
翌日
「ええっ⁉スクールアイドルに⁉」
私とひなは、遠巻きにルーちゃんとはーちゃんを見ていた。ひなも二人を入部させるのに協力してくれるらしい。
「うん」
「
「如何してって、やってみたいからだけど、駄目?」
「全然!
「いや、ルビィちゃんと一緒に見ている内に、いいなぁって・・・。だから、ルビィちゃんも一緒にやらない?」
「ルビィも⁉」
「やってみたいんでしょ?」
「それは、そうだけど、人前とか苦手だし、お姉ちゃんが嫌がると思うし・・・・」
「そっか、じゃあこうしない?」
ん?はーちゃん、一体何を言うつもりなんだ?
はーちゃんは立ち上がると、ルーちゃんの耳元で何か言った。
「体験、入部?」
そうか、そういうことか。
「体験入部か、
ひなも納得している。
時間は進んで、今は放課後のスクールアイドル部部室。
「本当⁉」
「はい」
「宜しくお願いします!」
「やったぁ、うぅ、やったぁ・・・・」
せんちゃんは外に続く扉を開けて外に出た。えっ、せんちゃん?
「やったぁーーー!」
凄い跳躍力・・・・・。と思ったら、直ぐに部室に戻った。
「これでラブライブ!優勝だよ、レジェンドだよぉ」
あれ、何か勘違いしてない?
「千歌ちゃん待って、体験入部だよ?」
「あっ」
「要するに、仮入部っていうか、お試しってこと。それでいけそうだったら入るし、合わないって言うならやめるし」
「そうなの?」
「いや、まぁ、色々あって・・・・」
「もしかして、生徒会長?」
あれ、せんちゃん?
「あ、はい。だから、ルビィちゃんと此処に来たことは内密に・・・・」
はーちゃんの話を聞きながらせんちゃんを見ていると、ビラに何か書いている。
「よっ、出来たぁ」
ビラを見ると、二人の名前が書かれていた。せんちゃん・・・・・。
「千歌ちゃん、人の話は聞こうね・・・・」
「へっ?」
「へっ、じゃなくて、二人はまだ入部してないんだから、勝手に名前を書いちゃだめだよ、せんちゃん・・・・」
「あっ、ごめん・・・・・」
「じゃあ取り敢えず、練習やってもらうのが一番ね」
そして説明の時間。
「わぁ・・・・・!」
「色々なスクールアイドルのブログを見て、作ったの」
「曲作りは?」
「それは、別に時間を見付けてやるしかないわね」
「本物のスクールアイドルの練習・・・・・!」
ルーちゃんは感激してる、良かった。
「でも、練習何処でやるの?」
「あっ」
「中庭もグラウンドも一杯だね・・・・。部室もそこまで広くないし」
「砂浜じゃ、駄目なの?」
「移動の時間考えると、練習場所は、出来たら学校内で確保したいわ」
外に出て練習場所を探すも、
あっ。
「屋上・・・・」
「ちーちゃん?」
「屋上は駄目ですか?」
私が呟いた所に、ルビィがそう言った。如何やら同じことを思い付いたみたい。
「屋上?」
「そうだよ。μ’sは何時も、屋上で練習してたらしいし」
ルーちゃんの言葉に続いて、私も言う。
「そうか!」
「屋上かぁ」
「行ってみよう!」
「うわぁぁぁぁ!すっごぉぉぉい!」
「富士山くっきり見えてる」
「でも日差しは強いかも・・・・」
「それが良いんだよ。太陽の光を一杯浴びて、 海の空気を、胸いっぱいに吸い込んで・・・・・・、温かい・・・・・」
皆でしゃがんで、地面に手を付く。確かに温かい・・・・・。
「ホントだ・・・・・」
「んぅ~、気持ち良いずらぁ~」
「花丸ちゃん?」
ルーちゃんがはーちゃんの頬を軽く突くと、気持ち良さそうに身じろぐ。
「さぁ、始めようか」
そして皆で手を合わせる。
「じゃあいくよ、Aqours、」
「「「「「「「サンシャイーン!」」」」」」」
「ワンツッスリーフォー、ワンツッスリーフォー・・・・・・」
今はせんちゃんとルーちゃんが踊っている。この前のライブのダンスだ。
よーよーの手拍子が止まった。
「出来た・・・・・!」
「流石ルビィちゃん」
「出来ました!千歌先輩!」
「ほぉ・・・・・、あっ」
せんちゃんは全く違うポーズを取っていた。せんちゃん、何してんの?
「あれ?」
「千歌ちゃんはやり直し」
「今日までって約束だったはずよ」
「思い付かなかったんだもん」
部室に戻ると、せんちゃんとりーちゃんが何やら言い合っていた。
「何か、あったんですか?」
「ああ、新しい曲、今作ってて」
「花丸ちゃんも、何か思いついたら言ってね。あと、ちーちゃんとひなちゃんも!」
「はぁ・・・・・」
「ひっ、ひっ、ふっ。ひっ、ひっ、ふっ・・・・」
隣を見ると、ルーちゃんが軽くリズムを取って、小さくダンスの練習をしていた。
所変わって、淡島神社に続く石段前。
「これ、一気に上ってるんですか?」
「勿論!」
「何時も途中で休憩しちゃうんだけどねぇ」
「うっ、えっへへ・・・・・」
「でも、ライブで何曲も踊るには、頂上まで駆け上がるスタミナが必要だし」
「じゃあ、μ’s目指して、よーい、どーん!」
まぁ、何時もひなと休日に一緒に走ってるから、これ位余裕なんだけどね。
ルーちゃんとはーちゃんを見守る為に、ひなと後ろを走っていると、はーちゃんが途中から歩きになった。
「花丸ちゃん?」
上を見ると、心配したのか、止まっているルーちゃんが居た。
「如何したの?」
「あっ、ちょっと息が切れちゃって、先行ってて下さい」
「無理、しないでね」
よーよーは走って行ってしまった。
「ルビィちゃん?」
「一緒に行こう」
「駄目だよ・・・」
「えっ」
これは・・・・
私はひなの耳元でこう囁いた。
「ひな、先行っててくれ」
「えっ、何で?」
「多分、はーちゃん降りる。暫くは私も一緒に行って、少ししたらまた戻って後を付ける。せんちゃん達に、用事があるから、先に帰ったって言っといて」
「分かった」
会話を終えると、二人の話に耳を傾けた。
「ルビィちゃんは走らないと・・・・・」
「花丸ちゃん?」
「ルビィちゃんは、もっと自分の気持ち大切にしなきゃ・・・・」
それは君にも言える事じゃないのかい?
「自分に嘘ついて、無理に人に合わせても、辛いだけだよ」
「合わせてるわけじゃ・・・・・」
「ルビィちゃんは、スクールアイドルになりたいんでしょ?」
「っ・・・・・・」
「だったら、前に進まなきゃ」
「・・・・・・」
「さぁ、行って」
「で、でも・・・・・・」
「さぁ・・・・」
「・・・・・・、うん!」
ルーちゃんは決心したのか、笑顔になって走り出した。
「行こうか」
「うん」
私達も走り出した。
案の定、はーちゃんは付いて来なかった。そしてルーちゃんに気付かれないように戻りだした。
ちーちゃんが抜けた後も、私は後ろを走り続けていた。
「はぁ、はぁ・・・・・・、やった、やった・・・・」
「凄いよルビィちゃん!」
「見て」
「わぁ・・・・・!」
「やったよ、登り切ったよーーーーーーーー!」
千歌ちゃんの声が淡島中に響いた。
石段の途中で、はーちゃんが止まった。こっちを振り向いたので、慌てて茂みに隠れた。
「何ですの、こんな所に呼び出して」
この声は、ダイちゃん?
私はスマホを取り出し、RECモードにした。後でまた見たいからだ。
「あの、ルビィちゃんの話を・・・・・・・・、ルビィちゃんの気持ちを聞いてあげて下さい」
「ルビィの?」
はーちゃんはそれだけ言うと、降りて行ってしまった。
「あっ・・・・・・」
私はそのまま隠れて録ることにした。
「そんなの、分かってる・・・・」
私はさっきまでの花丸さんとの会話を思い出していた。
『ルビィちゃんの話を・・・・・・・・、ルビィちゃんの気持ちを聞いてあげて下さい』
それに対する答えなんて、とっくに分かってる。あの子には、私という
「お姉ちゃん?」
聞きなれた声に振り向くと、
「ルビィ?」
「ダイヤさん、何で
「これはどういう事ですの?」
私は何時もの冷たい声で言葉を発する。
「あの、それは、その・・・・・」
「違うんです。ルビィちゃんは」
「千歌さん」
ルビィは千歌さんの言葉を遮ると、私の近くまで寄って来た。
「お姉ちゃん、ルビィ、ルビィね・・・・・」
翌日
「良かったね、やっと希望が叶って」
生徒会室に鞠莉ちゃんがやって来た。この言葉の意味は、察しが付く。昨日千尋から話とスマホのビデオを見せて貰ったのだ。因みにそのデータは、千尋からスマホに送って貰った。
「何の話ですの?」
全く、
一方その頃、スクールアイドル部では。
「宜しくお願いします」
「宜しくね」
「はい!頑張ります!」
「そういえば、国木田さんは?」
「はぁ、全く。外から部室覗いたけど、やっぱり居なかったな」
「花ちゃん、このままだと入部しないつもりなんじゃ・・・・・」
「それを私達で止めるんだよ」
「そうだね」
今私達は、図書室に向かっている。はーちゃんは何時もあそこに居るから。
図書室に入ると、案の定はーちゃんが居た。
「ちーちゃん、日向ちゃん⁉如何して此処に?」
「説得しに来たんだよ」
「説得って・・・・・」
「一緒にスクールアイドル部に入って欲しいんだ」
「む、無理だよ。オラは運動できないし・・・・・」
「じゃあその雑誌は?」
私は引き出しの中に入っている、スクールアイドルの雑誌を指差した。
「こ、これは・・・・・・」
「興味があったから、買ったんじゃないの?」
「・・・・・・・・」
「花ちゃん、自分の心に正直になりなよ。本当は、ルビィと一緒にスクールアイドルをやりたいんじゃないの?」
「べ、別にやりたいなんて・・・・・」
「ルビィは、花ちゃんと一緒にやりたいんだよ!ルビィにとって花ちゃんは、それだけ大切な存在なんだよ!何でその気持ちに応えてあげないの?花ちゃんにとってルビィは、大切な存在じゃないの?」
「ひな・・・・・・」
珍しい、普段はこんなに声を張り上げて怒ること無いのに。
「大切な存在だよ!」
「「!」」
「凄く大切だよ!でも、オラはそんなに可愛くないし、スクールアイドルになんて、向いてないよ・・・・・」
全然そんなこと無いのに・・・・・・。
「私は、十分可愛いと思う。
「ちーちゃん・・・・・」
「それに、可愛いと思っているのは私達だけじゃないよ」
「えっ?」
扉の前には、いつの間にかルーちゃんが立って居た。
「ルビィちゃん⁉」
「ルビィね!・・・・・・、ルビィね、花丸ちゃんのこと見てた!ルビィに気を遣って、スクールアイドルやってるんじゃないかって、ルビィの為に、無理してるんじゃないかって、心配だったから・・・・・・」
ルーちゃんは、思いの丈をはーちゃんにぶつける。
「でも、練習の時も、屋上に居た時も、皆で話してる時も、花丸ちゃん、嬉しそうだった」
「・・・・・・・」
「それ見て思った、花丸ちゃん好きなんだって、ルビィと同じくらい好きなんだって、スクールアイドルが」
「マルが?まさか・・・・・」
「じゃあ、何でその本そんなに読んでたの?」
「それは・・・・・・」
そしてルーちゃんは、カウンターに回って来た。
「ルビィね、花丸ちゃんと一緒にスクールアイドル出来たらって、ずっと思ってた。一緒に頑張れたらって」
「それでも、オラには無理ずら。体力無いし、向いてないよ・・・・」
「そこに写ってる凛ちゃんもね、自分はスクールアイドルに向いてないって、ずっと思ってたんだよ」
「でも好きだった」
りーちゃんの声がしたので扉の方を向くと、何時の間にかせんちゃん達も来ていた。
「やってみたいと思った。最初はそれでいいと思うけど?」
そしてせんちゃんは、はーちゃんに手を差し伸べる。
「ルビィ、スクールアイドルがやりたい、花丸ちゃんと!」
ルーちゃんが極め付けの一言を言った。
「マルに、出来るかな?」
「私だってそうだよ。一番大切なのは出来るかどうかじゃない、やりたいかどうかだよ!」
それを聞いて、遂にはーちゃんもせんちゃんの手を取った。それに続いて、ルーちゃんや皆、私も手を重ねる。
そしてその上に、はーちゃんがもう片方の手を重ねた。
「じゃあ行くよ、せーの」
カチッ
部室にて、せんちゃんがパソコンのエンターキーを押した。
画面には、『浦の星女学院 アイドル部 Aqours』と書かれている。たった今、Aqoursをランキングに登録したのだ。
「4999位・・・・・・」
「上に5000組もスクールアイドルが居るってこと?凄い数・・・・・」
ルーちゃんがそんなことを言っている横で、はーちゃんは張り切っていた。
「さぁ、ランニング行くずらー!」
「「「おー!」」」
また一人、部室に輝きが増えたのだった。
Aqoursに加入したルビィ、花丸、千尋、日向。どんな風に歩んで行くのでしょうか?
次回は3月のライオンメインの回です。