魔剣ラグナロクを奪われた俺はまず、情報を集めた。やはりポピュラーなのは酒場だったり、あるいは裏ギルドだったり、情報屋に金を払い集めた。
その結果。魔剣ラグナロクを奪った盗賊団の居所を突き止めた。とはいえ、突き止めたところで素手で敵う相手ではなかった。多勢に無勢だった。何とか潜入する必要があった。とはいえ、簡単に潜入できる程甘くなかった。さらなる情報調査の結果、俺は盗賊団が魔剣の売却先を探しているという情報を突き止めた。そして、さらにはその売却を有利に進める為に、魔剣の鑑定士を雇うという情報を手に入れた。
そして、そこに乗じるしかないと思った。そう、その時こそが俺が魔剣ラグナロクを取り戻す、最大にして最後のチャンスだと思ったのであった。
――こうして、俺は鑑定士に成りすます事により、無事、盗賊団の目を欺き、魔剣ラグナロクのところまでたどり着いたのである。
「くそっ……てめぇ。俺達をだましやがったのか?」
盗賊団。恐らくはリーダー格の少年だろう、は怒った様子でそう言い放つ。
嘘はいけないとは言っても、状況が状況であり、相手が相手だ。
「俺はただ取返しにきただけだ。こいつを――いや、彼女を」
そう。俺は背後にいるラグナに言う。
「待たせたな。ラグナ」
「……うん。カズキ。きっとカズキなら来てくれると信じてた」
そう、どうやら涙ぐんだような感じで彼女は言った。
ふっ。主人公の登場に相応しい展開だった。自画自賛する。
「てめぇら! やっちまえ!」
いかにもな台詞を放ち、リーダー格の男は命ずる。手下の男達は各々が獲物を手にする。
漫画で見たかのようなシチュエーションだった。男達は襲い掛かってくる。
「ラグナ!」
「うん!」
ラグナ――彼女は瞬く間に魔剣の形状に変わり、俺の手中に収まった。そう、魔剣は本来の持ち主である、俺の手中に収まったのだ。魔剣は持ち主の技量を選ばなかった。そう、まるで自分が剣の達人になったかのような錯覚に陥る。
襲い掛かってくる盗賊達を斬り捨てた。その間、僅か数秒程の事だった。
男達は短い悲鳴をあげつつ、地に伏せる。安心していい。殺してはいない。
逆に言えば『殺す、殺さない』を選べる程にお互いの技量、実力に差があったという事だ。
あっと言う間に騒がしかったこの場は静かになる。そう、その場は静寂が支配した。するのは地に伏した男達のうめき声くらいのものだった。
俺はリーダー格の少年に剣を突き付ける。
「あんたは……まだやるか?」
「いや。いい。降参だ。流石に分の悪い勝負を続ける程俺も馬鹿じゃない」
男はそう言って、持っていたナイフを地面に落とした。そして両手をあげる、降参のアピールだった。
「……そうか」
何にせよ、魔剣ラグナロク――いや、彼女を俺は奪い返したのだ。この場で俺達がする事はなくなった。
そう思っていた時だった。
「待ってください」
一人の女性が姿を現す。女性というよりは少女ではあるが。俺はこの少女に見覚えがあった。そう、前に盗みを働いていたのが彼女だった。
ラグナ。戦闘が終わり、人型に戻った彼女は身構える。その様子から、彼女がラグナを浚ったという事を察する。
「何を待つんだ?」
「あなた達の大切なものを盗んでおいてこんな事を言うのも憚られますが、お願いします」
「お願い?」
「あなたの力、そして魔剣の力を見込んでのお願いです。私達を、いえ、この国を助けて欲しいんです」
「この国? 話の筋が見えないな」
何を言っているのかわからない。異邦者である俺には意味不明だった。
「私の名はエリス。エリス・クローバー。この国の王女……いえ、王女だった者です」
彼女は凛とした強い瞳で言った。