朝だ。新しい朝がきた。窓からは光が差し込んでくる。そう、俺は色々な事があったが無事彼女――魔剣ラグナロクを取り戻す事だ。そして、そんな彼女はであるが――。
「くー。くー。くー」
規則正しい寝息が聞こえてくる。顔にはやわらかいクッションのような感触が走る。
説明するまでもない。彼女の――ラグナの胸だ。おっぱいだ。バストだ。どう表現しても別に構わないが、そういう事だった。また盗まれても仕方がないので人間形態(?)での睡眠を許可せざるを得なかった。さらには二部屋を借りれるような金銭的余裕はなかったので一部屋しか借りれないという状況は変わっていない。
「起きろ。ラグナ」
仕方なく、まるで抱き枕を抱いているかのように羽交い絞めしてくるラグナを振りほどき、肩をゆすって無理やり起こす。
「むにゃむにゃ……もう食べられない」
彼女はよだれをたらしつつ、そう寝言を言う。というか、普通の人間ではないのに、彼女は人間のように普通に食事を必要とするようだった。おかげでエンゲル係数があがってしょうがない。単純計算で食費が二倍になるのだ。それどころか彼女はかなりの大食漢であり、俺の何倍も食べていた。それはともかくとして。
「そんなお約束のボケはいいから、起きろ。エリスさんとの約束の場所へ行く時間だぞ」
「……ふぁ。おはよう。カズキ」
欠伸をしながら彼女はそう言って伸びをした。実に呑気なものだった。
「のんびりしている場合か。行くぞ」
「ふぁい。わかった」
彼女はどうやら呑気な性格なようだった。天然系だ。
俺達は支度をし、目的地へと向かった。
「……きましたね」
酒場で俺達はエリスさんと合流した。何とか待ち合わせの時間には間に合ったようだ。
「ついてきてください」
エリスさんはそう言った。当然のように酒場に用があるのではない。ここはただの待ち合わせ場所だ。目的地ではない。
俺達は目的地に行く事になる。
目的地に到着した。遠くには城が見えた。最終的な目的地は恐らくは城内のはずだった。しかし、今いるのは森の中だった。最終的な目的地までは大分遠いように感じる。
「こちらです」
そう言って、何か石板のようなものをどける。地面には石板のようなものがおいてあった。
そこには穴があった。まるで隠し通路のようだった。
「ここは私しか知らない隠し通路です。暗殺されそうになった時に、この隠し通路から脱出しました」
エリスさんはそう説明する。なるほど。この通路であったのならば城内に問題なく侵入できるというわけだった。
流石に正面突破するのは得策ではない。当然のように門には門番がいる事だろうし。多くの兵士で守りを固められている事だろう。
「行くぞ。ラグナ」
「うん」
俺達三人(?)は隠し通路の中へと入っていく。
中は暗く、またじめじめとしていた。空気も悪い。しかも城から離れているため、異様な程長い時間を歩かされた。
「まだつかないんですか?」
そう、俺は訊いた。
「もうすぐです」
そう、エリスさんは言った。光が差し込んできた。出口はもうすぐのようだ。
城内に入る。そこはどうやら倉庫のような場所だった。埃っぽい。様々な物が無造作に置かれていた。
「……けほけほ」
俺は咳き込む。
「待っててください。この近くに使用人室があるはずですから」
そう、エリスは言う。かつて、彼女はこの城に住んでいたのだ。この城の事を熟知している。頼もしい限りだった。
「使用人室? そこに何があるんですか」
「いいから。ついてきてください」
彼女はそう言った。
慎重に誰もいないかを確認し、俺達は使用人室に入る。そこにはいくつもの服が並べられていた。使用人室。いわば、執事とかメイドの服だ。
「着替えてください」
「え?」
俺は服を渡される。
「城の中には大勢の使用人がいます。ですのでよほどの事がない限りバレません」
エリスはそう言ってラグナにも服を渡す。メイド服だった。
「わかった」
ラグナは躊躇う事なく、脱ぎ始めた。
「待て。いきなり脱ぐな」
俺は目を覆う。男がいるというのに。彼女には羞恥心というものがないようだった。
ともかく、俺達は着替える。
俺は執事の恰好に、そして女性陣二人はメイド服の恰好になった。
そしてついには俺達は城内に潜入する。