異世界に召還された俺は何の説明すらなく、ぽんとこの異世界に放り出されたのである。普通、説明役とか、冒険の手助けをするナビゲーター的キャラとか出てくるんじゃね? 不親切にも程があるだろう。
しかし、それでも俺はこの異世界で生きていかなければならなかった。無双もハーレムもほど遠いが、死ぬわけにもいかなかったのだ。
まず始めたのが言語の修得だ。言葉が話せなければどうにもならない。俺は何とか言語を覚えた。なんとか話せるようになるまで死ぬほどの努力をしたのだ。次にしたのは衣食住の確保。その為には働かなければならない。働き先の確保が必要だった。そして、必死の就職活動の末に、何とか仕事を得る事になる。
その仕事とは鉱山の採掘作業である。鉱山に眠っているレアメタルやエネルギーになる、元の世界で言うところの石炭みたいなものを採掘する仕事。だが、単純作業な上に肉体労働なのでえらく疲れる。ピッケルを片手に、原始的な方法で嫌気が指すが、これ以外に方法がなかったのだ。
そんな労働を毎日のように続け、糊口をしのいでいた。
「おい! 新入り! ちんたらしてるんじゃねぇ! もっと真面目に働け!」
現場の親方にそう叱責される。そう、今では異世界後もこのように、かつての日本語と同じように理解する事ができる。人間必死になれば案外なんでもできるものだ。
しかし、言いようのない惨めさが俺を支配する。
「こんなはずじゃなかった。そう。こんなはずじゃなかった」
涙すら出てきそうだった。
異世界に召還されたら、わくわくどきどきの大冒険。そして、無双して気分良くなり、美少女とのハーレムライフが待ちかまえている。
そう、思っていたのだ。しかし、異世界とはいえ現実は厳しかった。
俺を待ちかまえていたのは過酷な労働の毎日だった。
そんなある日の事。
「ん?」
カキンとした音がした。鉱石の感触とは異なる。そう、それはもっと硬いものの感触だ。そう、金属の感触。
久々に大物が当たったと思って、俺は喜ぶ。掘り起こしてみる。
すると、それはどうやら剣のようだった。
しかも全く錆びていない。見るだけで高価な代物だと理解する。
「ん? どうした?」
「な! 何でもありません!」
俺は親方に嘘をついた。なぜか? 没収されてしまう可能性があったからだ。
これはきっと高価な代物だ。武器屋で売ればそれこそ高く売れる事だろう。
俺の月給の数倍、下手すれば数十倍くらい。俺はこっそりとその剣を隠し持ち、その日の仕事を終えた。