そう。こうして俺と魔剣ラグナロクの旅は始まった。ーーように見えた。とはいえすぐに旅立つわけにもいかなかった。やらなければならない事はいくつもあったからだ。そう、そして俺は安い宿屋から出て、職場へと向かい退職願いを提出した。退職理由は「魔王を倒す為」「世界を救うため」とか馬鹿正直に書いたところ、正気を疑われ、大笑いされた。
辞める時、「仕事が嫌になった」とか、「あの根性なし」め、とか散々罵られた。
まるで夢見がちな少年を馬鹿にする大人のようだった。
しかし。偉業というものは認められるまでに時間がかかるものだった。
今に見てろよ、くそ。俺はそう強く思った。
ともかく、こうしてきっちりと炭坑夫の仕事を辞職し、召喚された町。
名前はリーデンブルグと言うらしい。巣立とうとしていた時の事だった。とはいえ、準備は必要だった。そう、旅の準備を整えなければならない。食料、衣類、装備、必要なものは多くあった。幸い労働の対価として得た賃金は使っていなかったので貯まっていた。それなりの金額にはなる。
「へっへっへっへ」
男達が姿を現す。粗暴な風貌の連中。盗賊としか思えない三人組。
そう、忘れもしない。あいつ等は俺がこの世界に。異世界召喚された時に身ぐるみを剥がされた盗賊達である。
異世界言語を修得した今とあっては、言っている事もばっちりだった。
「てめぇはあの時の坊主じゃねぇか」
「お前の荷物、珍しいもんばかりだったから結構高く売れたぜ」
「そうそう。おかげで美味い酒がたらふく飲めたってわけよ。ありがとよ。くっくっく」
三人とも、完全に俺をなめきっていた。
「ん? よく見れば今回は良い女をつれてるじゃないか」
そう。横に連れているラグナ(魔剣ラグナロク)を見てそういう。
「良い値段で売れそうだぜ。くっくっく。娼館でも、奴隷商人にでも」
「なに。その前に俺たちで味見しちまおうぜ」
「ちげぇねぇ。ちげぇねぇ」
男達は各々、好き勝手な事を言っていた。
しかし。俺をあの時の俺と同じだと思うなよ。
「へっ。なんだその目は。おまえ達、やっちまえ」
そう。盗賊の男達は襲いかかってきた。
「ラグナ!」
俺は声を出す。瞬間。ラグナは、魔剣ラグナロクへと変身する。一瞬にして、剣となった。禍々しい波動を放つその剣はまさしく魔剣と呼ぶにふさわしかった。
「へっ! それが何が!」
男達は各々が得物を手にしていた。ダガーナイフだったり、モーニングスターだったり、棍棒だったり。
男と魔剣を持った俺は交錯する。
一瞬の事だった。そう、そして時が止まったかのような感覚に陥る。
しかし。
男達の得物はボロボロと崩れ去った。さらには、男達の衣類が崩れ落ちる。
「ひっひぃ!」
圧倒的なまでの戦力差(実力差ではない)を感じ取ったのだろう。
「覚えてろよ」という定番の負け犬台詞を言う余裕すらなく、男達は一目散に逃げ出していった。
「ラグナ。もういい」
ラグナは人の形に戻る。
俺は優越感に浸っていた。そう、やっと主人公っぽくなってきたのである。
そう。異世界召喚されたとあってはこうでなくては困る。
こうではなくては。
次なる目標はハーレムの建設である。そう、ハーレム。まだ見ぬヒロイン達が俺を待っている!
こうして、俺と魔剣ラグナロクの旅が始まった。