カーテンの隙間から光が差し込んでくる。
「んっ・・・・・・」
朝だ・・・・・・・。そう、朝がやってきたのだ。そう、新しい朝だった。
「後五分だけ・・・・・・・・待って。ちゃんと行くから学校には、むにゃむにゃ」
寝ぼけた俺はそう、寝言みたいな戯れ言を言う。数秒して気づく。
そう、俺はもう現実世界にいないのだ。ここは異世界。剣と魔法のファンタジーの世界。時折現実世界が・・・・・・寂しくもならない事に気づく。特にモテるわけでもない、友達が多いわけでもない、運動ができるわけでも勉強ができるわけでもないし、特に目標があるわけでもない。
まあ、あんな世界戻らない方がいいくらいだ。強いて言うならば両親やごく少数の友人が心配しているかもしれない、と思うくらいだった。まあ、俺がいなくなったくらいで現実の世界は何も変わらないだろう。
失踪する少年少女なんて何人いるか数え切れないくらいにいるだろうし。
ーーと。
その時だった。
「くー。くー。くー」
そう、規則正しい寝息が聞こえてくる。さらには、俺の頬には柔らかいクッションのような感触があった。触ってみる。ぷにぷにとした感触。
「やあっ・・・・・・くすぐったい。むにゃむにゃ」
そう、声が聞こえてきた。よくよく見れば自分が顔を埋めているのがクッションではなく、ラグナの胸である事に気づく。胸。そう、おっぱいである。または乳房。英語で言うとバスト。どう言葉を変えても胸は胸である。おっぱいである。
「なっ!? なっ!? な、なんでお前が俺のベッドで寝てるんだ!」
「んっ?」
重そうな瞼をこすりながら、彼女は体を起こす。残念、いや、幸いながら彼女は全裸ではなかった。しかし、限りなく全裸に近かった。彼女はワイシャツのような衣類を着ているだけだったのだ。裸ワイシャツとかフェチ度高すぎだった。ある意味全裸より興奮しかねない。
「・・・・・おはよー。カズキ」
ここは宿の一室である。金銭的な理由もあり、二部屋を取る事はできなかった。というか、取る必要はなかった。
彼女は普通の人間ではない。彼女は剣である。人間が剣になれるのか、剣が人間になれるのかはわからない。
だから、寝る場所(そもそも寝る必要があるのかすら俺は理解していなかったが)を必要としない。と、いう事もあり一部屋にしたのだ。
「なっ。何が『おはよー』だ。お前はなんだ! 寝てる間に寝床に忍び込んできて一緒に寝るなんてどこのギャルゲーヒロインだ! もしくはラノベのヒロインなんだ!?」
あまりにお約束過ぎた。これではベタなラブコメのようだ。
「ぎゃるげー? らのべ?」
そんな元いた世界にしかないものを言ったところで、ラグナは首を傾げるばかりだった。
「と、ともかく! 俺の寝床に忍び込むな! 後、夜は人間になるの禁止!」
「どうして?」
「どうしてって言っても、俺が理性を抑えられないからだ!」
俺は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「・・・・・・りせい?」
「いいから! 禁止なものは禁止!」
「うん。わかった」
渋々、彼女は頷く。
それが後々、散々な状況になっていく原因となる事を当時の俺は理解していなかった。