転生者   作:フリッカ・ウィスタリア

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ふとした不注意で傷を負ってしまったエメだったが、傷も大した事なく、一旦ニャル子達と合流すると向こうは何か情報を掴んでいて…


適合体

ニャル子「あっ、3人とも遅いですよぉ。何か成果はありましたか?」

ハス太「うーん、特にこれと言って成果はなかったかな…でも、探査中に無形の落し子が瓶から出てきて、エメちゃんが怪我しちゃったよ。その後すぐに排気口に逃げられちゃったけど…」

ニャル子「ちょっとクー子!アンタちゃんとエメさんを守りなさいよ!」

エメ「いえ、私が不用心に瓶を開けたのが原因なので、クー子さん達の責任ではないですよ。それに怪我って言っても少し顔を切っただけですし」

ハス太「ところで、そっちは何か見つかったの?」

真尋「ああ、研究室みたいな所に実験内容をまとめた資料みたいな物が置いてあった」

エメ「へぇ、どんな内容だったんですか?」

エメがそう言うと、真尋は地面に資料を広げた

その内容は、前にニャル子さんの言ったとおり人体実験だった

簡単に言うと、蛇人間達は数か月前にツァトゥグアの洞窟を探索した時に大量の無形の落し子を捕獲し、持ち帰った

そしてその無形の落し子を自分達や他の生物に同化させて、生物兵器を作ろうと目論んだそうだ

しかし、どうやら自分達に同化させるのは難しく、魚類、爬虫類、両生類、鳥類にも同化を試したが、動物の方が同化の施術に耐えられないという事が分かった。そこで哺乳類に試したところ、比較的同化の成功率が高い事が分かった。しかし、そこで一つ問題があった。知能の低さだ。哺乳類のほとんどが同化自体は出来るものの、ほとんどが蛇人間達の言葉を理解していない、または従わないのだ。そこで哺乳類の中で非常に高い知能を持つ人間を素材として使う事になった

そのような雰囲気の内容がその資料には記されていた

ハス太「ニャル子ちゃんが言ってた通り、人体実験をしようとしてるみたいだね」

クー子「なかなかに非人道的な内容」

真尋「この内容を見る限り、エメが見つけた無形の落し子は捕獲された個体の一体だったって事になるな」

ニャル子「とにかく、早くこの実験をしてる部屋を見つけてぶっ潰しちゃいましょう!」

エメ「そうですね、行きましょうか」

そう言って私達は階段を下りて行き、さらに下の階へと足を踏み入れた

 

研究所 2F

真尋「…あからさまにでかい部屋があるんだが、間違いなくあそこで実験をしてると思うのは僕だけか?」

クー子「大丈夫、私もそう思うから」

エメ「でも、あの扉はカードか何かで開く鍵がかかってるみたいですけど、どうします?」

ニャル子「え?それって何か問題になるんですか?」

エメ「いや、鍵がかかってたら中に入れないじゃないですか」

クー子「問題ない。鍵なんて必要ないから」

二人の言葉を聞いて、真尋さんが苦々しい顔をした

エメ「それってどういう事ですか?」

エメがそう言い終わる前にニャル子が扉に手をかざし

ニャル子「オォォプンセサミィィィィ!」

扉を蹴り破った

エメ「え…えぇぇぇ…」

いろいろと予想外過ぎる…

何でただの蹴りで鉄扉を蹴り破れるのか、何のために手をかざしたのか、そして何より、なんでこの状況について行けてないのが私だけなのかという事だ

真尋「ハァ…相変わらずお前らは、開かない扉は壊すことしか考えてないのか…」

真尋さんは呆れているだけの様だ

ニャル子「さあ、扉は開きましたよ!入りましょう!」

そう言ってニャル子さんはさっさと部屋の中に入っていってしまった

エメ「(うーん、まあニャルラトホテプだし、出来てもおかしくないのかな…)」

そんな事を思いながら私もニャル子さん達を追って中に入った

 

研究所 実験室

研究員A「な、なんだ貴様ら!何処から入った!」

部屋に入るなり、研究員と思しき蛇人間に怒鳴られた

ニャル子「こまけぇこたぁいいんですよ!おとなしくお縄にかかりやがりなさい!」

研究員B「チッ!惑星保護機構の犬共か!しょうがない、あいつらを出せ!」

違う研究員がそう言って、もう一人の蛇人間に命令をした

すると、命令された蛇人間が部屋の奥へ消え、次に姿を現した時、後ろには蛇人間以外の生き物がいた

真尋「!?…なんだよ…あれ…」

蛇人間の後ろから姿を現したのは、1匹の犬と、一人の女性であった

しかも一匹と一人の体の一部が奇妙な動きをして蠢いている

研究員B「へへへ、こいつらは長い時間をかけてようやく見つけた『適合体』だ!今までは言う事を聞かない奴ばっかりだったがな、こいつらは、ちゃぁんと言う事を聞くんだぜ?」

エメは絶句した

犬の方はまだ弱弱しいながらも理性を保っている様に見える。しかし、女性の方は既に廃人と化しているのが、ここから見ても分かる

エメ「ひ、酷い…あの人、完全に心が壊れちゃってる…」

おそらく、考えるのも悍ましい様な人体実験の結果、精神が崩壊してしまったのだろう。今の彼女は無形の落し子で動かされている、いわば『入れ物』状態なのだという事が容易に想像できた

ハス太「人情の欠片もない…許せない!」

ハス太がそう言って攻撃姿勢をとった

クー子「少年、殺ってもいいよね?」

真尋「…ああ、殺っちまえ!さすがにこれは非道にも程がある!」

真尋のその言葉を切っ掛けとして、両者が動いた

犬「ヴゥゥゥゥゥ…ヴァァァ!」

犬が吠えながらハス太に襲いかかった

ハス太「ワンちゃん…ごめんね!」

ハス太がそう言って手をかざすと、犬は吹き飛んで、数m先に落下した

しかし、犬は起き上がった

ニャル子「やっぱり、無形の落し子が体に入ってる所為で、なかなか死んでくれませんねぇ…」

ハス太「なら、これでどうだ!」

そう言って再び手をかざすと、先程と比べ物にならない様な竜巻が起き、犬の体をズタズタに引き裂いた

犬「ギャゥン!」

竜巻が消えて地面にたたきつけられると、犬は短い断末魔をあげて今度こそ息絶えた

 

女「ア…ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!」

女がとてつもない叫び声を上げながらクー子に飛び掛かってきた

クー子「せめて、一発で楽に…」

そう思ったクー子だったが、クー子の放った火球は女に躱されてしまった

クー子「触手で無理やり回避した…」

そう、普通なら空中にいる時は躱しようのない一発だったはずだったが、火球が当たる直前に女の腕から黒い触手が伸び、女の体を横へずらしたのだ

クー子「…なら、零距離で撃つ」

そう言って、クー子は一瞬で女との距離を詰め、零距離で火球をぶつけた

女「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛!?」

すると、女は火達磨になって倒れた

しかし、息絶えたかと思ったのも束の間、今度はエメに襲いかかってきた

エメ「こっちに向かってきた!?」

エメは驚きながらも女の動きを見て、すんでの所で女の攻撃を避けた

エメ「あ、あっぶなぁ…」

エメが女の方を見ると、女は体勢を立て直し、再びこちらを攻撃をしようと構えていた

すると、今度は触手がサーベルの様に変化した

真尋「エメが狙われてる!」

クー子「エメ、今行く」

研究員B「おっと、そうはさせないぜ?」

研究員A「人間の実験体はなかなか手に入らねぇんだ、そう易々と殺されちゃたまんねえよ」

クー子「チッ!邪魔!」

クー子と真尋はエメを助けようとしたが、蛇人間達に邪魔をされてなかなかエメの所に辿り着けないでいた

女「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!」

再び女がエメに攻撃を仕掛けてきた

エメ「(この攻撃の仕方なら…こっちか!)」

瞬時に攻撃の太刀筋を先読みし、横に跳んだ

しかし、ここで予想外の事が起こった

エメ「え!?曲がった!?」

なんと女の触手が途中で曲がり、エメの避けた方へ追尾してきた

攻撃は真っ直ぐ来るという一般的な常識を持っているエメがその攻撃が避けれるわけも無く

ザシュッ!  ボトッ

エメ「あぁ!!…痛い!!腕がぁぁ!!…」

エメの右腕が斬り飛ばされてしまった

ハス太「エメちゃん!」

犬を倒した後すぐにエメの所へ急いだハス太とニャル子だったが、少し遅かった

ニャル子「とにかく止血を!私はその間あの女を止めときますから!」

ハス太「う、うん!分かった!」

ニャル子にそう言われたハス太は、服を少し破いてエメの腕をきつく縛った

ハス太「エメちゃん!ひとまず止血したよ!歩ける?……あれ?」

しかし、エメはその問いかけに反応しなかった

どうやら、怪我のショックで意識が飛んだようだ

ハス太「(よ、よかった…気絶しただけか…)」

ハス太がエメの止血を終えて少しすると、蛇人間達を倒し、縛り上げ終えて他のメンツが走り寄ってきた

ニャル子「エメさんの様子は?」

ハス太「一応止血はしたけど、かなり酷いね。今は気絶してるみたい」

ハス太がそう言った直後、エメが目を覚ました

エメ「うっ…痛っ!……」

クー子「エメ、動かないで、傷が開く」

エメ「やっぱり…私はあの女の人に腕を…」

右腕に激痛が走るが、先程よりはだいぶましだった。神経が麻痺してるのだろうか

真尋「とにかく、早くここを出た方がいい。新しい敵が来るかもしれない」

真尋さんがそう言って、私に肩を貸してくれた

エメ「ありがとう…ございます」

真尋「気にしないでくれ、僕は何の役にも立ててない。せめてこれ位はさせてほしい」

そんなやり取りをしながら私と真尋さんは出口へと向かった

そして、もう少しで出口という所で排気口から何かがエメの上に降ってきた

エメ「え!?なにこれ!?」

排気口から降ってきたのは無形の落し子だった

真尋「まだ残党が居たのか!?」

ハス太「真尋君!早くエメちゃんからそいつを引き剥がして!」

真尋はそう言われてエメから無形の落し子を引き剥がそうとしたが、無形の落し子はエメの右腕にどんどん入っていってしまった

エメ「ぜ、全部…入っちゃった…あ!」

先程の女の事を思い出し、エメは咄嗟に真尋から距離をとった

しかし、特に何も起こらなかった

エメ「(なにも…起こらない?)」

そんな事を思っていると、エメの右腕から黒い液状の物が溢れてきて腕の形になり、色もエメの肌と同じになった

エメ「何…これ」

ニャル子「エメさんの体に…無形の落し子が寄生しちゃいました…」

クー子「エメ、体に何か異変はない?意識が朦朧とするとか」

エメ「い、いえ、ないです。意識ははっきりしてますし…暴れる雰囲気もないです。強いて言うなら、腕の痛みが…消えました」

ハス太「ね、ねぇ、これってどういう事なんだろう?」

クー子「…考えられる可能性は2つ、一つはエメが適合体だった可能性、もう一つはエメが開けたあの瓶、今降ってきた個体があの瓶の中の個体だったとしたら、あの時エメの血を吸収したからエメの体に馴染みやすかった可能性」

ニャル子「とりあえず安全かどうか、試しに私が近づいてみます」

そう言ってニャル子さんが私に近付いてきた

しかし、何も起こることはなく、普通に私の所へニャル子さんは辿り着いた

ニャル子「…多分、大丈夫ですね。敵対してるなら私を襲ってくるはずでしょうし」

その言葉で私達はひとまず安堵の表情を浮かべた

ハス太「とにかく、腕の事は後で調べるとして、今は早く逃げよう!」

ハス太にそう促されて、再び全員走り出した

この後、ゲートを開いている途中で追ってきた蛇人間達に見つかったが、間一髪と言った所でゲートに逃げ込み、捕まらずに済んだ

 

八坂家

真尋「…どうだ、エメの腕の様子は?」

クー子「駄目、完全にエメの体と同化してて剥がれそうにない」

ハス太「切り落とせば別なのかもしれないけど、僕達を襲ってくるわけじゃないし、そこまではしなくていいんじゃないかな?」

真尋「だそうだ。どうする?エメ」

エメ「…なら、今の所は残しておく方向でお願いします。でも、皆さんを攻撃するようだったら遠慮無く切り落としてください」

ニャル子「ところで、右腕はエメさんの意志で動かせるんですか?」

エメ「えっと…はい、動かせるみたいですね」

ニャル子「変形などは?」

エメ「変形…ですか?ちょっと待ってくださいね」

そう言ってエメは右腕に意識を集中させ、手を金槌に変えるイメージを浮かべてみる。すると

ニャル子「これは…棍棒ですか?」

金槌にほど遠い形ではあるが、右腕が変形した。なるほど、こうやって形を変えるのか

クー子「完全ではないけど、ちゃんとエメの意志で動いてる」

ハス太「エメちゃん」

ハス太に呼ばれてエメが振り返ってみると、急にハス太が殴り掛かってきた

すると、エメのが避けようとする前に右手がエメの前に広がりハス太の攻撃を防いだ

エメ「か、勝手に手が動いた…」

ハス太「…やっぱり、この無形の落し子自体にも意志があるみたいだね。宿主を守ろうと咄嗟に防御したみたいだし」

真尋「という事は、今エメの中にはエメの意志と、無形の落し子の意志の二つが存在してるのか?」

ハス太「そう言う事だね」

真尋「一つの体に二つの意志が同時に存在できるもんなのか?」

クー子「異例の出来事だから、はっきりとは分からない」

ニャル子「まあ、いくら考えても答えは出ませんし、今は無形の落し子の事は保留にしておきましょう。それより、どうせならその無形の落し子に名前を付けませんか?」

真尋「何で名前を付ける必要があるんだ?」

ニャル子「だって、ずっと『無形の落し子』って呼んでたら長ったらしいですし、名前があった方がきっと愛着が湧きますよ」

クー子「どうする、エメ?」

エメ「…じゃあ、リキッドなんてどうですか?」

ハス太「へぇ、悪くないんじゃない?」

真尋「ああ、いい名前だな」

こうして、エメの右腕に寄生した無形の落し子は『リキッド』と名付けられた

 

To Be Continued




邪神の存在を確認してもなお人間としての常識を捨てきれていなかったエメは右腕を失ってしまう。しかし、これを好機とエメは考え自分も戦力になろうと努め、ニャル子達に特訓を申し出る
次回【生みの親】
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