しかし、その様子を見ている者がいて…
あれから数日経って、ある程度リキッドを扱うのに慣れてきたエメであったが、未だに細かい動作や変形は上手く出来ないでいた
エメ「うーん、どうしよう…」
ニャル子「エメさん、どうかしたんですか?」
エメ「ちょっとリキッドの事で悩んでいまして」
クー子「リキッドの事で?まだ動きがぎこちないんですか?」
エメ「いえ、動き自体は日常生活に支障ないレベルなんですけど、ときどき私の意志とは別にリキッドが変形するので、何度か学校でも危ない時があったので」
ニャル子「なるほど、最近エメさんがよく机の引き出しに手を入れてるとは思ってましたけど、それが理由だったんですね」
エメ「ええ、いつか皆にバレるんじゃないかってヒヤヒヤしっぱなしですよ…」
そんな話をしていると、ハス太がリビングに入ってきた
ハス太「二人とも、何の話をしてるの?」
ニャル子「リキッドが時々勝手に形を変えるので、周りにバレそうで怖いそうですよ」
ハス太「あぁ、確かにそれは困るね…あっ、じゃあルーヒーさんに協力してもらったら?」
ニャル子「ルーヒー?なんでまたあの魔法老女なんかの協力なんですか?」
ハス太「だって、ルーヒーさんなら精神と時のh」
ニャル子「ストォップ!それ以上いけませんハス太君!」
エメ「(今何か著作権的な何かに引っ掛かりそうな用語が聞こえた気が…)」
ニャル子「まあ、確かにあれならエメさんもゆっくりリキッドの調教をできますね」
エメ「あの、ルーヒーさんってだれですか?(調教って…)」
ニャル子「ああ、ルーヒーって言うのは、私達と同じ宇宙人で、クトゥルフ星人の女ですよ」
ハス太「その人が持ってる空間で外の365倍の時間を凝縮して過ごせる部屋を持ってるんだよ」
なるほど、確かに某龍球にある、あの部屋そのものだ
エメ「確かにその部屋なら、こっちの世界よりかなり高い密度でリキッドの特訓ができますね」
ハス太「ただ一つ問題があるとすれば…ねぇ?」
ニャル子「ええ、あれが問題ですね」
エメ「どうしたんですか?何か問題があるんですか?」
ニャル子「ルーヒーは変わったものが大好きで、その…最悪エメさんが襲われる可能性が…性的に」
ハス太「無形の落し子を適合させた不思議な人間なんて大好物だろうしね」
エメ「そ、そうなんですか…でも、それ以外早急にこの問題を解決できそうにないですし、一か八かでいきましょう」
ハス太「わかった。じゃあ行こうか」
そう言って3人はルーヒーの家へと向かった
ルーヒー宅
ルーヒー「えっと貴女達、なんの用かしら?というか、この子にいたっては誰よ?」
ハス太「エメちゃんだよ。今日はちょっとお願いがあってきたの」
ルーヒー「お願い?またろくでもない事じゃ無いでしょうね?」
ニャル子「エメさんの特訓の為に、前に私が使わせてもらったあの空間を貸してほしいんですよ」
ルーヒー「は?…まあいいわ、話は中で聞くわ」
そう言ってルーヒーは家の中へと3人を入れてくれた
ルーヒー「で?特訓の内容は何?歌の練習とか、そんなしょうもない話だったらシバくわよ?」
ニャル子「エメさん、右腕を見せてあげてください」
ニャル子さんに言われ、私はルーヒーさんに右腕を見せた
ルーヒー「何?右腕に何かあるのかしら?」
ルーヒーさんが私の右腕を見た事を確認してから、私は右腕の形を斧の様に変えた
ルーヒー「え!?なにこれ?」
ハス太「無形の落し子だよ」
ルーヒー「無形の落し子!?この子人間よね?もしかして無形の落し子に適合したの?」
エメ「ええ、まあ、そうみたいです」
ニャル子「まあこの通り、エメさんの右腕は無形の落し子と同化しているわけですが、これが人前で暴れたら大惨事になるので、特訓をしたいという訳ですよ」
ルーヒー「そう…分かったわ。部屋を貸してあげる」
ハス太「あれ、えらく聞き分けがいいね」
ルーヒー「本心を抑えてるのよ」
ニャル子「ほう、まあ言うだけはタダです。言ってみてくださいよ」
ルーヒー「今すぐ解剖したい。接合部はどうなってるのか知りたい。どれほどの傷までセーフなのか研究したい」
ニャル子「どれも却下で」
ルーヒー「分かってるわ。でも、ニャルラトホテプと私も部屋に同伴させてちょうだい。それが部屋を貸す交換条件よ」
エメ「それは別に構いませんよ」
ルーヒー「交渉成立ね」
そう言ってルーヒーさんは邪悪な笑みを浮かべた。あれ?もしかして私今ピンチ?
数時間後
エメ「ハス太君、ただいまです」
ハス太「おかえりなさい。一人ゲームは悲しいもんだね…」
ルーヒー「誰か一人は外に居ておかないと、誰かが来た時に分からないから、しょうがないわ」
ハス太「まあいいけど…で?成果は出た?」
エメ「はい、かなり精密な動きや変形も出来るようになりましたよ。リキッドもだいぶん私の言う事を聞いてくれるようになったので、多分これでもう無闇に変形することはないかと。あと、今後の事も考えてお二人に戦闘スキルも叩き込んでもらいました」
ハス太「戦闘スキル?もしかして、何かあったら僕達と一緒に戦うつもりなの?」
エメ「平穏な日常を過ごしたいと言った反面、こうなってしまった以上私も神話生物みたいなものです。特訓中の怪我とかを見る限り、リキッドがいることでかなり体も丈夫になってるみたいですし、出来ることはしたいんですよ」
ルーヒー「特訓中にも思ったけど、この子かなり精神力が強いわ。普通無形の落し子と同化したなんて分かったら発狂してもおかしくないもの。それを周りの役に立てると考えるなんて大した性格してるわ」
ニャル子「しかも、エメさん自身も結構身体能力が高いみたいで、本気は出しませんでしたけど結構私の攻撃も普通に避けてましたし、今なら中級神話生物位なら難なく倒せるんじゃないですかね?」
エメ「いやいや、それはさすがに買いかぶり過ぎですよ。倒せたとしてミ=ゴ位ですよ」
ハス太「普通の人はそのミ=ゴでさえ倒せないと思うんだけどね…」
その後、ルーヒーさんにお礼を言って私達は八坂家へと帰った
次の日
学校 屋上
真尋「お前ら、昨日は何処に行ってたんだ?」
ハス太「ちょっとエメちゃんの特訓の為にルーヒーさんの所に行ってたんだよ」
真尋「特訓?なんのだ?」
ニャル子「カクカクシカジカってわけですよ」
真尋「いや分かんねえよ…」
クー子「なるほど、エメの腕が勝手に変形する事があるからそれを無くすために…」
真尋「何で分かるんだよ…」
エメ「まあ、その甲斐あって今はそんな様子はないですよ」
エメが昨日の事を真尋達に話していると
真尋「ん?曇って来たか?…!?違う!これは!」
あの日と同じく空が暗くなった
ニャル子「また敵襲ですか?この屋上は何か呪いでもあるんですかね…」
すると、突然屋上の床のに穴が開き,五人とも呑み込まれてしまった
少しすると、地面が見えてきた
エメ「皆さん!掴まってください!」
クー子「掴まるのは少年だけでいい」
そう言ってクー子さんは私の方へ真尋さんを投げた
そして私はリキッドで地面との間にクッションを作って衝撃を和らげた
エメ「し、死ぬかと思った…」
ふと後の3人の事を思い出して辺りを見てみると、3人はゆっくり地面に着地しようとしているところだった
エメ「(なるほど、ハス太君の風を地面に噴きつけてホバーする感じでスピードを落としてるのね)」
私に真尋さんだけ預けたのは、万が一風の範囲から外れた時の保険だったようだ
ハス太「ここは…どこだろう…」
クー子「まず学校の地下ではないのは確実」
すると、向こうの方にある洞窟から獣の唸り声の様な物が聞こえてきた
その声に反応してリキッドが少し動いたような気がした
ニャル子「今の声…行ってみましょう」
ニャル子に言われ、全員その洞窟の中へと入って行った
数分後
真尋「こ、こいつは…ツァトゥグア!?」
その洞窟の奥の間で唸っていたのは、ツァトゥグアであった
真尋の声に反応したツァトゥグアはこちらを見つめ、エメを見た瞬間攻撃してきた
ハス太「え!?何で急に攻撃してきてるの!?」
クー子「わからない、でもすごく怒ってる」
エメ「……なるほど、そう言う事ですか」
ニャル子「何か分かったんですか?」
エメ「ええ、ツァトゥグアはリキッドの事で怒ってるみたいです。おそらく、私の腕にリキッドが住み着いてるので、リキッド達を攫ったのが私だと勘違いしてるようです」
真尋「てことは…あの資料に書いてあった無形の落し子達の親って事か!?」
エメ「はい、さっきからリキッドを通して言葉が頭に流れて来てるんです。でも、私からの言葉が全然通じてないみたいです」
クー子「かわいそうだけど、殺るしかない」
そう言ってクー子はツァトゥグアに手をかざし、火球を放った
しかし、その火球は途中で消えてしまった
クー子「…何で邪魔をするの、エメ?」
エメ「わ、私じゃありません!リキッドが勝手に!」
突如リキッドがクー子とツァトゥグアの間に割って入り、攻撃を止めたのだ
再びツァトゥグアが攻撃をしてきたので、一旦私達は洞窟の小さな部屋のような場所へと逃げ込んだ
ニャル子「あのツァトゥグアが親だから、守ったと行った所でしょうか」
ハス太「で、でも、それならこっちはジリ貧だよ!?どうする!?」
ニャル子「…リキッドが受けきれない範囲か密度の攻撃でツァトゥグアを殺るしかないですね」
真尋「何言ってんだ!?そんなことしたらエメも巻き添えになるじゃないか!」
エメ「いえ、それでいきましょう」
クー子「エメ、意味分かってるの?ヘタすれば死ぬ」
エメ「ええ、ちゃんと分かってますよ。元を糺せば私の不注意が重なって今の状況になってるわけですし、構いませんよ」
そう、あの時私が瓶を不用心に開けなければリキッドは外に出なかった。あの時油断して大ぶりな避け方をしなければ腕を切り飛ばされるようなことはなかった。どちらも私自身の不注意が招いた事だ
おそらく死に対する恐怖が無いのは、既に3度も死を迎えているからと、転生できることを知っているからだろう
一瞬私がこの洞窟から逃げておけばとも考えたが、この空間に来た時からリキッドはある程度反応を示していた。おそらくかなり広い範囲でお互いの存在を感知できるのだろう。そんな中戦闘が始まれば、間違いなくリキッドはツァトゥグアを守る為にこの場へ戻り、私も一緒に戻って来てしまうだろう。つまり、私が巻き込まれるのはほぼ決定事項と言える
エメ「あくまでも最優先事項は真尋さんの護衛…ですよね?それなら元から護衛対象に入っていない私の生死は問う必要はありません」
ハス太「そ、そんなに簡単に命は諦めていい物じゃない!もっと自分を大事にしなきゃ!」
エメ「(しょうがない、あの事を話すか…)」
エメは自分が転生者であることを手短に話した
エメ「…という事なんです。私は死んでも記憶を引き継いで他の世界で生まれ変われるみたいです。だから、私の命は重要視しなくて大丈夫です」
エメはそう言ったが、ニャル子以外は納得しなかった
ニャル子「…仮に死んだとしても、恨まないでくださいね?」
エメ「はい、私の命の為に他の人を巻き込みたくないですから」
ニャル子「クー子、ハス太君、行きますよ」
クー子「ニャル子、いくらニャル子でもこの事に関しては容認できない」
ハス太「そうだよ!可能性上は生きて帰れるかもだけど、攻撃に巻き込まれたらまず確実にエメちゃんは死んじゃうんだよ!?」
ニャル子「二人とも…いい加減にしてください」
そう言って振り返ったニャル子の顔は…泣いていた
ニャル子「私だって…エメさんを助けたいですよ!でも、このままでは全員やられてしまうんです!エメさんの意を酌んであげてくださいよ!」
そう言って飛び出してしまった
その後、エメの方とニャル子が行った方向を何度か見た二人は、ニャル子を追ってツァトゥグアの所へ走って行った
直後、右腕が引っ張られ半ば強引に私も部屋から引きずり出される
エメ「真尋さん!絶対出てきちゃだめですよ!」
エメは真尋へ忠告をしてから戦場へと消えて行った
ニャル子「チッ!もうエメさんが来ちゃいましたか…二人とも、覚悟はできてますか」
クー子「…もう、運に任せる」
ハス太「そうだね、1%でも確率があるなら、それを引き抜いてやればいいだけだもんね」
ようやく2人の覚悟も固まったようだ
エメ「さあ3人とも、本気でかかってきてください!」
エメのその言葉を合図に3人が突っ込んできた
3人は別々に攻撃してくるが、すべてリキッドに防御されてしまった
ニャル子「…物理では効き目がありませんね」
そう言うと、3人とも戦闘形態になってそれぞれの武器で攻撃してきた
すると、今度は先程までとは嘘のようにリキッドに攻撃が通るようになって、いくつかは私の体も直撃していた
クー子「エメ!」
エメ「攻撃の手を緩めないでください!今はリキッドとツァトゥグアを倒すことだけに集中してください!」
そう言って、エメは再びリキッドがツァトゥグアを守ろうとするのをどうにかして妨害しようと努めた
しかし、どれだけ止めるように命令を送っても一向にリキッドは行動を止めなかった
エメ「(やっぱり、私が死なない限りはツァトゥグアを守ろうとするのね)」
しかし、だんだんリキッドの動きがゆっくりになってきた。おそらく、エメの体の状態もリキッドの行動に影響しているのだろう。エメが疲弊するにつれリキッドの守備はあまくなってきた
ハス太「少しずつだけど、ツァトゥグアに攻撃が当たるようになって来たよ!」
エメはようやく体の自由がきくようになってきたため、その場から少し逃げた
エメ「(かなりボロボロだけど、このままいけば死なずに済むかもしれないわね)」
そんな事を思った次の瞬間
エメ「…え?」
最後の力を振り絞ったという言葉が本当にしっくりくる程、急にリキッドがツァトゥグアの前で壁の様に広がり、私も再びツァトゥグアの前に引き戻されてしまった
広がったとはいっても弱弱しい壁であり、ほとんど意味の成さない物である
結果、私はクー子さん達の攻撃の前に晒され、ツァトゥグア諸共攻撃に貫かれた
ツァトゥグアは断末魔を上げながら倒れ、動かなくなった
すると、地面や壁が歪み始めた
クー子「創造主が死んだから、空間が不安定になってる。早くエメを回収して逃げないと」
そう言ってクー子はエメに近付いたが、反応が無かった
クー子「エ…メ?」
気絶しているのかと思い顔を見てみると、エメは既に事切れていた
ニャル子「やっぱり…死んでしまいましたか…」
ハス太「クー子ちゃん…行こう…もうすぐここも崩れちゃうよ」
クー子「……分かった」
後ろ髪を引かれる思いであったが、4人はエメの死体を置いたまま、この空間から脱出した
その後、居なくなってしまったエメはニャル子達の情報操作で転校したという事になった
しかし、今でも4人の中ではエメを忘れることなど出来ず、稀に食卓にエメの使っていた茶碗や皿を並べてしまうそうだ
To Be Continued
ニャル子達4人を異空間から出すために自分諸共ツァトゥグアを貫かせたエメは例に洩れず死んでしまった
しかし、今度の転生先はどうやら今までと様子が違うようだ
次回【ヴァンパイアロード】