それは何と敵襲だとのことで…
あれからいろいろと考えていたら、いつの間にか朝になっていたようだ
エメ「もう6時か…地下にいると朝日が昇ったかどうかも分からないのよね。当たり前だけど」
とりあえず、エメは一晩中考えていた事の確認をしようと、屋敷の外へ出た
エメ「…日陰はここまでか、ここならまだ何かあってもすぐ戻れる…よね?」
エメが一晩中考えていた事、それは吸血鬼の弱点である
エメが知っているだけでも吸血鬼には『日光に当たると灰になる・流水を渡れない・にんにくが嫌い・十字架が嫌い・銀製品が使えない・鏡に映らない』など、数多くの弱点が言い伝えられている
エメ「まずは、何かあっても再生できるリキッドの方から…」
エメはゆっくり日陰からリキッドを日向へと出していった
エメ「…あれ?何も起こらない…」
しかし、日向に晒されたリキッドに変化は起きなかった
エメ「吸血鬼になってないって事はないよね?」
そう思い左手をそっと日向に出してみると
エメ「…!?熱っ!」
皮膚が軽い火傷でもしたかのように爛れた
エメ「右手では焼けなかったって事は、右手は吸血鬼になってないって事なのかな?」
試しに右腕ごと日向に出してみたところ、肩口を過ぎるまで皮膚が焼けることはなかった
というより、右半身は焼けると言っても少しジリジリすると言ったくらいの物で、日向で行動するのに障害になる様な物ではなかった
エメ「でも、左半身は普通に熱いのよねぇ…リキッドで覆えば出れるかもだけど、そんな事して出歩いてたらすっごく目立っちゃうし…」
どうやら日向を歩く生活は諦めた方がよさそうだ
アーカード「お前、何をやってるんだ?」
エメ「あっ、マスター、これはその…自分の弱点を知る為の実験をしてまして」
アーカード「ほう、まあ死なん程度に頑張るがいい」
そう言ってマスターは普通に日向へ出て行ってしまった
エメ「え?なんで日向を…」
アーカード「ああ、私は何百年もかけて日光を克服したからな。どちらにせよ鬱陶しい事は変わらんがな」
吸血鬼最大の弱点の日光って克服できるもんなんだ…
ウォルター「エメ嬢、アーカード、朝食の準備が出来ましたぞ。早く来なさい」
エメ「分かりました。すぐ行きます」
アーカード「了解だ」
食堂
エメ「(あっ、思ったよりも普通…)」
エメはてっきり吸血鬼と言うだけあって血を使った禍々しい料理しか出ないのかと思っていた
しかし、実際に出てきたのは普通に食卓で出てくる様な食事でその一部に血が使われているような色合いの物がある程度だった
インテグラ「どうしたエメ、食べんのか?」
エメ「いえ、いただきます」
インテグラに促されたのでエメは慌てて席へ座った
エメ「(あっ、おいしい。何の肉だろう?)」
そんな事を思っていると、ウォルターさんが察してくれた
ウォルター「それは鹿の肉ですよ」
エメ「そうですか、ありがとうございます」
セラス「うっ…これ絶対血が入ってますよね?」
アーカード「何を言ってる。当たり前じゃないか」
セラス「デスヨネー」
エメ「(どうしたんだろう、血を飲むのに抵抗があるのかな?)」
かく言う私は気にせずそのスープを飲んでいる
すると、インテグラとセラスが少し意外そうな顔をした
セラス「えっと…エメだっけ?それ何の血か分かってる?」
エメ「なんの血?…豚かヤギじゃないんですか?」
アーカード「人間の血だ」
エメ「あら、そうでしたか」
セラス「いや、そうでしたかじゃなくて…抵抗ないの?」
エメ「別に豚の血だってヨーロッパの一部では飲むんですし、キリスト教的にも聖者の血を飲む描写があるじゃないですか」
インテグラ「変わった奴だ。少しは抵抗があると思ったから、からかってやろうと思ったんだがな」
なぜかインテグラ様がすこし拗ねた様な顔をしていた
アーカード「セラス、コイツの方がお前より吸血鬼してるんじゃないか?えぇ?」
セラス「そうかもしれませんけど…私だって吸血鬼になってまだ日が浅いですし…」
なるほど、セラスさんも最近吸血鬼になったばかりだから、人間の血を飲むのに抵抗があるのか
でも吸血鬼なんだから、血を飲まなきゃ弱って死ぬんじゃ…
インテグラ「後輩に先を越されんように気を付けろよ?いろいろと…な?」
なんだか、当主もマスターもセラスさんをからかって楽しそうだ
そんなこんなで食事が終わり、私は再び部屋へ戻ろうとしたところでマスターに呼ばれた
アーカード「エメ、ちょっとついてこい。セラス、お前もだ」
何か用なのかと思い、セラスさんと一緒にマスターの後ろをついて行く
すると、マスターは私達を大広間のような場所へと連れてきた
エメ「あの、何かご用でしょうか?」
アーカード「エメ、ここでセラスと戦ってみろ」
エメ「え!?セラスさんとですか!?」
セラス「そうですよ!何でエメと私が戦う必要が…」
アーカード「いいから、早くやれ」
そう言ってマスターは含みのある笑みを浮かべた
エメ&セラス「…分かりました」
そう言って私達は対峙した
エメ「セラスさん、いきますよ」
セラス「ええ、いつでもきていいよ」
エメ「(とりあえず初めての戦闘だし、今の自分がどれくらいの力があるのか確かめないと…)」
そう思い、足に力を溜め、セラスさんへ突進を仕掛けた。しかし
エメ「…え?」
ただ床を蹴っただけなのに、一瞬で私は反対の壁に突進をかましていた
セラス「あ、あっぶなぁ…」
アーカード「思った通りだ」
エメ「イタタタ…思った通りってどういう事ですか?」
アーカード「お前はまだ吸血鬼の膂力に慣れてない。このままではただ勢いに任せて特攻するだけの鉄砲玉にしかならんからな。セラスとエメの実戦を効率的にする為にこうした」
セラス「私でもあそこまでのスピードは出ませんよ!?エメって元からかなり膂力あるんじゃ…」
アーカード「ああ、私も今のにはちょいとばかし驚いた。だが、そんなことはどうでもいい、早く続きをはじめろ、日が暮れるぞ」
セラス「はい!」
エメ「(今度はもう少しリラックスして…)」
今度はうまくいった様だ
エメ「ハァ!」
しかし私の放った右ストレートはセラスさんに防がれてしまった
セラス「フッ、軽いよ!今度はこっちから!」
今度はセラスさんの方から仕掛けてきた
エメ「グッ…重い一撃ですね…」
セラス「まだまだぁ!」
セラスさんも吸血鬼と言うだけあって人間とは思えない様な重い一撃を次々と放ってくる
しかも、次の攻撃はかなり重そうだ
エメ「(これ以上くらったら、ガードしきれない!)」
そう思い、エメは右腕を変異させ大きな拳を作り、本来の射程より遠くのセラスを殴り飛ばした
セラス「なっ!?」
腕が肥大化するなどと思ってもいなかったセラスは、成す術なく吹っ飛ばされてしまった
アーカード「ほう、そんな事も出来たのか。まあいい、もうやめていいぞ」
エメ「セラスさん大丈夫ですか!?」
セラス「いったぁ…吸血鬼じゃ無かったら死んでたよ…」
エメ「すいません、咄嗟に手が出ちゃいました…」
セラス「いや、私も無防備に行き過ぎたから、気にすることないよ」
アーカード「やはりお前らはまだまだ未熟だな。半端者共め」
マスターはニヤニヤしながら私達にそう言ってきた
エメ「(吸血鬼の力…思ったよりも強大で扱い難いわね…少し力んだだけで壁まで跳んじゃう程とは思わなかった…)」
これはもっと訓練が必要だと感じたエメは、部屋へ帰った後も力の調整を出来るように特訓した
数日後
会議室
今起きている吸血鬼事件について円卓会議が開かれている中、一つの電話が入った
インテグラ「どうした?」
警備「インテグラ様!敵襲です!」
インテグラ「敵は何だ?」
警備「グ、グールです!ウワァァァァァ!?」ブツッ
インテグラ「グール…だと?まさかもう攻めてきたのか!?」
要人A「どうするのだヘルシング卿!こんな事聞いてなどおらんぞ!」
インテグラ「しばしお待ちを…おいウォルター、聞こえるか?何処に居る?」
ウォルター「今は地下の部屋にいます。状況は把握しておりますぞ。すぐにそちらへ行きます」
インテグラ「だが、どうやってお前たちはここに来る?道中はグール共でいっぱいだぞ?」
ウォルター「お嬢様は10年前、アーカードにどうやってお会いになられたので?」
インテグラ「…!ダクトか!」
ウォルター「ええ、今そちらへ行きます。しばしお待ちくだされ」
そう言って電話が切れた
インテグラ「少々お待ちください。すぐ私共の部下がここに参ります」
インテグラがそう言って数分後、天井のタイルが一枚外れ、老人1人と女2人が降りてきた
ウォルター「皆様お待たせいたしました。すぐゴキブリどもを駆除いたしますので」
インテグラ「率直に聞く、私達はもうおしまいか?」
ウォルター「ノー、私達に負けなどあり得ませぬ」
そう言って3人は扉から廊下へ出て行った
ウォルター「セラス嬢は後方からハルコンネンで私の支援狙撃、エメ嬢は流れ弾の処理及び私達の取りこぼしの抹殺をしてくだされ」
エメ&セラス「ヤー!」
そうこう言っているうちに敵が来たようだ
ウォルター「さっそく来たか…我々にたてついた事、後悔させてやる」
そう言ってウォルターさんが手を軽く振ると、何か一瞬キラッと光る物が見えた
エメ「(あれは…ピアノ線?…いや、鋼線か)」
鋼線を武器に戦うってアニメでしか見た事ないけど、本当に使えるのかな?
エメ「おっと、そんなこと言ってる暇じゃないよね。私は私の役目を果たさないと」
エメは会議室前のT字になっている所へ行き、敵が来ていないかを見た
すると、右方向から数人ではあるがラリッてるっぽい軍人がこちらへ向かってきていた
エメ「ここは通さないよ」
エメがグール達の前へ立ちはだかると、一斉に銃を構えエメを撃ってきた
エメ「全然照準が定まってないじゃん…」
相手は照準を定めず撃ってきているようで、あちらこちらに銃弾が飛んできていた。広範囲を防御するためリキッドを前方へ広げたエメだったが、結果的にそれがいい方へ転んだようだ
エメ「(ただの銃弾位なら難なくリキッドで止めれるわね)」
そのことを確認したエメは、反撃に出た
エメ「(これ位の力なら…)ハァ!」
エメはここ数日の特訓の成果を試すべく、脚へ力を入れてグール達の手前まで跳び、横薙ぎにグール達を切り裂いた
エメ「まだ改良の余地があるわね…(´・ω・`)」
グールは容易に倒せたものの、勢い余って壁まで軽く抉ってしまったエメは、少しショボンとした顔になった
エメ「さてと、ウォルターさん達の方はどうなってるかな……え?」
エメは先程の廊下に戻って愕然とした
エメ「廊下が…血塗れだわ。それに…セラスさんが別人みたいになってる…」
血を見るのが苦手で、屠殺なんてもってのほかの様に見えたセラスさんが嬉々としてグール達を虐殺していたのだ
すると、突然インテグラ様が部屋から出てきてセラスさんへ飛びついた
インテグラ「セラス!…もういい…十分だ!やめて…くれ…」
セラス「インテグラ…様…」
一瞬私はインテグラ様が何故セラスさんを止めているのか分からなかったが、セラスさんの手に握られている物を見て理解した
エメ「あのグールの服…ここの人だ」
どうやら、警備の人も吸血鬼に襲われてグールになっていたようだ
そうこういっているうちに、ウォルターさんも私達の所に戻ってきた
ウォルター「お嬢様、この部隊の頭と思しき者を捕らえました」
インテグラ「よし、連れてこい」
ウォルター「承知いたしました」
そう言うと、ウォルターさんは壁の影から男を引きずってきた
ヤン「よぉ、ビッチ」
バン!バン!バン!
インテグラ「軽口を叩くな、私は怒っている」
銃で撃たれたというのにヤンは小さく震えながら笑っていた
インテグラ「お前らは何だ?誰の差し金だ?答えろ!」
エメからはインテグラの後ろ姿しか見えないが、かなり怒っていることが容易に分かり、エメも軽くビビっていた
ヤン「あんたらさぁ?現在進行形で俺の情報をあの人らは知ってるんだぜ?今すぐにでもゲロっちまいそうな俺を生かしておくわけないじゃん?」
ヤンがそう言った直後、ヤンが青い炎に包まれた
ヤン「やっぱりな!一つだけ教えてやるよビッチ!」
そう言って一呼吸置いた後、ヤンは一言だけ単語を呟いた
ヤン「ミレ…ニアム」
そう言った直後、ヤンは燃え尽きた
その後、せめてもの落し前だと言ってアイランズ卿がインテグラにグール兵に止めを刺させてこの事件は幕を閉じた
次の日
ウォルター「ロンドン本部ヘルシング機関の者97名のうち、生存者は11名、うち8名は本部に居なかった為生きているだけで実質、先日の生存者は私とお嬢様、エメ嬢の3人だけでございます」
インテグラ「…アーカードとセラスはその中に入っていないのか?」
ウォルター「あの二人はすでに死んでいますゆえ」
インテグラ「そうだったな…」
ウォルター「そしてこれがミレニアムについての資料でございますが、それらしい情報は皆無でございます」
インテグラ「いや、一つだけ心当たりがある」
ウォルター「ほう、それはどういったもので?」
インテグラ「覚えていないか?半世紀前、お前とアーカードで潰しにかかったが、あと一歩という所で頭首を逃したそうじゃないか」
ウォルター「まさか!?」
インテグラ「ヒトラー、ドイツ、ナチス第3帝国だよ」
To Be Continued
今回の襲撃を目論んだ相手は50年前アーカード達が仕留め損なったナチス軍の残党だった
しかも、こちらと同様吸血鬼を慕えているという事が今回の襲撃でわかり、警戒を強める事となった
次回【エメの目に映る物】