すると、寝起き早々に円卓会議に同行しろと言われて…
エメ「ん…ここは…」
セラス「本部だよ。エメが寝てる間にマスターも迎えに来てくれて、本部まで帰ってきたんだよ」
エメ「そうでしたか」
アーカード「起きたか、エメ」
エメ「はい、今しがた」
アーカード「寝起き早々だが、お前達二人にはこのロンドンの警護、特に本部は死守しろとの命令が出た」
セラス「ロンドンの警護及び本部の死守…ですか?」
アーカード「私が帰ってくるまでこの本部だけは死守してもらわないと私の寝床がなくなる。頼んだぞ」
エメ「マスターは何処かへ出かけるんですか?」
アーカード「ああ、ちょっとばかし遊覧船へ特攻をしろと言われたものでな」
マスターは不敵な笑みを浮かべながらそう告げた
エメ「という事は…ミレニアムとかいう組織が攻め入ってくるって事ですか?」
アーカード「ああ、そうだ」
ウォルター「アーカード、EXP-14LIEの準備が出来たぞ。早く行きなさい」
アーカード「了解した。クックック」
ウォルター「セラス、君は屋上からいつでも撃てるようにハルコンネンⅡを整備、設置をしておきなさい」
セラス「ヤー!」
セラスさんは返事をすると、即刻部屋を出て行った
ウォルター「エメ、君は私と一緒にお嬢様の護衛だ。円卓会議では周りの方に無礼が無いように頼んだぞ。早く着替えなさい」
エメ「ヤー!」
私は返事をすると、すぐに着替え始めた
インテグラ「エメ、ウォルター準備はできたか?」
ウォルター「ええ、すでに準備はできておりますよ」
エメ「私も大丈夫です」
インテグラ様は私の返事を聞くと、さっさと外へ歩いて行った
どうでもいいけど、ウォルターさん私が着替えてるのに部屋から出ようともしなかったな。女として見られてないんだろうか…やっぱり胸なのかな…
円卓会議
インテグラ「…という事です」
諜報員A「インテグラ様!ロンドン市街にて吸血鬼と思われる者が出現しました!」
インテグラ「どうやら来たようですね。それでは私はそろそろ…」
そう言ってインテグラが席を立とうとすると、扉が急に開き、数人の兵隊がインテグラに銃を突き付けてきた
インテグラ「…なんの真似だ?」
中尉「変な気は起こさないでいただこう、ヘルシング卿」
ペンウッド卿「なっ、何事かね!?」
中尉「うるさい!こういう事ですよ!」
そう言って口を開けた中尉の歯は鋭く、吸血鬼になっていることを表していた
中尉「それにしても、私達はラッキーだ!まさかヘルシング卿も捕らえる事が出来るとは!」
ヘルシング「ラッキー?…クックック」
中尉「なにがおかしい!」
ヘルシング「いや、お前達は生まれて間もない吸血鬼、それに対し私達はその殲滅機関だ。その私達を前にラッキーとは些か滑稽でね」
中尉「き、貴様!」
そう言って発砲しようとした中尉だったが、発砲する直前に中尉とインテグラに銃を突き付けていた兵の腕が消えた
中尉「なっ!?私の腕がぁぁぁ!!!」
インテグラ「エメ、ウォルター、仕事だ」
ウォルター「承知いたしました、お嬢様」
エメ「ヤー!」
そう言って私達は戦闘態勢に入った
中尉「そ、それ以上近付くな!撃つぞ!?」
中尉がそう警告すると、中尉の後ろに居た兵がこちらに銃を向けてきた
ウォルター「おぉ怖い怖い、撃たれてはいけないし、これ以上近付かないでおこうかエメ?」
エメ「そうですね。だって…」
エメ&ウォルター「もう射程範囲内ですし(だから)ね」
その直後、私達から見て銃を向けていた左半分の兵が細切れになって息絶え、右半分の兵は黒い影の様な物に呑みこまれてしまった
中尉「な、何が起こった!?私の兵は何処に行った!?」
エメ「さあ、もうお前だけだぞ?早く降参してミレニアムの情報を吐け」
中尉「し、知らない!私はまだ仲間になって日が浅いから何も知らないんだ!」
エメ「そうか…インテグラ様、こいつどうします?」
インテグラ「お前の好きにすればいい」
エメ「そうですか。分かりました」
すると、中尉はリキッドに呑みこまれていった
中尉「お、俺は知ってる事を話したじゃないか!助けてくれ!」
エメ「お前は『何も知らない』という事しか言ってないじゃない。それじゃ何も話さなかったのと同じ、役立たずなのよ。それに、誰もお前を助けるなんて一言も言ってないわ」
どんどん中尉はリキッドに呑まれていき、リキッドの栄養になった
エメ「申し訳ありません、何の情報も得られませんでした」
インテグラ「いや、いいさ。それより、失礼ながら私はペンウッド卿、貴方が裏切り者だと思ってましたよ」
ペンウッド卿「わ、私は無能だが、卑怯者ではないよ。それより、君たち全員ここから早く逃げなさい」
諜報員B「な、何を仰るのですか!?」
ペンウッド卿「ここに残るのは最低限の責任者と人数だけでいい…と言うより、私だけでいいと思うんだ」
インテグラ「…どうやら、貴方の意見は通りそうもありませんよ?」
ペンウッド卿「え?」
そう言って辺りを見回すと、誰一人として逃げようとはせず、和気藹々とした雰囲気が見て取れた
ペンウッド卿「何をしている!早く逃げるんだ!これは命令だぞ!?」
諜報員C「貴方はいつも通りそこにふんぞり返っていればいいんですよ。あなた一人じゃ重い荷物さえ運べないんですから、仕事の邪魔になりますよ」
インテグラ「どうやら、ここに居る部下たちは貴方と心中する決心はついているようですね」
ペンウッド卿「えっ、えぇ…」
インテグラ「ペンウッド卿、これを貴方に渡しておきましょう。純銀製の銃弾が入ったライフルです。これなら奴らでも多少は効くでしょう」
ペンウッド卿「ありがとう、インテグラ」
インテグラ「…ご武運を願います」
そう言うとヘルシングの三人は部屋を出た
ロンドン市街 道中
インテグラ「ウォルター、さっきの事でかなり時間を取られた。早く本部へ戻るぞ」
ウォルター「はい、お嬢様」
先程から何体ものグール達を車で轢きながら本部へ車を急がせていたが、急にウォルターさんが道端に車を止めた
エメ「!?…どうしたんですかウォルターさん?」
ウォルター「…お嬢様、すぐに道を迂回し、本部まで帰ってください」
何事かと思い前を見てみると、前方の火事の中から大柄な男が一人こちらへ歩いて来ているのが見えた
ウォルター「今の私では、あいつをどれほど足止めできるか分かりませぬ。早く!」
エメ「私も一緒に…」
ウォルター「護衛が二人とも居なくなったらお嬢様が恰好の餌食だ!ここは私だけで足止めするから、お前はお嬢様の護衛をしなさい!」
インテグラ「ウォルター…死ぬなよ…」
ウォルターさんに促されて、急いでインテグラ様は運転席へと座り、車を発進させた
インテグラ「エメ、安全運転などに気を使ってられん!ちゃんと掴まっていろ!」
そう言ってインテグラ様はすごい勢いでカーブを曲がっていった
数分後
吸血鬼A「いたぞ!あの車だ!」
インテグラ「しつこい奴らだ…」
先程から、行く先行く先で吸血鬼に見つかって追いかけられて、その都度エメが撃退しているという状況が続いていた。しかし、回数を重ねるごとに人数が増えてきて少しずつエメ達は押され始めていた
そしてついに、防ぎきれなくなった何体かの吸血鬼の突進によって車が横転してしまった
インテグラ「チッ!エメ、早く車から出ろ!的になるぞ!」
そう言われて急いで車の外へ飛び出し、戦闘態勢を取った
吸血鬼B「ヘルシング卿、その首貰い受ける!」
インテグラ「ほう、いいだろう。相手になってやる!」
吸血鬼C「そっちのガキは捕まえてゆっくり遊んでやろうぜ!胸がちょいと貧相だが、それはそれでそそるぜ!」
エメ「下品な奴らだ!私が死ぬ時はお前ら諸共死んでやるさ!」
こんな危機的状況で言うのもなんだけど、気にしてる事を言わないでほしかった…
今現在、私達は10人の吸血鬼に前方を囲まれ、後ろは廃ビルの壁の為逃げ場はない。しかし、前方に敵が集中しているのは私的にはかなり幸運だ
吸血鬼B「お前らに逃げ場はない!観念して俺らに犯されろ!ハハハハ!」
そう言いながら1人の吸血鬼が飛び掛かってきた
エメ「1人で来るとは…愚かな!」
エメは左手で吸血鬼の攻撃を止め、拮抗状態をつくった
エメ「逃げられないのはお前らの方だよ!」
エメが右手を振り上げると、、吸血鬼達のいた場所の近くにある道路の亀裂から黒い液体が溢れだし、エメの目の前に居る吸血鬼を除く9人の吸血鬼達のうち、5人を閉じ込めた
吸血鬼D「な、なんだこの壁!?壊れないぞ!?」
吸血鬼E「しかも…縮んできてるぞ!つ、潰される!」
どんどん小さくなって、バレーボール位まで小さくなった黒いドーム状の壁はエメの右腕に戻っていき、手の形になった
エメ「さあ、これであと半分だ!」
エメがそう言った直後、残った5人の吸血鬼の頭に何かが刺さり、向かいの壁へ磔にされた
エメ「えっ、今の何!?」
???「カッカッカッカ!!」
すると、頭上から声が聞こえたので上を見てみると、マスターと同等位の大柄の神父が廃ビルから飛び降り、私達の前に着地した
インテグラ「お、お前は…バチカン特務局第13課イスカリオテの…アンデルセン!」
アンデルセン「ガーハッハッハッハ!なーにが相手になってやるだ?えぇ?聞いたかお前ら?」
そう言って廃ビルの上を見るアンデルセンとかいう神父の目線を追って上を見ると、何人も人が立っていて、続々と飛び降りてきた
アンデルセン「こいつらが!我らが怨敵、ヘルシングの当主よぉ!ミレニアムとかいう戦闘狂共にやってたまるか!お前らを倒すのは我らバチカンの役目だ!」
ヘルシング「…何のようだアンデルセン神父、私は今急いでいるのだが?」
アンデルセン「お前らの都合など知った事か!我らはお前を監視するよう、マクスウェルから命令させているんだよ!」
ヘルシング「そうか、なら私が勝手に目的地に行くというのならお前らは勝手についてきて、私を横取りされないよう守ってくれるというわけだよな?」
アンデルセン「あぁいいとも!お前らの護衛なんざ虫唾が走るが、横取りされる事に比べれば数倍良いからな!まあ命が惜しければ、精々我らが見失わぬよう歩いて頂こうか」
インテグラ「フッ、私もそちらの都合など知らんな。ミレニアムに横取りされたくなかったら死ぬ気で私を守るがいい。行くぞ、エメ」
そう言ってインテグラは歩き出した
エメ「ヤ、ヤー!」
アンデルセン「相変わらずお転婆な女だ」
そんな事を愚痴りながらインテグラの後をついて行った
そして、少し歩き、あと十数分歩けば本部に着くという所で頭上に何機ものヘリが飛んできたことに気が付いた
エメ「インテグラ様、あれは…なんでしょうか?」
インテグラ「あれは……!?マクスウェル!」
マクスウェル「被告!!『英国』!!被告!!『化け物』!!判決は死刑!!死刑だ!!」
インテグラ「マクスウェル…裏切ったな!」
アンデルセン「戦争の中で、裏切りなど日常茶飯事だ…だが!今マクスウェルがしている事は気にくわん!マクスウェル!お前は今、神に仕える事を辞めた!お前は『神の力』に仕え始めた!」
ハインケル「アンデルセン神父、マクスウェル様より、即刻インテグラ卿を拘束、連行せよと命令が下りました」
ハインケルがそう言うと、インテグラを囲んでいた教徒達が銃を向けた
エメ「インテグラ様、お下がりください!」
アンデルセン「…気に入らねぇな」
ハインケル「き、気にいる、気にいらないの問題ではありません!」
アンデルセン「気に入らねぇよ!」
その時、エメは視界の隅にチラッと赤い光を捉えた
直後、インテグラを囲んでいた教徒が吹っ飛ばされ、代わりにセラスが立っていた
セラス「…インテグラ様、お怪我は?」
インテグラ「無事だ。本部は?」
セラス「中隊規模の敵襲を受け、こちらの兵はほぼ全滅、ベルナドットさんも…しかし相手は殲滅いたしました」
インテグラ「そうか…分かった」
エメ「セラスさん、その左腕は…」
セラスの左腕は途中からリキッドの様な不定形になっていた
セラス「その話はあとでね」
インテグラ「お前、ベルナドットの命を吸って本当の吸血鬼になったな?」
セラス「…ええ」
アンデルセン「カッカッカ!なんて悍ましい!貴様も遂に本物の化け物になったか、セラス・ヴィクトリア!」
セラス「えぇ、私はもう何も恐ろしくない。アレクサンド・アンデルセン神父」
二人が睨み合いを始めて数瞬、私とセラスさん、アンデルセン神父の3人がほぼ同じタイミングで海岸を見た
すると、向こうから大きな母艦がこちらへやってきて、その甲板にはマスターが居た
そして、まだ数十mはあろうかと言う時点でマスターは甲板を蹴ってこちらへ跳んできた
アーカード「今、帰還した…マイマスター」
インテグラ「よく帰ってきた、我が下僕よ」
短い会話をマスターと済ませた後、インテグラ様は私達に向き直った
インテグラ「セラス、私とエメを何処か背の高い建物の上に連れて行っておくれ」
セラス「ヤー!」
返事をするとセラスさんは私達を掴んで近くの建物の屋上へと運んだ
直後、マスターを囲むようにイスカリオテの面々とミレニアムの軍勢がやってきた
アーカード「オーダーは何だ!インテグラ!」
インテグラ「私のオーダーは変わらない!私達の前に立ち塞がる全ての障害を叩いて潰せ!サーチアンドデストロイだ!」
アーカード「認識した、マイマスター」
インテグラ「拘束制御術式零号、解放!」
インテグラ様がそう宣言すると、マスターの体から幾万の目が写った液体が周りに流れ出し、その中から人間の様な物が大量に出てきて、どんどん周りの者達を飲み込んでいった
エメ「あ、あれは…」
インテグラ「アーカードの最終奥義、アーカードが今まで吸ってきた命を開放し、軍勢として使役する技さ」
その技はどんどん範囲を広げ、ロンドン市街を川のように縦横無尽に流れて行った
その風景は、まさしく「死の河」と言うのに相応しいものだった
To Be Continued
元から十分に強いと感じていたマスターがさらに奥の手を持っていた事に驚きを隠せないエメだったが、主を守るという任務を遂行するために頭の隅に追いやった
次回【好敵手】