転生者   作:フリッカ・ウィスタリア

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かなりの時間、亡者を吐き出し続けているアーカードに驚きを隠せないエメとセラス
一方、イスカリオテのヘリはミレニアムの攻撃を受けており…


好敵手

あれから数分経つが、いまだにマスターから溢れ出る亡者の軍隊は出現し続けていた

エメ「ど、どれほどの命を吸って来たんでしょうか…マスターは…」

インテグラ「私にも見当がつかん。だが、この命の量があいつの不死の理由と言っても過言ではない。これほどの命、狩りきれる輩などそうそう居たりせんからな」

つまり、マスターにとっては体をバラバラにされるほどの大怪我をしたとしても、数え切れない程ある残機が1減るというだけなのだろう。チートにも程がある…

だが私の予想が正しければ、その命を外に放出しているという事は、今マスターは不死でなくなった、ただの上級吸血鬼になっているという事で、この間に一度でも命を落とせば復活できないという事になる

 

一方その頃、、マクスウェルを乗せたヘリがミレニアムの攻撃によって墜落した

続々と亡者達がヘリの所に来るが、強化ガラスのボックスの中にいるようでマクスウェルまで亡者は辿り着けていなかった

マクスウェル「は…はは…どうだ亡者ども!これは特殊強化ガラスさ!攻撃できまい!」

余裕を見せたのも束の間、強化ガラスに一つのナイフが突き刺さった

セラス「あのナイフ…アンデルセン神父の!」

そう、特殊強化ガラスに突き刺さったのは、本来マクスウェルの味方であるはずのアンデルセンの銃剣だったのだ

マクスウェル「ア、アンデルセン!やめろ!」

アンデルセン「マクスウェル…お前は道を誤った…私は師としてお前を矯正する義務がある」

そう言ってもう1本銃剣を強化ガラスへ投げ刺すと、今度はガラスが割れ、防御壁としての役目を成さなくなった

その結果、割れた個所から亡者たちがガラス内に侵入していき、あっという間にマクスウェルを捕らえてしまった

マクスウェル「アンデルセン!!助けてくれぇ!助けて!先生!先生!!」

アンデルセン「さらばだ…わが友よ…」

その直後、マクスウェルは槍兵に串刺しにされ息絶えた

数分後、亡者たちが居なくなった後アンデルセンはマクスウェルの死体のある場所に戻ってくると、マクスウェルの目を閉じさせた

アンデルセン「マクスウェル…お前は馬鹿だ…大馬鹿野郎だよ…」

暫しの沈黙の後、アンデルセンは立ち上がり無線機を作動させた

アンデルセン「由美江、ハインケル、聞こえるか?」

由美江「はい、聞こえております神父」

アンデルセン「お前ら、バチカンに帰れ。命令だ…国を護れ!」

ハインケル「神父はどうなされるのですか?」

アンデルセン「俺は…あいつを…アーカードを殺る」

由美江「な、何をおっしゃるのですか!あの男との戦いに何の意味もございません!おやめください!」

アンデルセン「否!今しか…今しかないんだ!拘束術式を全て解いた一人の吸血鬼になった今のあいつでなければならんのだ!」

それだけ伝えるとアンデルセンは一方的に無線を切ってしまった

 

さらに数分後、遂にマスターは亡者を全て放出しきったようだ

そして立ち上がったマスターの姿は、鎧に身を包み、髭を伸ばした戦士になっていた

インテグラ「セラス、アーカードの所まで連れて行っておくれ」

セラス「分かりました」

そう言うと、再びセラスさんは私達を抱えてマスターの前に飛び降りた

インテグラ「…アーカード、その姿で会うのは久方ぶりだな」

アーカード「ああ…ただいま、伯爵」

インテグラ「おかえり、伯爵」

何やら二人がよくわからない挨拶をしていると、後方からアンデルセン神父がすごい勢いでこちらへ走って来た

アンデルセン「アーカード!」

アンデルセンは出会い頭にアーカードへ銃剣を突き立ててきたが、アーカードが持っていた大剣によってその攻撃は防がれた

アーカード「見事だ…わが宿敵よ…」

アンデルセン「我らは神の代理人 神罰の地上代行者 我らが使命は 我が神に逆らう愚者を その肉の最後の一片までも絶滅すること…AMEN!!!」

インテグラ「まったく…落ち着いて会話も出来やしないじゃないか…セラス、エメ、戦いに巻き込まれぬよう私を護衛しろ」

セラス&エメ「ヤー!」

 

数分後、戦況はややこちらに傾きつつあった

アーカード「さあ、もう終わりか?」

アンデルセン「ほざくな!まだ腕が千切れただけじゃねぇか!」

そう言ってアンデルセン神父は懐から一つの箱を取り出した

アーカード「ほう…それがお前らの切り札か?」

アンデルセン「ああ、文字通り『最後の切り札』さ」

そう言ってアンデルセン神父は箱を握り潰し、中身を取り出した

アーカード「それは…釘か。聖遺物、『エレナの聖釘』」

アンデルセン「そうだ!」

アーカード「やめろ!アンデルセン!」

おもむろに、その釘を自分の胸に刺そうとするアンデルセン神父を見てマスターが叫んだ

アーカード「化け物になるつもりか!?それでは俺と同じだ!神を肯定した化け物と、神を否定した化け物の違いでしかなくなる!俺達の闘争を遥か彼方へ追いやるつもりか!」

マスターが何やら必死でアンデルセン神父を説得し始めた

アーカード「俺の様な化け物は…人間に殺されなければならないんだ…だが、お前が人間でなくなったら、次の好敵手が現れるのはいつになるんだ?…やめてくれ…人間…私のようになるな…」

半ば懇願する様にアンデルセン神父を説得していたマスターであったが、遂にアンデルセン神父は自分の胸にエレナの聖釘を突き刺してしまった

アーカード「な!?…このっ…この大馬鹿者がぁぁぁ!!!」

直後アンデルセン神父の頭がジャッカルの弾によって吹き飛ばされた

しかし、その傷口から茨が生えて、顔の様な形に再生していった

その時、アンデルセンの命令を破って現場に駆けつけたイスカリオテの面々は、アンデルセンの姿を見て、慄いた

ハインケル「あれが…アンデルセン神父だというのか?…」

ハインケルがそう言うのももっともで、アンデルセン神父の顔は既に人間のそれを超越しており、元々人間だったなど信じられない有様であった

アンデルセン「ア゛ァ゛ァ゛ァァァァ!!」

完全に化け物と化したアンデルセン神父がマスター目掛けて飛び掛かってきた

アーカード「お前は、私が倒されるに値する唯一の人間だった!だが、今お前は化け物に成り下がった!そのお前を私は許さん!」

アーカードの方も激昂しながらアンデルセンに突進し、拮抗状態を作った

アンデルセン「AMEN…AMEN!AMEN!!AMEN!!!」

人の身を捨てた今でも聖職者としての人格が微かに残っているのか、何度も聖書の最後の言葉を叫び続けていた

幾度となく交差する銃剣と銃弾が互いの体をすり減らしていくさなか、隙を突かれてしまったマスターの顔面に深々と銃剣が突き刺さり、火を噴いた

アーカード「なっ!?」

そのままマスターは膝をついて崩れ落ちてしまった

セラス&エメ「マスター!!」

セラスさんと私はマスターとアンデルセン神父の間に割って入った

しかし、アンデルセン神父からのびる茨に絡め取られてしまった

セラス「マスター!マスター!!」

そう叫んでいる間もどんどん私達の体には茨が絡みついていった

アーカード「うるさいぞ…セラス」

不意に、マスターからの返答があった

エメ「マスター!ご無事ですか!?」

アーカード「お前達に心配されるほど貧弱な体も性格もしていない」

そう言って起き上がった

アーカード「アンデルセン…私は今お前に倒されてもいいと思った。あの523年前のあの日暮の中でならお前に心臓をくれてやっても良かった…だが、もはや駄目だ」

マスターは自分と私達に絡みついている茨を引き千切り、刺さっている銃剣を折って、アンデルセン神父と少し距離を取った

アーカード「化け物を倒すのは何時だって人間だ…人間でなければならない!」

次の瞬間、一瞬でアンデルセン神父との距離を詰め、手をアンデルセン神父の胸へと刺し込み、心臓を引き抜いて潰した

エレナの聖釘を失った事によって欠損部を再生できなくなったアンデルセン神父は上半身のみを残して道に転がった

しばしの沈黙の後、マスターの方から口を開いた

アーカード「お前は私だ!!…私もこの有様だったんだ!!…俺も…この通りのざまだったんだ!!」

話し方だけでいうと激怒しているようにも思えるが、声色を窺う限り、マスターは怒っているというより、アンデルセン神父とかつての自分とを重ね合わせて泣いているようだった

アンデルセン「クックック…鬼が…泣くなよ…泣きたくねえから…鬼になったんだろ?なら笑えよ…いつものようにな…」

擦れた声でアンデルセン神父がそう言った

アンデルセン「私は逝く…お前は…憐れなお前はいつまで生きるのだ?」

アーカード「膨大な私の過去を膨大な私の未来が粉砕するまでだ…なに、すぐそっちへ行くさ…いずれリンボで会おう…」

マスターがそう告げた後、アンデルセン神父は息絶えた

アーカード「AMEN…」

???「AMEN」

すると、いつの間にか立っていた若い男性がアンデルセン神父の亡骸を踏みつけ、潰した

そして、チラッと何かが光ったかと思った瞬間、周りの建物がある一線を境に切断され、崩れた

由美江「誰だ貴様!!」

砂埃が晴れてきて、よく顔が見えるようになると、ヘルシング機関の3人は驚愕した

インテグラ「ウォ、ウォルター…なのか?」

そこに現れたのは、姿こそ若くなってはいるが、ヘルシング家執事ウォルター・C・ドルネーズだった

ウォルター「ええ、そうですとも…インテグラ…」

セラス「ウォルターさん!?あいつらにいったい何をされたんですか!?」

ウォルター「あいつら?ああ、ミレニアムの事か…」

ウォルターさんは一呼吸おくと話し始めた

ウォルター「捕らえられ、無理やり吸血鬼にされた後洗脳され、かつての仲間たちと戦わさせられている…とでも言えば君達は納得してくれるかね?」

エメ「その口ぶりから察するに…」

ウォルター「ええ、完全に私の意志だよ」

インテグラ「何故だ!?なぜ私達を裏切った!!」

ウォルター「何故?…そんな事、決まっている!私は半世紀余り前、前当主にアーカードと一緒にドイツ軍を潰しに行って帰還すれば、アーカードと戦わせてくれると約束されていた!しかし、その約束は守られることなどなかった!」

セラス「そ、そんな事の為に…」

ウォルター「ああそんな事さ!だが、私にとっては最重要の約束だった!だから、立場も帰る家も捨てて此処に立っている!」

少佐「よく言ったウォルターよ!戦争を終わらせようフロイライン、船の中に入って来たまえ」

後方から拡声器を通した声が聞こえたので振り返ってみると、私達の後ろへミレニアムの飛行船が不時着し、出入り口が開かれた

インテグラ「行くぞ、エメ、セラス!」

セラス「で、でも、マスターは…」

アーカード「残らなくていい、主の護衛を既に任せてあったろう?そちらの任務を遂行しろ」

エメ「…分かりました。マスター、ご武運を」

セラス「必ず帰ってきてくださいね…」

私達はマスターにそう告げると、インテグラ様の後を追い、飛行船の中に入って行った

 

飛行船

兵隊A「いたぞ!ヘルシング卿を殺せぇ!」

兵隊B「撃て!撃てぇ!」

こちらを見つけるなり、相手は銃を掃射してきたが、セラスさんの左腕で全て防がれた

兵隊C「とにかく撃て!数を撃てば数発は当たるやもしれん!」

兵隊D「ミレニアム万歳!」

ある程度進むと、相手は後方からも攻撃をしてきた。しかも、特攻を仕掛けてくる兵も出始めた

エメ「戦争狂の戯れに他者を巻き込むんじゃない!」

エメは特攻してきた兵を全員リキッドに取り込ませ、爆弾だけ投げ返した

セラス「船長室まであとどのくらい?」

ようやく敵の攻撃がやんだので、セラスさんが私にそんなことを聞いてきた

それに対し、私は船内にリキッドを巡らせた

エメ「えっと…そこの角を左に曲がって20m行った所です!」

私がそう言って船の奥を見ると、そこには帽子を深く被った、筋肉質の男がいた

すぐ戦闘態勢を取るセラスさんと私だったが、相手は襲ってくる感じがなかった

すると、男は何やら曲がり角の右奥を指さした

インテグラ「…お前らの主のいる場所を教えてくれているのか?」

インテグラがそう言うと、男は小さくうなずいた

よく見てみると、壁に部屋の方向が書いてあり、左は船長室、右は指令室のようだ

セラス「インテグラ様、エメ、先に向かってください!」

インテグラ「分かった…死ぬのは許さんぞ?セラス」

セラス「分かってます。インテグラ様…」

そう言うと、インテグラ様は男の所まで行き、「ご苦労」とだけ言って角の奥へと進んだ

エメ「…死なないでくださいね?」

無駄な死亡フラグたてちゃったかなとも思いつつ、私はインテグラ様の後を追った

 

To Be Continued

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