転生者   作:フリッカ・ウィスタリア

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学園生活部の三人と一緒に巡ヶ丘学院高校に同行することにしたエメはそこで役割を言い渡される
しかし胡桃が心配なエメは異議を申し立てて…


学園生活部

デパート-学校 道中

由紀「あそこが私たちの学校だよ」

エメ「あれが巡ヶ丘学院高校ですか…」

胡桃さんの運転する車の中でこの人達の学校についての事を聞いた

その話に違わず、学校が見えた時点でかなり設備が整っていることが見て取れた

確かにあそこなら長期間の立てこもりができるだろう

そうこう言っているうちに学校に着いた

胡桃「私があいつらを引き付けておくから、その間に校舎の3階まで走れよ」

由紀「了解!」

りーさん「わかったわ。あとで合流ね」

エメ「え!?胡桃さん一人で大丈夫ですか?いくらあいつらが遅いからって一人は危険ですよ!」

胡桃「いや、私はあいつらに襲われない。大丈夫だ」

エメ「それってどういう…」

美紀「後でちゃんと説明しますから!行きますよ!」

そう言って美紀さんが私の腕を掴み、半ば強引に引っ張っていった

その時胡桃さんの方を見てみると、なぜかゾンビ達は音を立てている胡桃さんを少しの間見るものの一向に襲おうとしないことに気が付いた

エメ「(何で胡桃さんを見てもあいつらは襲わないんだろう。何かあいつらの苦手な物でも持ってる…とか?)」

さっき美紀さんにあとで説明するって言われたし、今は校舎に逃げ込むことだけ考えよう

 

学校 学園生活部部室

私たちが学校の三階にある『学園生活部』と書かれた部屋に辿り着いてから数分後、胡桃さんも部屋に入ってきた

胡桃「な?大丈夫って言ったろ?」

エメ「ええ、そうですね(リスキーな事をする人だなぁ…さっきの雰囲気から見て相当信頼してるからこその行動なんだろうけど)」

そんなことを考えていたエメは呆れと同時にこの人達がお互いに信頼しているという事を実感した

エメ「それで、さっきの行動についての説明をしてもらいたいんですけど。何でゾンビ達は胡桃さんを襲わなかったんですか?あいつらの弱点になる物か近づけないような物でも持ってたんですか?」

美紀「いや、そう言うものじゃなくて…その…」

胡桃「あぁ、いいよ。私が自分で言うから」

そう言いながら胡桃さんが私の方に近付いてきた

胡桃「私は少し前に…あるゾンビに噛みつかれて、あのウィルスに感染したんだ。すぐに薬を使ったから、ゾンビにはならなかったんだけど…私の手、触ってみてくれ」

そう言って胡桃さんが手袋をはずしたので触ってみた

エメ「!?…冷たい」

胡桃「ああ、こうなってからあいつらが私を敵と認識しなくなったんだ。奇跡の産物としか言いようがないけど、あいつらは感染者同士で争う事はめったにない。だから私が校庭であんなに音を立てても、一瞬音に反応して私の方を向くだけで敵対してこなかったんだ」

エメ「なるほど、そんなことが…」

りーさん「ところでエメちゃん、貴女は家庭科は得意かしら?」

エメ「家庭科…ですか?まあ、一人暮らしだったので大体は出来ますけど」

りーさん「そう、じゃあここでの生活の炊事洗濯方面を担当してもらえるかしら?」

エメ「いいですよ。ところで、皆さんは何を担当してるんですか?」

りーさん「私は消耗品や電力の簿記をしているわ」

美紀「私はバリケードの点検、及びゾンビの行動の監視をしてます」

由紀「私は屋上の野菜の管理をやってるよ」

胡桃「私はバリケードの向こうに行って、バリケード近くにあいつらが押し寄せて突破されるのを防いだり、私たちの行動できる範囲を広める役割をしてるよ」

エメ「ゾンビ達の撃退なら私もお手伝いしたいんですけど」

胡桃「失礼を承知で言うが、エメは全然強そうに見えないぜ?それに、武器はどうするのさ?シャベルはこれしかないし」

エメ「ああ、その点は大丈夫です」

胡桃「なんだ?なにか武器があるのか?」

エメ「はい、デパートで手頃な物があったので」

そう言ってエメは右手を振ると、袖口から小型のサバイバルナイフが出てきた

りーさん「ちょっと待って!何でそんな危険物を持ち歩いてるの!?」

エメ「私、元々スラム街の出身なので身を守るためにナイフを持ってたんですけど、こっちに来た時に無くしちゃったみたいで、デパートから近い形のを持ってきたんです。8歳の時に養子に迎えられたので学校には行けましたけど、どうしてもこの癖だけは抜けなくて…」

エメを除く四人は皆思った「仮にスラム街の住人でもナイフは常備していないだろう」と

エメ「なので、一応身体能力はそれなりに高いですよ」

エメの何気なく言った言葉で胡桃の闘争本能に火が付いた

胡桃「ほう、なら…勝負してみるか?」

エメ「ええ、いいですよ。私も久しく体を動かしていないので体を動かしたいですし」

そう言って二人は部屋の外に出て勝手に話を進め始めた

 

数分後

学校 3階廊下

由紀「緊急企画、巡ヶ丘学院高校ガチンコ対決を始めます」

五人「イエ―!」

由紀「まずは50m走!ここから向こうの角まで約50m、二人とも、用意はいい?」

エメ「はい、大丈夫です」

胡桃「いいぜ!」

由紀「それじゃ行くよ?位置について、よーい…ドン!」

由紀の合図で二人ともほぼ同時に走り出した

そして、先にゴールしたのは…胡桃であった

りーさん「胡桃ちゃん6秒23、エメちゃん6秒77、かなり接戦だったわね」

胡桃「あ、危なかった…」

エメ「やっぱり体が鈍ってました」

胡桃「あれで鈍ってたのか!?(てか、こいつ全然息があがってねぇじゃん!)」

エメ「一番速い時なら6秒前半とか普通でしたし」

胡桃「ひぇー、恐ろしいタイムだな」

由紀「次の種目は、握力だよ!まずは胡桃ちゃん」

胡桃「フヌー!どうだ!」右46㎏、左45㎏「まあまあだな」

由紀「次はエメちゃん」

エメ「フ―…フン!」右54㎏、左52㎏

胡桃「まじかよ…男子でもそれなりに良い記録だぞ」

りーさん「ここまで一勝一敗どうし、次で勝敗が決まるわね」

由紀「最後の種目は…遠投(3階から)!」

エメ「あっ、これは私得意ですよ」

胡桃「奇遇だな、私もだ」

由紀「それじゃあ、距離は測れないけど、このソフトボールをそこの窓から投げて遠くに投げた方が勝ちね」

胡桃「それじゃあ私から行くぜ!おりゃー!」

りーさん「あら、かなり飛んだわね。校門近く(約100m地点)までいったわ」

胡桃「どうだ!なかなかの肩してるだろ?」

エメ「そうですね、じゃあ私も投げますね」

そう言ってエメはボールを掴んで、思いっきり投げた

りーさん「え?」

胡桃「なっ!?」

なんとエメの投げたボールは校門を超え、その前に建っている二階建て住宅の屋根(落下推定150m地点)に当たった

エメ「もっと行くと思ってたのにな…」

胡桃「いや、あれ以上行ったら野球部並だからな!?」

そんなこんなでスピードで辛勝、パワーで惨敗した胡桃は今までにまして練習に励むようになったとかなってないとか

 

数日後

私が学園生活部に来てからすでに数日、ここでの生活にも慣れてきた

あのあと、最終的に私は家事担当になった

何でも胡桃さん自身がそうしてくれないと心が折れそうなんだとか

エメ「皆さん、ご飯ができましたよー」

由紀「わーい、ご飯だー!」

りーさん「ありがとう。貴女が来てからだいぶ私の負担が減ったわ」

ちょっと前に聞いた話によると、私が来る前まで、この人が炊事洗濯もやっていたそうで、お母さんの様な存在だったそうだ

エメ「いえ、私に出来ることがあってよかったです。そう言えば、胡桃さんと美紀さんはまだ帰って来てないんですか?」

りーさん「ええ、もうすぐ帰ってくると思うんだけど」

エメ「…一応、私見てきます。確か二階の廊下でしたよね?」

そう言ってエメは部屋を出ていった

 

2階廊下

エメ「向こうのバリケードにはいなかった…なら、こっちにいるはず」

そんなことを呟きながら角を曲がって、エメは驚いた

バリケードの一部が崩れていて、ゾンビが二、三人入ってきていたのだ

エメ「まさか…」

最悪の事態が頭によぎったが、ひとまず目の前の敵を片付けることにした

エメ「(…すぐに楽にしてあげるわ)」

そんなことを思いながらエメはゾンビ達に襲いかかった

 

数分後

エメ「やっぱり、あいつら動きは鈍いのね」

ゾンビを片付けたエメは、崩れたバリケードを簡易に修復してからバリケードの向こうへ行った

エメ「胡桃さん達はどこに行ったのかな?」

エメが二人を探していると

???「…だ!とにかく…るぞ!」

エメ「ん?今なにか聞こえた気が…」

???「間違…す!…は圭…た!」

エメ「!…向こうか!」

自分の前方にある角の奥から二人の声が聞こえる事に気がついた

エメ「胡桃さん、美紀さん!無事ですか?」

胡桃「エメ!?お前なんでここに?」

エメ「おふたりの帰りが遅いので探しに来たんですよ!」

胡桃「ありがとう。とリあえずこいつを連れてバリケードまで逃げてくれ!」

美紀「でも、胡桃先輩!」

胡桃「早く行け!あいつらが来る!」

胡桃の声圧に気圧されてエメは美紀の手を掴みバリケードまで走った

 

2階バリケードB前

エメ「美紀さん、向こうで何があったんですか?」

美紀「私がバリケードの点検をしていた時に、向こうに見覚えがある人が居たんです」

エメ「見覚えのある人?」

美紀「…デパートで別々になってしまった私の友達です」

エメ「それを追いかけるために向こうへ行ったんですか?」

美紀「はい、でも、もう少しってところで大型のゾンビ犬に襲われたんです」

エメ「よく助かりましたね」

美紀「ええ、胡桃先輩が助けてくれたので。その後一旦ゾンビ犬は撒けたんですけど、やっぱり友達の安否がきになってしまって」

エメ「…分かりましたその人の写真か何かありますか?私が探してみます。どうせ胡桃さんに加勢するつもりですし」

美紀「それなら私も!」

エメ「美紀さん、貴女は今気が参ってるんですよ。私たちに任せて待っていてください。ね?」

美紀「…分かりました。これが友達の写真です。…必ず、帰ってきてくださいね?」

エメ「了解です」

そう言ってエメは再び今来た道を走っていった

 

2階廊下

胡桃「チッ!この犬っころ共、しぶとい!」

胡桃は少しばかり苦戦していた

理由は犬が2匹いた事と、大型犬だったのでスピードは遅いが、体力があってなかなかダウンしないのだ

反対に、多少すばやくは動けるものの、こちらは一人なうえに、だんだん体力も消耗してきているので断然不利になっていくのだ

救いと言えばこの二匹が統率をとって攻撃してきているわけではないという事だろうが、それでもかなりきついものがある

狂犬A「グルルルルル…ガウッ!」

胡桃「あぶねっ!」

狂犬の突進を横に飛んで躱すが、今度はもう一匹が噛みついてきた。それをシャベルで狂犬の顔を叩いて止めた

胡桃「(早くどっちか片付けないと、ジリ貧だな)」

そう思っている矢先、先程突進を仕掛けてきた狂犬が再度突進をしてきて、足に突進をもろに喰らってしまった

疲れもたまっていたこともあり、胡桃は遂に尻餅をついてしまった

胡桃「やばっ…」

狂犬B「ガァァァ!」

次の瞬間狂犬が胡桃に飛びかかってきた

胡桃「チッ!回避が間に合わない!」

そう思った胡桃はシャベルを盾のように構え防御態勢をとった

しかし、来ると思っていた衝撃はやってはこなかった

胡桃「?…なっ!?」

不思議に思いシャベルの陰から向こうを見ると、狂犬の額に小型のナイフが突き刺さっていた

エメ「胡桃さん大丈夫ですか!?」

胡桃「エメ!何で戻ってきた!?逃げろって言ったろ!?」

エメ「貴女はちょっと自己犠牲が過ぎます!もっと私を頼ってください!」

胡桃「…すまん。でも正直さっきは助かった」

エメ「どういたしまして。さあ、もう一匹いるんですから立ってください」

そう言って二人はもう一匹の狂犬と向き合った

狂犬A「グルルルル…」

仲間がやられたことに戸惑っているのか、狂犬は警戒態勢で構えているようだ

胡桃「そっちが来ないなら、こっちから行くぞ!」

そう言って胡桃さんが狂犬に向かっていったので私も合わせて走る

その途中でさっき投げたナイフを狂犬から引き抜いた。ナイフに血じゃない何かがついてるけど、今は放っておこう

すると、狂犬は胡桃さんの方に噛みつこうと飛びかかった

胡桃「甘い!」

それを胡桃さんはシャベルで叩き落とした。大型犬を叩き落とすって、なかなかの筋力だな…

エメ「(おっと、余計なこと考えてる暇はないや)」

胡桃さんに叩き落とされた狂犬がちょうど私の目の前に来た

エメ「(チャンス!)」

そう思い、狂犬の首にナイフを突き刺しとどめを刺した

胡桃「さっきも思ったけど、エメって意外とエグイ事をさらっとやるよな」

エメ「まあ、幼少期の慣れってもんですよ」

胡桃「おぞましすぎるわそんな慣れ!」

エメ「まあとりあえず、美紀さんにこの人を探してくれって言われてるのでちょっと探してみましょう。さっきまで二人がここにいたんですからそう遠くでもないんでしょう?」

胡桃「ああ、あっちにある教室に入っていったよ」

そう言って胡桃さんがその友達と思しき人が入っていった教室に案内してくれた

 

2-4教室

胡桃「ほら、あいつだよ。どうだ?本人っぽいか?」

エメ「確証はないですけど、確かに特徴は合ってますね」

だが、ここからでもわかる。あの人は感染して完全にゾンビになってる。おそらく意思の疎通も不可能だろう

エメはそっとそのゾンビに近付き、始末した

エメ「案の定…ゾンビになってますね。…この写真を見る限り、多分この人が圭とかいう人、本人でしょうね。美紀さんには別人だったと誤魔化して、美紀さんがいない所で火葬しておいてあげましょうか」

胡桃「いや、美紀には教えた方がいい。存在しない友達を探し続けるのはあまりにもかわいそうだ」

エメ「そう…ですか。じゃあ、他のゾンビに食べられたりしないように隠して、一旦戻りましょうか」

そう言って二人は学園生活部部室へと戻った

 

学園生活部部室

りーさん「二人とも!怪我はない!?」

胡桃「ああ、エメのおかげで無傷さ」

エメ「私も大丈夫です」

りーさん「良かった…二人とも?今度から無茶はしないでね?」

エメ&胡桃「はい」

美紀「ところで、私の友達は…」

エメ「…ほぼ間違いなく本人と言う人を見つけました。ただ…その人もゾンビ化していました。それも数か月単位で。おそらくあなたと別れて少しした頃には既に感染してたんだと思います」

美紀「そう…ですか。ありがとう‥ございます」

そう言って美紀さんは黙り込んでしまった

その日の夜、ゾンビが一番少なくなる夜中に私たち五人は2-4に行き、その死体を校庭で火葬した

 

To Be Continued




胡桃たちの帰りが遅い事に疑問を持ったエメが様子を見に来たおかげで部員が欠ける事を防ぐことができた。しかし、いつも平穏は保たれるとは限らなく、気を引き締めようと決心する胡桃だった
そんな中、学園生活部は新たな問題を抱える事となる
次回【食糧危機】
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