学園生活部部室
りーさん「このピンチ、どう切り抜けようかしら…」
何やらりーさんが困り顔で唸っている
エメ「りーさん、何かあったんですか?」
りーさん「ええ、もうすぐ貯蔵してる食糧が無くなりそうなのよ」
エメ「え?それなら、またあのデパートに取りに行けばいいんじゃ…」
りーさん「いくらなんでもあのデパートの食料品はもう使えないわ。いくら日持ちする物だっていっても、冷蔵されてもない物はもう腐ってるでしょうし…」
エメ「あー、そうでしたね…多分、他のショップの食料品もあらかた腐ってますよね…」
りーさん「間違いなくね。まあ、ペット食なら冷蔵関係なく長持ちするから食べれないことはないでしょうけど、嫌でしょ?」
エメ「私は昔が昔なので一向に構いませんけど、他の皆さんは嫌でしょうね」
りーさん「そうよねー。私もちょっと抵抗あるし…」
エメ「…いっそのこと、車で遠出をして比較的無事な地域を探しに行くって言うのはどうです?かなり博打になりますけど、もしかしたらまだ無事なお店や町があるかもしれませんよ」
りーさん「実をいうと、前に一回屋上の設備が壊れて少し遠くにある大学に行ったことがあったんだけど、全くここと変わらなかったわ。多分だけど、ゾンビパニックはこの地方…いや、最悪日本全域に広がっている可能性があるわ」
エメ「つ、詰んでるじゃないですか」
りーさん「本当に食糧が無くなったらペット食でも何でも食べるしかないけどね」
エメ「…りーさん、ひとつ聞きたいんですけど、ここの近くに家畜場ってありますかね?」
りーさん「家畜場?…うーん、どうだったかしら?でもなんで?」
エメ「確かゾンビウィルスは哺乳類はダメでも、鳥には感染しないんでしたよね?」
りーさん「そうらしいわね…ああ、そう言う事ね」
エメ「はい、鶏を手に入れて交配させれば、かなり時間はかかりますけど、時々なら肉も食べれますし、無精卵を生ませれば卵も手に入ります」
りーさん「確かにそれはいいアイデアかも…養鶏場か家畜場があればいいんだけど…」
エメ「まあ、仮にあっても鶏が檻の中にずっといた状態ならとっくに餓死してるでしょうけど、賭けてみませんか?」
りーさん「ええ、ちょっと調べてみるわ」
2時間後
りーさん「あったわ!結構遠いけど、家畜場と養鶏場が一ヵ所ずつあるわ!」
胡桃「よし!場所をメモして探しに行こうぜ!」
由紀「最近遠足が多くてうれしい限りだよ!」
美紀「先輩、遠足じゃないですよ」
エメ「(前々から思っていたけど、この人達楽しそうだなぁ)」
まあ、暗い雰囲気になっているよりは断然ましだけど、などと思いながら私は4人について行った
養鶏場
りーさん「多分、あの施設ね」
りーさんがそう言って指差した方向には確かに大きな養鶏場があった。もし鶏が生きていたなら、大収穫であろう
しかし、幾らなんでもそれは高望みし過ぎていたようだ
美紀「この施設、外からじゃわかりませんでしたけど、結構崩壊がひどいですね。奥の方に至っては潰れちゃってますし」
胡桃「しかも、無事な所も檻の中で餓死してる奴ばっかで、ほとんど腐っちまってる。どう頑張ったって食えはしないだろうな」
由紀「鶏さん達、一匹も生きてない…」
エメ「しょうがないです。もう一つの家畜場に賭けてみましょう」
エメがそう言うと、また5人は車に乗り込み、もう一つの家畜場へと車を走らせた
家畜場
鶏達「コッコケェェ!コケェェ!」
エメ「…いますね。しかも大量に」
胡桃「この設備、いくらなんでも都合がよすぎるな」
りーさん「おそらく、ここも資料に書いてた研究機関の手が回ってたんでしょうね」
確かに鶏はいた。しかもゾンビパニックが起きてから数か月は経っているというのに、ご丁寧に檻の中で自動飼育までされていた
明らかに人が数ヵ月から最悪数年いなくなってしまう事が想定されている設備設計である
美紀「まあ、早く何匹か頂いて帰りましょう。ここも確実に安全とは言えませんし」
りーさん「そうね、4~5匹ぐらい頂いていこうかしら?」
その時、最後尾にいたエメは建物の奥から何かが近づいてくる音を聞いた
エメ「皆さん、向こうから何か来てます!」
エメが4人にそう言った直後、右にある扉から何かが飛び出してきた
それは猿だった。しかも雰囲気から察するにウィルスに感染しているようだ
美紀「あの猿様子がおかしいですよ!多分ウィルスに感染してます!」
胡桃「チッ!よりにもよって猿かよ!」
エメ「とにかく3人は安全な場所に隠れてください!」
エメがそう言うと、胡桃とエメを残して3人は身を隠した
猿「ガァァァ…キィィィ!」
猿が叫び声を上げながらエメの方へ襲いかかってきた
エメ「その汚い手で触らないで!」
そう言ってエメは猿の攻撃を躱し、すれ違いざまに切りつけた
猿「ギャァウ!」
だが、少し血が出ただけでそこまで大きな傷にはなっていなかった
エメ「この猿、なんか皮膚が固いですよ!」
胡桃「ウィルスで体が強化されてるってか?バイオハザードじゃねぇか!」
今度は胡桃がシャベルで攻撃を仕掛けた
だが、猿はその攻撃を躱し、胡桃を飛び越えて行った
胡桃「この猿公が!躱すんじゃない!」
エメは猿が着地する場所に先回りして着地すると同時に攻撃した
しかし、これも避けられてしまった
エメ「この猿、知能がありますよ!私達の動きを覚えて攻撃してきてます!」
一応エメ達の攻撃が時々攻撃があたることはあるのだが、どれも決定打にならず、仕留めることができないでいた
しかし、遂に胡桃のシャベルが猿の顔に直撃し、猿が動かなくなった
エメ「一応の為、とどめを刺しておきましょう」
そう言ってエメが猿に近付いていくと、突如猿が飛び起き、エメの首元に噛みついた
エメ「なっ…ガハッ」
胡桃「エメ!?」
エメに噛みついた猿は一瞬険しい顔をしてエメに噛みついていたが、少しした後落下し、今度こそ息絶えた
胡桃はすぐにエメに近づき傷を診た
エメの首にははっきりと猿の咬傷が付いており、出血自体は凄まじい物ではないものの、神経や気管に達している可能性が高い
エメ「ヒュー…ヒュー…しくじっちゃい…ました」
胡桃「それ以上喋るな!首に穴が開いてる!りーさん!早く来てくれ!」
りーさん「エメちゃん!?早く止血しなきゃ!」
そう言ってりーさんは戸惑いながらも、手際よくエメの首に包帯を巻き簡易な止血をした
美紀「エメさん、立てますか?」
そう言われてエメは立とうとしてみるが、足に力が入らず立ち上がれなかった
エメ「ちょっと、難しそうです」
美紀「分かりました。由紀先輩、ちょっと手伝って下さい」
由紀「りょ、了解!」
そう言って美紀と由紀が肩を貸そうとした時
ゾンビ達「ヴァ゛ァ゛ァ゛」
急にゾンビが建物の周りに集まりだした
胡桃「チッ!さっき猿が叫んでたから、それで寄って来たのか!?」
エメ「2人とも、私は置いて行ってください!」
エメが急に自分を置いて逃げろと言いだした
行き「何を言ってるの!?そんな事できるわけないよ!」
エメ「私を支えたまま逃げたんじゃ、貴女達までやられてしまう!私は切り捨てて逃げてください!」
美紀「でも…」
エメ「私一人が死ぬのと、貴方達まで道連れになって三人で死ぬの、どちらがいいかは歴然でしょう!貴女達は、同じ過ちを繰り返す気ですか!」
エメは叫んだことでまた傷が開いてしまい、包帯が赤く染まる
エメ「(うっ…ちょっと叫び過ぎた…)」
美紀はエメの言葉に圧倒された
思い返してみれば、デパートで外に出るのが怖くて安全な場所に執着したことによって友達と決別し、学校でその友達の影を追いかけ執着し胡桃先輩を危険にさらし、今回はエメに執着したことによって自分と他の人達の命を危険にさらしている。エメの言う事は的を射ていた。だからこそ何も言い返せなかった
由紀の方は今のエメを、あの雨の日に私達をかばって死んだめぐ姉の姿と重なって、どうにかして連れて行こうと考えている心と、エメの言うとおりにした方がいいという自己防衛の心が葛藤し、動けずにいた
美紀「…ぐっ!分かりました」
遂に決心した美紀はエメの手を離し、代わりに由紀の手を掴んで逃げていった
由紀「みーくん!?手を離して!」
エメ「それでいいんです……さようなら」
エメは4人が車で逃げた事を遠目で確認すると、ゆっくり立ち上がり、ヨロヨロと少し奥にある大広間のような所へと歩いて行った
そう、立てないと言ったのは嘘だったのだ。まあ、立っているのがやっとではあるのだが
エメ「…私も、もう先が短いわね」
エメが嘘をついたのには理由があった
先程猿に噛まれた傷から感染をしていたのだ
4人の手前、立てないフリをしたものの、実際のところは逃げている途中に状態が悪化した場合、あの4人を巻き込みかねないと思ったからである
エメ「まさか、本当にこれを使うハメになるなんてね」
そう言いながらエメはカバンから白い塊がいくつも入ったポリタンクを取り出した。というより、鞄の中にそれ以外何も入れてはいなかった
その中に入っていたのは、金属ナトリウムだった
もしもの時を想定し、学園の理科室から何個かパクッておいたものだ
それを出した時、丁度ゾンビ達が窓を破って中に入ってきた
エメ「丁度いい、お前達もここで心中してもらうわ!」
感染でなのか、内心死ぬのが怖いのか、カタカタと震える手でナトリウムを辺に散らばらせ、ゾンビがかなりエメの周りに集まってきた時にスプリンクラー目掛けスプレー缶とライターで作っておいた火炎放射機の火を噴射した
すると、直後にスプリンクラーが作動し、水が降ってきた。その時、遂に意識が朦朧としてきて床に倒れ込んでしまう
最初の内はただ辺りが水浸しになっていくだけだったが、遂に変化が起こった
金属ナトリウムの表面に水が付着し、表面の油が落ちていき、金属ナトリウム自体に水がつき、大爆発を起こしたのだ
その結果、その大広間にいたエメやゾンビは勿論のこと、偶然隣接していた部屋にいた豚もバラバラに吹き飛んでしまった
家畜場―学校道中 車内
4人が車で家畜場から逃げて数分後、家畜場から凄まじい爆音が聞こえた
由紀「何!?今の音!?」
美紀「家畜場の一部が…爆発してる…」
胡桃「(…やっぱり、あいつさっき感染してたんだな。私達に二次被害が出ないように嘘までついて、自分は爆死…本当、自己犠牲が過ぎるのはお前の方だよバカ…)」
エメが学園生活部の仲間に加わって部員が5人になって約1ヵ月、再び学園生活部の部員は4人に戻ってしまった
あぁ、今度こそ私、死んだな
私が目を開けると、私は真っ暗な空間に居た
エメ「ここが死後の世界かしら?」
自分を見てみると、腕も脚もちゃんとある
さっきの爆発で手足が残っている訳が無い、やはり本当に死んだのだろう
エメ「でも、何も無い空間って退屈ね」
そう思っていると、向こうになにか光るものがあった
エメ「ん?あれはなにかしら?」
取り敢えず近づいてみようと歩き出した
しばらくして、ようやく光の元へと辿り着いた
エメ「なにか光ってるけど、何かはさっぱりわからないわね」
そう思い、触れてみると、急に光が強くなり、目を開けていられなくなった
そして、少ししてから目を開けてみると
私は病院のベッドの上にいた
To Be Continued
自分の命よりも仲間が逃げ切る事を選んだエメは自らナトリウム爆発を起こしてゾンビ諸共吹っ飛んでしまった。
しかし、気が付くとエメはベッドの上に居た。まさかあの爆発に巻き込まれて助かったというのだろうか?
次回【3年3組の呪い】