転生者   作:フリッカ・ウィスタリア

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最初の死者が出てから数日経ったが、次の死者が出ないため生徒達は安心しきっていた。しかし、そんなこと思ったのもつかの間、再び死者が出始めて…


夏季合宿

数日後

あれから数日経って、5月の中旬になった

翠「(あれから1人も死人が出たって話は聞かないわね。もしかして、あの事故は偶然起きただけなのかな?)」

そんなことを思いながら授業を受けていた

 

昼休み

いつもの如く屋上で一人飯を食べていた

翠「最初の方こそ寂しかったけど、さすがにもう慣れたわね」

そんなことを呟いていると、強い風が吹いてきた

翠「今日は天気はいいけど、ちょっと風が強いわね」

階段の所で食べようと思い、扉の方まで歩いていくと

ビュゥゥゥ!!メリメリ!

先程まで翠がいた場所の近くに大風で剥がれたソーラーパネルが飛んでいき、フェンスを飛び越えて落ちていった

翠「(あ、危なかった…もう少し後だったら死んでたかも…)」

そんな事を思った次の瞬間

女子「キャァァァァァァ!?」

下から女生徒の悲鳴が聞こえてきた

翠「え?何!?」

急いで声のした方向を覗き込むと、女生徒の横にソーラーパネルが落ちていて、よく見てみると、ソーラーパネルの下から赤い物が飛び出ていた

翠「まさか…」

翠は急いで1階まで階段をかけ下り、現場へ走った

 

校庭

翠が先程の現場に着いた時には、既に何人もの野次馬がやってきていた

教頭「君達!教室に帰りなさい!これは子供が見ていいような物じゃない!」

そういって生徒を追い返していた

体育教師「ほら、君も早く帰りなさい。女子の目にはあまりに刺激的すぎるよ」

そう言われて帰ろうとした時、チラッとだが現場が見えた

翠「(あれは…大西君…だよね)」

前回もそうなのだが、どうも現実感がない所為か、クラスメイトの死だというのに特段悲しい、怖いという感情が浮かばない。私って感情にも異常があるのじゃなかろうか

そんなことを考えながら私は教室に帰った

 

教室

宍戸「神崎さんをイナイモノにしてから何も起こらなかったから、災厄は止まったと思ったのに!どうすればいいのよ!」

工藤「お、おい宍戸、落ち着けって」

宍戸「落ち着けないわよ!」

私が教室に帰ると、宍戸さんがえらく乱心していた

翠「(やっぱり、災厄とかいうのが始まったきっかけって、私…よね。知らなかったとはいえ、悪い事しちゃったなぁ)」

教室に入っていくと、一瞬皆が私の方を見たが、すぐに目をそらした

そして、またイナイモノとしての学校生活が始まった

 

3ヶ月後

あれからクラスメイトの井上さん、木下さん、外村君、船橋君の4人が亡くなってしまった

そしてついに宍戸さんが私たち二人のイナイモノとしての役割が既に意味を成さない物という事を認め、廃止することにしたようだ

最初の内はどんな罵倒を受けるのかとちょっと心配であったが、宍戸さん自身も私にすぐ事情を説明しなかった自分にも非があるという事でお互い不問という事になった

そういえば、8月8日から3日間の合宿があるようだし、今までほとんど仲良くできなかった分、仲良くなれるように頑張らないと

 

8月8日

立山市民会館 門前

翠「(ハァ…意外とバスが揺れたわね。ちょっと車酔いしたかも…)」

そんなことを思いながら合宿先の建物の前に並んで集合写真を撮った

雄二「さあ、会館の中に入りますよ。ついて来てください」

担任がそう言って会館の中へ入っていく

 

立山市民会館 館内

藍「へぇ、案外広そうね」

翠「そうですね。3日間あっても行かない場所とかありそうですね」

藍「えっと、私の部屋は…217番の部屋ね」

翠「あっ、私は218番なので、隣部屋ですね」

そんなこんなで各自に割り当てられた部屋に入っていく

翠「一人で使うにしては結構大きい部屋なのね。最低でも二人一組位で使えそうね」

そんなことを言いながらベッドに転がったりして夕飯まで時間を潰した

 

午後6時

雄二「それでは、夕飯を作ろうと思います。今夜はカレーにしようと思っているので、皆さん5人位でチームを組んで作り始めてください。食材が余れば各自で創作料理をしても構いませんよ」

担任にそう言われ、生徒がカレーを作り出し、すぐにカレーが出来上がった

翠「やっぱり、ルーの元と切った野菜を入れて煮込むだけですし、簡単にたくさん作れますね」

藍「そうね。一人暮らしの大学生が好むわけだわ」

何気にイナイモノとしての役目が無くなってからも、ずっと藍さんと一緒にいる気がするが、向こうも嫌がっている風はないので良しとしよう

工藤「うちのチームは5人のうち女子が3人もいるから、俺ら二人が料理できなくても何とかなったな」

小島「そうだね。僕も野菜を切るくらいはできるけど、煮込むだとか、揚げるだとか言われてもさっぱり分かんないしね」

斉藤「ほらほら、そこの男二人、とっとと出来上がったカレーをついでいってよ」

工藤「はいはい、ほんと斉藤は人使い荒いよなぁ」

斉藤「何か言ったかしら?」

工藤「イイヤ、ナニモイッテナイヨー」

そんな風に和やかな雰囲気で時間が過ぎて行った

 

1時間後

大広間

小島「んー、なんかちょっと物足りなくない?」

藍「私は全然、寧ろちょっと食べすぎたかもしれないわ」

翠「私も結構食べたのでもう結構ですよ」

斉藤「男子と違って女子は小食なのよ。物足りないなら何か作ってくれば?まだ材料が結構余ってたはずだし」

工藤「それは料理できない俺らに対する嫌味か?…まあ、野菜も肉も火を通せば食べれる…よな?」

翠「何で疑問形なんですか?薄く切れば別ですけど、野菜の方が火は通りにくいので順番は考えた方がいいですよ」

工藤「なるほど、じゃあ適当に余ってるもん焼いて食うか。小島、お前も手伝え」

小島「分かったよ。あっ、3人は先に帰ってていいよ。僕たち待ってたらかなり遅くなっちゃうだろうし」

斉藤「分かったわ。ボヤとか起こさないように気を付けてよ」

小島「善処するよ」

そう言って小島君は工藤君を追いかけて調理場へと消えた

翠「じゃあ、小島君も言ってたことですし、各自の部屋に帰りましょうか」

藍「そうね、早くお風呂入って寝ようか」

そんな話をしながら大広間から出て行こうとした時

斉藤「…え、何?地震!?」

斉藤さんがそう言った直後、揺れが少し大きくなりはじめたので、私達は近くにあった机の下に避難した

すると次第に揺れは収まってきた

翠「…揺れは収まったみたいですね」

藍「ちょっと肝を冷やしたわ」

少し待ってみて、二次被害がなさそうな事を確認してから机の下を出た3人

翠「何個か今の揺れで机が倒れちゃってますね」

そんなことを言っていると、調理場から小島君が走って来た

小島「さ、3人とも!」

藍「どうしたの小島君?指でも切った?」

小島「ち、違う!工藤が!工藤が!」

小島の様子を見て3人はただ事ではないと気付き、調理場へ入っていった

藍「何…これ…」

調理場に入ってみると、床には血が広がっていた

そして、その中央には数本の包丁が刺さった工藤の姿があった

斉藤「先生を呼んできて!早く!」

藍「わ、分かったわ!」

数分後、藍さんが先生を呼んできて、工藤君は救急車で運ばれたが、あの怪我ではおそらく助からないだろう

その時、クラスメイトの一部の人が小声で「転校生がイナイモノに関わったから」とコソコソ言っているのが微かに聞こえた。やっぱり、私のせいなのかな…

その日の夜、珍しくなかなか寝付けなかった

…コンコン

翠「(ん?誰だろう…こんな時間に…)」

時刻はとっくに消灯時間を過ぎた午前1時だ。普通なら誰も来るわけがない

翠「誰ですか?」

藍「私よ。ちょっと寝付けないから、少しおしゃべりしない?」

どうやら訪ねてきたのは藍さんのようだ

翠「分かりました。今開けますね」

そう言って藍さんを部屋の中に招き入れた

藍「ごめんね、こんな夜中に」

翠「いえ、私も今日は丁度寝付けなかったので気にしないでください」

藍「そう、ありがとう」

そう言って藍さんはベッド横にあった椅子に座った

翠「当たり前ですけど、何度見てもクラスメイトの死と言うのはなれませんね。慣れたくもないですけど」

藍「そうね。人によっては気が狂ってしまいそうだわ」

藍さんはそう言ってから、少し黙り込んで何かを考えているようであったが、遂に口を開いた

藍「翠さん、貴女は私に何か・・・隠し事をしてたりしない?」

翠「隠し事…ですか」

藍「ええ、何の確証もないし、あったとしても言いたくないのなら言わなくていい。でも、ここ数日、何かを隠している様に見えたの。良ければ話してくれないかな?」

翠は少し驚いた

確かに自分は藍さんやクラスメイトに隠している秘密がある。しかし、顔や行動に出るほどだったのかと思い、内心焦っていた

翠「そう…見えたんですか」

しかし、白状するいい機会かもしれない。その白状が今の関係を壊す物だとしても

翠「ええ、実は一つだけ隠していることがあります。いつか必ず言わなければとは思っていたんですけど、いい機会ですし、言いますね」

翠は正直に話そうと決心した

翠「私が…『死者』です」

 

月日は戻って翠が若林家を訪れた日

翠「あの、私に話ってなんですか?」

鳴「翠さん、落ち着いて聞いて欲しいんだけど」

翠「どうしたんですか?」

鳴「貴女…死んでるわ」

翠「え?私が…死んでる?」

鳴「ええ、信じられないとは思うんだけど、私のこの義眼は死に近い人にはうっすらと、死んでる人にははっきりと死の色が見えるの。貴女の場合、はっきりと言うより、はっきりとした色が二重に重なって見えるの。まるで、一度死んだ後でもう一度死んだみたいな…そんな感じがするの」

翠は戸惑った

自分が死んでいるという事もそうだが、鳴さんは私が夢か現か分からない状態である、あの2回の死を義眼で感じ取っているという事に驚きを隠せないでいた

もちろん私はこの話を親含め誰にも話してはいない。つまり、鳴さんは何の手がかりもない状況から私が2度死んでるという事を告げたのだ

翠「その…死んだ状況なんかは見えたりしてるんですか?」

鳴「ごめんね。そこまではわからないの」

翠「……そう…ですか。でも、はっきりしてよかったです」

鳴「自分で言うのもなんだけど、私の話はだいぶ胡散臭いと思うんだけど、信じてくれるの?」

翠「いや、前々からそうなんじゃないかなとは薄々思ってたので…それに…」

そう言って両手を出した

翠「夢の中で2度私は死んだ記憶があるんですけど、この両手の痕、後遺症が無い割には大怪我だなとは思ってたんです」

鳴「…確かに、これは一度バラバラにされた後に付け直したみたいな肌の色ね。まるで壊れた人形みたい」

そのあと少し話をした後、家に帰った

 

月日は戻って立山市民会館

藍「私が部屋を出た後、そんな話をしてたのね」

翠「はい。この話をしなかったのは、私の我儘です。恨むならどうとでも恨んでください。私が死ねば災厄は止まるはずです」

藍「…恨むわけないよ。私だって死ぬのは怖いもの」

どんな罵声を浴びせられるかと思っていた翠の考えとは裏腹に、帰ってきた言葉は共感だった

翠「怒ら…ないんですか?」

藍「怒る?…ああ、怒ってるよ?だって、ずっと一人で抱え込んでたんだから。何で話してくれなかったの?」

翠「…怖かったんです。クラスメイトや貴女との関係が壊れてしまうんじゃないかって…」

それに、ここ数か月の家族団欒は…とても心地よかった。死んでしまったらなくなってしまう。もう二度と手放したくなかったのだ

これは本当にただの我儘だ。私がズルズルと皆に言わなかったが故に死んだ人もいるだろう。私の居場所と皆の命、明らかに天秤にかけるのもおこがましい二つだ。だから、私はこの事を言おうと決心した時、すべてを失う覚悟をしていた

しかし、藍さんは私を恨まなかった

藍「でも、話してくれてありがとう」

藍さんがそう言い終わる前に、私の部屋の扉が激しく叩く音が聞こえた

三浦「開けなさい!開けろぉ!」

なんだかすごい剣幕だ

翠「ど、どうしたの?何かあったの?」

翠は扉越しに向こうへ問いかけてみた

三浦「だから…開けろって言ってんでしょうがぁぁぁ!」

しかし、向こうからの返答は帰ってこなかった

代わりに、向こうから突進をしているのか凄い音が響いてきた

そして、遂に扉の鍵が壊れ、扉が開いた

 

To Be Continued




夏季合宿でも呪いは続き、また死者が出てしまった。その事で三浦の我慢は限界を超え、遂にドアを叩き破り殴り込みに来た
エメは新しい家族や家庭の温もりを捨てがたい為に今まで自分が死者であることを黙っていたが、藍に話したことで死ぬ覚悟が決まったようだ
次回【死者エメラルド】
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