三浦「見つけたわ!裏切り者!」
そう言って入ってきた三浦さんの手には先が尖っているタイプのパレットナイフが握られていた
三浦「あんたの所為でっ!あんたがイナイモノに話しかけなければ、皆は死ななかった!」
そう言いながら三浦さんは私にナイフを振りかざし、攻撃してきた
翠「(本来こういう反応が普通…よね)」
そんな事を思いながら三浦さんの攻撃を躱した
三浦「チッ!おとなしく死ね!」
ふと、ここで殺されれば話が丸く収まると思った翠であったが、自分にはこの死に方は罪に釣り合わない、もっと最悪な死に方をしなければと思い、ここでは死なないと決めた
考えが纏った直後、すれ違いざまにナイフを奪って窓の外に投げ捨てた
翠「(とりあえず、藍さんを逃がさなきゃ…)」
そう思い、部屋から飛び出し、藍さんが逃げれるようにした
翠「(藍さん、今のうちに逃げて)」
部屋を出る時にチラッと藍さんの方を見ると、どうやら私の意図を理解してくれていそうだ
翠「(さてと、この後どうしよう…正直、体力では負ける気がしないから、逃げるのは容易いんだけど、何の解決にもならないしなぁ…)」
命を狙われているというのに、思いのほか暢気な翠だったが、ようやく自分の罪に釣り合う罰を思いついた
翠「(そうだ、これなら私の罪に釣り合うかも)」
そう思い、一旦三浦さんを撒くことにした
数分後
三浦「あいつ、どこに行った!?出て来い!」
思いのほか体力はないのか、すぐに三浦さんを撒くことができた
翠「さてと…放送室みたいな場所がこの会館にはあるのかな?」
そんな事を呟きながら、施設内地図を見て放送ができる部屋を探し、放送室へと向かう
放送室
翠「あったあった、さてと、機械音声は使えるのかしら?ないなら私の声で直接言うからいいんだけど…」
いろんな機材を弄ってみると、機械音声を使えそうだったので、翠は音声の設定をしていった
翠「…よし、これでいいわね。音量は最大にしたし、放送範囲はこの施設内の全客室にした。あとは、放送する時間を決めるだけね。そうね…5分後位でいいかしら?」
全ての設定を終えた翠は放送室を出て、大広間まで走っていった
大広間
翠「(そろそろ、放送がかかるはずね)」
そう思った直後、一瞬ノイズが入った後、放送がかかった
放送「皆さん、起きてください。緊急連絡です。呪いを止める方法が判明しました。それは『死者』を殺すことです。その死者は、神崎さん、神崎翠さんです。災厄を止めるために翠さんを殺してください。今、神崎さんは大広間にいます。皆さん、武器を持って大広間に急いでください」
大音量でその放送が流れると、少しずつだが確実に足音が近づいてきた
翠「(…そろそろ来るわね)」
まず最初に来たのは、予想通り三浦さんだった。しかも、今度はペーパーナイフを持っていた
…殺傷力は上がってるんだけど、ナイフ好きだなこの人
三浦「誰だか知らないけど、裏切り者の居場所を知らせてくれてありがたいわね!」
その知らせを作ったのは目の前にいる私自身なのだが、三浦さんはそんなこと知る由もないだろう
三浦「今度こそ殺す!」
そう言って三浦さんが私に襲いかかろうとしてきた直後、他の皆も続々と大広間へと入ってきた
相川「神崎…さっきの放送、本当なのか?」
翠「し、知らない!急に死者とか言われても何の事だかさっぱりなの!(大広間に続々と集まってきてるわね)」
三浦「死者かどうかなんてどうでも良いわ!そもそも、この子が若林さんに話しかけなければ…富岡さんや、工藤君達は死ななかったのよ!死んで償え!」
三浦さんの怒号にビビる人3割、共感する人6割、止めようとする人1割と言ったところだろうか
翠「(むしろ、止めようとしてくれる人がまだいることに驚きだけど、この人数は流石に止まらないでしょうね)」
藍「ちょっと待って!?誰が放送を流したの?死者の事は私と翠さんしか知らないはずよ!?」
そう言って藍さんが私の方を見た
翠「あ、藍さん!そんなこと言ったら…(よし、これで周りには私は嘘をついてまで生き延びようとする最低な奴って印象が付いたわね)」
私がそう言った時、藍さんが何か伝えようとしていた
翠「(大方、なんで二人の秘密を知ってる人が居るのか不思議って顔ね)」
そう思い、藍さんの方を向いてアイコントクトを送った
藍「(え?…ま、まさか、自分から死者の事をバラして、災厄を終わらそうとしてるの!?しかも、あの雰囲気から見て、わざと嘘をついて不信感を煽ってるみたいなんだけど!?)」
藍さんの顔が強張った。おそらく、私の意図に気が付いたのだろう
翠「(藍さん、私は生きていくにはちょっと罪を負い過ぎたよ。どうせ死ぬなら、皆にずっと隠してたことも含め恨まれ役は私一人でいいわ)」
死ぬ覚悟はできた
三浦「死ねぇぇ!」
叫びながら三浦さんはナイフを構え突進してきた。一直線の突進だから避けようと思えばどうとでも避けられる
しかし、私は敢えてそれを避けなかった
翠「ぐふっ…痛っ!…」
深々とナイフが腹に突き刺さる
三浦「あんたの所為で死んだ皆はもっと痛かったのよ!思い知りなさい!」
無意識なのかどうかわからないが、三浦さんがナイフを捩り込んでくる為、肉が抉られてすごく痛い
とうとう立っていられなくなり、倒れ込んでしまう
三浦「ほら!皆も死んだ友達の仇を討ちなさいよ!」
三浦さんに言われ、さっきまで棒立ちになっていた内の何人かが私に近付いてきた
翠「(あぁ、やっぱり、すっごく痛いわ…でも、これはずっと皆に黙ってた私のせめてもの報いなんだから、我慢しなきゃね…)」
そんなことを思いながら、翠は自分が殺されるのを待っていた
そして、何人かが翠の所へ来て、とどめを刺そうとした次の瞬間
藍「…えっ、何!?また地震!?」
藍さんがそう言った直後
ガシャーン!グチャッ!
天井につるしてあるシャンデリアがいくつか落ち、翠とその周辺にいた人たちの上にも降ってきて、何人かが潰されてしまった
翠自身もシャンデリアの下敷きになり、身動きが取れなくなってしまった
そして、地震がおさまった時、動ける状況でいれたのは藍さんを含む数人の生徒だけだった
そして、藍さん以外の全員はそそくさと外へ逃げて行った
翠「…おさまった?三浦さんは…」
私が周りを見回してみると、三浦さんは私の左前方に落ちたシャンデリアに潰され、すでに死んでいるようだった
藍「翠さん!?無事!?」
翠「いや、ちょっとやばい」
藍「待ってて!今助けるから!」
翠「いや、助ける必要はないです。というより、むしろ殺して欲しいんです」
藍「な、何を言ってるの!?」
翠「死者は死に還す。それが災厄を止める、唯一の方法ですよね?なら、私をここで生かして帰しちゃ、だめじゃないですか」
藍「そ、そんなこと言ったって…」
翠「さっきの地震で、だいぶんこの会館のあちこちにひびが入ってます。このシャンデリアだって、女子中学生一人で持ち上がるような軽いものじゃないですよ。多分この大広間もそろそろ崩れます。私にとどめを刺してから逃げるか、それが無理ならすぐ逃げてください」
と言うより、さっきから足の感覚が無い。もしかしたらエンドルフィンとかが出てて分からないだけで、潰れてしまったのかもしれない
藍「…やっぱり無理だよ!友達を殺すなんて!」
そう言って藍さんはシャンデリアを持ち上げようと私のそばへ近寄ってきた
翠「(藍さんは、優しいな…私をダムから突き落とした、あの子とは大違いだわ…)」
しかし、翠がさっき言ったようにシャンデリアは女子中学生一人で持ち上がるような軽い物では無く、翠の上からどけるどころか、動きすらしない
藍「んー!全然…持ち上がらない!」
翠「だから言ってるじゃないですか…!?危ないっ!」
藍さんがシャンデリアを持ち上げようと頑張っているとき、先程から落ちてきそうだった別のシャンデリアが遂に落ちてきてしまった。咄嗟に私は藍さんを力いっぱい突き飛ばし、私から離れさせた
その直後、近くにシャンデリアの残骸が飛んできた
翠「藍さん!早く逃げてください!本当にそろそろ崩れます!」
藍「…わかったわ。でも、絶対助けに来るから!」
そう言って藍さんは大広間を出て、逃げて行った
翠「良かった…藍さんは巻き込まずに済んだわね」
一応抜け出そうとしてみるが、今回は本当に体を挟まれてしまって抜け出せそうにない
翠「(フゥ…本当に抜け出せないわね。まあ、抜け出せたとしてもなんだって話だけど…)」
そんなことを思っているうちに、とうとう天井が崩壊し、生き埋め状態になってしまった
数時間後
藍と他数名の生徒が救急車や警察を呼んだことで、日が昇る頃には警察と救急車が会館の前へとやってきていた
そして、次々と怪我人と死人を運び出してきた
警官「よし、これで名簿にあった生徒は全員見つけられたな」
藍はその言葉を聞いて耳を疑った
怪我人の集団にも、死人の列にも翠の姿が無かったからだ
藍「あの、まだ見つかってない人が居ると思うんですけど!」
警官「え?でも、生存者16人、死人7人、計23人は全員見つかってると思うんだけど?」
藍「え?23人?合宿に参加したのは24人の筈ですよ?」
そう言って合宿のしおりを開いた藍は愕然とした
翠の名前が消えているのだ
藍「(何で?イナイモノの名残で先生が追加し忘れたっていうの?)」
そう思い、一緒の班になっていた小島君に翠の事を聞いた
藍「ねえ、翠さんが何処に行ったか知らない?」
小島「え、翠?誰その人?」
藍「誰って…昨日一緒の班だった神崎翠さんよ」
小島「え…うちの班って斉藤さんと君しか女子は居なかったじゃん…」
その返答を聞いた藍は、他の生徒に話を聞いた
しかし、どの生徒に話を聞いても、翠についての事は誰も覚えていなかった
藍「何で…みんな翠さんの事を覚えてないの?」
藍も翠も知らなかった事だが、死者が死に還されると、関係の浅いものから死者と関わった記憶をすべて失っていき、最終的には親や仲の良かった友達などの親しかった人の記憶からも消え去ってしまうのだ
私は…また死んだのだろうか?
目を開けてみると、そこはまた暗い世界だった
翠「やっぱり、ここは死後の世界のようね。でも、私が記憶してるだけでもう3度目の死か…慣れはしないんだけど、死ぬことに対する恐怖が薄れてくるわね」
そんな事を呟きながら当てもなく歩いていると、前回と同じ様に向こうの方に小さな光の様な物が見えた
翠「もしかして、人って覚えてないだけで何回も死んで、また生まれ直してを繰り返してるのかもしれないわね。でも、それなら私は前世の記憶を引き継いで持って転生してる異例の人間って事になるわね」
そんな哲学的な事を考えながら光の下へと歩いていく
数十分後
翠「フゥ…かなり遠いわね」
先程からかなり歩いているはずだが、なかなか光との距離が詰まらない
翠「あの光、私から逃げてたりしないわよね?もしそうならいつまでたっても追いつけないんだけど…」
その予想が当たっていない事を願いつつ、再び歩き始めた
さらに数十分後
翠「フゥ…ようやくついた…」
どうやら、本当に遠い所に光が存在していたようだ
翠「私、女子の中では体力ある方だと思ってたんだけど、ここに来るだけでヘトヘトだわ…」
そんなことを言いながら光に触れると、予想通り光が強くなり、目が開けていられなくなった
そして、一瞬の浮遊感があった後、背中に衝撃が走った
ゆっくり目を開けた時、まず真っ先に目に入ったのは、金髪碧眼の少女?だった
To Be Continued
シャンデリアに下半身をつぶされ、腹にはナイフを深々と突き刺され、ようやく死んだエメは再び真っ暗な闇の中を彷徨い光に触れると暫しの浮遊感の後どこかの庭に居た
次回【ボウトクテキナカミガミ】