プロローグ
平凡な人生だったと思う。
別段不満がある訳では無い。否、あった訳では無い。
平凡、平坦、平和、平穏。
一見すれば面白みの無い事なのかもしれないが、それは酷く尊い物である事を
自覚している人間はごく少数だ。
だからこそ、今を生きる人間は、生きる事の出来る人間は、その生を噛み締めるべきだと思っている。
だって気を抜いたら、呆気なく死んでしまう様な世界なのだから。
ーーーーーー俺の様にね。
「本当に申し訳ない‼︎‼︎」
「はぁ……」
唐突ながら、少年ーー
あらかじめ言っておくが、新手のオヤジ狩りとかでは無い。
「えーと、確か俺って、2トントラックに轢かれて死んだと思ったんすけど…」
「いかにも…その通りなのじゃが…」
「?」
「あれは儂等神々の不手際でのぉ。お主は本来死ぬ定めでは無かったんじゃ」
あぁ、やっぱこの人神様だったんだ…
などと呑気な事を思わず考えてしまうほど、衝撃的な内容だった。
「それで、俺これからどうなるんですか?」
「本来なら記憶を消して転生してもらうのじゃが…今回は我々の不手際故、記憶を保持したままの転生になる。……じゃが…」
「?なんか問題があるんですか?」
「うむ…実は次にお主が生きる世界は、その、パワーインフレが激しく、死亡フラグが満載な世界なんじゃ。」
「……」
思わず黙ってしまう幹也。当然だ。今まで生きていた世界などとは比べ物にならない程に危険な世界なのだから。
「それはアレですか、次の世界でさっさと死ね的な……処刑宣告的なヤツですか?」
「いやいや!そんな事は無い!」
「いやでも…」
「実はこれからその世界で生きて行く前に、お主に一つ提案があるんじゃ。」
「提案ですか?」
「うむ。その世界に行く前に、ここで修行して、力を付けて行く気は無いか?」
「……はい?」
それは何とも意外な提案だった。
「えーと、護身術って事ですか?」
「それは使い方次第じゃな。儂が教えるのは、その気になれば神と渡り合える程の武術なのじゃから。」
「か、神っスか…」
というか、そんな物を身に付けないと生きていけない世界なのか…?
と、首を捻る幹也。
「それで…どうするのじゃ?」
当然答えは決まっている。断る理由などありはしない。
「やります。やらせてください。」
「心得た。夜と月を司る神である儂、ツクヨミがお主を鍛えてしんぜよう。」
かくして、幹也の人生は、思いがけない方向へと進んで行くのであった。