人生はままならない   作:んみふり

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個人、更に細かく言うのであれば、他者と自分だ。

 

人という生き物を更に区切る最小単位。

 

生き物が生き物でいる証明。

 

──────けれど、果たしてそれは本当に必要なのか?

 

その隔たりは、その境界は、人類にとって必要不可欠なのか?

 

人格という個人の自我は必要だろう。それを無くせば、人類は量産品に成り下がる。

 

けれど、肉体という器は、果たして本当に必要だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の闇を、影が走る。

薄暗い森の中で、黒が跳躍する。

それは、人の形をしていた。

他ならぬ、幹也である。

現在幹也は、気配遮断を使い、ロングコートにしか見えない宝具、宵ノ羽衣を纏いながら木々の間を駆け抜けていた。

(クソ…‼︎迂闊だった‼︎)

フードを深く被りながら、幹也は歯噛みする。

 

 

 

 

今からおよそ数十分前、森の中の廃教会から異様な魔力を感じ取った幹也は現場へと急行したのだ。

通常であれば、迅速な行動ではあるのだが、今回に限っては事情が違った。

(クソッ!まさかこんなあからさまな場所を根城にするとは、思ってもみなかったぜ…!)

下手に考え過ぎた、と幹也は後悔したが、すぐさまそれを押し殺し、更に速度を上げる。

(幸いにもまだ魔力の動きは穏やかだ。多分何らかの術式を発動しようとしてるんだろうが…)

このペースならまだ間に合う。

そこまで思考が及んだ時、唐突に、あまりにも不自然に魔力の動きが、消えた。

(何だ⁉︎術式が発動した…いや、途中で妨害されたのか!)

考えられるとすれば、サーゼクスの妹であるリアス・グレモリーとその眷属なのだろうが、

(おかしい…気配の数が噛み合わない。事前の話じゃリアス・グレモリーを含めても三人だった筈だ。けれど感じる気配は五…しかも二つはかなりデカイ。悪魔に成り立てとは到底…)

そこで幹也は、思考を切る。

気配の一つが、幹也の方へ近づいてきたのだ。それも凄まじい速度で。

(この動き、明らかに俺に気付いてる⁉︎)

幹也は急いでその場から離れようとするが、相手の方がわずかに早かった。

猛スピードで突っ込んできたそれは、一言で言うならば青だった。

腰まで伸ばした水色の髪に、青を基調としたジーンズと長袖のシャツ。

男性的な衣装の下から、自己主張する双丘が彼女の性別を物語る。

「何者でしょうか?」

凛とした声に、整った顔立ち。しかしその表情は、氷の様に冷たい。

「……この先にいる堕天使を倒しに来た。気配から察するに、あんた悪魔だろ?恐らくはグレモリー眷属だ。違うか?」

「いかにも。私はグレモリー眷属の一人です。」

「だとすれば俺は敵じゃない。信用しろとは言わないが、あんたの主人であるリアス・グレモリーの助けにはなる筈だ。」

「そうですか。」

その言葉に、幹也は話が通じたと思い安堵する。そして直後に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、知った事では無いですが(、、、、、、、、、、、、、、)。」

その場から飛び退いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果として、幹也の判断は正しかった。

一瞬でも回避が遅れれば、凄まじい剛打の餌食になっていたのだから。

「ッッッ⁉︎」

一瞬前まで幹也が居た場所に範囲にして五m程のクレーターが出来上がる。

一撃の、それもただの拳打でこの威力。どう考えてもまともな手合いでは無い。

「何の真似だ…⁉︎」

「勿論、貴方を排除する為に攻撃を加えさせて頂きました。」

何の気なしに、むしろ何が疑問なのか分からないといった様子で首を傾げる女性。

表情と相まって益々機械じみている。

幹也は再度問いを投げる。

「何故だ。堕天使の排除という目的はそちらも一緒の筈だ、少なくとも今攻撃する理由が分からない。」

信用が無いのは百も承知。しかしそれなら堕天使の撃破にある程度利用した後に攻撃をしても遅くは無い筈だ。

「私は主人の命に従うだけですので。」

しかし淡々と、女性は次の攻撃の為の姿勢を取る。

交渉の余地は最早無い。であれば、今は多くの情報を集めることを優先する。

(主人…か。)

幹也が引っかかったのはその単語。

どうにもその辺りにだけ、幹也と目の前の女性の認識に違いがある。

女性の忠誠心は恐らく本物だ。表情から窺うのは難しいが、その瞳には迷いも濁りも存在しない。しかし、それならば彼女の言動に違和感が生じる。

幹也は一瞬考え、口を開いた。

「お前の主人って、誰?」

「言う必要はありません。」

「成る程、リアス・グレモリーじゃないのは確かみたいだな。」

「‼︎」

初めて、目の前の女性の表情が変わる。

あっさりと謀られた自分と、眼前の敵への怒りによって。

「貴様……!」

「ようやく分かりやすい表情になったな?────────誰の差し金だ。」

幹也もまた、意識を切り替える。

純粋なグレモリー眷属ならばともかく、二心を持って仕える下僕になど容赦をする必要は無い。

「答えるつもりはありません。」

「そうか。ならば戦士では無く、賊として始末するとしよう。」

両者の殺気が膨れ上がり、互いの四肢に恐るべき力が込められる。

そして直後に、刀と拳。

 

 

 

 

 

 

 

黒と青が激突した。




次回はバトル回!
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