人生はままならない   作:んみふり

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邂逅

体液の交わりも。

 

愛の囁きも。

 

何もかもが『心』に、魂に届かないのであれば。

 

私達の在り方には、意味が無いのではないか─────?

 

 

 

 

 

 

 

 

月下に轟音が炸裂する。

ぶつかり合う二つの影は互いの最速を以って眼前の敵を仕留めるために己の技を撃ち放つ。

『⁉︎』

交差は一瞬。その一瞬で、互いの力量を把握する。

(巧い!剣筋に一切のブレが無い…並みの剣客ではありませんね…!)

青を基調とする女性は鋭い剣撃に息を呑み、

(重い…体ごと叩きつける様に打ち込んできやがる…)

黒いコートの少年、幹也は凄まじい豪打に冷や汗を流す。

一拍。

瞬きの間に息を整え、再度二人は激突する。

 

 

 

 

 

 

乱打。青の女性は先程の一撃を重視した打撃では無く、手数を重視した連打を幹也へと放り込む。

対して、幹也はそれを最小限の動きでかいくぐる様に回避する。

(何という反応速度…全て紙一重で回避しますか…!ですが、これ以上踏み込めば刀は振れない筈…!)

この時、女性は幹也を未だ侮っていた。

幹也と女性の距離はもはや五センチ程しかない。互いの呼吸音が聞こえる距離で、二人は睨み合う。

この距離では最早打撃は出せない。そう判断した女性は後ろへと跳ぶ為に足に力を込める。

しかし、幹也の方が一瞬速い。

軸足を使い、体を独楽のように回し刀を振るう。

(この距離で⁉︎)

女性の動揺に、幹也は頓着しない。

刀を手の中でくるりと回し、頸を狙う。

峰打ち。幹也の狙いはあくまで生け捕りだ。しかしだからと言って加減はしない。

(これだけの頑健さに加えて悪魔の体…。首を折られた程度では死ぬまい。であれば!)

刀を握る手に力を込める。

(手加減無しで打ち込むまで‼︎)

竜巻のような回転と共に叩き込まれた峰は吸い込まれるように頸に直撃する。

「⁉︎」

驚愕したのは女性───では無く。

「なんだ、そりゃ…⁉︎」

幹也であった。

あまりの事態に幹也は女性から距離を取る。

僅かに痺れる右手を意識しながら状況を冷静に分析する。

(硬い、とか言う次元じゃねぇ。バットで壁ぶっ叩いたみてぇな感触だ…)

肉や骨の感触では無い。その考えを裏付けるように、彼女の首元には変化が生じていた。

「それは…鱗か?」

人間の首元に魚の鱗がびっしりと浮かび上がっている。

余りにも異様な光景であるにも関わらず、当の本人は当然のように振舞っている。

「いかにも。我が身は主人の使い魔にして誇り高き竜の種族。貴方ごときの刃が通る道理はありません。」

「成る程…」

何と無く、ではあるものの相手の素性がわかってきた幹也。

しかしだからと言ってあの防御を突破する手段に直結するかと言われれば、それはそうでは無い。

「ハァ…」

「万事休す…と言ったところでしょうか?」

「ンな訳あるか。したり顔で物言って外してんじゃねぇよ。」

「……」

目を細めて睨んでくる女性を無視し、幹也は刀を腰だめに構える。

「…なんの真似です?」

「ハッ、決まってんだろ。」

切り札その一だよ──と、幹也が笑った途端、幹也の黒刀が眩い光を放ち始めた。

「⁉︎」

刀から放たれる光はまさに月光。光を放ちながら、あらゆるものから、その刀は光を集めている。

草や樹木からも小さな光が放たれ、幹也の刀へと集まっていく。

「降り注ぐは星の息吹───」

力のある言葉が紡がれる。

「吹き抜ける命の奔流───」

女は本能で察する。

これは、この一撃は撃たせてはならない─────‼︎

「夜光……⁉︎」

この時、女はその一撃の恐ろしさを本能で悟りながらも具体的な行動は取れなかった。

取ろうとしなかった訳では無い。純粋に間に合わなかっただけである。

故に。

幹也が攻撃を中断させられた理由は女では無く、

「……なんだお前は?」

別の理由の介入である。

それは、一言で表すなら『赤』だった。

赤の全身鎧に身を包んだその姿は、龍を象っている。

そして、その鎧は一言、こう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───僕は、赤龍帝だよ。」

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