スランプです!
こんな私ですが、どうかよろしくお願いします。
朝の通学路がこんなにも憂鬱だったのはいつ以来だったか?
そんな事を考えてしまうくらいには、幹也の気は滅入っていた。
(『女神』に『転生者』…別の転生者は何となく覚悟はしていたけど、まさか神様まで別とは…)
しかし、対処のしようがないのもまた事実。
少なくとも、現状、兵藤一誠は、過激ではあるが、表立った敵対行動はしていない。
(本当に敵対する気が無いのか、或いは尻尾を掴ませていないだけなのか…)
いずれにしても備えは必要だ。
最悪の場合、幹也自身が破滅する事になっても──
(構わない。あの三人が無事ならいい。)
鋭い眼光は、いずれ来る戦いを見据えていた。
「ごめん、月野くん今日放課後空いてるかな?」
昼休み。
屋上で朱乃と弁当を食べていると、申し訳なさそうに木場がそう言ってきた。
「謝るくらいなら、誘わなければよろしいのでは?はい幹也君あーん。」
「朱乃さん、そんなに怒らなくてもいいんじゃないですか?後、今会話するからちょっとだけ待ってください。木場、なんかあったのか?」
「うん、部長が今日話があるみたいなんだ。ああ、食べながらで大丈夫だよ?」
「別に幹也君は部員では無いのだから、後で伝言でもすれば良いと思いますわよ?はい幹也君、里芋あーん。」
「ちなみに、どんな内容なんだ?朱乃さん、食べますんで押し込まないで下さい、具体的には前歯折れそうだから⁉︎」
「ごめん、詳しくは僕も…」
終始申し訳なさそうにする木場に、幹也は了承の意を伝えた。
………朱乃は少し不満そうだったが。
旧校舎の前で木場と小猫と合流した幹也は、部室へと足を運んでいた。
(さて、今度は何だ?今んところ町で不穏な気配は感じられないし、サーゼクスからも、特に連絡は来ていない…)
となると、いよいよ兵藤が行動を起こしたのか?と、思考を巡らせていると、ある気配に気が付いた。
「……あ?」
「…月野くん?どうし──⁉︎」
「……これは」
一拍遅れて木場が気付き、更に遅れて小猫も気づく。
「まさかこの距離になるまで気付かないなんてね…」
「仕方ねぇよ。こりゃ手練れだ。」
冷や汗を流す木場とは対照的に、幹也は落ち着き払った様子で扉を開ける。
(しかし、何で『この人』がここに来たんだ…?)
その答えはすぐに飛び込んで来た。
「お嬢様。どうか落ち着いてください」
「何と言おうと、私は嫌よ!」
(ああ、忘れてた…)
そう言えば。
リアス・グレモリーは貴族の娘だったと。
つまるところが、
(お家騒動…って奴か…)
うんざりしたように、幹也は溜息を吐くのだった。
「私は嫌よ。望まない結婚なんて!」
「お嬢様、とりあえず落ち着いて下さい。」
政略結婚。
貴族や王族同士の結婚によく見られる政治的な戦略の一つ。
勢力の増加。或いは自家、自国の存続をかけて行うそれは、しかし悪魔という種族にとっては別の意味も含まれる。
(純血種の存続。想像以上に、先の大戦は深刻なダメージをもたらしたと見える…)
激昂するリアスに、宥めるグレイフィア。そして、その様子を遠巻きに眺める眷属達と、幹也。
部室内の現状は上記の通り、混沌としたものだった。
「その辺りにしてはどうですか?」
「一誠…!」
二人の言い合いに割り込んだのは、やはり兵藤一誠だった。
「部長が嫌がっていますし、このままじゃ埒が開かないでしょう?」
にこり、と愛想よく、しかしどこか軽薄な笑みを浮かべてグレイフィアに話しかける兵藤。
そこに、一瞬違和感を感じた。
(なんだ?この感じ、なんかの魔術行使に似た感覚だ…)
グレイフィアも感じ取ったのか、僅かに身構えた時だった。
『⁉︎』
直後、部室に突如として魔方陣が現れ、炎が立ち上ったのだ。
「相変わらず嫌な空気だ…人間界は…」
現れたのは一人の男。
どこかホストを思わせるスーツを着崩した、軽薄そうな雰囲気の男性。
(なるほど…この炎にあの魔方陣。縁談の相手は…)
「よお、会いに来たぜ?愛しのリアス。」
「ライザー、フェニックス…‼︎」
リアスの婚約者。ライザー・フェニックスだった。
「何の用かしら?」
「そうカッカすんなよ。婚約者なんだからさぁ」
「貴方と結婚する気は無いわ。」
「いつまで駄々をこねてるんだ?お互いもう子供じゃないだろう?」
「気安く話しかけないで‼︎」
先程からこの調子で会話が一向に進まない。
かれこれ十五分程経過している。
そろそろ本気です帰ろうか迷っていると、ライザーと目が合った。
「おいリアス。何故汚らわしい人間がここにいる?」
「ぶっちゃけそれは俺も同意見なんで、帰って良いですか?」
敵意剥き出しの視線と発言だが、流れ的には悪くないので便乗してこの場からの離脱を図る幹也。しかし
「駄目よ。」
リアスによってその目論見は阻まれる。
「理由を聞いても?」
「ええ。ライザー、貴方と私の婚約問題を解決するための方法として、お父様がゲームでの決着を考案したわね?」
「ああ、レーティングゲームで決めろとの事だ。」
レーティングゲーム。
悪魔同士が、己の眷属と共に戦う、半ば娯楽になりつつある競技の事である。
(…おい待て。この流れ、まさか俺を呼んだ理由は…!)
「このゲームは非公式。つまりある程度の融通は利く。私は助っ人として、そこに居る月野幹也の参戦許可を要求するわ!」
高らかに。それでいてどこか勝ち誇った顔でそう言い放つリアスに、幹也は顔を顰める。
(このバカ女…何ほざいてんだ?)
内心で悪態をつきながらも、黙っていては事態が悪化すると考え口を開く。
「『使用人殿』今言った事は可能なのか?」
「──、ええ、まぁ確かに、通常なら認められませんが、このゲームは非公式。ある程度の要望は通ります。ましてお嬢様はゲーム未経験者。ハンデや助っ人程度ならば…」
「可能、か…」
困った事に、グレイフィアから切り崩すのは難しいようだ。
(サーゼクスめ…過保護にも程があるぞ…!)
後で文句の一つも言ってやろうと、幹也は舌打ちした。
「フェニックス殿はよろしいので?悪魔同士の戦いに、人間が割り込んでも」
「俺は一向に構わん。弾除けが増える程度だろう?」
切り口を変えてみたが、これも失敗。
となると道は一つ。
「幹也、諦めなさい?貴方は参加するしかないのよ?」
「断る。」
真正面から拒否するしかない。
『…………』
その場にいる全員が沈黙した。
まさかここまで堂々と言い切るとは思ってもみなかったのだろう。
あのグレイフィアですら、口をぽかんと開けている。
「貴方、自分の立場をわかっているのかしら?」
「勿論。協力者であり、部外者だ。」
鋭い口調のリアスに、幹也は全く物怖じせずに切り返す。
「何か勘違いしてないか?リアス・グレモリー。俺が協力するのはあくまで領地運営に関してだけだ。この町でのトラブルなら話は別だが、今回はただの内輪揉め。悪いが契約外だな。」
「……力尽くでも協力させると言ったら?」
殺気すら纏い出したリアスの言葉は、しかしこの場において悪手だった。
「成る程。自分の望みの為に人間を脅す…と。使用人殿?これ、領主としてはどうなの?」
「……褒められた行為ではないですね。」
「だろうな。この町に住む一個人としては───即刻冥界に帰って結婚でもなんでもして欲しいところだなんだけど?」
「‼︎」
地雷を踏んだ。
そう気付いた時には遅かった。
リアスは慌てて弁明する。
「ま、待ってちょうだい!今のは、そう、今のはものの例えよ!」
「………そうか。では今回限りにしてくれ。こっちもそんな冗談を言われては肝を冷やすからな?」
(よくもまぁ、ぬけぬけと言えるものですね…)
あまりにもわざとらしい言い草に内心呆れるグレイフィア。
ここまで度胸の据わった人間も中々いないものである。
このまま終わるかと思いきや、しかし今度はライザーが立ち上がる。
「おい人間‼︎俺のリアスに随分なことを言ってくれるな?口の聞き方を教えてやろうか?」
俺のリアス、という部分を強調した辺り、あからさまな好感度稼ぎなのだろうが、しかし兵藤一誠に傾倒している今のリアスには逆効果である。
「落ち着いて下さいよフェニックス殿。自分はただ協力者として苦言を呈しただけなのですが、何か気に障りましたでしょうか?」
「ああ、お前の存在が気に障る‼︎はっきり言って目障りだ‼︎」
「成る程。つまり、個人的な怒りで、リアス・グレモリーの領民を勝手に殺すと?」
幹也の言葉に、今度はライザーが固まった。
「グレモリーも大変ですね?よもやこんな暴力的な男と結婚なんて。ああいや、ここで俺が焼かれれば、その結婚も無しになるのか。何せ勝手にグレモリー領で殺人を行う粗暴者。そんな爆弾みたいな男に、娘を嫁がせる家なぞありませんからね?」
「貴様……」
今すぐにでも目の前の人間を焼き殺したいところだが、そんな事をすれば、政治的な問題に発展する。ましてグレモリーは魔王を輩出した家。
勝ち目など、火を見るよりも明らかだった。
(相変わらず、ゾッとしますね…)
言葉だけで場を制する幹也に、グレイフィアは僅かに冷や汗を流す。
思い出すのはかつてのサーゼクスと、幹也の交渉。
あの魔王を手玉に取った、幼い少年の姿。
(変わっていない。彼の手腕は、並みの政治家などでは歯が立たないでしょうね…)
この少年が敵で無くて良かったと、グレイフィアはそっと息を吐くのだった。
結局、幹也はレーティングゲームには参加せず、リアス側には、当初予定されていたハンデの、十日間の準備期間が用意された。
(もっとも、龍王や天龍がいる時点で結果は見えてるようなもんだけどな…)
校舎を歩きながら、幹也はリアスとの会話を思い出す。
(おまけに町ほっぽって十日間の合宿か…。頭痛くなるなぁ…)
足を止め、幹也は扉をノックする。
それほど間が開かずに、中からどうぞと声がした。
幹也は声に従い、扉を開けて中へと踏み入る。
「生徒会室へようこそ、月野君。」
「いきなり押しかけてすまない。」
幹也を迎えたのは、生徒会長であるソーナと、その眷属達である。
十日間、この町を離れるリアス達に代わって町の管理や見回りをするソーナ達と、今後の方針について話し合いに来たのである。
「とりあえず、さっさと決めてしまおうぜ。俺が担当するパトロール区画と、いざという時の連絡手段と…」
「その前に。少しよろしいですか?」
早速本題に入ろうとする幹也を、なぜか止めるソーナ。
「どうかしたか?」
「いえ、せっかく余計な横槍も無しに貴方と会話ができるんです、事務的な物だけでは、いささか味気ないと思いまして。」
意外、というべきか。
ソーナのこの発言に、少なからず幹也は驚いた。
冷血な仕事人間、とまでは言わないが、しかしこういった、いわゆる遊びのようなものは、仕事が終わった後にするような公私をしっかりと分けた女性だと考えていたのだ。
(いや、リアス・グレモリーや兵藤一誠を『余計な横槍』という辺り、彼女もストレスが溜まっているのかもな…)
ある意味、一番割りを食っているのは彼女なのかもしれない、と考えて幹也はソーナに同意する。
「そうだな。たしかに親睦を深めるのは大事だ。それで、何を話す?ご期待に添えるかはわからないけど、これでも話の種は結構多いほうだぜ?」
「そうですね…言われてみると会話に困りますが…では、これなどどうでしょう?」
この時。
ソーナの僅かでも付き合いがあるならば。
恐らくは気付いた筈である。
彼女の言動が、少し『わざとらしい』事に。
「チェス、か?」
「はい。ルールはご存知ですか?」
「ああ、つっても大して強くないぜ?」
「構いません、あくまで親睦を深めるためです。勝敗では無く、楽しむ事を主体にしましょう。」
─────この対局が、幹也を致命的に追い詰める事になる。
ここまでやってこの終わり…
次回はシャレオツな舌戦にしたいなぁ…
ていうか肉弾バトル書きたいぃぃ‼︎
なるべく早く投稿致しますので、これからも応援よろしくお願いします!