人生はままならない   作:んみふり

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遅れましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎


覚悟

「…………………」

沈黙が、場を支配する。

既に終わった勝負、詰んでしまった盤面を前に、幹也はただ佇んでいる。

その様子を、ソーナを含めた眷属達は固唾を飲んで見つめていた。

「………一つ、聞きたいことがある。」

一瞬か、或いは一時間か、どうあれ時間の感覚がなくなるような静寂の後、

幹也は重い口を開いた。

「何でしょう?」

「もし仮に、あんたの読みが僅かでも外れていたら、今、あんたの首は俺の足元にあったかもしれない。その可能性を、考慮しなかったのか?」

「当然しました。そしてその上で、わたしはこの場を設けたのです。」

「……何?」

淀みなく即答したソーナに、幹也は思わず首を傾げる。

今の答えをそのままの意味で受け取るならば、彼女は、

死ぬ気だったのか(、、、、、、、、)……⁉︎」

「その可能性も覚悟した、というだけです。」

涼しい顔で答えるソーナに、今度こそ幹也の表情は固まった。

否、よく見れば眷属達の表情も、どこか苦虫を噛み潰したようだ。

「そこまでして、何故…⁉︎」

困惑した幹也に、ソーナは何でもないように答える。

「それが、上に立つ者の務めでしょう。」

その一言で、幹也は全てを察した。

彼女が何を思い、この場を設けたのか。

もし、今ここで、たとえ如何なる形でもソーナ・シトリーが消息を断てばリアス・グレモリーや、彼女の家族は必ず気付く。

そうなれば、まず最初に考慮されるのは失踪では無く、拉致、或いは殺害された可能性だ。

そうなると真っ先に浮かぶ容疑者は誰か。

他でもない幹也自身である。

だからこそ彼女は今回の作戦に踏み切った。

その身命を賭して、未来の不穏分子を摘む為に。

「──────。」

侮っていた訳では無い。

だが読み違えた。

彼女の意思を、

彼女の責任感を、

そして、彼女の覚悟を。

(いや、何を言っても言い訳だな。)

幹也は椅子から立ち上がり、その場で片膝を付いた。

その行動に、全員が驚愕する。

「見事だ。その気高い覚悟に感服する他ない。そして非礼を詫びる。俺は貴女を見誤っていたようだ。」

静かに、一切の淀みなく、幹也は謝罪する。

その言葉には、確かな敬意が籠っていた。

「あ、頭をあげて下さい、そこまでしてもらうことは…」

「悪いな、これは俺の主義の問題だ。筋は通さなきゃならん。」

頑として頭を上げない幹也と戸惑うソーナ、そしてそんなソーナと一緒に慌てふためく眷属達。

だからこそ、気付かなかった。

「へぇ〜良い子じゃない☆」

「ああ、だからこそ、私は彼を信用しているんだ。」

『⁉︎』

横からかけられた声は二つ。

一人は間延びした女性、もう一人は穏やかな青年の声。

それは、

「お姉様…⁉︎」

「サーゼクス…⁉︎」

四大魔王の内の二人。

サーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンだった。

「何で…」

「いきなり実家の近衛兵に駒王での待機命令なんか出すんだもん、心配で飛んで来ちゃった☆」

どれだけおちゃらけていてもやはり魔王。

それなりの耳目はやはり持っているという事なのだろう。

「サーゼクスは…?」

「現状、君の正体を明かしうる最も身近な人物はだれか…、考えついた所で今回の彼女の行動だ。すぐに兵を引かせて、私が事情説明しに来た所だ。」

「そうか…」

すると、幹也は刀を地面に置き、再び片膝を付く。

「幹也君?」

その行動に面食らったのか、サーゼクスは呆けた声を出してしまう。

「あんたに与えられた使命は立場を明かさず、リアス・グレモリーのサポートをこなせというものだ。だが、こうして正体がバレた以上、その任務は失敗。お咎め無しという訳にも行かん。」

「幹也君…」

「だが、これまでの働きは無駄では無かった筈だ。故にどうか、俺の命一つで済ませてほしい。」

その言葉に、サーゼクスは一歩踏み出し、幹也の頭を鷲掴みにする。

「わかった。だが命は取らない。君の力はまだ必要だ。故に、私が今まで生きて来た中で受けた、一番の苦痛を君に与える。」

「わかった。」

あまりにも冷淡な声音と濃密なオーラに、幹也以外の全員が息を呑む。

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが私が受けた中での一番の苦痛、グレイフィア直伝────アイアンクローだ!」

「え、ちょ、待て、いだだだだだだ!頭皮取れる頭皮取れる!」

想像以上に、ほんわかした絵面だった。

 

 

 

 

「はい終わり。今後ともよろしく頼むよ、幹也君。」

幹也の頭から手を離し、にこやかに告げるサーゼクス。

対して幹也は、少し涙目だ。

「……本当にこんなもんでいいのか?」

「こんなもんって…幹也君、本家のアイアンクローを受けても同じ事が言えるのかい?」

「アンタ普段どれだけのもの喰らってんだよ⁉︎」

少し青ざめた様子のサーゼクスを見るに、本家の威力は今の比では無いのだろう。

まさしく鬼嫁である。

「幹也君、我々の関係は上下では無い。対等だと私は考えている。故に君を罰する権利など、本当は無いんだ。」

「……けどよ」

「確かに、今後の三大勢力の行く末は君の働きにかかっている。けど、君だけに背負わせるつもりは無い。それは君を知る者全ての総意だ。故にどうか、一人でなんでも背負い込まないでくれ。君が死ねば、悲しむ者は大勢いる。それともあの三人は、君にとって取るに足りない存在かい?」

「断じて違う。」

即答だった。淀みも迷いも無い答えに、サーゼクスは満足そうに頷く。

「だったら尚のこと、君は自分の事を大切にしなければならないよ。彼女たちの為にね。」

そう締めくくり、サーゼクスは魔方陣を足元に展開する。

「じゃあ、私はそろそろ行くよ。君達、悪いが、今日の事は内密に頼む。時期が来るまで、誰にも言わないでくれ。それと、場合によっては幹也君のサポートを頼むかもしれない。必要な事があれば言ってくれ。」

「はっ、」

サーゼクスの指示に、ソーナ達は即座に頷く。

「では幹也君、また。」

「ソーナちゃん、また来るからね☆」

そして今度こそ、二人の魔王は冥界へと帰って行った。

かくして、幹也の正体を巡る一連の騒動は、人知れず、静かに終息したのであった。

 

 

 




大変お待たせしました!
次回から新章、エクスカリバーに入ります!
どうか気長にお待ちください!
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