人生はままならない   作:んみふり

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まさかの2話にしてUA1200越え…
誠にありがとうございます。


波乱の幕開け 長すぎる一日 中編

何故そうなったのか分からなかった。

ずっと続くと思っていた日常は、あまりにも唐突に崩れ去った。

少女は自分を庇い、傷から血を流し続ける母に涙を流しながら呼びかける。

「いやぁ‼︎朱璃お母様ぁ‼︎死んじゃいやぁ‼︎」

少女の悲痛な声に、少女の母である朱璃は弱々しく返す。

「朱乃……私は大丈夫。だから早くお逃げなさい…!」

朱璃の言葉に、しかし少女ーー朱乃は首を横に振る。

「いやぁ…お母様と一緒にいる…!」

泣きながら縋り付いてくる自ら愛娘の手を、朱璃は振り払えずにいた。

「安心しろ。娘共々、あの世へと送ってやる。」

神社の境内に、親子のものでは無い、低く冷たい声が響く。

そこには、黒い装束を身に纏った五人程の男達が二人を囲むように立っていた。

「愚かな…堕天使などと交わるからこうなるのだ。忌まわしき混じり物と共に、ここで眠るが良い。」

男達の手に、魔力が集中する。

(せめて、この子だけでも……‼︎)

そう思い、朱璃は朱乃を庇うように抱き締める。

そして、

「やれ」

無情な声が発せられたーーーー

 

 

 

 

最初に朱璃が感じたのは、痛みでは無く、奇妙な浮遊感だった。

ーーああそうか、私は死んだのか。

そんな考えが頭をよぎる。どうしようもない事実を前に、諦めにも似た感情が、呟きとなって発せられる。

「これが死……自らの魂が、肉体から剥がれる感覚なのでしょうか…はは、結局私は、娘を救う事が出来ませんでしたか…」

「あのさ、唐突にネガティヴな発言すんのやめてくんない?びっくりした挙句にテンション下がるとか、一番リアクションに困る訳だし。」

ーー,ーー独り言に、返事が返ってきた。

その事に、朱璃は思わず瞠目する。

「とりあえず、あんたはまだ生きてるから、まだその命を手放すんじゃないぞ。」

生きてる。

聞こえてきた言葉に、朱璃は一瞬思考が止まる。

浮遊感は徐々に収まりつつあり、自らの体を苛む痛みと、自分の体をしっかり抱える者と、自らにしがみつく小さな者の、二つの温もりを朱璃はしっかりと認識していた。

「よっと」

そんな声と共に声の主は着地する。

見れば、声の主は自らの娘と、そう歳の変わらない少年だった。

同時に、少年の横に、黒い着物を大胆に着崩した、猫耳の女性が着地する。

「黒歌、お前治療は出来るか?出血が酷い、すぐに手を打たないとマズイぞ。」

「出来なくはないけど、あんまり得意じゃないからにゃ〜、その場しのぎの応急処置しか出来ないかもにゃ。」

「構わない。俺が戻るまで持たせろ。後は何とかする。」

「了解にゃ。」

黒歌、と呼ばれた女性は、少年の指示を受け、すぐに実行する。

対して、少年は前に出ると、宵闇のような漆黒の刀を構えた。

「あな、たは…?」

朱璃の問いかけに、少年は気怠そうに答えた。

「月野幹也。ただの阿呆だよ。」

そう言って少年ーー幹也は敵陣へと突っ込んでいった。

 

 

 

「小僧…貴様なにも」

敵の問いかけなぞ、そもそも聞くつもりすらなかった。

「え」

弾丸のように飛来した漆黒の刀が、男の喉元に突き刺さる。

一瞬で絶命した敵には目もくれずに、幹也は刀を引き抜き、そのまま正面の男の首を刈る。

左右から放たれる魔力をしかし幹也は意に介さない。

魔力は幹也の体に触れる前に霧散、或いは障壁(、、)に阻まれ、消滅する。

 

「馬鹿な……!」

「遅ぇ…」

即座に右側の男を袈裟斬りにし、左側の男の腹を貫く。

「小僧…貴様一体何者だ!?」

「さっきも言っただろ。」

男の困惑した声に、幹也は気怠そうに返した。

「ただの阿呆だよ。」

刃が霞み、男の意識は永劫の闇に落ちていった。

 

 

 

「黒歌!容体は⁉︎」

「とりあえずは凌いでいるにゃ。けどこれ以上は…」

不得手な治療を長時間続けたせいか、黒歌の額にはびっしりと汗が浮かんでいた。

「後は任せろ。」

幹也が朱璃の側に駆け寄る。

「お願い‼︎お母様を助けて…」

朱乃の悲痛な叫びに幹也は、

「ああ、心配いらねぇよ。」

と軽く返す。

直後に幹也の体から、眩いばかりの極光が溢れ出した。

「綺麗だにゃ…」

「すごい…」

あまりにも神秘的な光景に目を奪われる二人。

それは、見覚えのある光だった。

きっとこの星に生きる全ての人間が仰いだであろう夜を照らす光。

星の瞬きを更に際立たせるその光は、

「お月様…?」

紛うこと無き、月の光だった。

 

 

 

 

 

 

それから。

朱乃と朱璃の二人は、後から来た父親とその仲間によって保護された。

二人の様子を見た父親は、二人は何故衣服しか傷付いていないのか?と無傷である事を、喜ぶと同時に不思議に思ったという。

そして朱乃は、

(ツキノ…ミキヤ…)

あの少年を想いながら、父と共にその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

一方、その当事者である幹也は、森の中を全速力で走っていた。

「幹也?どうしたにゃ?そんなに焦って…」

「さっきの戦闘、覚えてるか?」

「にゃぁ、見事だったにゃ。でも、それがどうしたにゃ?」

「魔力弾が来た時、俺のでも、お前のでもない障壁が張られた。あの時は援護してくれたけど…」

「まさか…⁉︎」

「ああ、追って来てる!」

見れば、幹也の表情には焦りが浮かんでいた。

それもそのはず。今追ってきている相手は、先程相手取った雑魚とは比べ物にならない程の気配なのだから。

「お待ちください。」

「「‼︎」」

そして、それは静かに降り立つ。

「…あんたは?」

「私の名は…」

そして、目の前に降り立った女性は、

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガブリエルと申します。」

静かにそう告げるのだった。

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