僕と千歌、時々みかん。   作:猫の缶詰(新品)

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アニメの二話の話を主軸として書きますが、ちょこちょこオリジナル要素をいれていきます。
一話の部分はほぼアニメの通りだったので……


その下着、桜色につき

 今日の天気は晴れ、というか今日も天気は晴れ。自室の窓を開き、朝の少し冷えた空気を肺に取り込み、吐き出す。

 

 沼津に来て、何度目かの朝。

 ここから見る外の景色もすっかり見慣れた所で、おぼつかない足取りのまま洗面所へ。

 そして、寝ぼけ眼の冴えない顔をした男を鏡越しに確認し、冷水で眠気を飛ばした。

 

 春先の水はまだ冷たい。

 これが丁度良く感じてくる頃には夏になっているのだろうと思いながら、リビングに向かう。

 

 

「あら、春くんおはよう。今日は千歌ちゃんと一緒じゃないのね?」

 

 キッチンで朝食を作っていた志満さんは、確認するように僕の後ろを見た。

 

「おはようございます。まだ寝てるみたいなので、後で起こそうかと」

「そう。千歌ちゃん朝弱くてね、春くんが来る前はいつもあんな感じだったから何だか懐かしいわ」

 

 そうだったのか。いつも僕より早く起きていたし、てっきり朝に強いかと思った。

 

「僕、起こしてきますね」

「えぇ、お願い。美渡に起こさせると喧嘩になっちゃうから」

 

 ……容易に想像がついた。

 きっと言い合いになるに違いない。

 

「あはは……ですね」

 

 

 

 千歌さんの部屋の扉前。

 ノックしようにも、中々手が伸びない。

 そういえば、僕から千歌さんの部屋に訪ねる事って無かったような。

 

 それに、千歌さんは女の子。いくら兄妹のように振る舞ってはいても血の繋がりはないし、おまけに可愛い。

 何だか妙に意識してしまい、開けにくくなってしまった。いや、だが起こさなければ遅刻する。

 

 数秒間目を伏せた後、僕は意を決して扉をノックした。

 

「お、おはようございます。千歌さん」

 

 返事は無い。今度は少し声を大きく、ノックを2回。

「起きてますかー」

 

 やはり、返事は無い。

「……開けますよ?」

 

 ゆっくりと、扉を開く。

 悪いことをしているみたいで、やけに心音がうるさい。

 

 足元の雑貨に注意しながら、ベッドに近付いた。

 

「……すー……すー……」

 みかん色の布団に包まり、寝息を立てていた千歌さん。

 

 ……可愛い。ほっぺたがぷにぷにしてそうで、つい指が伸びてしまう。

 が、その指を抑え、首を横に振る。

 

 ──いやいや。ダメだ。起きてしまうだろ。

 

 ──いや、違うか。僕は起こしに来たんだ。

 なら触っても良いんじゃないか?

 うん、きっとそうだ。

 

 僕は指を頬に伸ばし──ぷにっ、と。

 おぉ、予想以上に柔らかい。まるでお餅だ。

 

 タカが外れたように、何度もつつく。

 ぷにぷに、ぷにぷに、ぷにぷに。

 

「んっ……」

 

 こそばゆいのか、吐息が洩れる。

 そろそろ起きる頃合いだろう。

 

「んーっ……やっ……」

 

 何度も頬をつつく指を払い除け、ふと。

 開かれた目が合った。

 

「……あ」

「春太、くん?」

 

 

 そこで僕は我に返る。

 僕は一体、何をしていたのか。

 

「お、おはようございます?」

 とにかく、笑うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「ね、春太くん。千歌ちゃんと何かあったの?」

 

 二限目の授業終わり。渡辺さんは隣の席に腰を下ろし、千歌さんが机を離れたタイミングを見計らって訊ねて来た。

 

「え、えぇ。まぁ……僕が悪いんです」

 

 言われてキョトンとする渡辺さん。

 隠すのもあれだし、話しておこう。

 

「──あははっ、なーんだ。そんな事か」

 一通り話すと、軽快に笑う渡辺さん。

 

「そんな事って……もしかして、渡辺さんもしたことあるんですか?」

「あるよー。私なんてしょっちゅうだし。でも、最近は無かったな。春太くん来てから早起きだったし」

 

 なるほど、常習犯というわけか。

 それなら話は早い。

 

「どうすれば機嫌直してもらえますかね……」

「んー、みかんかな? それか、みかんジュース」

 

 みかんがあれば期限が直るのか……本当にみかんが好きなんだな。

 

「みかん、ですね。わかりました」

 

 今日の放課後にでも松月でみかんジュースを奢ろう。

 そうしよう。

 

「にしても、昨日の千歌ちゃんは凄かったよね」

「あぁ……確かに」

 

 

 彼女──桜内さんと奇跡とも呼べる再開を果たし、勢いのままスクールアイドルに勧誘。そして……。

 

 

──ごめんなさい。

 

 見事に撃沈。まるで、プロポーズに失敗した彼氏の如く床にへたり込み、トボトボと自分の机に帰っていくあの千歌さんの姿は忘れられない。

 

 ただ、それからは隙あらば勧誘と桜内さんを多方面から追い回すストーカーと化していたが。

 

「今もやってるんですかね」

「うん、ほら」

 

 渡辺さんは苦笑いをして、窓の外を指差す。

 見れば、桜内さんを追いかける千歌さんの姿が。

 

「うわぁ……」

 

 遠目であまりよくは見えないけど、桜内さんが泣いているように見える。

 一方の千歌さんは嬉々とした表情。

 鬼だ。あれは諦める気が更々無いな。

 

「止めなくて良いんですか?」

「どうだろ? 本気で嫌がってるようには見えないし、まだ大丈夫じゃない?」

 

 ……いや、どう見ても本気で嫌がってるようにしか見えないんですが。

 

 

「はぁ……はぁ……、疲れた……」

「梨子ちゃん、足……速いね……」

 

 10分という短い授業合間の休憩時間を走り回り、疲れ切った二人は次の授業で机に伏していた所、こっ酷く怒られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




これもまた長くなりそうです
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