僕と千歌、時々みかん。   作:猫の缶詰(新品)

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最初の一歩、確かな決意

 ドタドタと慌ただしく廊下を駆ける音が自室まで響いてくる。今の時刻は朝の六時、起きるのにはちょっと早いくらいの時間帯。

 

 最近はこの音で目が覚めて、余裕を持ちながら朝の支度を済ませるようになっていた。

 

 その足音は、千歌ちゃんの足音。曜ちゃん、桜内さんを含めて三人になり本格的に活動を始めたスクールアイドル部の朝練の為に、いつもよりも早く起きている。

 

 先日、千歌ちゃんが悩んでいた歌詞は紆余曲折ありながらも何とか完成したらしく、毎日のように届いていた桜内さんからの歌詞の催促のメッセージに頭を抱えていた千歌ちゃんは、すっかり以前のような明るさを取り戻していた。

 

 曲は桜内さんが仕上げ、振り付けと衣装は曜ちゃん。

 若干、というか曜ちゃんの負担が多い気がするが、そこは僕も手伝うということで特に問題は無い。

 裁縫なんてやったことも無いけど。

 

 取り敢えず、今残された課題は生徒会長に認めてもらう事ただ一つ。

 

「まぁでも、そこが一番の難点なんだよな……」

 

 どれだけ練習をしても、部としての承認が無ければそれは全て無駄になる。それだけは何としても防がねば。

 

「とすれば、勧誘か……。アテは無いけど、探してみるかな」

 

 

 

 

 

 

 そう決心し、迎えた昼休み。

 

「え? お昼もういいの?」

 

 購買部で買ったメロンパン一つを急ぎ目に食べ、ミルクティで流し込んで立ち上がる僕を見て、不思議そうに千歌ちゃんがそう訊ねてくる。

 

 いつもであれば、ダラダラと話しながら食べていたのだが、今日は勧誘の予定がある。

 少しでも時間が惜しいのだ。

 

「えぇ、用事がありまして」

 

 彼女達にはダンス練習に集中して欲しいから、あえてここは用事と言う事に。

 もし勧誘だと言えばきっと彼女達は手伝おうとする筈だから。

 

「そっか……うん、いってらっしゃい!」

「はい。じゃあまた」

 

 向かうは一年生の教室。二年や三年の所に行ったとして、多くは既に部活に入部しているし、それに部活に入っていない人は帰宅部で満足してそうだ。

 そんな人を無理に誘った所で続きはしないだろう。

 

 

 階段を降りて、一階。ちらほらと廊下に見える一年生達を横目に、教室へ。

 

「……緊張するな」

 

 一年生の教室扉前。閉じられた扉をノックしようにも、思うように手が伸びない。

 

 ここ最近はそうでもなかったけれど、僕は元々少し人見知りがちだ。ましてや、女子校の中で唯一の男子生徒。良くも悪くも注目は浴びる。

 同じクラスの人達なら、千歌ちゃんと曜ちゃんのお陰で比較的に好印象を受けているからまだしも、今の相手は入学したばかりの一年。

 あぁ、鬱だ。帰りたい。

 

 心の中でマイナス思考が渦巻く僕の背をトントン、と。誰かと思い振り返るとそこには──。

 

 

「春太さん、でしたよね? そこで何してるずら?」

 

 制服の上に黄色のカーディガンを羽織る茶髪ロングの子、花丸さんが居た。

 その後ろには、花丸さんに隠れるようにして僕を見る赤髪ツインテールの子、ルビィさん。

 

「……あ、あぁ。ちょっと一年に用事がありまして」

 

「用事? もしかして、スクールアイドルの事ですか?」

 

 まさか当てられるとは思っておらず、変な声が出た。 特に彼女達は気にしてないから良かったけど。

 

「えっ……あはは……分かりますか」

「あ、あの! スクールアイドル部、承認されますか?」

 

 ルビィさんが前に出て、真剣な眼差しで僕を見上げてくる。

 

「どうですかね……あ、君達が入ってくれれば、人数の問題はクリア出来るんだけど……入る気は無いですか?」

 

 以前千歌ちゃんが断られたが、ものは試し。

 前と比べて気が変わったかもしれないし。

 

「オラは……運動苦手だし、それに図書委員の仕事があるので……」

「ル、ルビィも、ちょっと」

 

 強い拒絶は無いにしろ、首を縦に振ろうとはしない。

 無理強いするわけにもいかないし……。

 

「そうですか……。お二人共可愛いし、きっと人気になれると思うんですが……」設備充実

 

 だが、仕方ない。無理なものは無理だ。

 

「か……可愛い、ずら?」

「そ、そそそんな事ないです!」

 

 二人は顔を赤くして、妙に慌て出した。

 もしかして、言われ慣れてないのか?

 ……これはもしや、押せばいけるやつでは?

 そう思い、続けざまに褒める。

 

「いえ、お世辞抜きで本当に可愛いですよ。アイドルにだって負けてません」

 

 褒め方なんて分からないけど、こんな感じでいいのかな。更に顔が赤くなってるから多分合ってるんだと思うけど。

 

「ル、ルビィちゃん! 逃げるずら!」

「うんっ!」

 

 耐え切れなくなったのか、二人は猛スピードで何処かへと走り去っていった。

 ……今のは言い過ぎだったか。

 

 

 結局その後、教室に入って注目を浴びながら勧誘してみたものの、ろくに成果を上げることは出来なかった。

 これ、後で生徒会長に呼び出されたりしないよな?

 

 

 

「……はぁ」

 

 二年の教室に戻り、自分の席に向かう。

 千歌ちゃん達は居らず、恐らく中庭でダンスの練習中。

 

 昼休みの時間はまだあるし、少しだけ昼寝しよう、と机に伏せて、目を瞑る。

 窓辺から差す太陽の光が心地良く、眠りに落ちるのは容易だった。




短くてすいません…

それはそうと今日はファーストライブ一日目。
行きたかったけど今日も明日も仕事のせいで無理でした…

今はただBlu-ray化が待ち遠しい限りです。
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