僕と千歌、時々みかん。   作:猫の缶詰(新品)

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自己紹介

「はい、ここが私のお家兼旅館です!」

 

どうだと言わんばかりに胸を張り、続けてしいたけが吠える。

「け、結構、大きいですね……」

素直にその大きさと佇まいに驚いた。

こんなに立派な旅館を経営者に母の知り合いが居たことにも驚きだ。普段おちゃらけているし、きっと友人もろくでもないヤツ何だと勝手に思っていた。

 

国登録(くにとうろく)有形文化祭(ゆうけいぶんさい)? っていうものの一つなんだって! すごいよね!」

 

テンション高く、彼女は誇らしげにそう告げた。

確かにそれは凄いけれど、多分、有形文化財(ゆうけいぶんかざい)の間違いだと思う。

まぁ嬉しそうだし、あえて言わないでおく。

 

「凄いですね……」

「でしょー! えへへっ。あ、そうだ散歩! は、もういっか。君の案内しなきゃだし」

 

そう言って、表玄関へと向かう。

「そうだ、名前聞いてもいいですか? 今日からお世話になる身ですので」

「えっ? お世話って?」

 

ピタリと。歩みを止めてこちらへ振り返る。

「えっと……その。母から紹介があったと思うんですけど」

「……ごめんなさい、お客様かと思ってた」

「あー、いや。言ってなかった僕が悪いんです。すいません」

 

何だか微妙な空気になってしまった。

やっぱり、知らない人が家で暮らすというのは嫌なものだろう。

それに異性だし、僕が彼女の立場だったら嫌だ。

 

「ううん、謝ることないよ! じゃあ、こっちからだね」

来た道を引き返して、彼女は進む。

そして、裏口から家の中へ。

 

「とうちゃーく! ちょっと待っててね!」

サンダルを脱ぎ捨てて、あっという間に部屋の奥へと消えていく。

 

「元気だな……。若さってやつか」

言うほど僕も老いてない。というか高二の学生だ。

 

少しして。奥からやって来たのは彼女よりも小さな女性。同じようにアホ毛があるし、妹だろうか。

 

「あら、随分と大きくなったのね。春太《はるた》君」

「……へ?」

 

今、何て言った? 春太君?

じゃあもしかしてこの人が……?

 

「この子の母の恵理(えり)です。もしかして、覚えてない?」

「すいません、良くは……」

 

笑いながら、頭を掻く。

こんな小学生みたいな見た目の母親が居るなんて。

世界は広いんだな。

 

「まぁ小さい頃だったもんね。覚えてないのも無理もないわ」

「ですかね……あはは」

 

それから一言二言交えて、家に上がる。

やたらと広いリビングには、二人の女性の姿が見えた。

 

一人はロングの優しげな表情をした人。

もう一人はショートヘアーで、こちらを(みる)(いな)や悪戯な笑みを浮かべた。

 

「紹介するわ。こっちのおっとりしてて優しそうな子が、高海(たかみ) 志満(しま)。で、こっちの悪ガキが美渡(みと)。仲良くしてやってね?」

 

「よろしくねぇ」

胸の前で小さく手を振り、微笑みを浮かべる志満さん。

「悪ガキ言うな! ったく。ま、よろしくー」

しかめ面をしながらヒラヒラと手を振る美渡さん。

 

「ね、私の紹介まだだよ!」

ずいと割り込むように僕の前に表れて、彼女はコホンと咳払い。

 

「私は高海(たかみ)千歌(ちか)! 高校は浦の星女学院で、今年から二年になります! ちょっと遅くなったけど、これからよろしくね!」

 

屈託のない笑みを浮かべる千歌さん。

 

その笑顔があまりに輝いていて、自分の自己紹介をするのにワンテンポ遅れた。

 

「あ、その。自分は上里(かみさと) 春太(はるた)と言います。千歌さんと同じで、今年から高二になります。えと……よ、よろしくお願いします」

しどろもどろになりながらも、何とか言えた。

「はーい、じゃあ自己紹介も終えたところでご飯にしましょうか。ほら春太君、こっちこっち」

 

僕は呼ばれるままイスに座る。隣には千歌さん、前には志満さんと美渡さんの二人。

 

テーブルには予め豪勢な料理が並べられていた。

この日の為に用意してくれたかと思うと、何だか申し訳無く思う。

「それじゃ、今日の出会いに乾杯!」

恵理さんの掛け声と共に、歓迎会が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 




文字数あんまり変わってない……。
今度からは多分増えます。えぇ、多分。
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