「
それだけ言うと、
「まぁ、荷物の片付けしたかったし……丁度良いか」
そうして始まった段ボール達の解体作業。
中に入っていたのは殆どがゲームや服、後は本。
本とは言え、勉学の物ではなくラノベや小説。
表紙がアレなので、余り見られたくはない。
だが、話は普通に面白いから困りものだ。
組立式の本棚を作り、そこに本とゲームのソフトを並べていく。随分と慣れたもので、ものの10分で前半が終了。
残りの段ボールはどうせ服だろうし、急ぐ必要は無さそうだ。
と、タイミング良く千歌さんが呼ぶ声が聞こえた。
「春太くん、出てきていーよ!」
「はい、すぐ出ます」
扉を開けると、何やら楽しそうに僕を見上げる千歌さんが居た。
「早く早く、曜ちゃんが待ってるから!」
グイッと強引に手を引かれて、隣の千歌さんの部屋に連れられた。
「……おぉ、女子の部屋だ」
真っ先に視界に入ったベッドと、海産物のヌイグルミ。襖にはスクールアイドル、『μ's』のポスターがあり、ほんのりと香る柑橘系の香りは、部屋全体を包み込んでいた。
そんな女子の部屋、真ん中でクッションに腰を降ろしていた一人の少女が目に入る。
灰色に近い髪色の、ウェーブが掛かったミディアム。
整った顔付きは思わず息を飲むほどで、アイスブルーの瞳がこちらを捉えたと同時に、心臓が大きく跳ねた。
千歌さんも十分美少女ではあるが、それを更に上回る美少女が居るとは。この人が、千歌さんの言う友達か。
「あっ、君が春太くん?」
「は、はい。
「敬語じゃなくて良いよー。私達と同い年なんだし! 私は
ビシッ! と綺麗な敬礼。
これは返すべきなのかと迷っていると、僕の後ろで止まっていた千歌さんが強く押してきた。
「ほーら、早く入っ、て!」
「うおっ! と……すいません」
若干前のめりになりながら、渡辺さんの前に座り込む。すると、顔を近付けて耳元でこう呟いた。
「千歌ちゃん、昨日の夜お兄ちゃんが出来たって喜んでましたよ」
ふふっ、と微笑み、元の位置に戻る渡辺さん。
今のは危なかった。微笑みもそうだが、何より頬が触れ合うくらい近くて爽やかな香りがした。
「なになに? 二人でこそこそしないでよぉ~」
仲間外れにされたと喚く千歌さんの頭を撫でて
まるで子供と親だ。
「いやー、良いなぁ千歌ちゃんは、って思ってさ」
「え? 何が?」
「お兄ちゃんが! 出来て」
「わーっ! 止めてよ! 言わないで! ……え、もしかしてそれさっき言ったの!?」
「さぁ? どうだろうねー?」
みるみる内に千歌さんの顔が赤くなっていく。
その顔のまま、こちらを見た。
「……聞いた?」
「いや、特には」
ここは嘘を吐いた方が良いだろう。
そう判断して、僕は首を横に振った。
「良かったぁ……」
「あはは。ごめんね? 千歌ちゃん」
胸に抱き留めて、再度頭を撫でる。
渡辺さんは撫でている間、幸悦の表情を浮かべていた。
まさか、こうする為にわざと……いや、考えないでおこう。
千歌さんが落ち着きを取り戻してきたところで、本題に入る。
「今日春太くんを呼んだのは理由があってね、えーっと……あ、あった!」
通学用の鞄をまさぐり、取り出したのは一枚の紙。
何かの下書きのようだ。
「スクール、アイドル?」
うっすらと読み取れた言葉。
それを聞いて、千歌さんは大きく頷く。
「そう! スクールアイドル! 私、スクールアイドルになるんだ!」
キラキラとルビーのような瞳を輝かせて、彼女は宣言する。
渡辺さんはそんな千歌さんを拍手して盛り上げていた。
「えっと、それで何故僕が?」
「もし良かったらダンスとか見てもらえないかなぁって思って……ダメ、かな?」
上目遣いで、瞳を潤ませる千歌さん。
心なしかアホ毛が垂れているような気がする。
ここで断れば、きっと僕は薄情者だ。
肩身の狭い思いを一年生きていくくらいなら、そのくらい容易いご用だ。
「……僕でよければ、何でも力になるよ」
「ホントに!? やった! 曜ちゃん! やったよぉ!」
「うんっ! 良かったね、千歌ちゃん!」
抱き合う二人。やはりと言うか、渡辺さんは幸悦の表情を浮かべていた。
やっぱり渡辺さんって……アレなのか?
そんな疑問を抱きつつ、僕は微笑ましい光景を渡辺さんが満足のいくまで眺めていた。
曜ちゃんはアレですね。はい。
※サブタイトル少しだけ変更してます