新人武装検事 甲賀詩音   作:満瑠

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やっとルビの使い方を覚えました。


第3話ー武偵高ー

「はぁ…汗でベトベトする」

店から出て、武偵高に戻ると六唯がお手洗いに行ってくるというので、自動販売機にコーヒーでも買いにいく。

校舎をとぼとぼと歩いていると、ドタドタ走る音が聞こえてきた。

ここは探偵科棟(インケスタとう)で戦闘訓練はないはずなのに、尋常じゃないスピードで走っている。

それも二人だ。

一応様子を見に行って見ると、黒髪の男子生徒とピンク色の髪の女子生徒がダッシュでモップがけをしていた。

遠山金次と神崎アリアだ。

そして教室の真ん中で、ごちんっっっ!と頭からぶつかった。

うわ、痛そう…

そして、遠山金次は神崎アリアに覆い被さるかたちになって倒れた。

これ、今の光景だけ見たらかなり犯罪くさいな…

まぁ、二人して走って頭をぶつけるってことは何か遊びでもしてたのだろう。

そして、端から見れば加害者こと遠山金次の方がみるみる青ざめてる。

あの青ざめ方は罪悪感とかじゃなくて命の危機に瀕したときのものだ。

多分、現代のシャーロックホームズことSランク武偵神崎アリアに日頃から暴力をふるわれているのだろう。お気の毒です。

とりあえず、こっちには二人とも気づいてないみたいだし、さっさと退散することにする。

遠山金次も苦労してるんだな。

苦労の度合いなら武装検事も負けてないけどな!

などと、内心社畜の末期症状特有の苦労自慢をしてその場を後にした。

 

 

教務科(マスターズ)に戻る途中で六唯と合流し、ブースに入る。

そこにはジャンヌダルクがすでにソファーに座っていた。

「ごめんね。待たせちゃったかな」

昼食を取っていたのはお互いさまだが、待たせてしまったのは素直に謝罪する。

「いや、問題はない。私も2分前に来たばかりだ」

堂々たる態度で答えてくる。

とりあえず、立っていてもしょうがないのでソファーに座る。

それにしても峰理子といい、この子といい、美少女が多いなこの学校。

峰理子はアイドル的な可愛さだったけど、この子は映画女優的な綺麗さがある。

六唯も目が覚めるような美人だし、さっきからこの部屋にいる平凡な顔って僕ぐらいですね。

「お前たちが聞きたいのはイ・ウーについてのことだろう」

なるほど、ここに来る前に峰理子と会ったみたいだな。

「そうなんだ。元イ・ウーメンバーについて知っていることがあったら教えて欲しい」

「先に言っておくが、私が知っている事は理子とあまり変わらないぞ」

まぁ、そうだろうな。

峰理子とジャンヌダルクはあまり変わらない時期にイ・ウーを離れているし、地位もさほど変わらなかっただろう。

「しかし、私は理子とは違う方法で情報をお前たちに伝えられるだろう」

うん?違う方法?なんだろう。

そう言えば、彼女は超能力者(ステルス)であると資料にあった。

それを使って何か教えてくれるのか?

何はともあれ、期待できそうだな。

「それはどんな方法ですか?」

六唯も僕と同じ考えに至ったのか、ワクワクしながら聞く。

ジャンヌダルクは自信満々に言う。

「絵だ」

「絵?」

六唯と僕がハモる。

「そう。絵だ」

予想したのとは少し違ったが、この自信はもしかしたらすさまじく精巧かつ緻密な絵を描けるのかもしれない。

イ・ウーメンバーの中には、まだ顔が判明していない者もいる。

それがわかるだけでも大きな進歩だ。

「是非お願いします!」

六唯も期待をこめて言う。

「わかった。少し待っていろ」

ジャンヌダルクは何処からか取り出した紙と鉛筆で絵を書いていく。

たっぷり時間をかけて、丁寧に描いているようだ。

すごい。絵が上手い人って最初はどこの何を描いてるかわからないけど、ジャンヌダルクもそんな感じだ。

しかし全く迷いなく、すらすらと描いていく。

描き終わるまで少し時間がかかりそうなので、座ったまま仮眠をとることにする。

フフ、起きるときが楽しみだ。

 

 

「出来たぞ!」

ジャンヌダルクの声で浅い眠りから覚めた。

絵はジャンヌダルクが裏返しにしているため、まだ見えない。

六唯もノートパソコンを開いてなにやら仕事を片付けていたようなので、まだ絵は見ていないようだ。

時計を見たらもう午後5時過ぎだ。

2時間以上かけて描いた絵だ。きっとすごいぞ。

「今こそ見せよう。これが私の知るイ・ウーの全てだだ!」

バッ!と絵を表にする!

そこに描かれていたものは…

……何これ。

まるでスライムとスライムが正面衝突したような、ぐにゃぐにゃしたものが4つある。

「この一番左のものがシャーロックだ。そしてその隣がブラド、パトラ、リサだ。この3人はシャーロックの後任として名前があがっていた。」

描こうとしたものは悪くない。実際、リサと言う女性は元イ・ウーメンバーだという事はわかっていたが、顔はまだわかっていない。

だけど、これじゃ全くもってわからない。せいぜい分かるのはシャーロックより髪が長いということくらいだ。

「きっと役に立つだろう。この絵はもっていけ」

満足げなジャンヌダルクは六唯に絵を渡す。

六唯はすっごく困りながら、僕の方を見てくる。

とりあえず受け取っておくように促し、自然な流れでソファーから立つ。

「今日はお忙しい中、わざわざ時間を割いていただき感謝いたします。それでは。」

精一杯笑顔を作りつつ礼を述べ、ブースを後にする。

笑顔が引きってしまったのも無理はないだろう。

職員室の高天原先生にも礼を述べ、車に戻る。

「すっごい疲れた…」

「そうですね…」

とりあえず、出来る事はした。

後は、今日の成果を検事総長に報告するだけだ。

あれ?何か忘れてる気がする。

と首をかしげていると、

パァン!

と銃声がした。

「今のは!?」

六唯も気づいた。

普通は武偵高で銃声がするのは何もおかしい話じゃない。

しかし、夏休みで生徒はほとんどいないはず。

さらに、今の銃声は武偵高の屋上から外に向けて発砲されたものだ。

そんな事を考えているときに、探偵科棟(インケスタとう)の非常階段から遠山金次が出てきた。

彼は全力で逃げている。

そして、彼の目つきや身のこなし等でわかったが、彼はHSSを発現している。

「彼、狼に追われています!今の銃声も彼を狙ったものです!」

六唯はあわてて車を出ようとする。

しかし、僕は六唯の手を掴んで止めた。

「待って六唯。あの弾丸に殺気はなかった。あの狼も、あの子を殺すつもりはないみたいだ」

「そんな。でも…」

「それに彼は、一般人が多い商業区に逃げた。悪党に命を狙われた武偵なら、一般人を巻き込まないようにむしろ人気が無い場所に逃げるはずだよ。彼は狙撃手と狼が自分だけを狙うと確信している」

「確かに…」

「恐らく、武偵高の屋上から撃っていることからも考えて相手も武偵だろう。だから、あの子が殺されることもないだろう。なんであんなことになってるかはわからないけどね」

僕の推測を聞いた六唯はとりあえず落ち着いたようだ。

しかし、落ち着いたら落ち着いたで自分の慌てたことが恥ずかしかったらしく、少し赤くなってる。

「すいません、私頭より体が先に動いちゃうタイプで…」

「いや、とっさに人を助けるために動けるのはすごいことだよ」

普通の人間は、赤の他人を助けることを一瞬躊躇う。

ましてや、銃声なんて聞いたら尚更だ。

これは六唯の正義感を表している。

「ところでさっきの子で思い出したんだけど、遠山金一君の居場所ってわかる?」

 

 

冗談半分のダメ元で聞いたのに、六唯はしばらく考えてからそっとうなずいた。




読んでいただきありがとうございます。
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