新人武装検事 甲賀詩音   作:満瑠

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誤字脱字ご容赦ください。


第5話ー初戦闘ー

「わかった」

武装検事選抜試験。

それはまさに地獄の試験。

死人や再起不能者が出ることも決して稀ではない。

つまり、武検選抜を受けて生きてる時点でかなりの実力者であることは間違いない。

武装検事補佐官に抜擢される程だし、初対面の時点で六唯の実力は大体わかっていた。信頼もしている。

六唯が戦ったところはまだ見ていない。

ところが僕は、六唯の戦闘スタイルを大体予測していた。

おそらくそれは、僕の戦い方にとても近い。

六唯はゆっくりと、道をふさぐ男達の方へ歩いていく。

「あ?」

僕どころか一見するとただの女性である六唯が、全く恐れずに自分達の前に出てくるのが気にくわない、と言うよりは不思議らしい。

「なんだい、ねぇちゃん。逃げられねぇぜ?」

男達の内の4人がナイフを取り出す。

「銃砲刀剣類等所持取締法」

「なに?」

「何人も業務その他正当な理由を除いては内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。あなたたちはそれに違反しています。」

六唯は静かに告げた。

「ふざけてんのか?」

さすがにイラッとした顔で男達の一人が言う。

「もういい、縛って事務所につれてけ」

最初に僕達に声をかけた、リーダーだったらしい男が6人の男たちに命じた。

ナイフを持っていない男二人が六唯の左右の腕を掴んだ。

ドンッ!

六唯が掴まれた軽く腕をふると、二人はあっけなく宙を一回転し、地面に背中から落ちた。

「え?」

ナイフを持った男が呆然と呟く。

投げ飛ばされた二人は背中から勢いよく落ちたせいで、上手く呼吸ができないらしく苦しそうに呻いている。

男が驚くのも無理はないだろう。

単純な筋肉量でははるかに勝るはずの大男二人を、目の前の女性が全く力んだ様子もなく投げ飛ばしたのだから。

「バカ!武器を使え!」

リーダーの声でハッと我にかえり、ナイフを持った男達が襲いかかってくる。

しかし、六唯は男の一人の手首を掴むと、相手のナイフを持った手に自分の手を重ねてクルッと手の甲を返す。

それだけの動作で男の体は面白いほどに飛び、二人の男にぶつかる。

六唯は残りの一人の手を素早く取り、キュッと捻ると男は苦痛に顔を歪めて膝をつき、ナイフを落とした。

投げ飛ばされた男とぶつかった男の三人は立ち上がろうとするが、足が震えて上手く立てないようだ。脳震盪を起こしている。六唯はそれを狙って投げたし。

「う、動くなー!!」

リーダーの男は、自分の部下が一瞬で無力化されたことにパニックになっている。隠し持っていた銃を取り出し、威嚇する。

チャーターアームズブルドッグ。小さいが、アメリカ等では護身用に用いられるリボルバー拳銃だ。

だが六唯も男を拘束している手を左手にかえ、右手でホルスターの銃を抜く。

ブローニング・ハイパワー。軽量で、複列弾倉(ダブルカラム)なのが特徴の銃だ。

六唯は照準を男からかなり左にそらして発砲した。

一瞬威嚇射撃をしたのかと思ったが、違う。

六唯の撃った弾は左の建物の壁にあたり、跳弾して男の銃に当たった。

銃を失った男は逃げようとしたが、さすがにそれは許さない。

男より一瞬早く動いて、当て身をいれて気絶かせる。

「お疲れ様」

僕が男を拘束したままの六唯に笑いかけて、僕達の初戦闘は終わった。

 

 

甲賀流合気術(こうかりゅうあいきじゅつ)

甲賀忍者の使ったとされる格闘術らしい。

六唯の単純な筋力はあの男達よりもはるかに弱いだろう。

だから彼女は、力を受け流したのだ。

合気術とは、文字通り気を合わせることで成立する。

彼女は彼らを力の入らない体制にしたり、力の向きを変えたりして翻弄したのだ。

端的に言えば、彼らは自分の力でぶっ飛んでいたのである。

まさに柔よく剛を制すだ。

「私のご先祖様は、忍者だったんです」

後から聞くと彼女はそう言った。

甲賀流忍者術とは、複数の流派が集まって出来たものなのだそうだ。

甲賀流の忍者には、甲賀五十三家と呼ばれる中心の家が存在した。

そしてさらに甲賀五十三家の中でも、仕えていた氏族である六角氏の信頼の厚い家は甲賀二十一家と呼れ、恐れられていた。

六唯はその甲賀二十一家の中の鵜飼家の出身だったのだ。

「詩音さんに会ったときは、すごい偶然だなって思ったんですよ。甲賀なんて名字は珍しいですから」

鵜飼なんて名字もなかなか珍しいと思うけどね。

とにかく警察を呼び、男達を引き渡す。

多分下っぱだけど暴力団関係者みたいだし、こっちにも別件があるので、警察に丸投げ…もとい、任せよう。

 

カナの指定した店は、地下にあるひっそりとしたバーだった。

ヤクザっぽいやつらに絡まれたせいで遅刻ギリギリだったけど、なんとか着けた。

店に入ってみると、客はカウンターに座っている一人だけだった。

遠山金一。

間違いないだろう。

「待たせてしまいましたか?」

大切な情報源にへそを曲げられても困るので、低姿勢を心がける。

「いや、俺も今さっき到着したところだ」

どうやら大丈夫そうだ。よかった。

「ところで、カナさんは一緒ではないのですか?」

てっきりカナも一緒に来ているものだと思っていたので、尋ねてみる。

バキャバキャズドォォォォォン!!!

すごい勢いでカウンターの木の部分が半分くらいの薄さまで砕けた。

彼の腕からシュゥゥゥ…と煙が出ている。

あれ!?何か質問ミスった!?

「か……お…だ」

「は…はい?」

「カナは俺だ!!!!」

「え…えーと…?」

ちょ、ちょっと整理しよう。

カナは俺?つまり、カナという女性武偵は遠山金一?

ということは…………………………女装?

そこで遠山家に伝わる能力の事を思い出した。

「HSSですか?」

バキャバキャガァァァァァアン!!!!

と、とうとう木の部分が全部砕けて鉄の部分まできちゃった…。

カウンターが木と鉄の二層構造な事に感謝すべきだ。

「えっと…HSSって女装が条件なんですか?」

全身に爆弾を巻き付けたテロリストと交渉している気分になってきた。

しかし、遠山金一は僕の話を聞いて、なんだこいつ知らないのか的な表情をした。

「まぁ…俺の場合はそうなる」

「な…なるほど」

つまり戦うために仕方なく女装してるだけで、本当は恥ずかしいってことか。

それにしても女装することによって神経を強化するなんて変な体質もあるんだな。

というか、多分女装は脳に与えるきっかけみたいなものだな。

遠山金次は女装なんてしなくてもHSSを発現していたし。

おそらく脳に何らかの刺激を与えて…

カチャ…

気づいたら僕の眉間にコルトSAAの銃口がついていた。

「それ以上…考えるな…!」

「はい…。」

とりあえず、眉間に第三の目が開眼する前に話を聞かなくちゃ。

 

最初に銃を向けられた以外は遠山金一は協力的だった。

イ・ウーに関する様々な情報を提供してくれた。

そして、教授(プロフェシオン)…シャーロックホームズについても。

「やつは強い。そして賢い。あの男は死んだ。確かにそう見える。しかしそれが真実かはわからない」

つまり死んだはずだけど、生きている可能性もあるってことか。少なくともそれに対して警戒心を抱くぐらいには。

ここまで口を挟まなかった六唯も、遠山金一と大学時代に会った時の話をしはじめた。上手くカナっていう単語を避けつつ。

楽しそうでなによりだ。

…何かイライラする。

なんでだろう。六唯と遠山金一がしゃべっているだけなのに、なぜか無性に不快感というかなんというか。

 

その時にちょうど時計が鳴り、午後9時を僕達に報せるのだった。




読んでいただきありがとうございます。
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