ファントムオブキル ~白い大罪姫~   作:天ノ川遥

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設定崩壊?キャラ崩壊?
趣味の小説なので勘弁して下さい。


始まりの音。一章開幕。


一章

1.独白

この村に来て、もう2ヶ月である。

家の改築(勝手にやった)も終わり、自分用の工房も出来た。

ここでの生活は、少なくともあの頃よりは楽しく、充実している。

異族も一体一体は弱く、危機に陥る事もない。武器の開発も進んでいる。

ただ、教会が「そのうち派遣する」と言ったキラープリンセスが一向に来ない。

一人でも異族は倒せるが、人数が多いに越したことはない。なにより、

“独りは寂しい”

 

 

 

 

2.左遷命令は突然に

あの日。私は人間の欲望の汚らわしさを知った。

幸運にも、そいつはその日のうちに逮捕され、「奏官とキル姫」の関係は絶たれた。

教会から呼び出しがあったとき、大方事情聴取だろうと思っていた。のだか、

「突然だが、お前にはこの隊への異動を命じる。」

「...え。」

その役人に渡された資料を見ると、耕民区クレナイの東側、マスター一人のみの、小隊とすらいえない所に派遣されるとのことだった。

疑問が次々と頭に浮かび、何から聞いたものかと考えていると、

「正規の奏官ではないが、バイブスの適合については心配いらない。」

という、普通に考えたらあり得ない事をさも当たり前のように言われ、さらに

「ともかく、一週間以内に着任すること。」

と、この異動(左遷に近い)は決定事項であるということを突きつけられる。

あまりに急な話で、わたしが混乱していると、その役人は机の引き出しから箱を取りだし、

「それから、この指輪を忘れるな。」

と、私に渡す。

「こちらからは以上だ。詳しい説明は、新しいマスターに聞くことだな。」

下がりたまえ、と、こちらの質問を許さない態度で話を終わらせる役人。

教会から戻り、同じ隊だった仲間にその事を話し、荷物をまとめた。

仲間からは随分心配された。異族蔓延る壁の外での任務はこれまでより厳しいものとなることは私にもわかっていた。

それでも、マスターを失った私に選択肢は無かった。

かくして、私、ロンギヌスは辺境の地へ派遣される事になったのであった。

 

 

 

 

3.夢、或いは悪夢

最近、よく夢を見る。

多くの人が一振りの剣を求め、死ぬ夢。

権力者に何十年も歯向かい続ける夢。

世界を焼き尽くす夢。

十字架にかけられた人の脇腹を突く夢。

執念深く多くの人を殺し尽くす夢。

恋人の頭を弓で射抜く夢。

自分が撃った銃弾が恋人に当ってしまう夢。

どれもこれも、どこか他人事で無いような気がする夢ばかりだ。悪夢と為りうる夢だ。各々のトラウマだ。悲しい記憶だ。

私に彼女達は呼びかける。

“Libera me.”

 

 

 

 

4.到着

その村に着いたのは、命令を受けてから丁度一週間後であった。

村は外壁から比較的近い方であり、場所はすぐに分かったのだが、

「マスターは何処でしょう...?」

村の中で迷った。

そこそこ大きい村だ。建物も多い。なにより、渡された資料にも詳しい場所は書いてなかった。

どうしたものかと思案していると、

「あれ?ロンギヌスじゃん。どうしたの?こんな所で。」

と話しかけてきたのは、若い男性だった。

キル姫に気兼ねなく話しかけると言うことは、

「もしかして、奏官殿ですか?」

「ああ。この村の警護を担当している、カインだ。」

もしかして、この人が新しいマスターなのだろうか。

「ええと、私、異動命令を受けてこの村に来たんですが...」

「異動?うちにはそんな話は...ああ、それなら向こうの方か。」

「向こう?」

「ああ、2ヶ月位前に、この村にもう一人奏官が来たんだ。何でもうちの隊の負担軽減のため、とかで教会が派遣したんだそうだ。」

「その方のお宅は...」

「ああ、それなら」

と、カインが言いかけたところで

「Hey!マスター!お仕事行くよー!」

フライクーゲルが後ろからカインを呼ぶ。

「ええと、そこの道をまっすぐ行けばわかると思うから。結構目立つ家だし。」

「あ、はい。ありがとうございます。」

「じゃ、俺はこれで。」

そう言うとカインは自分の隊の方へ走っていった。

歩きながら今カインから聞いた情報をまとめる。

新しいマスターは2ヶ月前にこの村に来て、どういう風にしてか一小隊としてやっているらしい。

先程カインと話をしたのは彼らの小隊の拠点の近くのようだった。

つまり、二つの隊は離れて生活しているのだ。

別におかしな話ではないが、一人で暮らしているのには理由があるのだろうか。

そもそも、どうやって一小隊として活動しているのだろうか。

様々な事が頭に浮かぶ。

ただ、カインが話をする様子を見ると、悪い人ではないらしい。

優しい人だといいなぁ、などと考えながら道なりに歩いていくと、少し変わった、失礼を承知で言うなら、妙な感じの家が目に留まった。

表玄関は普通の家だ。だが、建物がL字型をしている。この村では珍しい形だ。

カイン曰く、結構目立つ家、とのことだ。この家に違いない。

ドアの前に立つと、急に緊張してきた。

どんな人なのだろうか。

どう挨拶したものか。

というか、自分のマスターかどうかどうやって確認するのか。

不安が心を覆う。立ち眩みがするようだ。

ドアをノックするという簡単な事が、とてつもなく難しく思われる。

そうやって、体感時間にして一時間、実際の時間にして10分ばかりドアの前に立ち、やっとドアをノックするに至った。

「あのー、すいません。」

「はーい。」

女性の声だ。なんとなく、安心する。

ドアを開けて出てきたのは、黒い長い髪の、十八歳ばかりの少女だった。

「あの、教会から派遣されて来たんですが...」

「ああ、遠くからご苦労様。さあ、上がって。」

「はい、お邪魔します。」

家のなかに入るとき、玄関先にユリの花が一輪咲いているのに気づいた。この花にも気づけない位緊張していたらしい。

我ながら情けない。もっとしっかりしなきゃ、と思い直した。

 

 

 

 

5.名も”亡き”少女

「どうぞ座って。今お茶を淹れるから。」

リビングに通され、椅子をすすめられる。

どうやら他に人は居ないようだ。

「ここに来てからずっと一人だったから、同居人ができるのは嬉しいわ。」

「と言うことは、あなたがマスターですね。」

正直、驚いた。女性マスターというのは今まで聞いたことが無かったからだ。

「ええ。一応そうなるわね。」

ティーカップを机の上に置き、自分も椅子に腰かけるマスター。

「まあ、正式な奏官では無いから、そんなに緊張しなくてもいいわ。」

「は、はい。あの、改めまして、ロンギヌスです。よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくね。」

良かった。優しそうな人で。

彼女の淹れた紅茶を飲みながら、そう思った。

 

「さて、狭い家だけど一応案内するわ。」

そう言って彼女は立ち上がる。

「はい、よろしくお願いします。」

私も立ち上がり、彼女の後に続く。

「ここが私の部屋、隣があなたの部屋ね。こっちはダイニングとキッチン、そっちはお手洗い、そこの奥はお風呂ね。」

L字型の家の真っ直ぐな部分にこれらの部屋が集約されている。

「で、そっちを曲がると私の工房。」

「工房、ですか。」

「ええ。武器の管理、開発とかも自分でやってるから。」

本来、武器の開発は職人がやることで、奏官、それも少女がやるようなことではない。

「凄いですね、これは...」

工房に入ると、研究資料が机の上に置いてあったり、武器が壁に掛けてあったり、色々なモノが棚の中に並んでいたりと、研究室顔負けの設備があった。

「色々手に入れるのに苦労したわ...。例えば、そこの金獅子とか。」

「えぇ...」

最高級武器がそこには確かにあった。

最近使ったらしく、手入れの途中のようだ。

「神話の本とか、カラクリ仕掛けの教本とか、魔導書とか、魔弾の作り方解説書とか。」

後者二冊、怪しいのですが...

というか、これだけ集まっているならあの本もあっても良いのでは...

「新約聖書なら机の横の本棚の中よ。」

「ど、どうして分かったんですか?」

「んー、なんとなく?」

なんとなくで心を読まれた。

表情にでも出ていたのだろうか。

でも聖書を探す時の表情って...

「あ、そうだ。指輪、持ってきてる?」

指輪。そう、教会で貰ったあの指輪。

「ええ、持ってますけど。」

「なら良かった。その指輪はあなたが私の小隊の仲間である証。あなたの権利と義務の証。大切に持っててね。」

「...?」

「あれ、説明されなかった?」

「...はい。」

「えっと、その指輪は私の指輪とペアになっていて、擬似的にマスターとキル姫の関係をつくる為の物なの。」

「そ、そうだったんですか。」

「まあ、正式な契約じゃ無いから、バイブスの代わりみたいな役割を担っているの。」

「じゃあ、権利と義務、というのは...」

「奏官からの命令拒絶の権利と、教会からの命令への従事の義務。要するに、あなたは私の命令を拒むことができる。如何なる状況でもね。」

教会はとんでもない物を開発したものだ。

仮であっても、マスターだ。

命令を拒絶するなんてとんでもない。

 

再びリビングに戻る。

そういえば、気になっていたことがひとつあった。

「あの、マスター。」

「どうしたの?」

「またお名前を聞いていなかったのですが...」

そう言うと、彼女は淋しそうな顔をした。

「ええと、その、少し気になって...」

「...実はね、私には名前が無いの。」

「え...」

リビングが静まり返る。

聞いてはいけないことを聞いてしまった。

「その、すいませんでした。」

「いえ、気にしないで。」

そう言って、彼女は窓の外を眺める。

「無い、というより、なくした、捨てた、或いは、忘れた。そんな感じ。」

彼女の過去に何があったのだろう。

きっと、辛い事があったのだろう。

その上、こんなところで独りで2ヶ月も生活していたなんて。

「ごめん、なさい。おかしな事を聞いてしまって。」

「いいの。全ては過去の事だから。」

そう言い、彼女はこちらをみて、微笑み、

「そうだ、よかったらあなたが名前をつけてくれない?」

「わ、私がですか?」

急に、すごく重大なお願いをされた。

「そう、私の新しい名前。あなたが呼びやすいのでいいの。」

「え、えぇ...」

突然のことで、頭がまわらない。

「あの、本当に私なんかでいいんですか?」

そもそも、名前をつけたことなんて、今まで一度も無かった。

「ええ。あなたでないと駄目なの。」

それでも、新しいマスターからの、最初のお願いだ。

あれこれと考えていると、ふと、玄関先に咲いていたあの花が思い浮かんだ。

「あの、リリィ、はどうですか...?」

リリィ(白百合)、花言葉は、”純潔”。

「リリィ...私の、新しい名前。」

少女、リリィは嬉しそうに呟く。

「ありがとう、ロンギヌス。今日から私はリリィ。あなたがつけてくれた名前、あなたからの最初の贈り物、大切にするわ。」

リリィは、瞳を潤ませながらも、しっかりと私を見て言った。

「改めて、これからよろしくね、ロンギヌス。」

「はい、よろしくお願いします、リリィ。」

 

こうして、私と新しいマスター、リリィは仮初めのものではあるが、マスターとキル姫の関係となった。

窓から差し込む夕陽は私達を照らし、新たなスタートを祝福するようだった。

 

 

 

 

7.章末。蛇足。第一の鍵。

時々あの日を思い出す。

延々と続く苦痛。人々の暴言。

奴等はきっと忘れてしまう。

既に忘れているかも知れない。

 

“だから、私も忘れよう。”

 

私は、過去の私とは違う。

ロンギヌスが、私なんかの為に一生懸命考えて、つけてくれた新しい名前があるのだから。

もう孤独を嘆く必要はないのだから。

もう過去を恐れる必要はないのだから。




拙い文章でしたが、最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
オリジナルキャラ、オリジナルアイテム、オリジナル設定、急な展開など、読み苦しい所は多々ありますが、改善できる所は頑張って改善していきます。

最後に、ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
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