1.或黒奏官への命令
「えー、君も知っての通り、現在、被験体666はクレナイのある村で警備に当たらせている。だが、あやつは非常に危険な存在だ。そこで、君にあやつの処理を命じる。あの頃は戦力不足で殺せなかったが、君の所の姫たちなら大丈夫だろう。それと、あそこに送り込んだロンギヌス、あれも用無しだ。処分しろ。以上だ。下がってよいぞ。」
2.戦場から離れた所で。
その日も、ロンギヌスとリリィは異族と戦っていた。
初任務から一ヶ月。二人の連携は素晴らしいものとなっていた。
「マスター、非番だって言うのに真面目ネー」
「その俺についてくるお前もな、フライクーゲル」
最近は、異族の出現が減り、たまに小さな集団が出てくる程度。とは言え、
「油断は禁物だからな」
「油断も何も、あの二人がいれば異族が100いたって5分も経たずに全滅できるデショー?」
「まあ、確かにそうなんだが...」
いや、冗談ではない。今も異族が蒸発している。彼女らの手によって。
3.奥義
「そっち行きました、マスター!」
「任せて!大罪起動、マモン!」
黒い魔力を帯びた剣が異族を切り払う。
「これで最後みたいね」
「そのようですね」
あの日以来、私とリリィは連携の訓練と自身の強化に努めた。
そして一ヶ月。連携もとれるようになり、異族が2、30いても戦えるようになった。
「そういえば、異族出たの4日ぶりじゃない?」
それと、最近異族の出現が妙に減った。
「ええ、前は毎日のようにでてましたけど、大分減りましたね」
「私はその分ロンギヌスとゆっくりできる時間が増えて嬉しいわ」
そんなことを言って笑う彼女。
「あっ...」
その背後に、いつの間にか異族が音もなく忍び寄って来ていた。
リリィとの距離は既に2メートル。
だめだ。間に合わない。
いや、仮に異族に攻撃出来たとしても、一撃で仕留めなければリリィに危害が及ぶかも知れない。
だが、普通に攻撃しただけでは一撃仕留められない。
すこしのゆだんが、リリィをきずつけてしまう。
はやく。そして、確実に。
時間の流れが遅く感じる。
どうすれば一撃で仕留められるか。
目を見開く。見定めろ。見極めよ。
跳躍する。異族の上まで。そして。
「はぁぁぁあああああ!」
私の槍が異族を貫く。
弱点に当たったのか、一撃で倒れる異族。
「リリィ、大丈夫ですか!?」
「え、ええ、大丈夫よ。それよロンギヌス、いまのは...」
それは、彼女が新たなスキルに......以下省略
4.Moonlight sonata
あるバーで、黒奏官は飲んでいた。
客は彼一人だった。
「クレナイで任務?大変だね」
バーのマスターが話しかける。
「ああ、まあそうでもない。たった二人だ。」
「っても、相手にもよるだろ?」
「心配ない。うちの姫たちは最高の戦力だ。この大陸で、な。」
レコードから流れる、ピアノの音が心地よい。
「...」
「もう一杯どうだい?」
「いや、明日も早い。今日は帰るよ」
「そうかい」
彼は勘定を済ませると、ゆっくりと店を出た。
外に出ると、やけに月が綺麗に見えた。
「ああ、そうか」
バーの中で聞いた曲、『月光』って曲だったな。そんなことを考えながら、彼は暗闇へと融けていった。
5.少女は何を望む
ロンギヌス。
彼女がかつて望んだのは「誰も苦しまない」こと。故に『泣き所ストライク』を習得し、敵にすら苦痛を与えまいとした。
だが、今日は違った。
彼女は「守るべきもの」の為に動いた。
確かに彼女は敵を一撃で倒した。
しかし、「動機」は明らかに異なる。
故に。かつての『信念』ではなく、新たな『信念』を彼女は手にした。
これが彼女に何をもたらすのかはまだわからない。
6.章末。蛇足。鍵。
リリィ。
彼女は「守りたい」という望みを抱いた。
かつて自分を守ってくれたあのひとのように。もう大切なものを失わないように。
しかし、彼女はそこに「どんな手段を用いても」と付け加えた。
故に、彼女には隙ができる。奴のつけ入る隙が。