1.嵐の前の
「あー、今日も平和だな」
「平和なのもいいケド、退屈だネー」
今日の任務はカインの部隊が担当している。とはいえ、異族が出てこないので巡回しているだけだが。
「前は結構出てきてたのにな」
「本当に暇になったネー」
「...。」
そんな彼らを、黒いフードを被った男がじっと見つめていた。
2.静けさ
休日。朝。食卓。
リリィとロンギヌスはいつも通り朝食をとっていた。
「そういえば、昨日もカインが来てたわね」
「ええ、私達を心配してくださっているんですね」
「あの人、結構心配性だから」
暫し、沈黙。
「...外はずいぶん静かね」
「確かに、風の音もしません...」
静寂が運ぶのは、安らぎか、災いか...
彼女達にはわからない
3.教会にて
「奴の排除はうまくいくだろうか...」
「なんだ、例の奴か」
「お前も大変だな、研究所の尻拭いまで」
「ああ、あれは研究所の奴らの暴走だったと言うのに」
「だが、一応いいデータはとれたじゃないか」
「でも、前は排除失敗してるんだろ?」
「今回は黒奏官に依頼している」
「それでも心配なのかよ」
「万一の事もあるし、それに...」
「それに?」
「研究所の奴らの作った正体不明キラーズ、あれがどうなっているか分からん」
「え、そんなもんあったのかよ」
「研究員によれば杖ということしか分からないキラーズを入れたらしいが...」
4.迫る影
「そこの奏官殿、少しいいか?」
誰かに話しかけられ振り向くと、そこには黒いフードを被った男がいた。後ろには黒い衣装に身を包んだキル姫がいる。
黒い...黒...
まさか、黒奏官か!?
「そんなに驚く必要はない、カイン小奏官殿。人を探しているだけだよ」
「...誰を探している?」
「3ヶ月前に、ここに着任した奴だよ」
アイツが黒奏官に狙われているのか?
何故だ?アイツが何を...?
「...教える訳にはいかないし、会わせる訳にもいかないな」
「ほう、私に逆らうのか。私に逆らうということは教会に逆らうということを」
「分かって言ってる」
「そうか...ならば、力ずくで教えてもらおうか」
後ろに控えていた黒いティルフィング、グリードがさっと前に出る。
「フライクーゲル、頼む!」
「任せて!蜂の巣にしてアゲル!」
5.再び、教会
「何か分からないキラーズ?そんな物あるはずがない」
「ところが何の伝承も無い、ただの古い杖からキラーズが抽出できたそうだ」
「ならその杖のキル姫が出現してる筈じゃないか」
「でも、出現していなかった」
「いなかった?」
「今はいるじゃないか、混ぜ物とはいえ、その杖のキラーズを持つ奴が」
6.気まぐれ
村の近くで戦闘音が鳴り響く。
「...異族の襲撃でしょうか」
「カイン達の様子、見に行く?」
「そうですね、来てもらってばかりでは悪いですし」
そこに何がいるかも知らず、彼女らは支度をする。黒い絶望が有ることも知らず...
7.章末。蛇足。扉。
「さあ、奴の居場所を吐いて貰おうか」
赤。黒。赤。
赤い瞳。黒い服。赤い血。
あまりに圧倒的で。絶望的で。
「......」
隊のキル姫、全滅。
「マス、ター...逃げ...て...」
フライクーゲルも倒れてしまった。
「逃げられると思ってるの?」
全てグリードが、一人でやったのだ。
「何だよ...何なんだよ...コイツ...」