ファントムオブキル ~白い大罪姫~   作:天ノ川遥

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六章

1.VS.黒奏官

カイン達の様子を見に行こうと出かける二人。だが、家を出てしばらく歩くと...

「...やっと見つけたぞ」

黒いフード。後ろに控える黒い姫。

「黒奏官...?どうしてここに...」

粛清専門部隊、その奏官、黒奏官。

その男は、静かにこう言った。

「お前達を処分する為だよ」

「っ!」

突如、黒奏官のキル姫、グリードが二人に襲いかかる。

咄嗟に、準備してきた武器で応戦する。

「そんな...マスターが何をしたと言うんですか!」

「お前が知る必要はない。お前にもここで消えてもらうからな」

「私がそんな事、許すと思ってるの?」

リリィはグリードの攻撃を弾き返す。

「流石、あの時死ななかっただけはある」

「ですが、あなたは私が処分します。この街のもう一つの隊のように」

「...まさか、あなた達、カインの隊を」

「ええ。マスターに逆らう者は全て処分します」

冷酷に、グリードはそう答えた。

「......さ...い」

その時。

「許さない!」

黒い魔力がリリィの体から溢れ出す。

「大罪起動、ベルゼブブ!」

魔力は斧の形を成す。

「それがあなたの力ですか...ですが」

グリードは冷静に剣を振るう。

「無駄な事です」

その力は、これまで戦ったどの異族より強かった。

(強い...!でも...)

「はぁぁぁぁぁぁあああああ!」

全力で押しきるべく、斧に力を込める。

「大罪解放、ベルゼブブ!!」

だが。

「無駄だと言っているでしょう」

リリィの全力は、グリードには通じなかった。

あっさりと吹き飛ばされてしまう。

「そん...な...」

ゆっくりとした足どりで、止めをさすべくリリィの方に歩み出すグリード。

「ロンギヌス。あなたはそこで見ていなさい。あなたでは私には勝てない」

そんな彼女を、ロンギヌスは見ていることしかできなかった

 

2.反転

…お前は弱いな。

ええ。私より弱い。

勝ちたいか?あやつに。

なら、私が出るわ。

だから...

あなたはネムッテイナサイ

 

3.『0th』

リリィに近づき、剣を構えるグリード。

「終わりです」

だが、ソレは...

「くっくっくっ...」

どういう訳か、笑っていた

「...何が可笑しいんですか」

立ち止まるグリード。

その一瞬の隙に、

「落ちよ」

見えない刃で、その右腕を切り落とした。

「っああああああああああああ!」

突然走る激痛に叫ぶグリード。

「惜しかったですね...もう少し早ければ殺せたかも知れんがな」

滅茶苦茶な話し方で、ソレは話し出した。

「貴様...っ」

痛みを堪えて、ソレを睨みつける。

「ふむ...まだ生きてたんだ。しつこい子...」

「マス、ター...?」

あまりの変わりように、困惑するロンギヌス。

「...否。僕とあいつはちがうよ?」

「...何者だ」

こんな状況でも冷静に問いかける黒奏官。

「中々難しい質問じゃな。でも、答えてあげる。我々は教会に殺された者。その亡霊。その遺志。その怨念。そうね...名前が無いのも不便じゃし、こう名乗るよ。」

そして、どこからかともなく杖を出し、それを掲げる。そして、瞳を赤く染めたソレはこう名乗った。

「私は。私達は、ワスレナ。零番目の大罪、『忘却』のキラーズ!」

 

4.忘却の大罪姫

「っ......!」

左手で剣を構え、ワスレナに斬りかかるグリード。だが、

「へえ...片腕を失ってなお妾に歯向かうか、小娘。ならば...」

ワスレナは、見えない刃で左腕と両足を切り落とした。

「.........!」

激痛に耐えかね、グリードは気を失ってしまった。

「うっ...」

目の前で起きる惨状は、ロンギヌスにとって辛いものだった。

そんな彼女を放っておいて、ワスレナは語り始める。

「全く...この世界は狂っとる。神も、教会も、何もかも。」

「......何が言いたい」

キル姫を失ってなお冷静に話す黒奏官。

その質問に対しての対しての回答は

「私達は、この世界をリセットする」

あまりに突飛なものだった。

「教会も、異族も、キル姫も、人間も、神も、この世界から消す。そうして僕達が正しい世界を作るんだ。皆が幸せな世界を。皆が笑ってられる世界を」

「そんな事、出来るわけが無い」

「出来るさ。この世界を消し去る事くらい」

そう言って、ワスレナは杖を振り、

「さて、それじゃあ、始めましょうか」

一瞬で空に巨大な魔方陣を描いた。

「この世界の終わりを...な」

 

5.抵抗

「待ってください!」

突然、ロンギヌスは叫ぶ。

「...なんだい?ロンギヌスよ。あなたもこの世界は間違ってると思うでしょう?」

「...」

「大切な人の涙も、傷つく姿も、見たくないだろう?」

「でも...」

「...」

暫しの沈黙の後に、ロンギヌスは言った。

「でも...!だから今の世界を消すのは違うと思います!」

「...はあ。だから妾を止めると?」

「...ええ」

「できると思うのかしら?あなたなんかに」

「...」

ロンギヌスは無言で槍を構える。

「いい度胸じゃ。だけど」

ワスレナはゆっくりと杖を振り、魔術を放ち、

「君じゃ私には勝てない」

ロンギヌスの体に風穴を開けた。

「カハッ...」

身体中から力が抜け、膝から崩れ落ちる。

「それだけ重傷なら、放っておいても死ぬじゃろう」

激しい痛みと、息ができない辛さで、ロンギヌスの意識は薄れていった...

 

6.果てしない暗闇の中で

………。

「私は...」

………。

「ぁ...ぁぁ...っ...」

…ここで諦めるのですか?

「私は何も守れません...」

…だから消えてもいいと?

「...」

…それは違います

…問いましょう。貴女は何を以てキラーズ足り得る資格を得たのですか?

「それは...」

…それは?

「...あのお方の血...」

…そうです。ならば、それが起こす奇跡も貴女は使えるはずです

「でも、本当はそんな力なんて」

…いえ。貴女が気づかないだけで、貴女にはその力があります

「でも...今更どうしようも無いですよ」

…信じられませんか?あのお方の奇跡を。何より自分の力を

「...それは」

…貴女のマスターの事を大切に思うなら、ワスレナを止めるべきです

…貴女の大切な人との時間を守りたいなら

「......私は。私はもっとマスターと、リリィと過ごしたい...。この世界で!」

……貴女に全て押し付けてしまい、申し訳ありません

…ですが、貴女にしか救えない

…あのコをよろしくお願いします

 

7.VS.ワスレナ

「...っ...うう...」

ロンギヌスは、槍を支えに立ち上がる。

「!?何故だ!何故動ける!」

ロンギヌスは体勢を立て直し、

「か...て...」

「バカな...傷が完全に塞がって...」

しっかりとワスレナを見据えた。

「リリィを返してください!」

「だまれぇ!」

幾多の魔術がロンギヌスを襲う。が、

「はっ!」

全てを槍の一振りで打ち消した。

「何故だ...何故効かぬ!」

ロンギヌスは、槍を真っ直ぐに構え、詠唱を始める。

「逸話、展開。私は全てを清めるもの。私は全てを癒すもの。私は全てを赦すもの」

詠唱と共に、優しい光がロンギヌスを包み込む。

「何を...ッ」

「原典回帰、ロンギヌス!」

槍を構え、ワスレナに突進する。

「あなたのその罪も私が清め、赦しましょう...」

光は、ワスレナを、周囲を、村全体を包み込んだ。

 

8.白百合と勿忘草

ここは...?

……。

あなた、誰?

…誰でもよい。少しばかり、お主の体を借りとっただけだ

え...?

…お主の姫は、優しいな

ロンギヌスのこと?

…ああ...。それに、あやつは強い

うん...私を助けてくれた人だもん

……さて、お主、そろそろ目覚めの時間じゃ。妾は少し眠る。

ちょっと待って、あなた...

…そうじゃ、目を覚ました途端、びっくりするでないぞ?

ちょっと、それって...どう...いう......

……大切にするのじゃぞ?お主の大切な...

 

9.目覚め

ふわりとした意識の中、唇に柔らかい感触が...

目を開くと、ロンギヌスが

「...!?」

私にキスをしていた。

そうか、だからびっくりするなって...かなり無理がある。

こちらの意識が戻った事に気づいたのか、ロンギヌスが顔を離す。

「あ、リリィ!リリィですよね!?」

「え、ちょ...!?」

パニックになる私を、ロンギヌスは抱きしめる。

「よかった...」

「 」

口をパクパクさせながら、先程の誰かとの会話を思い出し、状況を整理する。

黒奏官と戦闘になって、でも負けて、そのあと意識が無くなって...

誰かが私の体を使ってて...

ああ...

「そっか...また、助けてくれたんだね。あの時と同じ...」

そう。ロンギヌスは、何度だって私を助けてくれる。

小さかった私を。油断してた私を。そして、体を乗っ取られていた私を。

「リリィ...」

そんな優しい彼女を見つめ、

「ありがとう、ロンギヌス」

私はロンギヌスをぎゅっと抱きしめた。

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