1.カイン隊
「いやー、今日も平和ネー」
「あの日も、そんな事言ったっけな」
「あー、黒奏官の...」
「...だいぶボロボロにやられたよな」
「認めるのは悔しいケド、確かに酷かったネ...」
「でも、いつの間にやら全員、傷もすっかり治ってたし、黒奏官はいなくなってるし...。訳がわからん」
「マ、今生きてることに感謝だヨ」
「お前からそんな言葉が出るとはな」
「...文句でも?」
「いーや、ねえよ」
2.黒奏官とグリード
…目標の撃破には失敗したものの、脅威は排除された。教会からの援助を条件に協力を約束した。今後の動きの監視の必要こそあるものの、現在教会への反乱の意思は無いと判断する。...
そこまで報告書を書き終えると同時に、私室のドアをノックする音が響く。
「...グリードか。入れ」
「失礼します」
部屋に入りドアを閉めると、グリードは伏し目がちになりながら
「先日は力及ばず申し訳ございませんでした」
と、言った。
「いや...体の調子はどうだ」
「は...はい、問題ありません」
「そうか。ならばよい」
彼女は一度、四肢を失ったのだ。
肉体的ダメージも精神的ダメージも大きかったはず。
「...無事でよかった」
「...え?」
「さて、そろそろ夕飯の時間だ。あまり遅れるとラストがうるさい」
「...はい。行きましょう」
今、隣にいる。それが何より...
3.リリィとロンギヌス
「リリィ、リリィ...起きてください!」
朝8時。休日とはいえ、そろそろ起きる時間だ。
「ふぁぁ...おはよ、ロンギヌス」
毎朝のお祈りを済ませ、朝食を作っていたのだろう。エプロンを身につけた彼女は、
「...なんか、奥さんみたいね」
「もう...旦那さんならもっとちゃんとしてくださいよ?」
そう言いながら、頬を赤らめるロンギヌス。
「うん、今行くから、待ってて」
「朝ごはんが冷めないうちに来てくださいね」
あの件から一週間。結局、黒奏官には、教会に協力する意思を伝えた。ただし、援助を条件としてだが。
あの時、何があったかは覚えていないが、黒奏官にやられた筈のカインの部隊が全員無事だったことや、私の傷が治っていたことなど、奇跡としか言いようがない事が起きていた。黒奏官がこちらに協力を打診してきたのも、黒奏官のキル姫が無事だったからだろう。
全て、ロンギヌスのおかげなのだろう。
彼女は、なにもしていない、と言ったけど。
ロンギヌスは、いつも優しい、私の大切な...
4.教会
「...。」
「はぁ...黒奏官のやつ、妙な約束を取りつけてきおって」
「全くだ。これで裏切られるようなことがあれば...」
「しかし、あやつのキル姫でも敵わない相手だそうだ」
「世界を消す程の力を、放っておいてよいと?」
「実際にあるかなど分からんよ」
「やはり今のうちに消すべきでは...」
「必要ない」
「は...?何を言って」
「...フッ、お主が言うならそうなのだろう。奴を信じよう。援助も出そう」
「なっ...何故...」
「...ワシの自慢の、孫娘じゃからな」
5.ワスレナ
...ふわぁ...ん、暇じゃ...
「ちょっと。人の夢に出てこないで」
…仕方なかろう。妾の起きていられるのはお主が寝ておるこの時間だけ。その時間とお主が夢を見る時間が重なれば、当然こうなる
「...どうりで最近朝が辛い訳ね」
…何じゃ、毎朝ロンギヌスに起こしてもらうのは嫌か?
「嫌じゃないけど...でもさすがに悪いっていうか」
…で、妾にどうしろと
「永久に寝てて」
…それこそ退屈で死んでしまうわ
「...何で消えてないのよ」
…あやつは妾を浄化したに過ぎん。まあ、そのせいで力のほとんどがなくなってるのじゃが
「じゃあ、私から出ていってよ」
……良いのか?マジで?
「何で嬉しそうなのよ」
…出ていくには少々面倒なことをしなければならんが...
「はぁ...何?」
…まず、依代となる杖と、十分なマナを準備して...
6.新た姫
「準備できましたよ」
「わざわざありがとう、ロンギヌス」
ロンギヌスに手伝ってもらって、ワスレナを体から追い出す儀式の準備を整える。
杖と、瓶に入ったマナ水を、魔方陣の上に配置し
「それじゃあ...」
魔方陣の前に立つ。
「大罪独立...ワスレナ」
術式発動と共に、杖が浮き上がり、マナ水が瓶から飛び出す。そして、マナが凝縮され、人の形となり...
「...ふう、やっと出てこれたか」
新たなキラープリンセスが誕生した。
「あなたが...」
「おお、ロンギヌス。この姿では初めてじゃが、お主には随分世話になった。礼を言うぞ。あの時消さずに残してくれたからこうやって晴れて自由の身に...」
「調子に乗らないで、のじゃロリ。一応、あなたは私の使い魔みたいなものなんだから」
「わかっておる!」
「わかってるのかしら...」
こうして、この隊に新たな仲間が、家族が加わったのだった。
7.エピローグ
きっとこの先も、困難なことは沢山あるだろう。
悲しいこと、辛いことも、きっとあるだろう。
でも、楽しいこともある。
互いを信頼し、支えあうなら、どんな苦難も乗り越えられるはずだ。
家の前の白百合が、風になびいて揺れている。
その前を通りすぎる三人の少女。
一人は、聖槍のキラーズを持つ姫。
一人は、忘却の大罪を背負う姫。
そして、もう一人は七つのキラーズを取り込んだ、
『白い大罪姫』
というわけで。
かなり無理矢理でしたが、完結です。
最初から読んでくださった方も、今回だけ読んでくださった方も、ありがとうございました。
設定資料やら何やらを後日投稿予定です。