【真説】安珍・清姫伝説   作:稲荷猫

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4月から忙しくなるので更新は遅くなります。
1日に500文字書けば、1ヶ月で15000文字、つまり3話くらいは投稿できる(理想論)





魂の奥底には

ぱちぱちぱちぱち。

 

「児戯には満足したか、法師よ?」

 

手を叩きながら、いつの間にか片膝を立て座っていた晴明が問いかける。

 

「これが児戯、ですか。なんとも過ぎたお遊びだ」

 

光の剣を構えたままに辺りを見渡し、錫杖を拾う。周囲は今までのやり取りだけで更地と化していた。

 

安珍が吹き飛ばされ、赤門鬼が槍を振り回し、その赤門鬼を吹き飛ばし、安珍と赤門鬼が数十ではきかない数を打ち合った。それだけで周囲には地割れが発生し、嵐が巻き起こり、家屋は木材となって消除させられた。

 

何も被害を被っていないのは結界の中の清姫と地面のみ。

 

「晴明殿は余程の茶目っ気をお持ちらしい」

 

「私が茶目っ気を?確かに。言い得て妙だな。自身でこの異界を作り、家屋も人形(にんぎょう)どもも用意し、それを最終的に自身の手で壊すのだからな」

 

晴明は顎に手を当てながら何度か頷き納得すると、あたかも閃いたように、わざとらしく言葉を吐いた。

 

「茶目っ気ついでだ。これも貴様にやろうではないか」

 

「なにっ!?」

 

にやりと笑いながら手にしたのは、先ほど赤門鬼を顕現せしめた人形(ひとがた)の紙。それも三枚。

 

安珍が驚き駆け出すも、すでに力は籠められていたのか。早々に人形を中空に放り、真言を紡ぐ。

 

「顕現せよ。青門鬼(しょうもんき)黄門鬼(おうもんき)白門鬼(はくもんき)!」

 

現れるのは先ほどの赤門鬼とは色違いの鬼が三体。違いと言えば色と手に持つ武器だけだろうか。

 

青門鬼は長大な両刃の剣を。

 

黄門鬼は重厚な六角棍棒を。

 

白門鬼は手から二の腕までを覆う刺付きの鉄拳を。

 

「さぁ行け、鬼たちよ」

 

「先の鬼を一瞬で三体だとっ!?くそっ!」

 

驚きで口調が変わっているのも気付かずに安珍は構える。気付かないのはそれだけの窮地ということ。形振りには構っていられない。

 

「法師よ、それが貴様の素か?人とは仏門に降ろうとも、我が身に危険が迫れば迫るほど本来の姿を見せるもの故な。それもまたよいよい」

 

晴明は座るだけで飽き足らず、手刀の印を振り黒い空間を開けると、中から酒を取りだし飲み始めた。

 

これはそれだけ余裕があるからこその行動なのか。安珍の心を乱すための計略なのか。それとも戦いはすでに結した思っているからなのか。

 

(嘗めた真似をしてくれる。だがそれを咎める余裕すらないとは……。)

 

すでに戦いは始まり、それぞれの鬼が得物を縦横無尽に振り回している。

 

対処の仕方が全く違う得物。それが三方向から連携を取りながら襲いかかる。得物を操る腕も技術を見せるものだ。安珍に為す術などなかった。

 

素早い斬撃が上下左右から迫り来る。それよりも更に早く猛然たる拳打が殺到する。それらの間隙を縫うように一撃圧砕の打撃が猛威を振るう。

 

安珍は避ける、弾く、受け流す。

 

錫杖と光の剣による二刀流。それだけでなんとかやり過ごしていた。

 

術を行使する隙さえ見出だせない猛攻。懐に手を入れることさえ出来ない熾烈さ。

 

安珍は鬼たちの隙をどうやって作るか考えながら、両手を動かし続けた。考えることさえも安珍の隙となり得るが、それをしなければ終焉が来るのを待つのと同じ。

 

無理を押し通さなければ現状を抜け出すことは叶わない。

 

真に英雄へと至るための器を試されているかのような状況だ。そこには未だに晴明も安珍も思い至ってはいない。安珍が必死を掻い潜ろうとするのに対し、晴明はそれを酒の肴にして喜悦している。

 

──────いつまで続くのか。

 

この状況。

 

この立場。

 

この優劣。

 

その思想と思考の元にもたらされた行動は何処まで行くのか。今は誰にも分からない。

 

しかし一つだけ分かるものがある。

 

この戦いの終わりだ。

 

「ぐはっ!!」

 

ついに六角棍棒の一撃が安珍を捉えた。

 

避けることも、弾くことも、受け流すことも間に合わず。かろうじて六角棍棒と己のあいだに自身の得物を挟むことが出来た。出来たのはそれだけ。有無を言わさず吹き飛ばされ地面を滑る。

 

避けきれなかった攻撃により安珍の体は襤褸のようだった。無数の切り傷に血の滲む青痣。そこへ放たれた強打。常では感ぜられぬ激痛に身を固くする安珍。それを誰が笑えようか。

 

「ぐっ……!……うっ!」

 

(骨を折られたか……!)

 

動こうとして全身を激痛が襲い、脇腹には違和感を感じる。自身の得物を挟んで食らった六角棍棒は脇腹へと当たったことを認識した。

 

「おのれ……っ!」

 

仰向けのまま起き上がろうと、片肘をついた。そのまま鬼たちから目を逸らすまいと顔を上げて気が付いた。

 

横殴りのまま六角棍棒を振り抜いた姿勢の黄門鬼が()に見えた。

 

眼前には剣と拳を振り上げた二体の鬼。

 

そう。

 

自身が殴り飛ばされたと同時に、青門鬼と白門鬼は走り出していたのだ。

 

(間に合わんっ!)

 

最後の瞬間。

 

安珍は攻撃を行った。

 

体勢を整えるなど間に合わない。

 

今、自身にできる精一杯の速攻。

 

少しでも長く生きるためにはこれが最善。

 

鬼から離れたことで取れる、術さえも行使出来ないほんの一瞬の行動。

 

安珍は両手に握る武器を──────擲った。

 

遠方の敵を投擲によって撃ち抜くためではない。

 

近くの敵を撃ち抜くために最後の全力を使った。

 

殺傷力の高い光の剣を、鉄拳の白門鬼へ。

 

一度攻撃されてしまえば、容赦のない拳打の雨で挽き肉にされてしまう。

 

次に剣を突き出してきた青門鬼へと狙いを定めて錫杖を投擲する構え。剣の一撃は食らってしまった。しかしもともと避けることが不可能な状況だったのだ。ならばそれも利用してしまえ。おかげで攻撃に全意識を向けられた。

 

剣の一撃は胴体に突き刺さり、安珍はそれを片手で固定。突き刺されてから剣の中程で止まる。鬼は奥まで突き刺すつもりだったのか驚愕の表情を浮かべる。その時には安珍の片手から錫杖は離れ、青門鬼の人形へと突き立った。

 

すでに赤門鬼と戦っていた経験もあったため、人形の位置を特定することは簡単だった。

 

ちらりと白門鬼へ視線を向ければ、寸分違わず光の剣は人形に当たっていたようで、ちょうど四散し消滅するところだった。同時に光の剣も元の独鈷へ戻り、渇いた音を立てて地面に転がった。

 

目の前に視線を戻せば、驚愕の表情のまま体が固まってしまっている青門鬼。

 

はたから見れば剣と錫杖を突き刺し合って刺し違えているように見えるだろう。

 

少しだけ想像した安珍は笑いが口から漏れてしまった。

 

(中々に様になる終わり方じゃないか)

 

思ったのも束の間。青門鬼が消滅。

 

剣も同時に消失し、安珍は地に落ちた。それだけで身体中が悲鳴を上げる。胴体には胸を寸断して下腹まで伸びる傷があるのだ。それも当然。生きているのは今まで積み上げた修行の賜物か、それとも魂だけの身となっているからか。

 

考えるのも早々に切り上げ、残った黄門鬼へと視線を向ける。

 

「ばかな、とでも……言いたそうな、顔だな……」

 

途切れ途切れになるのも構わず言葉を口にした。

 

「だから…こう言ってやろう………ごふっ」

 

血を吐きながらも最後に口角を持ち上げ発言(はつご)する。

 

「馬鹿め」

 

鬼が言葉を理解し話すのも、その顔を憤怒に染めて走り出すのも、全ては予想の内。

 

(最後だけは私の掌の上だ)

 

下らない意地。最後の小さな負けん気であった。

 

意味などなく、これから起死回生の一手があるわけでもない。体は指先一つ動くこと叶わず、これでは術の行使も出来はしない。

 

終わりだ。

 

自他共に認めざるを得ない終わり。

 

その終わりを自身の勝ちで彩ったのだ。安珍の気持ちは勝った。現状は負けたが、それでも安珍が勝った。そういう終わりにしてやろうと、そうした結果だ。

 

黄門鬼が目の前に来た。

 

六角棍棒を振り上げている。

 

ふと、思ってしまった。

 

会って一日の姫のために何故戦って死するのだ?いや、姫のために戦って死するならば、それもまた良い死に様ではないか。意味も分からずこの異界に呼び出されたとはいえ、姫を守るために戦った。一人の男として恥じることない行いだ。ただ一つ心残りがあるとすれば、その姫がこの後どうなるのかだ。出来ればこの異界から連れ出し、親の元へと帰してやりたかったが……。現状、気を失ったままの姫では自力でなんとかするのも無理だろうに─────────

 

そこまで考えて、安珍はおやと気付く。

 

黄門鬼の振り上げたままの六角棍棒が振り下ろされていない。よくある走馬灯かと思ったのもあり、余り気にしてはいなかったのだ。

 

何故気付いたのかと言えば、黄門鬼に巻き付く白い帯。いや、帯ではない。蛇のような竜のような。そんな白く美しさすら感じるナニカが黄門鬼に巻き付き、全身を固く固定してしまっているのだ。

 

()はあろう巨体を固定する白いナニカは相当な長さと力強さだ。

 

その白いナニカを辿っていけば、おや。美しい娘の上半身が付いているではないか。その横顔、どこかで見覚えがある。それも極最近である。安珍は朦朧とし始める意識の中で考えて、思い付いた。

 

そうだ、あれは─────

 

「ごふっ!?」

 

意識が覚醒した。

 

喋ろうと思ったが口からは言葉ではなく血が吐き出される。それも意識が戻ってきた原因か、それともその美しい娘の名前を思い出したからか、もしくは微かに身に纏わりつく黄金の粒子のおかげか。

 

そうだ、あの娘の名は。

 

「───清姫、殿」

 

「───はい、安珍様」

 

今度こそ口から発っせた言葉。

 

それに返される美しい声音。

 

「少しだけ、お待ち下さい。この痴れ者を焼きつくしますので」

 

言い終わるが瞬間、清姫の全身から燃え上がる白炎。それは黄門鬼の全身を燃やしつくすために唸りを上げる。それだけでは飽き足らず、清姫の翳す手からは白炎の弾幕が間断なく放たれ続け、着弾の度に轟音を響かせる。

 

爆炎が鬼とその後方を覆っていった。

 

焼きつくすものが無くなったか、清姫は蛇竜の下半身を軽快に地面へと着地させる。そしてすぐに安珍へと近寄れば、上体を自身の腕で抱え込むように抱き起こす。

 

それと共に安珍に纏わりついている黄金の光が強くなった。

 

(これは、一体……?)

 

不思議と意識は鮮明になり、体も痛みが和らいでいく。それでも感じる激痛に我慢して、少しの余裕が出来たことで首だけ動かして自身の胴体へと目をやった。

 

そこには胴体を貫通した剣の傷。何故生きているのか疑問に思うほどの致命傷だ。そこへ集まる黄金の粒子。いや──────

 

(この粒子。私の傷の中から?)

 

まるで、そう。安珍の傷の中から湧き出ているような。よく見れば傷以外のところからも微かに出ている。実際には安珍の傷からではなく、安珍の内側から出ているのだろう。

 

「安珍様………」

 

上から降る悲痛そうな声に、思考を止めて清姫の顔を伺った。やはり、また痛みが走った。しかし清姫の顔にあったのは、自身が負った傷以上の痛みを感じさせるものだった。

 

寂寥。悲痛。後悔。失望。絶望。嫌悪。憎悪。

 

あらゆる負の感情が清姫の顔に現れている。

 

酒の手を止めて食い入るように見つめる晴明の視線も、身に纏う黄金の微かな光も、半妖としての半身を見られた事実さえも、全てが視界の外。

 

今の清姫にとっては些事どころか塵のごとく無意味なものであった。

 

「安珍様………わたくしは…………」

 

涙が溢れだす。止めどなく流れ続ける。それに意識を向けることなく清姫は言葉を探す。

 

「……申し訳ありません。わたくしにもっと力があれば

このようなことには………!」

 

「清姫殿………」

 

安珍は痛みを発する傷に構うことなく手を清姫の目元へと持っていくと、その手で清姫の涙を拭ってやる。

 

「これは清姫殿が気にすることではありません。私が好きでやったのです。むしろ、清姫殿には助けて頂いた。これでは私の立場がないというものですが……。ありがとうございます。」

 

「安珍様………!わたくしの方こそ言わねばなりません!ありがとうございます!この清姫を助けるため馳せ参じて頂いたこと!ありがとうございます!安珍様!安珍様っ!安珍様っ!!」

 

微笑む安珍を胸に抱き締める清姫の気持ちは荒れる。様々な想いが胸に到来する様はまさに濁流のよう。

 

しかし現状はそれを許さない。

 

「なんなのだ貴様たちは」

 

愉快さを全面に押し出した言葉が清姫と安珍の耳に届く。それに返したのは清姫。

 

「邪魔ですね。燃やしましょう」

 

先ほどまでの激情が嘘のように無表情に、虚無の瞳を晴明へ向ける。その言葉は返答ではなく。安珍に問うような提案。だがすでに清姫の中では決定事項となっている。

 

「お待ち下さい清姫殿。奴の力は未知数。それはこちらより格上なのが確かな上での未知数なのです。あちらが言葉遊びに興じる内はそれに乗りましょう」

 

「安珍様がそう仰るなら、そう致しますわ」

 

その声は晴明にも聞こえていたのか、離れた位置にいる晴明は家屋より飛び降り、安珍たちへ向かって歩きながら口を動かす。

 

「よい心掛けだ。彼我の力量差をよく分かっている。いや、自身のことに関してはよく分かっていないが。なぁ法師よ?」

 

「なに?」

 

安珍の眉間に皺がよる。

この男は一体何を言い出すつもりなのか。

 

「分かっていない顔だな。貴様と娘を包む黄金に光る粒子。それが何なのか、貴様は理解が及んでいるか?内に潜む神仏の悪戯に気付いてはいないだろう?」

 

ますます安珍の眉間に皺がよる。

 

神仏の悪戯とは物騒な物言いだ。神仏の悪戯など人の身では計り知れないことが大概なのだ。それをここで持ち出すなど、晴明は何に気付いたというのか。

 

安珍は黄金に光る粒子へと目を向ける。

 

それは安珍と清姫の両方から、まるで内側より滲むように発生し続けている。確かに不可思議な現象だ。安珍はこんなものを今まで見たことはないし、似たような例を聞いたことも皆無であった。

 

これが一体なんなのか。

 

自身と清姫を交互に見て一つ気付いた。

 

気配がとても似ているのだ。

 

恐らく黄金に光る粒子が発生し始めてからだろう。自身と清姫の気配が聖人を思わせるような、崇高な気配となっているのだ。

 

「その強固な縁でむすばれた同質の魂。それが貴様らを出会わせた。貴様をこの異界に喚び出した。偶然などありはしない。全ては必然よ。」

 

「これは一体……」

 

「気付いたか?お前たち自身の謎に。何故同質の魂をもっているのかに。そこから放たれる同質の気配に。」

 

「この、感覚は……。それにこれは……魂が変質しはじめているのか……?」

 

「ふん、半分正解と言ったところか。……それはな、魂が変質しているのではない。内に秘められた魂の力が真の在り方を取り戻そうとしているだけだ。結果的に変質しようとするのもそれが原因となっているが故」

 

「魂の変質など……。邪法を用いるか、神に縋るかしなければ本来は有り得ない筈……!」

 

安珍が焦りを見せるのも仕方がないことだ。魂が変質するなど。そんなことが起こってしまえば、それは下手をすれば本人の精神を根本からねじ曲げてしまう行為。いや、それで済めばいい方か。最悪、別人になってしまうか、廃人と化すか。

 

「ならばその有り得ないことが貴様らの身に起こっているということだな。理解したか法師よ?」

 

「くっ……!」

 

ここまで言われて仏門に下っている安珍が気付かぬ筈もない。魂だけのこの世界にいることで表出してしまった、自身と清姫の魂の奥底にあるものに。

 

清姫は話に追い付けていないようであった。不味いことは理解出来ている。しかし何故不味いのかまでは知識が足りていないため理解できない。そんな様相。

 

晴明は言い放つ。

 

「最初はその娘を貰っていこうかと思っていたが気が変わった。お前たちは共に泳がせてやろう。その方が私のためになりそうだ。無論このままという訳ではないがな」

 

晴明が安珍と清姫の前まで来たことで歩みを止め、手刀の印をその手で形作る。

 

何をするつもりなのかは分からないが、安珍と清姫には避ける術などない。安珍はその傷から、清姫は安珍を庇うため。かりに攻撃や防御をしても晴明に通じはしない。安珍はそれを理解しているがために、晴明の裁量に任せるしかない現状を歯噛みしつつも傍観する。

 

隠行剔抉(おんぎょうてっけつ)(いん)

 

手刀の印で何かを書くように空を切り、切った側から光を放ち中空に滞空する奇怪な文字となった。それは陰陽師がよく使う梵字(ぼんじ)。何かの記号にしか見えない特殊な文字。

 

その奇怪な梵字が二つ。中空に浮いている。どちらも同じ形の梵字だ。

 

それは晴明が大きく横一文字に腕を振るうことで、まるで押し出されたように前方へと飛び出す。正確には安珍と清姫の腹部へ向かって飛び出した。当然避けられよう筈もなく、腹部へとピタリと張り付けば衣服関係なく体に刻まれたようだ。腹部に感じる熱がそれを物語る。

 

「ぐっ!?」

 

「うっ!?」

 

「安心するがいい。居場所を特定するだけの術だ。貴様らの朝から晩までには興味がない故な」

 

呻く二人を他所に晴明は踵を返し手刀の印を更に振るう。そうすれば人一人が通れる闇の空間が開かれる。

 

「貴様らは我が野望の礎。その一つとなるだろう。その幸運なる栄光、万感の思いで甘受するがいい。」

 

闇の空間へと足を踏み入れながら晴明は言葉を紡ぐ。

 

「まさに、釈迦の掌の上というやつだ。」

 

少しだけ振り向き、皮肉げに笑いながら姿を消した。それが最後の晴明の言葉であった。

 

 

 

 

 

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