刺されるのか、絞められるのか、燃やされるのか。
ハッピーエンドもありっちゃありだけどなぁ。
安珍には勿体ないよね!
全然一件落着してなかった。
くねくね倒したから呪い全部解けるかなって思ってたんだが、全然解けてなかった。いやね、普通の呪いなら解ける筈なんだよ。思ったより強力なやつだったのか?そんなことはないと思うんだがなぁ。
おかげで1人1人私が手ずから解呪することになったよ!やってくれたな!くねくね!
解呪中に分かったことなんだが、弱っちい呪いのくせして魂に干渉する系統の呪いだった。精神を狂わしていたんじゃなくて、魂に干渉して狂わしていたっぽい。これはかなり面倒な呪いだったわけだ。
精神を蝕まれただけなら、まだ自身で元に戻そうとする力が働くのでいいのだが、魂だとそうはいかない。魂とはその者にとっての根幹だ。根源だ。
魂がなければ精神は生まれず、肉体はただの肉塊と成り果てる。つまり、魂があるからこそ精神も肉体も正常動作し、この3つのバランスによって人は人足り得る。そのうちのどれかを欠いても人は人足り得ない。そして魂は前世を持ち、来世を生きるための最も重要な要素。一番繊細な代物だ。その魂にくねくねは異物を混ぜこんだ。魂干渉の呪いに特化した妖怪だったということか。本来なら魂に干渉することは神仏にしか許されない理。だからこそ魂に干渉する術理は禁忌とされているのだが……。
それからは7日かけて狂ってしまった村人1人1人を治療した。魂とは繊細なため、治療するこちら側からすれば恐ろしく疲れる作業だった。
疲れたから憂いを帯びた顔で1つ溜息をつけば、心配して声をかけてくれる村娘たちがいなければ本当にやってられなかった。
村娘たちが心身共に癒してくれたから、私も頑張りましたよ?うん、色々と頑張った(ゲス顔)
この顔に肉体強度、そして様々な術を使えるため、村娘たちをアヘアヘ言わせるなんて朝飯前の夜明け前だったとだけ言っておこう。
うん?厳格な仏教徒としての教え?なにそれ?
まあ、そうして村人の治療も終わり、路銀と食料を手に入れたことで、ようやく旅を再開できる。
私が旅立とうと早朝に村を出ようとすれば、待ち構えていたのは村人たち。総出でのお別れとなった。
代表として、村長が改めて感謝を言葉にした。
「法師様、この度は誠にありがとうございました。村人一同、感謝の念が絶えません。」
「ふっ、そう言って頂けると、私もこの道を邁進しようと思えるものです。」
言葉少なに別れの挨拶を交わせば、何人かの娘たちが駆け寄って来た。安珍の顔ってイケメンだしね。もしかして惚れてしまったか?
「安珍様!この度本当にありがとうございました!あの、これ粗末なものですけど、今日のお食事にと思い作ってきました。どうか受け取って頂けませんか?」
そう言って他の娘たちも食べ物を差し出してきた。……なんか頬が上気してるんだけど。え、流石にそんなチョロくはないよね君たち?
ま、まあ貰えるものは有り難く受け取っておこう。おい、男共舌打ちするんじゃない。熱い視線を送ってくる男は憧れの視線と捉えていいのだよな?たまに臀部のほうに視線がいくが気にしなくてもいいのだよな?
「これは……。あなたたちの感謝の印、確かにお受け取りしました。それでは、もしまた何か怪異などの問題が起こるようでしたら道成寺をお訪ねください。私は僧としての使命があるため暫くは不在ですが、常駐している者達が必ずや助けとなりましょう。」
「安珍様……また、会えますか?」
これ堕ちてるよ。この娘たちチョロ過ぎるよ。
「ええ。生きてさえいれば、また会う時が訪れましょう。」
微笑みと共にそう言っておく。
ぶっちゃけもう会うことはないんじゃないかな……。
「それでは、私はこれで。」
一礼して踵を返せば、背中に多数の声がかかる。旅を始めて最初に寄った村で早速面倒事が起きたわけだが、こうして感謝の言葉と女の子との縁が結べるなら、僧侶として人助けをするのも悪くない。思わずそうかんがえてしまった。
まあ女の子と良い夜(意味深)を過ごすのは僧侶として本当は駄目なことではあるのだがな。うん、知るかそんなもん。
さて、旅を再開させよう。
◆◇◆◇◆
こうして月日が流れ、様々な出会いがあった。
現代では考えられないような、強力な獣たちと戦い、妖怪たちと戦い、たまに堕ちた神格と戦い死にかけたり、野盗たちに襲われて尻を狙われそうになったり、拐われた女の子を助けてイイコトしたり、特異な妖怪たちに色々と狙われたり。
旅とはいいものだな。
現代で生きていた頃には簡単に移動できる手段が存在したが、勿論のことこの平安の世でそんなものはあり得ない。馬という移動手段があるにはあるが、僧侶は基本的に歩きでなければならない。それも乙であり、風情がある。そう思えるようになった。旅をすることで生まれたこの感情にはそういったものの影響もあるのだろう。
また、この旅で様々な研鑽を積むことも出来た。基本的に私の戦闘は錫杖を使った槍術と棒術。気を扱うことで可能になる様々な術。旅の途中に会った陰陽師に少し手解きを受けた陰陽術などだ。
僧侶として習う術は基本的に捕縛の術や補助に類する術が多く、攻撃するための術などは少ない。それ故にそれ以外の術は兄弟子が編み出したものを教わるか、自分で編み出すか、陰陽師などの外部の者に教わるかの何れかだ。陰陽師は家や派閥によって扱う術が異なるが、どれも僧侶の習うものとは違ったものが多いため、研鑽を積むにはうってつけ相手だ。五行を扱うものや陰陽の理を追及するもの、未来予知に匹敵する程の占星術などを得意とするものたちもいる。まあ、それ故に僧侶と相性の悪い部分があることも事実なので、陰陽師に教えを請うのかどうかは個人の采配に任される。
私は教えを請いたい側の人間なので、この旅が終わったら1度住職様に話を通してみるつもりだ。何処かの陰陽師の元で集中的に学べるように、とな。
さてそろそろ旅も終わりに近付いてきた。あと二月もすれば、住職様が定めた1年という期限も終わりとなる。こうなってくると少し寂しいような、郷愁の念にかられるような不思議な気分になる。
今は取り敢えず、歩を進めよう。
ここに来るまでの道は山の中を突っ切って来たため、妖怪に襲われたり、回り道を余儀なくされたりで思ったよりも時間を食ってしまったからな。
その上ポツリポツリと雨まで降り始める始末。
少し走るか。
この旅の中で更に鍛えられた身体能力で地面を強く蹴り出せば、風を切って身体が前へ前へと進んでいく。雨が降り始めたことで幾分下がった気温は少し肌寒さを感じさせるほど。
少し雨足が強くなる。
時間が立つごとに雨は音を大きくして大地を、草木を、我が身を打つ。建物やそれに連なる人の営みが作り出す灯火が見えたのは、小降りの雨が土砂降りと言えるまでに強くなった後だった。ようやく見えた町と言えるほど大きな人里へと入り込み、急いで泊めてくれそうな家屋を探す。
基本的に僧侶が泊めてくれと言えば大体は無下にせず泊めてくれはするのだが、あまり裕福でないところに泊まると荷物を盗まれてしまうことも多々ある話だ。故に探すのは此処等一帯で一番大きな屋敷だ。これだけ大きな町なら領主が住んでいても可笑しくはないし、もし見付けられればほぼ必ず安心して泊まることができる。さて、ここらで一番の豪邸は……。
ふむ、ここだな。
土砂降りの雨の中で足を止めたのは、それなりに大きな門の前だ。これだけ大きければ貴族なのは間違いあるまい。
早速、腹から声を出して門の向こうにいるであろう家来へと呼び掛ける。
「たのもう!道成寺からやって来た旅の僧でございます!この大雨の中、つい先程この町に着いたばかり!できれば一宿一飯の恩に預かりたく候!」
私が声をかけてから少しの時間があり、大きな門が重厚な音を立てて開き始めた。さて、できれば善良な者であって欲しいが。
「お入りください。中でお館様がお待ちです。」
中から出てきたのはこの館の兵であろう若い男。
「かたじけない。」
どうやら無下にはされなかったらしい。有り難く館の中へと入ってみれば、見るだけで分かる広大な敷地にこれまた大きな屋敷が立てられている。恐らく館の裏には広い庭が広がっている筈だ。
「では法師様、案内致しますので着いていらしてください。」
「分かりました。ああ、その前に少しよろしいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「いえ、このまま入るわけには行きませんから。」
言葉と同時に、手を祈りの形へと持っていき術を施す。
「
出力は弱めに、範囲は自分自身に絞ってかければ、身体及び法衣の水気が全て飛ぶ。それを見た家来が眼を丸くして驚いた。
「おぉ、法師様方は不思議な術を使うと聞いておりましたが、こうやって見るのは初めてです。では、どうぞこちらへ。」
この家の家来の言葉に1つ頷き、静かに追従して屋敷へと入る。中も見事な作りだ。これは当たりを引いたかもしれんな。
この屋敷の主の元へと、案内人の家来と少しの雑談を交わしながらも向かう途中、そんなことを考えながら歩んでいた。
ピタリ、と突然に家来の足が止まった。
「おや、姫様どうかなされましたか?」
家来が足を止め、視線と言葉を向けた先には美しい1人の少女がいた。なんとも不思議な感覚を抱いてしまうが、何故かは分からない。
「いえ、これから湯編みに行こうかと。」
「そうでしたか。いや、これは失礼致しました。」
これまた鈴のなるような美しい声だ。どうやら見目麗しいだけではないらしい。いまのままでも十分に美しい少女だが、このまま育てば絶世の美女となろう。なんとも可能性を感じさせるな。
「……………あの、そちらの殿方は……?」
なんだ、その今の長い間は。何故だか無性にむずむずするんだが。こんなことは始めてだ。
「これは失礼しました。私は道成寺から参りました旅の僧。名を安珍と申します。どうぞお見知りおきを。」
「……………安珍様。」
だからなんだ、その長い間は!しかもボソッと名前を呟くんじゃない!なんかこう、表現出来ない不安に襲われるんだよ!
「清姫様、そろそろ。」
姫様の後ろに控えていて今の今までずっと空気だった女人の侍従が姫様に一声かけた。
だが、私はその侍従が放った言葉に衝撃を受けた。
き、清姫だと……っ!?
なんとか表情には出さずやり過ごしたのだが、あれだ。まずい。どうしよ。めっちゃ動揺しちゃってるよ私。
そんな私を置いて清姫はペコリと一礼して眼を会わせることもなく、この場を去って行った。
「はっはっは、どうですか法師様。姫様は美しいでしょう?」
「ははっ……ええ、とても驚いてしまいましたよ……。」
なんとか返事をした私を誰か誉めてくれ!
安珍・清姫伝説ってどんな内容だっけ。たしかあれだ。清姫が安珍に一目惚れして、安珍が不義理を働いて清姫に殺され、清姫も後を追って死んでしまう。みたいな内容だった筈だ。詳しくは知らんがそんな感じだった気がする。
ということは、さっきのあれはあれか。そうか、あれか。あの、あれってことですよね。その……一目惚れ、したってことですよね。私に。
あれ、じゃあこれから不義理働いたら私殺されるってこと?自分で言うのもあれだが、私結構な人外に至ってると思うよ?どうやって殺すつもりなんだ……。
いやいや、まずは不義理を働かなきゃ殺される心配もないんだから大丈夫な筈。……だと思いたいんだがなぁ。
「どうしました、法師様?もしや姫様に一目惚れでもしてしまいましたかな?アッハッハッハ!」
ちげえよバカ!清姫が私に一目惚れしたんだよ!
そのあとはこの屋敷の主に挨拶を済ませ食事を頂き、早々に床に着くことにした。
確かにここで清姫に会ったのは驚いたが、何かが起こる前に明日の早朝にここを発てば問題はなかろう。うむ、そうしよう。そうと決まれば早起きするためにも早寝をしなければな。
そうして翌朝のことだ。まだ日の昇らぬ早朝。勤勉な者や働き者たちは既に起きて、静かに活動を始めている時間帯。
私はそっと、ゆっくりと布団から抜け出し、気配遮断と無音歩行術を駆使して縁側まで出てくる。夜空に輝く月と、それを彩るように満天に広がる星々を見上げて伸びを1つ。そのまま深呼吸を数回すれば、うむ、これを新鮮な空気と言うのだろう。身体が生き返るような心地である。これもまた、現代を知り、今世を生きるが故に感ぜられることか。
深呼吸を止め、縁側にて腰を降ろし胡座をかく。両の手を体の前に持ってきて座禅のポーズを完成させる。日課の1つの瞑想だ。娯楽の少ない世界故に、旅の最中だったとしても時間は余ってしまう。自身を高めるため、という旅の目的の1つにピッタリ合致することではあるし、何よりも今回の旅は特に急ぐようなものでもない。この瞑想は幼子のころから続けていることも手伝って、修行のほかに心を落ち着けたい時にもよく行う。
そうだ。今のこの瞑想は修行ではない。
心を、落ち着けたいんだ。
なんでかって?
今、私の、布団で、清姫が、寝ている。……全裸で。
これだけ言えば分かってくれるだろうか?
…………ふぅ。よし、瞑想によって心は落ち着いた。冷静になったぞ。これで私は最善の行動をとれるだろう!
さてと!
…………逃げるか!
ちなみにこの安珍はfateをほぼ知りません。そういう作品があるのは知ってるけど内容は知らない、みたいな。
なので清姫がヤンデレの素養をもってるのも知りません。そしてこの旅の中で女遊びをしてきました。安珍様は生粋の女好きなのだ。僧侶ってことで外には出さんけど。
その行いの結果がどう転ぶか楽しみだなぁっ……!