人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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大変お待たせしました。大抵は1週間ちょっとを目安に投稿していますが、これからの投稿は不定期に近いような投稿になって行くかもしれません。
作品を消したり、未完にしたりはせずにちゃんと完結させます。
こんな作者でも付き合ってくださるのなら、これからも当作品のご愛読をお願いします。


決着と攫われた所有者

 浮幽が突然、マヨイガを外に連れ出して、戦いを始めた。

 

 幽冥たちが出たのを確認した浮幽はそのまま赤い炎を灯した触手を前に突き出し、火球をマヨイガに向けて放つ。

 迫る火球にマヨイガは慌てて、避けようとするが、火球はマヨイガに直撃してその身を焼く。マヨイガは苦しそうに蠢いて、身体はボロボロと崩れていく。

 

「葉隠。離して、マヨイガが!!」

 

 それを見た幽冥はマヨイガの元に行こうとするが、葉隠が幽冥の身体に分体を大量に張り付けてマヨイガの所に行かないようにしていた。

 

「マヨイガ!! マヨイガ!!」

 

 幽冥の叫びも虚しく、マヨイガの身体は炎と共に小さくなっていき、炎が消えるとそこには小さな黒い物が転がっていた。

 それを見た幽冥は膝をつき、マヨイガだった物に手を伸ばそうとする。

 

葉隠

【大丈夫だよ王。マヨイガは死んでないよ】

 

 だが、葉隠の言葉を聞き、私は死んだ筈のマヨイガだった小さな黒い物を見る。

 

 浮幽は、その場から離れるように宙に飛ぶ。それと同時に浮幽がいた場所に氷の球が当たり、その場を少し凍らせた。

 浮幽が氷の球が飛んで来た場所を見ると、空間がぐわんぐわんと歪み、そこには傷が1つもなく宙に浮く、マヨイガがいた。

 

 そして、マヨイガが現れると同時に先程までマヨイガだと思っていたものが、何も無かったかのように消える。

 それを見て、『やはり』と呟く。

 

「やはりって葉隠」

 

葉隠

【マヨイガのあれは幻術だよ】

 

「幻術……」

 

葉隠

【そう。しかも、僕が使うような幻術とは比べ物にならない強力な幻術だよ。まさか、実体を持った幻覚(・・・・・・・・)なんて。

 あんな幻覚をどうして生まれたばかりの魔化魍が】

 

「(実体を持った幻覚? それってまさか!)」

 

 葉隠の言った言葉に幽冥は、あるヒットマンな赤ん坊の教師の作品に出る『六道輪廻』という特殊スキルを持つパイナップルヘアーの使っていた技を思い出す。

 

 有幻覚

 幻術と質の高い霧の炎を合わせる事で実体を持った幻覚を生み出すことができる。しかも、普通の幻覚とこの有幻覚を入れ替えて使うことにより幻惑性能が高まり、相対しているものが本物なのか? 有幻覚なのか? 分からなくなり、やられてしまう。

 

 空想の作品の技を平然と使っているマヨイガに驚くも、そもそも魔化魍という存在自体が空想の作品のキャラだと言うこととマヨイガが死んでいないった事に安堵して、その事をあまり気にしていなかった。

 

 五体無事な姿のマヨイガを見た浮幽は赤い炎を灯した触手を再び突き出して火球を放つ。

 火球はそのままマヨイガに命中…………したように見えたが、命中したのは幻術で作られたマヨイガで、命中すると同時に霧のように薄くなりその姿を消す。

 

 そして、マヨイガは分身したかのように有幻覚を作り出して、浮幽に術を放つ。

 炎の球、氷の弾丸、雷の槍、岩の鏃が雨あられのように浮幽に降り注ぐ。

 

ルルル、ルルル

 

 だが、浮幽は触手を使い、自分に当たる術のみを炎で焼き払い、後の術は触手で払いのけた。

 

 

 

 

 

 

 今、気付いたのだが、何故、浮幽はマヨイガにあのような事をしたのだろう。

 幽冥がそう思っていると。

 

「浮幽はあの子の実力を見せようとしているんですよ」

 

 赤の言葉に疑問を浮かべてると、今度は白が近づき幽冥に理由を話す。

 

「王も分かっていると思われますが、我らは王に仕える者達です。

 故にいざ、何かあった時には我らが盾になってでも王を守らないといけません。あのマヨイガとユウレイセンは産まれたばかりとはいえ、魔化魍です。

 しかも、新種といってもいい魔化魍です。ユウレイセンはその力を感じる事が出来たのですが、マヨイガは隠しているのか分からなかったのです。我らからすれば王を守れるかどうかも実力が未知の為にその力を分かりやすくするために浮幽がああしているのです」

 

 要するに、浮幽はマヨイガの隠している力に気付き、戦う事でその力がどんなものか確認して、マヨイガの実力を見ようとしていた。

 そして、私が説明を聞いていた間にかなりの攻防が繰り広げられて、今は互いに大技を繰り出すとしていた。

 

 浮幽は赤と青の炎を灯す触手を回転させ、炎の勢いを上げると炎はやがて形を変えて、赤と青の炎が混じった東洋龍に変え、そのまま触手に蜷局を巻いて、そのまま勢いよく触手を正拳突きの様に前に突き出すと炎の龍は前に螺旋を描きながら飛んで行く。

 

 浮幽の放った炎の龍は真っ直ぐとマヨイガに向かうが、マヨイガは霧を自分の目の前に集めて、巨大な霧の拳が出来上がり、尻尾でその固まりを打ち出した。

 浮幽の攻撃とマヨイガの攻撃は互いにぶつかって均衡し、更に2人は力を込める。だが、均衡していた2つの技は更に込められた力によって大爆発を起こし、そのままあたり一面が光に覆われる。

 光が治ると見えるのは地面に倒れている浮幽とマヨイガだった。

 

 大技……いや、どちらかというと必殺技クラスな攻撃を出してヘトヘトな2人。だが、浮幽は触手で器用にマヨイガのいる所まで移動して、マヨイガの顔の近くに顔を寄せて、何かを喋っている。

 伝えたい事を伝えたのか、浮幽はそのまま触手を前に出す。マヨイガはそれに対して、尻尾を出す。

 

【これからも宜しくね♪】

 

ルルル、ルルル

 

 マヨイガと浮幽はそのまま尻尾と炎を灯していない触手で仲直りの握手をして、その光景を幽冥たちは微笑ましく見ていた。

 その後、幽冥はマヨイガとユウレイセンを呼び、マヨイガに迷家。ユウレイセンに水底と名付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、浮幽と迷家の戦いから1週間経ったある日に話は進む。

 

SIDE眠眠

 殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。

 

 新宿のビルの後ろにある薄汚い路地裏に1つの古パイプが転がっていた。だが、その古パイプからドスの効いたような怨嗟の声と共に古パイプは小刻みに動く。

 

 あいつら、唯じゃ死なせない。僕が此処まで、此処までキレるのは何時ぶりだろう。

 しかも、あの時、いつだったか遥か昔の時にキレた時なんて比じゃない。

 

眠眠

【僕の主人(マスター)を、ランピリスを!!】

 

 怨嗟の声は路地裏に響き、古パイプは激しく震えて、眠眠は事の経緯を思い出していた。

 

〜回想〜

 久々にランピリスと2人で外に出ていた。ランピリスは前の戦いの傷が完治していないが、外へ出歩く程度なら問題もないだろう。だから外出したいという意思を尊重した。

 そして、人間達で言うところの新しい物が集まりやすい新宿に来た。

 

   眠眠

ボソッ【ねえ、本当に大丈夫なの? 怪我】

 

 僕の姿を見られると確実に人間達が騒ぐから僕の家とも身体の一部とも本体ともいえる古パイプの中から小声でランピリスに話しかける。

 

「だから、何度も言っているじゃないですか………ほらね」

 

 そう言って、ランピリスは包帯を巻いている腕をくるくると回す。

 しかし、僕には分かる。ランピリスの怪我はまだ治っていない。ランピリスがあの戦闘で受けた傷は予想以上に酷く、シュテンドウジ様の力を借りた王と蝕が居なければ、確実に死んでいた。しかし、2人の尽力もあり、なんとか一命をとりとめた。だが、代償は大きかった。

 怪我が完治するまでランピリスは本来の姿であるワームの姿に戻る事が出来なかった。

 

「しかし、これといって欲しい物はないですね」

 

 入った店には欲しい物は無かったようでそう言って、ランピリスは別の店に向かおうと歩き出す。そして、ビルとビルの間にある路地裏に通ろうとしたとき。

 

「コイツデイイダロウ」

 

 路地裏から飛び出した手に掴まれる。手を掴まれた瞬間にランピリスは手を出した者を見た。整ったスーツを着たアジア系の顔をした男だった。ランピリスは抵抗するが。

 

「ナニヲシテイル。オマエラモテツダエ!!」

 

 スーツの男の声で別のスーツを着た男達が増えて、さらにランピリスを掴む。ランピリスはどうにか逃げようとするも怪我のせいで振り切れずはずのことに振り切れず、スーツの男達に薄汚い路地裏に引き込まれる。

 

「離せ、この」

 

「ウルサイオンナダ、ホラハヤクシロ!!」

 

 スーツの男の指示で別のスーツの男は暴れるランピリスの首元に何かを当て、ビリリと音がするとランピリスは転がるように倒れて、スーツの男達はそのまま、ランピリスを背負って、そのまま走り去った。

 僕は何もする事が出来ずに、ランピリスが連れていかれた。

〜回想終了〜

 

 自身のキレた理由を再び思い出しながら眠眠は如何にかして、自分の身体を出すための方法を考えていた。

 眠眠の種族であるエンエンラは古パイプや煙管、ランプなどといった道具がツクモガミとなり、さらに変異した異常種の魔化魍である。

 エンエンラは元となった道具の中に入って、所有者となる者を待つ。所有者となれる者を見極めて、所有者になれるかを判断し、所有者になれなかった者を喰らい、所有者となったものを守る。

 そして、エンエンラはどの道具がエンエンラになろうとも必ずある事をしなければ、エンエンラを道具から呼び出すことができない。それは、所有者か所有者に準ずる者に元となった道具を2回叩いてもらうこと。

 それ故に、眠眠は所有者であるランピリスが居ないこの状況でどうやって、自分を外に出すのかを考えていた。

 

「あれ、眠眠何してるの?」

 

 眠眠の入った古パイプを持ち上げて、眠眠を出す合図をすると、眠眠は古パイプから飛び出してくる。

 

眠眠

【貴方は!】




如何でしたでしょうか?
浮幽が迷家に勝負を仕掛けた理由は少し強引でしたかな。
そして、次回はぶちキレた眠眠によるスーパー無双タイムです。

次回の更新も楽しみにお待ちください。

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