今回で眠眠の話は終了です。
眠眠
【これで全員ですか?】
「ええ。この建物にいる子供達全員です」
睡樹
【うん、全員、だよ】
凍
【【はい。私の分体を使いましたので、間違いありません】】
眠眠が大暴れし、バラバラになった肉塊が転がる大部屋の中で、眠眠は質問をして、ランピリスと睡樹、凍の返事を聞き、子供の方に目を向ける。
そこには、眠眠によって壊滅させられた中国マフィアによって誘拐された子供達がいた。眠眠たちは知らぬが世間では、連続児童失踪事件として行方不明になっている子供たちだ。
睡樹の眠りの手から起きた子供達は様々な反応していた。泣く子供、気絶する子供、ランピリスの後ろに隠れて怯える子供がいた。
眠眠が子供たちの方に浮きながら移動すると、子供の1人が立ち上がり、子供達の前に立ち塞がった。
「わたしが………どうなっても、良いから。この子たちは、みのがして!!」
身体を震わして必死に後ろの子供を守るように立つ子供に眠眠は近付く。それを見て、後ろの子供達は目を閉じ、前に立つ子供は涙を流しながらも眠眠を見る。
眠眠は黒煙を動かして、子供に巻きつけて自分の身体に寄せて、ふわふわな毛が生えた右前脚を子供の頭に乗せて撫でる。
眠眠
【大丈夫、何もしないよ。それよりも自分を犠牲にしてでも他の子を助けてって言うなんて、偉い子ね。ねえ、名前なんて言うの?】
「み、ミキ」
まだ怖いのか少し怯えながら答える少女。
眠眠
【そう。ミキちゃんって名前なのね】
「もふもふさんはミキたちに何もしない?」
眠眠
【!!】
「どうしたのもふもふさん?」
眠眠
【な、何でもないよ。そうだミキちゃん。何かして欲しい事ある?】
「………」
少女は何か考える仕草をして、眠眠をじっと見る。そして、思い出したかのようにして欲しいことを言う。
「みんなをお家にかえしてほしい!!」
それを聞き、子供達はミキの周りに集まる。
「「「おねがい!! もふもふさん!!」」」
眠眠
【!!!!!】
眠眠の気持ちを表すかのように黒煙がくねくねとうねり、真っ白な毛が一部、赤くなる。
眠眠
【………いいよ。みんなをお家にちゃんと送ってあげる】
満面の笑顔でミキ達に答える眠眠にミキは子供達に目配せし
「「「ありがとうもふもふさん!!」」」
『もふもふさん』そう子供達に呼ばれたのが、嬉しいのか眠眠は嬉しく舞い上がっていた。ただ、嬉しくて周りが見えてなかったのか–––
睡樹
ボソッ【少し、だらしな、い】
ボソッ「よっぽど嬉しかったでしょうね」
凍
ボソッ【【まあ、今は良いでしょう】】
3人に見られていて、後々にこれが理由でイジられるようになるのだが、眠眠は気にしていなかった。
眠眠
【じゃあ、行くよーーー!!】
「「「「「「はーーーーーい!!」」」」」」
子供達の返事を聞き、眠眠は黒煙に子供達とランピリス、睡樹、凍を乗せて月の輝く空を飛んだ。可愛い子供を親の元に返すために。
SIDEOUT
SIDE◯◯
神というのは、幸せに対して不公平に与えていると思う。
俺の僅かなおこずかいが、排水溝に落ちるのも、俺が必死になって働いても、それは全て上司の先輩の評価にされるのもそれらは全て神が幸せをくれないせいだ。
だが、そんなことよりももっと不幸な事が起きた。
あの日は、昼の仕事をしている時だった。普段は仕事をしている時には掛けてこない電話を妻が掛けてきた。そして、娘が行方不明になったと聞かされた。
直ぐに上司から早退の許可を貰い、家に戻った。家の前には数台のパトカーが止まっており、中に入ると警察が顔を抑えて泣く妻と話をしていた。
俺は警察に話を聞くと、どうやら娘は世間を騒がしている児童連続失踪事件のように消えたらしい。改めて娘が居なくなったということを理解した。
あれから、1週間も経った。
俺は仕事に行き、普段通りに働いているつもりだった。だが、周りの社員からしたら俺は明らかにおかしく、その様子を見た、普段は嫌味や手柄の事しか言わない上司も心配してか、定時に帰してくれるようになった。
そして、仕事が終わって妻に進展があったかと聞けば、首を横に振っていた。
ピンポーンと家のチャイムが鳴る。
「こんな遅くに誰だ」
「また、マスコミかしら。もう、我慢ならない!!」
妻は娘が行方不明になってから、来続けるマスコミに気が参り、ついにチャイムを鳴らしただろう者の元に向かおうと部屋を出た。俺は部屋から出て行く妻の気持ちも分かるので、放っとこうと思った時–––
「あああああああ!!」
妻の悲鳴が聞こえた。
妻の身に何かあったのかと急いで玄関に向かって走ると、妻は玄関の入り口で腰を抜かしたのか座り込み、その先を指差していた。その方向を見ると。
「ただいま」
事件で行方不明になった娘が居た。
「ミキなのか!?」
「ミキ!! ミキ!!」
妻は真っ先に、娘を抱き寄せて、会えなかった1週間分を取り戻すかのように。
娘は苦しいのか、頭を動かすが、妻に抱かれた心地良さか、しばらくするとそのまま眠った。
俺は神というのは信じないが、今だけは少し信じてもいいかと思った。
SIDEOUT
SIDE警察
警察署は現在、署員全員を巻き込んでの大混乱が起きていた。
ここ最近、起こっていた連続児童失踪事件。その失踪していた子供達が何と、自分の家に戻ってきていたという行方不明になった子供の親の1人が警察に連絡したからだ。
翌日、刑事達は一軒ずつ失踪していた子供の元に行き、事情を聞いていった。そして、失踪した子供の中で最年長だった子供が事情を聞いていた刑事に1通の手紙を渡した。そして–––
「けいさつの人達、ぜんいんで見てくださいって、『もふもふさん』が」
手紙を渡された刑事はその手紙を警察署に持ち帰り、子供の言う通りに署内の全員が事件の対策本部としていた部屋に集まり、手紙を確認した。
それを見た、署員達はその手紙に恐怖する。ある刑事はそれに吐き気を覚え、またある刑事はその手紙を破こうとするが、同僚の刑事に抑えられて別の部屋に移された。
その手紙は、紙自体は普通だったが、その文章に使われていた物が異常だったのだ。その赤黒い字に、何も知らぬ一般人だったら、ただの色付きボールペンなんかを2つ使って重ね書きで書いたものだろうと思うだろうが、此処にいるのは、文章に使われているものをよく見たりする事が多い人間達だ。だからこそ、文章に使った物の正体にすぐ気付く。
それは、人間の身体に13分の1流れているもの。つまり………人間の血だった。
そこにはこう書かれていた。
「拝啓 日本警察の署員の皆様。
このような手紙で挨拶して申し訳ございません。
先ずは、私たちがこの手紙に使ってるのはお察しの通り、人間の血です。
ただし、子供達には何もしていません。皆、五体満足で親御の元に返しました。
この血は子供と私の家族を攫った愚か者供の血で書かせて頂きました。
この血の持ち主である愚か者供は山奥に肉塊に変えて放置してあります。
申し訳ございませんが、死体の処理をお願いいたします。
子供の味方 もふもふさんより」
読み終えた刑事はその手紙を置いて、パイプ椅子に深く座り顔を抑える。
後日、警察はその『もふもふさん』と呼ばれたものが書いた場所に向かうと、書かれてた通りに達磨のように四肢がなく、全身をズタボロにされた肉塊に変わった死体が積み重ねられていた。
警察は『もふもふさん』という存在を探したが見つからず、やがて事件も記憶から少しずつ薄れっていった。
如何でしたでしょうか?
今回はこのようになりました。
次回は久々に鬼SIDEオンリーの話を出そうと思います。