ちょくちょくと書いて、何とか完成しました。
今回は荒夜VS天馬の魔化魍。今回は、一角獣はあまり喋りません。
眠眠のマスターであるランピリスが攫われて、その後に眠眠たちの活躍により攫った一味は壊滅した。しかし何故、眠眠は死体を回収せずに放置して来たのか理由を聞いてみようとしたのだが–––
「すいません王。この子、あの姿になると1週間はずっと寝てるんです」
と言うランピリスの言葉で理由は聞けなかった。
ランピリスの怪我は攫った一味から受けた傷と前の怪我も含めて、あと数日で完治するとの事で、それを聞きランピリスは喜んでいた。
幽冥はランピリスの居た部屋から出て、自分の部屋に行こうとするが–––
「わ、わわわっっと」
突然、妖世館全体を揺らすような衝撃が襲い、私はその衝撃で大勢を崩して、倒れそうになる。
「大丈夫ですか王?」
だが、倒れそうになった瞬間に何処からか現れたのか白が現れ、私を倒れないように支えてくれた。
「ありがとう白」
助けてくれた事に素直に感謝する幽冥だが。
「(嗚呼、今日も王からいい匂いがあああ!!)」
こんな事を白が思っているとは、幽冥も思うまい。
「だけど、何が起きたの?」
「分かりません。もしかしたらまた鬼が来たのかもしれません」
「鬼か」
幽冥は鬼が来た可能性は低いと考える。その理由は彼女の姉である春詠が関係している。
彼女は幽冥と再会した翌日に連絡用のディスクアニマルにある物を付けて関東地方東京都第3支部に送った。ある物とは、春詠がこの場所に来るのに同行していた鬼、悪鬼の変身音錠 悪錠と春詠の血を染み込ませた書いた手紙と血を浴びた春詠の髪の一部である。
その内容は、この地にいる魔化魍と相打ちになり、悪鬼は死亡。自身も瀕死の傷でもう風前の灯火。せめて魔化魍を倒した事と悪鬼の遺品を連絡用のディスクアニマルに持たせて、所属であった東京都第3支部に送った。
これは猛士の『暗黙の了解』のようになっているものだが、もしも魔化魍を清めることが出来ても、自身も死ぬかもしれないという時には、自身の変身道具又はその者の所持品と魔化魍を清めた事を伝える短い報告書を書き、自身が所属していた支部に連絡用のディスクアニマルに持たせて送るのだ。
しかし何故、春詠は自身の変身道具である慧笛を連絡用のディスクアニマルに持たせなかったのかというと、春詠の持つ変身鬼笛 慧笛は代々8人の鬼の1人だった慧鬼の子孫にしか扱えない特殊な変身道具で、現在の春詠にはそれを継がせた親も継ぐ子もおらず、いわばたった1人の慧鬼に変身できる者なのだが、上記のとおりに死んだという事で連絡する暗黙の了解によって春詠は猛士からは死んだ事にされている。
さらには魔化魍は清められたという報告によって、再び鬼を送って調査することは『相当に切羽詰まった状況ではない限りありえない』と春詠は言っていた。
自身の姉の言った言葉であり、おまけにその姉は嘘を付くのが超下手クソなので信憑性はかなりあった。
その為に、白が言った鬼が来た可能性は低い。
「とにかく、今の衝撃の起こった場所に向かおう」
「そうですね」
幽冥と白は衝撃の発生源であろう妖世館の外に向かった。
外に出てみると、本来の姿に戻った荒夜と狂姫、迷家が衝撃を出したであろう犯人の魔化魍たちを睨んでいた。
SIDE荒夜
姫といつものように館の外で軽い手合わせをしていた時にそれは起きた。
何処からか飛んできた斬撃が妖世館に命中し、衝撃となって揺らす。
斬撃が飛んできた方に向くと2体の魔化魍がいた。
馬の頭部に翼の生えた甲冑を纏った人型の魔化魍と捻れた槍の角を持ち、前脚に装甲を付けた白馬の魔化魍がいた。
【俺の名はペガサス!! こっちは俺の相棒のユニコーンだ】
人型の方がペガサスで、白馬の方がユニコーンという名前らしい。
荒夜
【これは自己紹介ありがとうございます。私は王に仕える魔化魍 ヤシャの荒夜と申します。本日はどのようなご用件で?】
【おう。紹介ありがとさん。要件はおめえさんがたの後ろにいる王に用がある】
ペガサスの言葉で私は後ろを向くと王と白殿がいたことに気付くが、今はそんな場合では無いと判断して、そのままペガサスを見て次の質問をする。
荒夜
【……王にどのようなご用件でしょう?】
【なーに、そんな大したことじゃねえ…………ただ、俺と戦ってくれってところかな】
ペガサスは荒夜に向けて長剣を振り下ろすが、そこには荒夜が居らず、少し離れた所で立っていた。
荒夜
【そうですか。ならば–––––】
荒夜は腰に指した刀に手を掛ける。
荒夜
【私が相手をしましょう。…………陽太郎殿、貴方から頂いたこの刀、使わせて頂きます】
ペガサスには聞こえない小さな声でそう呟くと、刀を僅かに抜き腰を落とす。
この刀は以前、『
前の刀に比べて、扱いやすく、手によく馴染む。銘は
【へえーー。すげな今の避けるとは、だが!!】
今度は長槍を空間から取り出して、荒夜に向ける。
【俺の連撃を避けれるか!!】
ペガサスが翼を広げて、低空飛行で荒夜に迫り、長槍の連続刺突を繰り出す。
荒夜は冷静に
荒夜
【閃居合流 桜蘭!!】
逆に荒夜が攻める時はペガサスは槍の柄で居合の軌道をずらし、長剣で首を狙うも荒夜は鞘で剣撃を防ぐ。
ペガサスは低空飛行をやめて、空に舞い上がる。
荒夜は
荒夜はペガサスが落ちてくる瞬間に跳び、
ペガサスはそのまま、回転し槍の峰を荒夜に叩きつける。
荒夜の着物が少し破けて、荒夜は地面に叩きつけられる。だが、荒夜の身体に何も無く、そのまま立ち上がって、降りてくるペガサスの隙を掴もうとしていた。
ペガサスは先からの戦闘で楽しくなったのか口が綻んでいた。
【これ程の力なら、『封印の誓い』を解いての相手に丁度いい!】
ユニコーンは目を見開き、ペガサスの言っていた言葉に驚く。
ペガサスは、目の前に長剣を突き刺して、長槍を横向きに構えて言葉を紡ぐ。
【俺とお前の1対1だという事】
ペガサスが何かを言うと辺りに重いプレッシャーが掛かる。
【俺と同じように武器を持っている】
次の言葉を言うと、更にプレッシャーが増し、身体に薄い白い光が覆う。
【俺の持てる限りの力を全て使い全力で屠る!!】
最後の言葉を言うと同時にペガサスを包む白い光は辺りを覆うほどに輝く。
光が治ると同時に開く眼でペガサスを見ると、ペガサスの姿は変わっていた。2足歩行の人間らしい脚だった下半身から4足歩行の馬のような下半身に変わり、その手に持っていた武器は腕全体を覆うような長槍と禍々しい長剣を持ち、馬の顔が爽やかな人間の顔と甲冑を纏い、背には巨大な翼を持った上半身に変わった。
これはペガサス自身が言う『封印の誓い』を解いた姿–––––いや、ペガサス本来の姿である。
【さあて、行くぜ!!】
荒夜
【!!】
一瞬にして荒夜の側にまで移動し、その長剣を振り下ろす。荒夜は瞬時に反応して
荒夜
【ぐふっ】
狂姫
【荒夜様!!】
近付こうとする狂姫を手で制して、荒夜は鞘に刀を戻し、構えを解いて、掴んだ刀の柄から手を離して目の前のペガサスを見る荒夜。
【どうした? 遂に王にやらせる気にでもなったのか】
腹に刺した槍の傷はそこまで深くは無かったが、下手をすれば出血過多によって倒れるだろうと、ペガサスは荒夜からその後ろにいる幽冥に目線を向ける。
荒夜
【………確かに貴方は強いです。ですが–––––】
カチンと鍔の音が鳴った瞬間に、幽冥に眼を向けた視線を荒夜に戻すが、ペガサスは頰に僅かな痛みを感じて、手を当てると頰が一文字に斬られてることに気がつく。
荒夜
【今のが見えなかった貴方は王に挑むつもりどころか、私が挑ませませんよ】
ペガサスは己の直感で、大技が来る事を予想し、長槍と長剣を構えるが、荒夜は炎が生じた
【お前、何故力を抜きやがる!!】
荒夜
【…………】
ペガサスの問いに荒夜は答えず、更に深い脱力と深い呼吸をしてペガサスの頭で何かが切れた音が鳴る。
【巫山戯るなああああああ!!】
ペガサスは怒り、荒夜の技を警戒して構えていた動きを解いて、荒夜に直進する。
荒夜
【
それはかつて陽太郎に戦闘の最中に直に教わり、会得した技を荒夜が再び、陽太郎と刀を交えるために鍛錬して編み出した技。
居合は脱力すればする程に速さと破壊力の増す武術。強力な煉獄の如き炎を使って一撃で斬り伏せる
煉獄の如きの炎を纏った無数の斬撃は迫るペガサスに防ぐ術はなく、咄嗟に前に出した2つの武器を同時に斬り落とし、そのままペガサスの身体を斬り裂く。そして、ペガサスが足の腱を斬られたのか地面に倒れ、顔を上げると荒夜が立っており、ペガサスの頭に
ペガサスが目を覚ますと、目に入ったのは天井だった。
そこから顔を上げて辺りを見渡すと、あまり物が置かれていない質素な部屋で、足に何か乗っかっていることに気付き、そこを見るとユニコーンの頭がペガサスの足に乗かっていた。
【………ユニコーン起きろ】
【んんん…………ペガサス! 良かった】
ユニコーンが安堵する声を聞き、ペガサスはその頭を軽く撫でるとユニコーンはブルルゥと可愛らしい声を上げる。
「イチャイチャしそうな所申し訳ないんだけど、話しさせてもらっていいかな?」
【【!!】】
ペガサスとユニコーンは声の方に向くと、胸部に包帯を巻いた荒夜と狂姫を傍らに立たせている幽冥がいた。ペガサスは剣を抜こうとするが、剣が側にはなく良く見ると、荒夜が鞘に収めた状態で持っていた。それを見て、ペガサスは大人しくする事にした。
「まあ、知っているかどうかは不明だけど、私が今のところ魔化魍の王になる安倍 幽冥………それで、私に何の用があったの?」
【俺は王を倒して更なる力を得る為だ!!】
「私を倒して力を手に入れるね…………貴方のその力ってまだ、完全じゃないんでしょ? 力を使いこなせるようになりたいと言うのは本当だろうけど、本当の理由は–––」
幽冥は言葉を一旦止めて、ユニコーンの方を見て、言葉を出した。
「その隣の子が関係しているのかな?」
幽冥の言葉を聞いて、ペガサスはユニコーンを一瞥した後に、幽冥に話し始める。
【俺は………俺はこの力を完全に制御出来る力が欲しい!! ………隣にいるユニコーンは過去の俺が原因でこの傷を作っちまった。
だが此処に居れば、荒夜や王の家族たちと鍛えていけば、俺は、俺は誰にも負けない力を得られる。だから、此処に居させてもらえねえだろうか?】
ペガサスが『封印の誓い』で力をセーブしているのは、幽冥も言った通り、ユニコーンが関係している。だが、この話はまた別の機会で語るだろう。
自分のことを言ったペガサスは王の言葉に耳を傾け、一字一句逃さないように聞いていた。
「………これからは貴方達も私の家族です。家族同士で切磋琢磨し、その力を高めなさい」
私の言葉を聞き、先の模擬戦でボロボロのペガサスとユニコーンはイギリスで有名な円卓の騎士のように跪き、頭を下げ、誓いを口にする。
【【我ら2人は貴方を主君とし、時には槍に、時には盾となり、今代の魔化魍の王に仕えることを誓う(います)】】
この日から、イギリスから来た流浪の2人の魔化魍はペガサスは劔、ユニコーンは刺馬と名付けられて新たな家族となった。
如何でしたでしょうか?
ペガサスがユニコーンに怪我をさせた経緯は別の幕間で書きます。
次回は雨の止まない山で出会う魔化魍の話です。